【RIZIN Y.E.S.P.Festival】これぞヒリヒリ=安藤達也と激突、福田龍彌「強さの本質を提供できるように」
>【写真】戦いを通じて見せる自分の生き方——同じ感性で生きてきたであろう安藤が相手だからこそ、最高のヒリヒリを見せられるはず(C)SHOJIRO KAMEIKE
31日(水)に埼玉県さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催される「RIZIN 師走の超強者祭り」で、福田龍彌が安藤達也と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
福田にとっては今年7月、RIZINバンタム級チャンピオンシップで王者の井上直樹に敗れて以来の試合となる。バンタム級に転向後の連勝も4でストップしたものの、福田に最大級のヒリヒリをもたらす相手が登場した。
11月20日の記者会見で安藤と向かい合った福田は、とにかく嬉しそうな表情を浮かべていた。それは安藤も同様だ。福田が感じる安藤達也というファイターについて、そして安藤との戦いについて訊くと、福田は「試合内容でお客さんに強さの本質を提供できるように」と答えた。
安藤君も戦闘民族のような感じで、こういうスリルのある戦いが好きなんやろうとは思いますよね
――安藤戦が発表された記者会見では、安藤選手とのイチャイチャ具合が凄かったですね。
「えっ、イチャイチャって何ですか(笑)」
――これまでの試合だと福田選手はヒリヒリしている一方で、対戦相手はそうではない場合もありました。しかし今回は福田選手も安藤選手も、対戦することの喜びが満ち溢れていたように思います。福田選手の中でも自身と安藤選手で似た部分、近い部分を感じますか。
「安藤君も戦闘民族のような感じで、こういうスリルのある戦いが好きなんやろうとは思いますよね。彼も感性を大事にしているタイプで」
――安藤選手の過去の試合を見て、自身と同じタイプだと感じていたのでしょうか。
「もちろん。だから彼の試合を見るのは昔から結構好きでした。僕って、あまり他の人の試合は見ないんですよ。知り合いの試合ぐらいしか見ない。でも安藤君の試合は見ていましたね。ONEで戦っている時もそうやし、Road to UFCに出た時も応援していて」
――その点が今までの試合とは異なるパターンだと思いました。
「たまには僕のキャリアの中で、そういう試合もあって良いんじゃないですかね(笑)。安藤君は純粋に面白い試合をする。『この相手、どうですか?』とオファーをもらったら、テンションの上がる選手の一人ですよ。自分が見ている側から戦う側になって――たぶんお互いに、対戦するのが楽しみで仕方ないんやと思います」
――まさにRIZINでしか実現しないカードだと思います。以前は福田選手がフライ級で戦い、安藤選手はバンタム級あるいはフェザー級で試合をしていました。その当時は実際に対戦することはイメージしていなかったですか。
「僕、誰の試合を見ても『自分が戦ったら……』というイメージは持たないんです(笑)。特に安藤君の試合は技術論として見るよりは、純粋に観客目線で見ていたというか」
――たとえば今、安藤選手のほかに観客目線で見て面白いファイターは他にいますか。
「相本(宗輝)君とか。(平良)達郎の試合を見る時は応援の気持ちも入っているし、そういうのを抜くと相本君の試合は面白いです。
あと前回は負けちゃったけど、萩原京平の試合も好きですよ。格闘技をポイントゲームとしてとらえていなくて、ちゃんと仕留めに行くために考えて戦っている。なおかつ試合が面白い。安藤君と同じ枠で見ているのは、そういうファイターですね」
試合でないと自分の商品価値を証明できない。だから良い試合内容を良い対戦相手で提供する
――では自身の試合は、どう見ていますか。特に前回のチャンピオンシップについて……。
「もっと創っていきたかったですよね。でもホンマに逃げ切られてしまって」
――いつもの福田選手ならもっと行っているような場面でも、なかなか行けない。そのような不思議な感覚のあった試合でした。
「あぁ、それは行った先が分かるから――かもしれないですね。そのギリギリの距離で逃げ切られたな、という試合やったんですよ」
――そうだったのですか。試合中、いつものようにセットできず先を読めていないのだろうかとも考えていました。もちろん、そうであっても井上選手の強さに変わりはないのですが。
「見えていたんです。その先も……。今まで僕よりリーチが長い選手は、同じような戦いをしたかったわけですよ。僕はそういう選手と戦って、倒してきました。普段でもリーチの長い子と練習することも多くて、そうやって試合では倒してきた。
