【RIZIN52】練習仲間の鹿志村仁之介と対決、所英男「勝って、一本取って、引退試合に行きたいです」
【写真】現在48歳の所英男。「引退試合」を口にしているが、彼が戦いを止める時をなかなかイメージできない。それだけ彼は今も戦い続けている(C)MMAPLANET
3月7日(土)東京都江東区の有明アリーナで開催されるRIZIN52。RIZINの世界戦略の第一歩となる同大会で、J-MMAらしさが詰まった一戦が組まれている。それが所英男×鹿志村仁之介のバンタム級マッチだ。
Text by Manabu Takashima
2024年7月の超RIZINで、負けたら引退=ヒロヤ戦に臨んだ所。圧倒的な不利という事前の評判を覆し、初回TKO勝ちを収めた。まるで2005年7月のペケーニョ戦を思わせる奇跡的な勝利で、現役続行を勝ち取った。あれから1年7カ月、試合機会が訪れなかったが「格闘技が好きすぎる」生活を送り、幸せのど真ん中にいた。
そして訪れた引退試合前のワンステップは、なんと練習仲間の鹿志村戦だった。僕は断る権利はないと言う所――の強さを知り抜いている鹿志村戦への想いと格闘技愛とは。
『青木(真也)さんが(「所とやれば」と言った)』というのは、僕と鹿志村さんが話している時だったんですよ
――一昨年の超RIZIN以来、1年7カ月振りのMMA。46歳から48歳になった所選手です。ヒロヤ戦で負ければ引退という試合で勝利し、今も現役ファイターとして所選手に話を伺うことができます。
「有難い限りです。あそこで負けていれば、もうこの生活はなかったので。もう楽しすぎて、格闘技を始めた時と同じぐらい今は楽しいです。もう練習が楽しいですし……去年の3月に試合に出るつもりでいて。そのための練習をもう1年以上続けてきた感じで。もう本当に楽しくて。本当だったら、なかった生活なので」
――勝って燃え尽きるというのは、全くなかったのですね。
「負けたら引退って言ってしまっていて……でも『なんで、こんなに好きな格闘技を辞めないといけないんだ』って。ずっと思っていたんです。それで勝てたんで、余計に嬉しくて最高でしたね」
――それでも試合が1年半以上なかった。この間は、どういう気持ちだったのでしょうか。
「常に金原(正徳)さんから『RIZINに連絡をしろ』って言われていたんですけど、自分の方は『そろそろオファーが来るんじゃないか』という感じで待ち続けてしまって……それも良くなかったのかもしれないですけど……」
――年齢的なことを考えると、もう待てないという気持ちにならなかったですか。
「正直な話をすると、このままの状態がずっと続いても良いと……」
――えっ? そうなのですか。
「それだけ楽しくて。ただ、そういうわけにはいかないので……『早く仕事をしなさない』ということもあるので(笑)」
――マッチメイクも関係していますが、最近は所選手より年配のファイターも試合を続けることが増えてきました。なんだか、そういう選手には好きなだけMMAを続けてほしいと勝手ながら思うようになってきました。
「そこは自分の……自己責任なので」
――所選手たちの世代は商売抜きの格闘技への想いが、良くも悪くも強いです。
「なんスかねぇ。年を取れば取るほど、格闘技が好きになるんです。もう本当に純粋な気持ちで好きなんですよ」
――そのようななか、3月7日の有明大会のオファーがありました。いつ頃のオファーだったのですか。
「今から2週間ほど前ですね(※取材は1月23日に行われた)」
――試合まで2カ月ですね。もう即答でイエスと?
「自分は試合を断る権利はないので。やっぱり来たら『やります!』と。それが……よりによって鹿志村さんかと(苦笑)」
――鹿志村選手はロータス世田谷の練習仲間ですよね。
「実は鹿志村さんが会見で言っていた『青木(真也)さんが(「所とやれば」と言った)』というのは、僕と鹿志村さんが話している時だったんですよ」
――えっ!!
「だから、なんか青木さんがマッチメイクに関わっているのかって考えてしまいました」
初めて鹿志村さんがロータスのグラップリング練習に来た時に動きを見て。もう、それが凄すぎて。
――なんとか。いずれにせよ、所選手は鹿志村選手のリアルな強さを肌で感じて知っているわけですね。
「もう、ちょっと驚きます。いやぁ、もう遊ばれています。2年以上前ですかね……初めて鹿志村さんがロータスのグラップリング練習に来た時に動きを見て。もう、それが凄すぎて。米国のグラップラーみたいな動きで。だからスパーリングをお願いするまで、1カ月ぐらい掛かりました」
――それだけ動きを観察してから、組み合ってみた。その時に感じたのは?
