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【UFC325】Road to UFC決勝へ、中村京一郎「サーライが一番しないようなミスをどれだけさせるのか」

【写真】見るからに良い表情の京一郎。しっかりと最後の1週間を過ごせたようだ(C)MMAPLANET

31日(土・現地時間)、豪州シドニーのクドスバンク・アリーナで開催されるUFC325「Volkanovski vs Lopes2」に中村京一郎が出場し、豪州人ファイターのセバスチャン・サーライとRoad to UFCフェザー級決勝を戦う。
Text by Manabu Takashima

5月の初戦で韓国のパク・オジンを2Rにヒザ蹴りでKOし、8月の準決勝では敵地上海でリー・カイウェンから3-0の判定勝ちを収めた。殴るべき時に殴るスタイルで、しっかりと勝ち上がってきた中村がUFCと契約を結ぶことに対して、非常に期待が高まっている。

彼への期待は、ある意味サーライを軽視しているような空気を創り出しているような危機感を覚え、その点を中村に尋ねた。当の本人は、「1ミリでもサーライを軽く見るような気持ちがあったから、足下をすくわれます」と全く油断なく「初心」を胸にシドニーに向かおうとしていた。


1ミリでもサーライを軽く見るような気持ちがあったから、足下をすくわれます

――Road to UFCファイナルまで1週間、明日に豪州へ向かうそうですね(※取材は24日に行われた)。

「ハイ。そうなんですよ。だから岡見さんのジム開きのレセプションにも顔を出すことができなくて。岡見さんが、僕が試合前だからと招待状も出さないようにと気を使ってくれていたみたいで。僕はそれこそ、黙って乗り込んでやろうかというぐらいの気持ちだったんですけど、その気遣いを大切にさせてもらって。ジムオープン当日に花を送らせてもらいます」

――どちらも、さすがです。いや、実は京一郎選手ということでなく、このところの周囲の空気が怖いなと感じていました。

「えっ、どういうことですか」

――トーナメント2試合の勝ち方、試合内容を見て期待が高まるのは分かるのですが、まだ決勝が残っているのに「UFCと契約できる」という空気が妙でないかと……。その空気が何か嫌な影響を与えてしまわないかと危惧していました。

「そうッスね。Road to UFCの分際で、それだけ見てもらっていることは嬉しいんですけど……正直、決勝がイージーなわけがないです。Eternalのチャンピオンですし……仮に結果としてイージーファイトとなったとしても、この段階でサーライのことを軽く見るなんて絶対にできないです。

1ミリでもサーライを軽く見るような気持ちがあったから、足下をすくわれます。本当に油断せず、あと1週間……向うに入ってから研ぎ澄ますよう準備してきました。技術的なところはこれ以上、もう今さら何があるってことじゃないですけど。向うでハードなトレーニングをするわけではないので。ただ気持ちの部分では、僕自身は油断を絶対にしない――それは、今日新たに決めました」

――京一郎選手に関しては、デビュー戦のことがあるので気が緩むとか絶対にないと思っています。

「それ、マジで今日話していたところなんです。初心って、僕には陰と陽で2つあって。格闘技を始めた時の気持ち。それと負けなんですよ。あのデビュー戦の負けは、自分を等身大にしてくれた。どれだけ調整が上手くいって、調子が良かろうが。『絶対に勝てる』という自信があろうが、『本当の本当? 本当に大丈夫?』っていう風に自分を疑うことができる。

それは、あの負けがあったからなんです。等身大に戻してくれる……それ以上、自分をもう一段低く見積もって『お前、気合入れろよ』と思わせてくれる。という話を今日、藤波勇飛さんとしたばかりだったんですよ」

――EXFIGHTで盟友だった世界選手権銅メダリスト・レスラーの!!

