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【RIZIN52】1年5カ月振りのRIZIN出場、新井丈「イ・ジョンヒョン、試合つまんねぇじゃん」

【写真】MMAを戦うストライカーでなく、打撃で倒すMMAファイターに(C)MMAPLANET

3月7日(土)東京都江東区の有明アリーナで開催されるRIZIN52にて、新井丈がイ・ジョンヒョンと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

修斗で数々の激闘を繰り広げてきた新井にとってRIZINは鬼門だ。RIZIN初参戦=2023年大晦日のヒロヤ戦ではヒロヤにハイキックを効かされてKO負け。RIZIN再挑戦となった2024年9月のエンカジムーロ・ズールー戦でもズールーの打撃の前にTKO負けを喫した。

復活をかけて臨んだ2025年も修斗での再起戦を負傷欠場。保持していた修斗世界フライ級王座を返上することとなった。しかし同年11月、約1年2カ月ぶりの実戦となった田上こゆる戦ではテイクダウンをミックスした新たなファイトスタイルを見せた上での勝利を掴んだ。

今回はRIZIN初勝利=3度目の正直をかけたジョンヒョンとの一戦。新井はこの試合の勝利を手土産にRIZINフライ級をかきまわす台風の目になると語った。


自分のいないところで盛り上がっていく……。正直、気が病む時期もありました

――新井選手にとって2024年9月以来のRIZIN参戦が決まりました。試合が決まった時の心境はいかがでしたか。

「やっぱりRIZINに戻って来ることができたことはすごく嬉しかったです。自分でもRIZINでやり残したことがあると思っているし、自分を信じてくれているファンのみんなも僕がRIZINで勝つ姿を見たいと思ってくれていると思うので、それを見せるチャンスがまた来たなとスイッチが入りました」

――新井選手はRIZINでは2023年大晦日にヒロヤ選手、2024年9月にエンカジムーロ・ズールーにKO負けを喫し、結果を残すことが出来ませんでした。やはりそのことは気持ちのどこかに引っかかっていたのですか。

「そうですね。もしRIZINの最初の試合で勝っていたら、また違っていたと思うんですけど、あそこで負けちゃったことで(RIZINに)執着しちゃう自分がいましたね。RIZINで勝って借りを返さないといけないというのが第一優先というか。常に心残りではありました」

――ズールー戦後、2025年5月に修斗で復帰戦が決まっていたものの怪我で欠場。戦線離脱を余儀なくされ、苦しい時間もあったと思います。RIZINに復帰するまでの期間は新井選手にとってどのような時間でしたか。

「確かに怪我もあって試合も流れて、ベルトを返上する流れだったんですけど、そのなかで目標にしていたRIZINフライ級グランプリが自分のいないところで進んでいく、盛り上がっていくところを見ていて……。正直、気が病む時期もありました。でも結局は決まった試合を勝ち続けて結果で見せていくしかない。格闘家として前を向いて一戦一戦全力で戦って、誰が来ても勝っていきたいという気持ちになっていましたね」

――そのなかで2025年11月に修斗で田上こゆる選手を相手に復帰戦を戦い、判定勝利を収めました。あの試合では得意の打撃だけではなく、打撃とテイクダウンをミックスした新たなファイトスタイルを見せた上での勝利だったと思います。RIZINに復帰するためだけでなく、MMAファイターとしてのランクを上げるためにも、新たなファイトスタイルを作るというアプローチが必要だと感じていたのですか。

「あの試合はテイクダウンに行かなきゃいけないとは思っていなかったです。普通に自分のスタイルを突き詰めて相手のテイクダウン狙いを切る。そうすれば自分のスタイルは確立していけるかなという考えだったので。ただ当然MMAファイターとして、試合で出さないだけで組み技だけの練習もしているわけじゃないですか。そういう武器を持っているのに、自分で選択肢を狭めるのはもったいないよなと思ったんです。

また今の海外のトップ選手を見ても、打撃・組みにこだわりはなくて、常に自分から攻撃を仕掛ける、自分が攻撃するターンを増やす、自分をどんどんぶつけていく、そういう展開が多いなと思ったんですよ。それは大沢(ケンジ)さんやHEARTS全体の方針でもあるし、ストライカーだからテイクダウンに行かないという考えは今の自分にはなくて、MMAにおける一つの攻撃として“体をぶつける”という選択肢もあるという感覚ですね」

――「打撃をやる」や「テイクダウンを狙う」ということではなく「アタックする」というイメージですね。そういった捉え方をすれば打撃とテイクダウン、アタックの選択肢が多い方が戦いの幅も広がりますよね。

