【RIZIN52】待望のキム・ギョンピョ戦。矢地祐介「トップ戦線で戦って色物になりたくない」
【写真】静かな口調で、熱い想い(C)TAKUMI NAKAMURA
3月7日(土)東京都江東区の有明アリーナで開催されるRIZIN52にて、矢地祐介がキム・ギョンピョと対戦する。
Text by Takumi Nakamura
矢地にとって待ち望んでいた一戦が決まった。2022年にRoad to UFCに出場歴のあるギョンピョは、矢地が世界・アジアのMMAシーンにおける自分の実力や立ち位置を知ることが出来る相手。一昨年に一度ギョンピョ戦が組まれ、ギョンピョの怪我で対戦が流れたこともあったが、その気持ちが変わることはなかった。
近年の矢地は初参戦の選手の相手を務めるマッチメイクも増え、RIZINの門番的な役割を求められることも感じていた。しかし矢地自身はそこに甘んじるつもりは一切ない。もう一度実力で成り上がり、新王者イルホム・ノジモフが持つベルトに挑むために――。矢地はギョンピョ戦に向けて燃えている。
ホントに味気ないし、今振り返るとモチベーションが上がらなくてしんどかったです(苦笑)
――先ほどギョンピョ戦が発表されたばかりですが、矢地選手にとってギョンピョは戦いたかった相手の一人ですよね。2024年2月に一度対戦が決まっていて、ギョンピョの怪我で流れた経緯もありますが、今回のオファーを受けた時はどんな心境でしたか。
「『おお、ついに来た!』と思って、シンプルに嬉しかったです。カード発表会見でも言いましたけど、久々に自分のキャリアアップに繋がる相手なんで、ここ数年で1番モチベーションに満ち溢れています」
――ずばり矢地選手にとって気持ちを作ることが難しい試合が続いていたのですか。
「いやぁ…本当に(気持ちが)乗ってなかったですね(苦笑)。ここ最近はマジで自分が受ける立場の試合ばっかりだったんで。相手がキャリアアップするための試合、そのために自分が受けて立つ側で、マジでテンションが上がってなかったです」
――とはいえ矢地選手もプロファイターなので、仕事として試合をしなければいけないわけで、自分の中で決まった試合のテーマを見出して、そこにモチベーションを向けて戦ってきたのでしょうか。
「そうですね。結局試合は試合でやりたいことはたくさんあるし(試合は)今まで自分が練習してきたことの発表と確認の場でもあるので、そういう意味での試合として捉えていました」
――決まった対戦相手に対して、自分が何を出来るか。そこにフォーカスしていた、と。
「練習でやってきたことが出るか出ないか。この相手と戦うためにやってきたことが試合で上手くいくのかいかないのか。本当にそういう確認作業みたいな感覚で試合をしてましたね」
――なるほど。ただ言い方は悪いですが、それだけだと味気ないですよね。
「ホントに味気ないし、今振り返るとモチベーションが上がらなくてしんどかったです(苦笑)」
――あえて確認作業という部分で聞くと、前回の芳賀ビラル海戦は2RにRNCで一本勝ちという結果でしたが、あの試合は自分のやるべきことが出来た試合ですか。
「しっかり1Rで極めなきゃいけない相手だったし、2Rまでかかってしまったなと思いますね。もっとしっかりフィニッシュする、相手にいいところを出させずにフィニッシュするべきだったという意味で反省しています」
――以前、矢地選手を取材した時にギョンピョがRoad to UFC(RTU)経験者ということが戦いたい理由の一つだと話していました。改めてそこについて聞かせてもらえますか。
韓国人特有の力強さや負けん気の強さみたいなものも感じます
「もともとギョンピョがRTU準決勝で負けたあと(2022年10月にアンシュル・ジュビリに判定負け)、RIZINに参戦するようになって僕と試合が組まれたんですよ。その時はギョンピョの怪我で試合が流れちゃったんですけど、自分の中でギョンピョはUFCにあと一歩の位置にいる選手という認識だったし、僕はRTUに出たかったけど出られなかったので、そこ(RTU)に出ていた選手がどんなもんなんだろう?と思っていました。そういう相手と戦うことによって、自分の今の世界での立ち位置、アジアでの立ち位置が見えてくると思ったので、ずっと戦いたいと思っていましたね」
――矢地選手自身、実際にRTU出場に向けて動いていたこともあったのですか。
「はい。そういうアプローチもしてはいたんですけど、若くて戦績が浅い選手がいいと言われて、俺は年齢や戦績的にダメって感じでしたね。まぁ、RTUそのものがそういう意図で開催されている大会だからしょうがないです」
――矢地選手は1990年生まれでギョンピョは1992年生まれ。同世代の選手ですし、UFCを目指していたという部分でもシンパシーを感じるものはありますか。
「同世代の選手には負けたくないですし、同じアジアの選手で、立場的にもUFCを目指していたのに届かなかったという意味では似た立場の2人だと思うんですよ。だから余計に負けたくないし、本当にいいマッチメイクだなと思います」
――対戦相手としてのギョンピョの印象は?
