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【RIZIN51】ベルト獲得から矢地祐介と対戦へ、芳賀ビラル海「…………何かブチギレたいですよね」

【写真】インタビューの受け答え、言葉選びも一つひとつ丁寧なビラル。確かに、このビラルがハジけた強さを披露するところは見たい(C)SHOJIRO KAMEIKE

28日(日)に名古屋市北区のIGアリーナで開催されるRIZIN51にて、芳賀ビラル海矢地祐介と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

愛知県豊橋市出身のビラルは今年5月にグラチャンのライト級王座を獲得。その4カ月後にRIZIN名古屋大会が開催されるというスケジュールについて、ビラルは「持っている」と笑顔を見せた。しかし、もちろんこれがゴールではない。グラチャンのベルト獲得、ベースである日本拳法、RIZIN出場と矢地戦——その先に目指す、格闘技観を語ってくれた。


ベルトを巻くことで、また一つ新しい自分になれたのかな、という感覚です

――今年5月にグラチャンのベルトを獲得し、続いて今回のRIZIN参戦となりました。

「ベルトを巻けたことは、もちろん嬉しいのですが……何というか、自分の中では『新しいステージが始まった』という感じですね」

――新しいステージ、というと?

「MMAを戦ううえで、何を目標にするか。どこをキャリアの終わりとするのか。それは選手によって異なると思います。UFCでベルトを獲りたいとか、RIZINで活躍したいという選手もいます。もちろん僕も最終的に、そういう舞台で試合ができたら結果的には嬉しいです。でも僕の中で格闘技を続ける目的は、今の自分や過去の自分よりも強くなること。自分自身をアップグレードすることなんですね。そのために――ベルトを巻くことで、また一つ新しい自分になれたのかな、という感覚です」

――ベルトを獲得した林RICE陽太戦は、前の自分よりも強い面を出すことができた試合でしたか。

「あの試合については――試合単体で考えると、他の試合と比較して自分の中では満足できていないです。その前のロクク・ダリ戦(今年3月に判定勝ち)のほうが気持ち良く戦えていました。気持ちも乗っていて、内容についても自分の中で良い部分がありました。

林RICE戦って実は、1Rに四つ組みからテイクダウンした時から、足の感覚がなくなっていたんですよ」

――えぇっ!?

「試合前から自分でも気づいていない負傷があり、試合中にさらに負傷が大きくなって。その時はアドレナリンが出ていて、踏み込むことはできました。でも足のフックを利かせられなくなっていたんです。

2Rにバックを奪った時も、腕が相手の首元まで入っていて『RNCを極められる』と思いました。でも足の感覚がないから、完全にロックすることができない。その後も『バックを奪っても外されてしまったら……』と考えてしまって」

――そうなると柔術ベースである林RICE選手に、グラウンドで逆転されてしまう可能性もあります。

「後半はリスクヘッジを考えて、手堅い試合になったかと思います。でも、いつも怪我がない状態で試合ができるわけではない。そう考えると負傷があるなかで勝ち切ることができたのは貴重な経験だったかな、と自分の中で消化しています」

――試合後、負傷した足は……。

「完全に治るには時間も掛かりましたけど、今は大丈夫です。RIZINのオファーが来た時には、もう練習は再開していました」

日本拳法は体幹を生かした組み方があって、その点はMMAを戦ううえでマッチしている

――ここ最近、芳賀ビラル海選手はもちろん木村柊也選手、そしてDEEPウェルター級王座を獲得した角野晃平選手と日本拳法出身選手の活躍が目立っています。

「あぁ、そうですよね」

――木村選手も角野選手も、MMAを戦ううえでベースに日本拳法がある。ビラル選手はどうですか。

「MMAを戦うなかで日本拳法を生かせていると思うのは、フィジカル面ですね」

――おぉ、打撃や距離感ではなくフィジカルですか。それは新しい一面です。

「ルールの制約は大きいですが、日本拳法も総合格闘技だと言われています。投げ技も打撃もあります。大きな防具を着けて、そのルールで戦うんですよね。これは相当フィジカルが鍛えられるというか、体幹の強い選手が多いかと思います。自分もその一人で」