「『あぁ、これがグラップリングの強い人なんだ。これが今のグラップリングなんだ』と。もう翻弄されっぱなしでした」
――とはいってもロータス世田谷のグラップリング練習には、並み居る強豪組み業師が集うわけで。所選手もアップデートしているかと思います。
「アップデートは正直……(※取材を終えた鹿志村が、所のところへやってくる)」
――おっ、練習仲間対決の当人が!!
鹿志村 所さん、宜しくお願いします。
「もう、こちらこそ宜しくお願いします」
鹿志村 ぶっちゃけ、青木さんが言っていた時って僕らの試合が組まれるって知っていたんですか。
「知らない、知らない。だから青木さんがRIZINのマッチメイクに関わっているのかなって」
鹿志村 そうですよね!! あの日の夜に自分も連絡があったんで。青木さんに言われて、『もしも、そんなことがあったらお願いします』って所さんに話していて」
「僕も『断られる立場でないので、そんな話があったらやりましょう』って感じでいたら、あの日の夜にオファーが……」
――話す仲の先輩との試合、鹿志村選手も吹っ切れましたか。
鹿志村 もう吹っ切るしかないというか――スポーツとして楽しみます。喧嘩とか、殺しに行くというんじゃなくて。スポーツとして、どちらが上か競い合います。
「ロータスでも、日にちをずらしてもらって。顔を合わさないで、練習をするようになりました。だから自分は今まで通り変わらずやらしてもらって、鹿志村さんが都合をつけてくれた感じで。申し訳ないです」
鹿志村 いえいえいえ、大丈夫です。試合ですし。ここは試合で思い切りやりましょう!!
「ハイ。よろしくお願いします」
こないだの宇野さんの3Rを見ると、グッとくるものがありました。僕も3R戦い抜きたいと思っています
――同門ということではないですが、スッキリしていて良いですね。話が途切れていて、アップデートに関してですが。
「アップデートというか……もうやられることで、勉強させてもらっている感じです。もう『はぁ、こんな風になるのか』と終わることが多くて」
――所選手としては、練習仲間でも試合が決まると嬉しかったですか。
「いやぁ……自分が試合に勝つというのは、一本を取ることなので。その可能性が大分低くなる相手ではあるので『あぁ、マジか』というのはありました。でも金原さんも鈴木千裕選手みたいな若いイケイケの選手にぶつかっていたじゃないですか。やっぱり自分もそういうことはやりたいので。ああいう試合じゃないですけど、僕は僕の試合がしたいです」
――これだけ本人が相手の練習での強さを認めている。だからこそ、試合では何かを起こすのではないかという期待が高まります。
「いや、あぁ、ありがとうございます」
――それが所選手と宇野薫選手で。
「いや、宇野さんと自分は……。でも、ありがとうございます。こないだの宇野さんの3Rを見ると、グッとくるものがありました。僕も3R戦い抜きたいと思っています」
――戦い――。生き方を所選手に見せていただいているような気がします。そこを家族にも、我々やファンにも見せてくれている。
「ありがとうございます。奥さんには『年を取って面倒を見るのは私だからね』って言われているんですけど(苦笑)。自分が格闘技をやって、楽しんでいる姿を奥さんや子供に見せたいです。
仕事っていったら変ですけど、仕事をこれだけ楽しんでやっている姿を見て欲しいですね」
――好きなことをやっているのが、ボーナス。家族に言われています。
「あぁ、もうボーナスばっかりですね。前回の試合で勝って、まさに今はボーナスステージですし(笑)」
――この次は引退試合という発言もありました。勝って、そこを目指すと。
「もちろん負けるつもりで、やっていないです。勝って、一本取って、引退試合に行きたいです」
――RIZINで引退試合と公言されている所選手ですが、公私ともに仲が良いGrandslamを主催していた相原(雄一)代表が「グランドスラムをもう一度開くとすれば、それは所英男が出るとき」と以前から言われていましたが……。
「あぁ……『試合が決まりました。引退興行をお願いします』って今回も連絡を取りました」
――引退試合と引退興行があると(笑)。
「RIZINで引退試合をして、あとは相原さんとの交渉ですかね(笑)。でも、そうやっていつまでも言ってくれて、応援をしてくださるので本当に感謝しています。だから相原さんだけでなく、皆さんに僕の試合を見て元気になってもらう。そんな試合をしたいと思っています」

