「ハイ。結構仲が良くて。今日は勇飛さんと会う予定だったのですが、風邪をひいて会えなくなって。で電話で話して『ホンマはこのお茶渡そうと思ってて』みたいな。その中国茶の名前が初心忘るべからずという意味の漢字四文字のお茶だったんです。だから、勇飛さんにも僕には2つの初心があるっていう話をしたばっかりだったんです。

そうしたら、インタビューでもこの話題になるってことは、もう一段さらに締めないといけないなって」

――上海というアウェイの地で、リー・カイウェンにあの勝ち方ができた。それは素晴らしいことで。でも、シドニーでセバスチャン・サーライに勝てるという保証には何もならないので。

「絶対違いますからね。同じ上海でもPIとFight Nightでも違いました。それが今回は年一の豪州でのナンバーシリーズで。全く違います。上海の試合が技術的に、ここに繋がることはあります。でも経験値として、あの試合と今回の試合はまるで別ものです。絶対に別世界。MMAを戦うのは同じでも、フィールドが違うぐらい。

地球規模でいえば南半球だし、帰国した時はもう『夢を見ていたの?』ってくらいに違う感じになると思います。だから緩めるわけがないですよね。逆に今は研ぎ澄ませすぎないように気を付けています」

――もう釈迦に説法でしたね(笑)。逆に下ネタでも言って、緩ンもらう方が良かったかもしれないです。

「ハハハハ。日本で研ぎ澄ませすぎると、向うにいって弛緩してしまいそうで。コーナーで一緒に行く(鈴木)崇矢も、まだお祝いモードなんで。その辺も向うに行って、擦り合わせていければ良いですね。今は今日まで、日本でやるべきことにケジメをつけた感じですね」

カイウェンよりもサーライの方が厄介

――気持ち的には抜かりがない。そのなかで対戦相手のサーライです。改めて、どのような選手でしょうか。

「何かが飛びぬけて強いという選手ではなくて、上手い選手。KO負けも一本負けもない。それは巧さの表れだと思いますし、だから強い。危ない場面になるとクリンチで逃げたり、スイッチして外したりだとか。インに入ると畳みかけるとか、ポイント・ポイントで巧さがあります。ビッグショットを2発、3発があって勝つのではなく、どの試合でもポイントアウトをして判定勝ちしている。そこがサーライの強みだと本当に思います。

ある意味、僕がプレッシャーをかけてサーライが下がるような展開だったとしても、気がつけば『なんだ、コレ? 俺、負けてんじゃん!!』ということがあってもおかしくないです」

――サーライのような選手がいるから、北米のジャッジは手数やインパクトを重視するようになるのだと思うことがあります。タッチで支配し、インパクトがあるとダメージを与えている。

「手数の分、効かせることができますからね。だから、そこがサーライという選手の巧さ、強さであって。結局、話が戻ってしまうのですが、一番気をつけないといけないのは油断なんですよね。どう考えても、そこでしかなくて。何でもないようなぁ……が、何かあるんですよね。

ある意味、リー・カイウェンと戦うことは殴られ、傷つく可能性も高い。そういう喧嘩みたいなファイトで。彼はワンツーが巧いとか、蹴りが巧いというのではない。でもサーライは巧いんですよ、伝統派空手出身でスイッチもして。フィジカルは小さくて、リーチも短い。でも、土管みたいな体形で体幹は強そう。カイウェンよりもサーライの方が厄介で。

だからこそUFCと契約するためのトーナメントの決勝戦であって。本当に良い相手と戦わせてもらえるなと思っています」

――本来は気持ちの良い、勝ちに行って倒すファイトができれば一番です。ただし、「アレ?」ということが続き、思うように戦えなくても勝てば官軍。「京一郎、しょっぱかったな」と言われても勝つことが絶対で。

「仮に判定勝ちになれば、それは良い経験になったと思える勝利になるはずです。気持ち的にはKO勝ちはしたいけど、それは結果論で。ある意味プレゼントだと思っています。判定でも良いから、しっかり勝つことが絶対に大事で。そのなかで良いショットが当たれば、勝手にKOにもなります。だからこそ、そう委ねることができるだけの集中力を豪州に入ってから創ることができれば、と」

――理想的な試合内容というのは?