「そうですね。テイクダウンがあれば上下の散らしにもなるし、一度下を見せておくと、体を沈ませるだけでフェイントにもなるし、本来の自分の打撃が組み立てやすくなる。まさにテイクダウンも一つの攻撃なんですよね。だから組み技を混ぜる戦い方にはなったけど、今までと変わらずゴールは“殴り倒す”ことですね」

――新しいファイトスタイルを作っているなかでの試合とはいえ、対戦相手は現修斗世界ストロー級王者の田上選手でした。構築中のスタイルを試す・ぶつける相手としてはハードルが高かったと思うのですが、田上選手相手にそれを実践できたことは大きな自信につながったのではないでしょうか。

「確かに試合で出さないと、なかなか自信にならないところがあるじゃないですか。だから試合で出せたことに対して、大沢さんもホッとしていましたし、自分でも重い扉をやっと開けたなという気はしています」

結局組み立てという意味では組み技も打撃もそんなに根本は変わらない

――久々の試合で荒井選手の動きを楽しみにしていたのですが、あのテイクダウンを交えた試合運びは驚きました。

「見ている人たちもびっくりしたと思いますよ、僕がテイクダウンにいった瞬間は。相手も絶対想像していなかったと思うので面食らったと思います」

――テイクダウンという選択肢が出来たことで、より自分の戦いの幅が広がったことも感じますか。

「やっぱり組み技をどう使って、どういう段階を踏んで自分のゴールまで持っていくか。そこの組み立てですよね。そこを最近はやり始めたというか取り組み始めて、組み技をやるのが楽しいです」

――こうして話を聞いていると新井選手の中でも色んなアイディアや発想が思い浮かぶのではないですか。

「そうですね。結局組み立てという意味では組み技も打撃もそんなに根本は変わらないんですよね。全く別物じゃないというか。相手の反応ありきで、こっちがこう動いたら相手がこう動くから、これをやると相手は嫌だよねっていう。それをどんどん形作っている段階で、今は本当に練習を楽しめているかなと思います」

――そして今大会ではイ・ジョンヒョンと対戦が決まりました。記者会見で新井選手が「このカードが組まれるということは今のRIZINのフライ級で俺たちのように熱い試合をするストライカーが足りていないということだと思う」と話したように、このマッチメイクには激しい試合をしてほしいというメッセージが込められた試合でもあると思います。改めてジョンヒョンの印象は?

「今までジョンヒョンには口が達者なシーンしか印象になかったんですよ。で、ぼんやりストライカーだという肩書きがあるから、お調子者の韓国人ストライカーとやるだろうなと思っていました。でも直近の試合映像を見返してみたら、ストライカーではないんじゃないかなと。手堅い・安パイな試合をするカウンター型のタイプだと思います。だから試合が決まって映像を見たとき、『イ・ジョンヒョン、試合つまんねぇじゃん』と思ったのが正直なところです」

――確かにRIZINとRoad FCの試合では少し印象が違うかもしれませんね。

「Road FCの防衛戦も見ましたけど、基本的に待ちのスタイルで、自分から試合を動かすようなタイプではないなと思いました。試合がそうだから、試合以外で頑張っているタイプの選手なんだなって。口が達者なやつほど試合が堅いんだと思います(苦笑)。だから今回は自分が試合を作って、動かしていく形になると思いますね」

ファンもRIZIN自体も新しい風が吹くことを求めている

――また自分がRIZINフライ級の戦いに入ることで、この階級をかき回したいという思いは強いですか。

「今の自分はこの試合の先のことまで大きく語ることが出来る立場ではないです。RIZIN戦績0勝2敗同士、崖っぷち同士の戦いなので、ここでまずは勝つ姿を見せることが第一目標です。そのうえでここをしっかりとした決着で、あっと驚くKOで勝ち進めば、しっかりとRIZINフライ級で一つの役割をもらえると思うし、自信を持ってその立場にいると言えると思います。

そうなれば自ずと『新井がこいつとやったら面白いんじゃないか?』とどんどん名前が浮かんでくると思うので。そういうヤツらと鎬を削っていく中で、今年1年を悔いなくやりきれば、1年が終わる頃には(RIZINフライ級の)景色も変わって見えているんじゃないかなと思います」

――当然昨年のフライ級GPに出場できなかった悔しさはあったと思います。でも新しいファイトスタイルを構築して、フライ級GPが終わったタイミングでRIZINに戻って来るというのは、今の新井選手にとってベストタイミングだったかもしれないですね。

「去年の大晦日に扇久保(博正)選手がGPで優勝してベルトを巻いて、RIZINフライ級のストーリーが一度完結したと思うんですよ。ファンもRIZIN自体も新しい風が吹くことを求めていると思うし、僕は自分でもそれにうってつけの選手だと思っています。だからこそ派手な試合で結果を残して、自分の存在感を示したいです」


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