【RIZIN51】ガジャマトフ戦へ。扇久保博正―01―「他の選手の演説を聞いて『これ、選ばれるかも』と」
【写真】ガジャマトフ戦に賭ける気持ちが伝わってくる――引き締まった表情の扇久保(C)MMAPLANET
28日(日)に名古屋市北区のIGアリーナで開催されるRIZIN51。同大会ではRIZIN World GP2025フライ級T準決勝が実施され、扇久保博正がアリベク・ガジャマトフと対戦する。
text by Manabu Takashima
MMAとしてリングジェネラルシップを握り、ダメージを負うような攻撃されない戦い――完成度の高いファイトを扇久保は、その結果としてホセ・トーレスに勝利した。と同時にジェネラルファンに伝わり辛いファイトをしたことで、総選挙という投票制で弾かれることを危惧していた。
結果として、対戦場ベースの投票でガジャマトフ戦が決定。初戦で圧倒的な破壊力を見せた新鋭との対戦を望んだことが、扇久保に有利に働いたか。とすれば、それは扇久保の歩んできたMMA人生がファイターとして正解だったことを意味する。
扇久保博正インタビュー前編は、まず無関係ではない2人のUFCファイターについて話を訊き、総選挙まで葛藤を尋ねた。
準決勝を戦えないんじゃないかというストレスで、結構ヤバかった
――RIZIN World GP2025フライ級T準決勝のアリベク・ガジャマトフ戦について伺う前に、1回戦後に行われたUFCフライ級の2試合について尋ねさせて下さい。
「ハイ」
――まず8月2日に平良達郎選手が、アミール・アルバジの代役パク・ヒョンソンをしっかりと仕留めて一本勝ちしました。
「いや、強いなっていう一言だけですね。試合前に色々とあって、かなりリスクのある相手と戦ってあの勝ち方ができた。精神的にも強くなっています。僕は何かあると、本当に真正面から受けとめて精神的に崩れてしまう。でも、平良君はそこを乗り越えることができる。
どういう風にアクシデントを受け止めているのか。本人に聞いてみないと分からないですけど、そこを乗り越えられることが彼の強さだと思います」
――もう一つ、朝倉海選手のティム・エリオット戦の負けはどのように見ましたか。
「武器の種類の違い。数の違いが明白だったかと。朝倉選手は打撃に偏っていた。身体能力で組み技を凌いでいたのが、それができない戦いでした」
――ただRIZINの時は、そこが露呈しなかったです。
「フライ級とバンタム級の違いもあるかと思います。RIZINではほとんどフライ級で戦っていないですからね。打撃の破壊力、ステップがバンタム級の時とは違うという気がしなくはないです」
――階級が違うからでしょうか。組まれたくない、倒されたくないという気持ちがパントージャ戦で、大きくなっているようにも見受けられました。遠い位置から力を込めた攻撃が多くなったと思います。TRIBEで練習することで、より寝技を警戒するようになり怖くなったのかとも感じました。
「怖くなったというか、自信がなくなったのかもしれないですね。ファイターって自信がめちゃくちゃ大切なので。そこがなくなると、一気にテストステロンがなくなってしまいます。それは僕が経験してきたことです(笑)。
確かに打撃は粗くなっているとは思います。ティム・エリオット戦は一発狙いに見えましたね。エリオットはあれだけ動く選手なので、動かせておけば自然と疲れてきます。それを朝倉選手も強振しているので疲れていった。本来は細かく入れて戦うことができる選手だから、ローとかボディジャブとか当てなくて良いので軽く出しておけばとは良かったのになぁとは思います。
あとケージとリングの違いですかね。リングだと打撃系の選手はコーナーに追い込むことができます。四角と八角だとステップの踏み方も全然変わってきますしね」
――TUF24のチームメイトで、決勝を戦った相手が勝利して嬉しいという気持ちは?