――確かに日本拳法の防具は凄いですね。面、胴、グローブだけでなく股当も大きく、角野選手の取材時に拝見すると、まず防具を身に着けるだけでも大変そうでした。

間近で見ても、明らかに重そうな日本拳法の防具。これで1日数試合を戦うとは――

「そうですね。しかも試合中に防具が取れてしまったら、防具脱落といって一本になりますし」

――注意や警告ではなく一本なのですか。

「はい。紐がほどけている程度であれば『すぐに直して』と言われて警告で済む場合もありますけど、グローブが抜けたり面が外れたりしたら一本です」

――あの防具を身に着けて、最高で1日何試合を戦うのでしょうか。

「自分は1日で6~7試合、戦ったことがあります。でも1試合が3分で2本先取のルールなので、そこまで疲労するというわけではないですね。ただ、準決勝や決勝になると延長戦も増えてきます。僕と木村柊也の試合も延長戦までやりました(※2019年の全日本個人選手権男子の部。ビラルと木村は決勝戦で激突し、延長戦で木村が2本先取で勝利している)。そうなると、かなり体力はロスしますね」

――3分で2本先取する瞬発力が必要で、かつ1日何試合も戦う体力も必要になる。プラス、技術面でMMAに生かしているものはありますか。木村選手も角野選手も、距離の取り方が一番だと言っていました。

「その通りですね。間合いの取り方が巧い選手は多いですし、僕も試合では間合いに対して凄く敏感だと思います。僕は今、中央大学の日本拳法部で短期のコーチをしていて。1カ月に数回、学生たちと一緒に防具を着けて練習しているのですが、最初は相手のパンチを食らってしまうんです。2~3Rやって、ようやく距離に慣れて自分のパンチも当てることができるようになります。

前蹴りについても拳法では、突蹴と揚蹴という蹴り方に分かれていて。キックボクシングとは異なる技術があるので、そういうものを上手く使い分けながら――実際に試合で出せているかといえば、拳法以外の技を使っているほうが多いかもしれないですけど(笑)」

――特にビラル選手の場合は日本拳法らしさといいますか、打撃に特化しているわけでもなく。

「木村選手や角野選手ほどではないですよね。でも打撃だけでなく、日本拳法らしい投げもあります。拳法だとグローブを着けているので首投げ、小手投げが多かったりします。柔道なら襟を取る、フリースタイルのレスリングなら足を取るように、日本拳法は体幹を生かした組み方があって。自分の場合、その点はMMAを戦ううえでマッチしているのかなと思います」

リングで試合をしたのは、アマチュアで1回だけなんですよ。楽しみでもありますし、しっかり対策はしないといけない

――試合の話に戻すと、グラチャンのベルトを巻いたあとにRIZIN名古屋大会への出場は想定していましたか。

「頭の中にはありました。自分は豊橋出身で、しかもベルトを獲ったあとの大会で――周りからも『RIZIN名古屋大会あるよね。地元が近いし、ワンチャンないかな?』と言われていて。僕自身は『出られたら良いですねぇ』と言っていましたけど、うまく繋がったなぁと思います」

――昨年からビラル選手の試合ぶりも安定しているように感じます。

「安定していますね。でも根底にあるのは、何とも言えないモヤモヤ感というか。

自分はまだやれる、もっとできる。そんな日々モヤモヤしている気持ちを一戦一戦、何とかしようと――もがいている感じです。それも少しずつは解消されているとは思いますが、一戦一戦クリアすればするほど、終わりがない気もしますよね」

――先ほどの話にもあったように、今の自分より強くなることに終わりはありません。100点という結果もないです。ただ、その中でも「これができたら100点」と言えるような目標はありますか。

「100点ですか。う~ん……、……、……何かブチギレたいですよね」

――ブチギレたい!?