でも前回の試合は相手が僕よりリーチも長くて、僕より懐が深い距離から空間を支配している。その空間で自分と同じか、それ以上のスピードで動く。試合中に『こんな世界観あるんや。コイツ凄いな』って思いました。その狭間で自分も狙えるところで手を出したつもりやし、ニアピンパンチもあったと思うんです。少ないチャンスでもね」
――福田選手がパンチで相手の顔を跳ね上げる場面は何度もありました。
「でも、それぐらいしか隙がない。試合中はそんな感じで、完走されてしまった。あわよくば仕留める、というぐらいの感覚で試合を支配されてしまいましたね。それはバンタム級に上げてから初めての経験で。これまでのキャリアを考えても、ああいう負け方をしたことはあまりなかったです。
そういう意味でも勉強になりました。次の相手はタイプが違うけど、もっと面白い試合をしたうえで狩り取れるよう取り組んできたつもりです」
――今後もRIZINで戦っていくとすれば、それはもう一度RIZINのベルトを目指すための戦いになるのでしょうか。
「そういうわけではないですね。でもそれを言ったら神龍(誠)君にもやり返したい。達郎に対してもそうでした。今まで負けた相手にはやり返したいという気持ちは持っているけど、ここでやり返すためのルートに舵を切るつもりはないです。
言えば今回のようなカードを、いっぱい提供したい。だから誰と戦いたいか、ということではないけど、今回はオファーをもらった時に『マジで!? 絶対に楽しいやん』と思いました。今はそういう試合のお話がいっぱい来て、あとで視返しても面白い試合をしたいという感じですね。
それが日本人の中やったら安藤君で、海外の選手とも対戦したいです。今はダニー・サバテロとかベラトールで戦っていた選手が来ているじゃないですか。フライ級でいえばホセ・トーレスのような元UFCファイターとかも」
――同じバンタム級でいえば、サバテロのような存在がいるとワクワクしますか。
「ワクワクしますよ。いえばメジャーリーグのようなところから来ている方で。レベルが高いと言われている場所で、そのトップクラスで試合をしていた人たちじゃないですか。その人たちに、自分が地方のジムで取り組んできたことがどれだけ通用するか試してみたい気持ちはあります。
その結果がRIZINさんにも利益を与えることになり、DEEPにも利益を与えるやろうし。これから後楽園ホールで試合をすることになるのか、先のことは僕にも分からないです。でもどういうキャリアを歩もうが、試合で良いものを提供する。そうすることで、自分に関わってくれる人たちがハッピーになると思っているから。そのために自分は成長してきたし、試合でないと自分の商品価値を証明できない。だから良い試合内容を良い対戦相手で提供する。そこに全集中して日々を生きています」
志に50はないんですよ。ゼロか百——つまり誰でも志を持てるし、誰でも手放すことができる
――なるほど。ちなみに今回対戦する安藤選手と、過去に絡みはあったのでしょうか。
「会場で挨拶したり、ぐらいですね。会見の時に裏口でメッチャ喋りました(笑)」
――そうだったのですね。あの会見では後列でトラッシュトークが展開されているなか、前列の2人……間違いなくMMAファイターとして、後列の選手たちとはキャリアも比べようのない2人が互いに愛とリスペクトを持っている。その様子が素敵で、格闘技としてあるべき姿だと思いました。
「それは昔から一貫していますから。自分が試合すると決めたからには、対戦相手には誰に対しても愛とリスペクトは持っています。それこそ芦澤君に対してもね。どれだけ僕に向けてトラッシュトークをしてこようと、そこは絶対に変わらないんです。
その気持ちを試合内容で見せることができたら、僕たちとしては完璧ですよね。安藤君も僕も、そこに一番重きを置いているタイプやから。取り繕って素じゃない自分をつくることに労力を割くのではなく、しっかりと試合内容でお客さんに強さの本質を提供できるように。きっと安藤君もそう思っているはずです」
――はい。
「ただね、あのワチャワチャしていた人たちも会見の裏ではメッチャ礼儀正しくて。彼らは彼らで会見では、自分の役割を全うしようとしたんやと思います。会見に出席している選手全員が僕らのような感じやったら、それはそれでどうかと思いますし(笑)」
――アハハハ。
「僕たちは素でやらせてもらい、それが刺さる人には刺さる。他の人たちの頑張りがあって、あの会見は亀池さんの目にそう映っている。すごくありがたいことやと思います。もしかしたら、あのワチャワチャしていた人たちがメチャクチャ良い試合をするかもしれない。その部分で負けたくない、というのが僕たちの一番の気持ちであって」
――盛り上げ方は選手それぞれで、プロとして試合内容では負けたくないということですね。
「はい、そういうことなんです」
――ただ比較論として、どちらの試合が面白いかどうかは決めることができる。その一方で福田選手が求める面白さには、上限がないようにも思います。上限がないものを突き詰めていくことが福田選手の言う本質でもあるのでしょうけども。