「嬉しいとかはなかったです。正直、ここは朝倉選手が勝った方が日本のMMAも盛り上がるので」
――日本の夢を潰すのは2度目ですね(笑)。
「それ読みましたよ、インタビューで(笑)」
投票で落とされるとMMAファイター人生を否定されることになります
――ハハハハ。朝倉選手の敗北の3日後に「RIZIN WORLD GP 2025 FLY WEIGHT TOURNAMENT 2nd ROUND総選挙」がありました。1回戦で勝った翌日、鶴屋怜選手の取材でTHE BLACKBELT JAPANを訪れた際、扇久保選手がジムに勝利の報告にたまたま来られて。あの時、選挙で落とされるかもと気にされていました。
「そこはもうずっと気にしていました(笑)。準決勝を戦えないんじゃないかというストレスで、結構ヤバかったですね」
――MMAとしてホセ・トーレスにあの勝ち方として、「あれ以上どうすれば良いんだ」とは言いたくなるのですが。
「僕とすれば、投票で落とされるとMMAファイター人生を否定されることになりますしね(苦笑)。完全否定ですよ。しんどい選挙でしたね。だから落ちてもイイや――ではないですけど、落ちた時のことも考えていました。それぐらいのメンタルでいないと、やっていけなかったですね」
――選ばれなかった時は、リザーブマッチを戦うという気持ちになれたのですか。
「それは決まっていることなので、落とされればリザーブマッチを戦うつもりでした。9月には試合が絶対にあるというつもりで過ごしていました」
――いやぁメンタル、強くないですか。
「そうなんスかね(笑)。でも、投票で落とされたら補欠戦で勝って『優勝した選手、俺とやれ』と言おうと決めていました」
――なるほどっ!! 負けていないわけですしね。
「そうじゃないと、あの日々は過ごせないですよ」
――1回戦は抽選会。今回は選挙。試合があることは決まっていても、対戦相手が決まっていない。今回はその期間は2週間ほどだったかもしれないですが、どういう風な練習をしてきましたか。
「ガジャマトフと戦うつもりで調整をしていました(笑)。ずっと彼と戦うことを考えていたので」
――そして、実現すると。あの対戦カード・ベースで投票されるというのは、選手たちはいつ知らされたのですか。
「あの場ですよ。壇上で鈴木アナが話した時です。控室でも知らされていなかったです。鈴木アナの話まで本当に知らなかった(笑)。あの時は結構、ガジャマトフもナーバスになっていましたね」
――それこそ対戦カード・ベースでないと、1人だけ日本人でない。怖いですよ。
「ダゲスタンに行って、僕以外はダゲスタン人だと想像をするとゾッとしますね(苦笑)」
――結果、格闘技としてのファンや識者の良心が守られた結果となりました。伊藤選手は本当に気の毒ですが、準決勝として最良の2試合になったと思います。でも、やっぱりスポーツとしてはおかしい。おかしいけど選挙と投票があり、普通に決まって発表するよりも注目されることになる。
「僕はRIZINのそういうことも全て受け入れています」
――結果、日本で最も強い選手が集まってくる大会が行われているわけですしね。いずれにせよ、対戦カード・ベースになったことでガジャマトフと戦いたいという本心が優位に働くことになったかと。
「それで自分が優位になったとは、鈴木アナの説明を聞いても思わなかったです。ただ、他の選手の演説を聞いて『これ、選ばれるかも』と思いました。僕と元谷君しか、誰と戦いたいと口にしなかったので。伊藤選手と誠は言わなかった。逆に『言わないんだ』と思って、これはいけるかもっていう気持ちになりましたね」
――1位で抜けた時の気持ちは?
「本当に良かったと思いましたね。安堵し、同時に『本当にガジャマトフ戦が決まった』と気が引き締まりました」
<この項、続く>
■視聴方法(予定)
9月28日(日)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■対戦カード
<RIZINライト級選手権試合/5分3R>
[王者]ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
[挑戦者]堀江圭功(日本)
<フェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
[挑戦者]ビクター・コレスニック(ロシア)
<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
扇久保博正(日本)
アリベク・ガジャマトフ(ロシア)
<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
元谷友貴(日本)
神龍誠(日本)
<RIZIN WORLD GP2025フライ級Tリザーブマッチ/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
山本アーセン(日本)
<RIZIN WORLD GP2025ヘビー級T決勝/5分3R>
マレク・サモチュク(ポーランド)
アレクサンダー・ソルダトキン(ロシア)
<バンタム級/5分3R>
佐藤将光(日本)
ダニー・サバテロ(米国)
<バンタム級/5分3R>
梅野源治(日本)
芦澤竜誠(日本)
<フェザー級/5分3R>
高木凌(日本)
三宅輝砂(日本)
<ライト級/5分3R>
矢地祐介(日本)
芳賀ビラル海(日本)
<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
ファン・イェーロウ(中国)
<フライ級/5分3R>
冨澤大智(日本)
平本丈(日本)
<フェザー級/5分3R>
大和哲也(日本)
奥山貴大(日本)
<100キロ契約/5分3R>
金田一孝介(日本)
チャートゥ・バンビロール(セネガル)
<ライト級/5分2R>
太田将吾(日本)
Street♡★Bob洸助(日本)
<バンタム級/5分2R>
山木麻弥(日本)
石坂空志(日本)
<フライ級/5分2R>
佐藤執斗(日本)
小林大介(日本)
<フェザー級/5分2R>
YUHEI(日本)
脇田仁(日本)