「ポジティブなハジけ方といいますか。僕の場合、あまり怒りモードみたいなものはないんですよ。怒りモードになってしまうと、いろいろ見失ってしまうので。そのなかでも自分の中に、ハジけるような瞬間があったら良いとは思いますね。

抽象的な言い方にはなりますけど。今回はRIZINという環境が違うところで戦うので、そういう自分にも期待しています。試合は、これまで積み重ねた成果の確認だと思っています。そこに1パーセントでもプラスされるものを発見したいですね」

――足の負傷が治り、RIZIN出場が決まったなかで新しく取り組んでいるものはありますか。

「8月末、1週間ぐらい韓国のKTTに行きました。

韓国KTTにて。練習だけでなく地元の料理も堪能し続けたという(C)BILAL KAI HAGA

もともと韓国へ練習しに行きたいと思っていて。ただRoad to UFCがあったので、RTUに選手を出しているジムは選手も少なくなっているだろうと思ったんですよ。KTTからはRTUに出ていなかったですよね。なので自分から先方に連絡して、試合をした縁でSASUKEさんもキム・サンウォン選手と連絡が取れて――KTTではGLADIATORでフェザー級王者になったパン・ジェヒョク選手とも練習することができました」

――KTT! あの補強は経験しましたか。

「あぁ、やりました。量がエゲつなくて、しばらく腕が上がらなかったです(苦笑)」

――アハハハ。RIZINに出場するうえで、ケージとリングの違いは意識しますか。

「リングで試合をしたのは、アマチュアで1回だけなんですよ。その時もリングを使った展開にはなっていなくて。マスタージャパンにリングがあるので、それを使って練習していますが――RIZINほど広いリングで試合をしたことはないので、楽しみでもありますし、しっかり対策はしないといけないですね」

――そう考えると、ほぼほほ壁のないマットとケージでしか試合をしたことがないわけで。

「そうなんですよ。最近はリングでテイクダウンを仕掛けられると、ロープに少しヒジを乗せる選手が多いじゃないですか。やりやすい部分もあるとは思います。ボディロックで組む時に腕が通ったり。そういった環境に慣れるには少し時間は掛かるだろうとは思います」

――そのRIZIN初戦で対戦する矢地選手の印象を教えてください。

「YouTubeチャンネルで減量方法を参考にしたりしています(笑)。それはともかく、皆さんも仰いますけど、最近は勢いが落ちているのかなとは感じていますね。だからこそ、しっかり勝たないといけない。決して気を抜ける相手ではないので、緊張感を持って臨みます」

――ベルト獲得とRIZIN出場、その後の展開については、どのように考えていますか。

「自分にとって良い試合が、成長できる試合があればどんどん取り組んでいきたいです。ここで矢地選手に勝つと大晦日出場もあるかもしれないよね、ということを言う人もいますし……。

もちろんグラチャンの防衛戦もありますが、RIZINにも強い選手が集まっています。まずは次の試合、しっかりと勝ちたいです」

■視聴方法(予定)
9月28日(日)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

■RIZIN51対戦カード

<RIZINライト級選手権試合/5分3R>
[王者]ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
[挑戦者]堀江圭功(日本)

<フェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
[挑戦者]ビクター・コレスニック(ロシア)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
扇久保博正(日本)
アリベク・ガジャマトフ(ロシア)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
元谷友貴(日本)
神龍誠(日本)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級Tリザーブマッチ/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
山本アーセン(日本)

<RIZIN WORLD GP2025ヘビー級T決勝/5分3R>
マレク・サモチュク(ポーランド)
アレクサンダー・ソルダトキン(ロシア)

<バンタム級/5分3R>
佐藤将光(日本)
ダニー・サバテロ(米国)

<バンタム級/5分3R>
梅野源治(日本)
芦澤竜誠(日本)

<フェザー級/5分3R>
高木凌(日本)
三宅輝砂(日本)

<ライト級/5分3R>
矢地祐介(日本)
芳賀ビラル海(日本)

<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
ファン・イェーロウ(中国)

<フライ級/5分3R>
冨澤大智(日本)
平本丈(日本)

<フェザー級/5分3R>
大和哲也(日本)
奥山貴大(日本)

<100キロ契約/5分3R>
金田一孝介(日本)
チャートゥ・バンビロール(セネガル)

<ライト級/5分2R>
太田将吾(日本)
Street♡★Bob洸助(日本)

<バンタム級/5分2R>
山木麻弥(日本)
石坂空志(日本)

<フライ級/5分2R>
佐藤執斗(日本)
小林大介(日本)

<フェザー級/5分2R>
YUHEI(日本)
脇田仁(日本)

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