「タフですよね。韓国人特有の力強さや負けん気の強さみたいなものも感じます。スタイル的には立っても寝ても全部できる感じで、そのなかでも組みの方がちょっと得意なのかなという印象です」
――個人的にはキャリアに裏打ちされた地力がある選手という印象もあります。
「そういう意味でも俺と似てる気がします。オールラウンドで戦って、アジア人にしては珍しくフィジカルの強さで戦うという部分で」
――矢地選手とギョンピョのこれまでのキャリア、そしてファイトスタイルについて話を聞いていると、この試合がより楽しみになってきました。
「マジで今の自分がギョンピョ相手にどれだけできるんだ?っていうところですよね。試合としても絶対に噛み合うと思うし、前回試合が組まれてから2年ぐらい経って、この2年間で自分の何が変わったのかが分かるという意味でも楽しみです」
――昨年大晦日にRIZINも10周年を迎え、矢地選手もRIZINで長く戦ってきたファイターとして、RIZINというイベントに対して思うことはありますか。
「キャリアの半分以上をRIZINで戦わせてもらってありがたい話ですよね。RIZINで戦ってきた20戦以上、色んなことがありましたけど、日本のトップの団体で戦わせてもらえていることは本当にありがたいです。だから去年の大晦日、RIZIN10周年の大会で試合を組んでもらえなかったことはショックでしたよ(苦笑)。今の自分の立場的にしょうがないことかもしれないけど悔しい思いはしました」
――その悔しさをぶつけることも含めて、2026年はどのような目標を持って戦っていきたいですか。
「去年は1試合しかできなかったので、今年はたくさん試合をしたいというのと、海外勢としっかり戦って勝ち切りたい。大晦日にチャンピオンも代わりましたし、新チャンピオンの(イルホム・)ノジモフに辿り着けるように頑張ります」
長いトンネルを抜けて、やっとここまで来たぜって感じです
――矢地選手はホベルト・サトシ・ソウザとノジモフのタイトルマッチはノジモフが1RKO勝利という結果になりました。矢地選手はああいったフィニッシュの可能性もあるという予想はしていましたか。
「さすがにあの決着は予想していなかったですが、あの試合は2人の賭けているものが違いすぎたんで、平等なマッチメイクじゃないなとは思っていたんですよ。ノジモフは階級を上げていきなりベルトに挑戦するチャンスが舞い込んできて、負けても善戦したら評価されるぐらいの試合だったと思うんですよ。
変な話、ダメ元でも全力でやればいい、みたいな。逆にサトシからするとベルトを守らないといけない立場で対戦相手が代わって、準備してきたものも崩れただろうし、色々と試合に向けて難しい部分も多かったと思います。そうやって平等ではない試合だから、ああいうこともあり得るかも…と心の隅では思っていましたけど、まさかあそこまではっきりとフィニッシュするとは思っていなかったです」
――チャンピオンは代わりましたが、RIZINのベルトが欲しいという想いは変わらない?
「絶対に欲しいです、RIZINのベルトは。これだけ長くRIZINで試合をやらせてもらって、まだまだ諦めきれないというか、ちゃんとトップ戦線で戦って色物になりたくないというか。自分は実力で食い下がっていきたいです」
――ここ最近のように初参戦選手や若い選手の壁になるのではなく、自分がまだベルトを狙える位置にいることを試合で見せたいですか。
「はい。だからこそ最近ずっと苦しかったんですよ。そういう(門番的な)立場になりつつある自分に必死に抗っていたから。やっぱり俺はゲーリー・グッドリッジのようなRIZINの門番にはなりたくない。別にグッドリッジの悪口を言っているわけじゃなくて、ああいう門番的な存在が役割としてあって、その立場で戦うことで魅力を出せる選手がいることも分かります。でも俺はまだそこじゃねえだろ?という気持ちがあるんです。それは自分が感じている最近の自分の成長ぶりも含めて。そういう葛藤や自分自身に対して思うところもありましたが、ようやく長いトンネルを抜けて、やっとここまで来たぜって感じです」
――思うような結果やパフォーマンスを出せなくなってくると、いわゆる門番的な役割を担って、勝ち負けよりも派手な試合をするかどうかにシフトしていく選手もいると思います。でも矢地選手は紆余曲折がありつつも、強さで上を目指してベルトを巻くという目標はブレていないんだと思いました。
「一昨年の大晦日に(桜庭)大世くんに負けた時なんか、まさに門番的な試合で自分がやられたわけで、もしかしたらこれから自分もそういう立場でやっていかなきゃいけないのかなと思ったこともありました。でも………いやいやいやいや、それはダメでしょ、俺はまだやれるよって。俺は自分の実力がトップ選手に通用すると思っているし、まだまだ上を目指して戦っていきます」
――矢地選手自身はもちろん、矢地選手がRIZINのベルトを巻く姿を楽しみにしているファンもたくさんいます。そのファンに向けてメッセージをいただけますか。
「一昨年は年4試合やって、去年は年1試合しかできなかったんですけど、逆に試合が少なかったという意味でダメージだとか体の疲れだとか、細かい負傷箇所みたいなところが全部クリーンになって、心も体も万全の状態に戻ったと思います。
また試合があると対戦相手の対策練習に時間を費やさないといけないけど、試合がない=自分のスキルアップのために時間を費やすことができたし、自分を見つめ直して自分に足りないところを補うことが出来ました。そういう意味で去年はいい年だったと思うし、今年はその成果を発揮する年だと思っているんで、みなさんも楽しみにしていてください」