「ないですよ。僕は上限がないものを求めていきたいです。僕がパーソナルを受けている人から『人の志はゼロか百。お前は百で生きてくることができた。そのまま百で生き続けろよ』と言われて、なるほどなぁって思いました。
志に50はないんですよ。ゼロか百——つまり誰でも志を持てるし、誰でも手放すことができる。その志を持ち続けることが難しい。だからこそ僕は今持っている志を忘れたくないし、もっと濃くなるよう追及していきたいんですよね」
自分がしたいことを追求していたら、いろんなものがついてくる――そういう生活ができたら良いなと思っています
――志を持ち続けているかぎり、もし今ある目標に辿り着いたとしても、すぐに次の目標が見えてくるのでしょうね。
「そうやと思います。3年前の僕からすれば、今の自分の生活って夢のまた夢でした。目標に向かって突き進んで、パッと振り向いたら『あぁ、到達していた』と気づくというか」
――気づけば目標を通り過ぎている、と。
「方向だけ決めて、濁流の中を潜水で泳いでいるような感じです。途中で息が苦しくなり、ブアァって顔を上げたら、すでに目標は通り過ぎている。でもその時はまだ濁流に流されそうやから、また潜って次の目標に向かって泳ぐ。思い返せばこの33年間、そういう毎日を過ごしてきました。
気づけば格闘技を始めたての自分の思い描いていたものは、とうの昔に全て手に入っている。それが達成された頃には、またそれどころじゃない状況になっているということの繰り返しですよ」
――まさに、それは格闘技だけでなく人生そのものですよね。
「DEEPのフライ級GPで優勝し、バンタム級に転向して……気づいたらファイター専業で家族を養っている。狩猟で自分の食材も確保できるようになりました。
僕は京都の端っこで生まれて、自分にしかできない人生を歩んできた。自分がしたいと思っていたことが叶っているし、これからも叶え続けていくことで他の人の幸せを増やせるかもしれない。自分がしたいことを追求していたら、いろんなものがついてくる――そういう生活ができたら良いなと思っています」
――福田選手は福田龍彌にしかできない人生を歩んできた。安藤選手もまた、安藤達也にしかできない人生を歩んできたと思います。その2人の人生が大晦日にぶつかった時、どうなるのか。
「ね、楽しみでしょう? それは当日の楽しみにしていてほしいです。僕も前の負けから取り組んできたことを、安藤君という良い選手を相手に提供させてもらう。しかも大晦日さいたまスーパーアリーナという最高の場所で行われる、10周年という記念のイベントで。自分も出し惜しみすることなく、ヒリヒリさせますよ」
■視聴方法(予定)
12月31日(水)
午前11時~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■RIZIN Y.E.S.P.Festival対戦カード
<RIZINフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者] ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
[挑戦者] 朝倉未来(日本)
<RIZINライト級選手権試合/5分3R>
[王者] ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
[挑戦者] イルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)
<RIZINバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者] 井上直樹(日本)
[挑戦者] ダニー・サバテロ(米国)
<RIZIN女子スーパーアトム級選手権試合/5分3R>
[王者] 伊澤星花(日本)
[挑戦者] RENA(日本)
<RIZINフライ級王座決定戦/5分3R>
扇久保博正(日本)
元谷友貴(日本)
<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
<フェザー級/5分3R>
カルシャガ・ダウトベック(カザフスタン)
久保優太(日本)
<バンタム級/5分3R>
福田龍彌(日本)
安藤達也(日本)
<フェザー級/5分3R>
新居すぐる(日本)
秋元強真(日本)
<バンタム級/5分3R>
後藤丈冶(日本)
ホセ・トーレス(米国)
<ライト級/5分3R>
雑賀“ヤン坊”達也(日本)
“ブラックパンサー”ベイノア(米国)
<バンタム級/5分3R>
芦澤竜誠(日本)
ジョリー(日本)
<RIZIN甲子園決勝フライ級/5分2R>
須田雄律(日本)
ヤマザト・エンゾ・マサミ(ブラジル)


