「焦って出させることですよね。結構、プレッシャーを与えるとサークリングをしますが、出入りでポイントを取るファイターで。あとはクリンチで時間を稼ぐ。そこを出させる。サーライにいつも通りの試合ができない、前に出ないといけないと思わせること。

こないだの崇矢の試合も、相手が『あれ、おかしい』。『俺、行かなきゃ』で前に出てきたところのバチーンなんで。サーライが一番しないようなミスをどれだけさせるのか」

――母国での決勝、これまでと違うこともあり得ます。

「そういう気持ちで最初から出てくるようなら、『ありがとうございます』ですね(笑)。ガチガチの気合で来るなら、良い試合になりますからね」

こないだの崇矢以上の試合はないです

――そこで如何に相手との間合いだけでなく、空間を支配することができるのか。それこそ崇矢選手のKOも、ただのカウンターではない。後ろを使えていたからで。

崇矢がKO勝ちしたのは、最初からカウンターを狙っていたのではなくて、しっかりとプレスして、蹴りを出し、パンチを当てた。でも相手の攻撃は外していて、ずっと空間を支配していた。相手だけを見ているのではなく、自分がどこにいるのかも分かっていて。その結果、相手が触りたいと欲が出たところでの一発なので。それこそ、今回の試合で僕がやりたいことなんですよね。

空間支配、把握する……僕が良い時は、それができています。なんか物理的な人間のプレッシャーの掛け合いという部分を超えて、ケージの中でのパワーバランスというのか。フィールドの勝負ができれば、おのずと結果は出てくると思います」

――崇矢選手の前回の試合は100点満点でした。そこが理想の到達点で。

「こないだの崇矢以上の試合はないです(笑)。きっと今、絶好調で話し続けると思います」

――マシンガンのように(笑)。

「ハハハハ。ただ強くなった崇矢が話してくれることは、きっと自分にとっても蓄積できるデータになり、視野が広がるはずで。良い感じのアドバイスをしてくれると思います」

――今回の大会は、米国に合わせて現地で朝の9時、日本時間では午前7時スタートで、京一郎選手は3試合目に戦います。

「ハイ。朝ですよね。それと計量が金曜日にあって、計量後に2回寝るというのがちょっと変な感じで。そこもやったことがなくて。試合って、ケージの中だけでなく、それまでの準備。いうと8月の試合が終わった時点から始まっていて。その最終段階が、計量も含めてラストの1週間。しっかりとアジャストをしていければ良いですね」

――最後にちゃぶ台返しのようですが、期待に応えてこそのプロフェッショナル。改めてRoad to UFCファイナルに向けての意気込みのほどをお願いします。

「先のことを考えてもしょうがないですけど、コレに勝ってやっとスタートラインに立てるだけで。勝てないとスタートラインにすら立てない。タイトルマッチと同じように全試合が重いです。なのでオクタゴンに上って、勝つだけですね。やってきたことを信じて戦えば、必ず勝利という結果がついてきます。崇矢、髙谷(裕之)さんと一緒に当日は、これまでやってきたことを信じて楽しみます」


■視聴方法(予定)
2月1日(日・日本時間)
午前7時00分~UFC FIGHT PASS
午前6時30分~U-NEXT

■UFC325対戦カード

<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者] アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
[挑戦者] ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ダン・フッカー(ニュージーランド)
ベノワ・サンドニ(フランス)

<ライト級/5分3R>
ラファエル・フィジエフ(アゼルバイジャン)
マウリシオ・ルフィ(ブラジル)

<ヘビー級/5分3R>
タイ・ツイバサ(豪州)
タリソン・テイシェイラ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
クイラン・サルキルド(豪州)
ジェイミー・マラーキー(豪州)

<ライトヘビー級/5分3R>
ジュニオール・タファ(豪州)
ビリー・アレカナ(米国)

<ミドル級/5分3R>
キャム・ロウストン(豪州)
コディ・ブランデージ(米国)

<ミドル級/5分3R>
ジェイコブ・マルクーン(豪州)
トーレス・フィニー(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ジョナサン・ミカレフ(豪州)
オーバン・エリオット(英国)

<フェザー級/5分3R>
カーン・オフリ(豪州)
イー・チャー(中国)

<Road to UFCライト級決勝/5分3R>
ドン・マーファン(豪州)
キム・サンウク(韓国)

<Road to UFCフェザー級決勝/5分3R>
セバスチャン・サーライ(豪州)
中村京一郎(日本)

<Road to UFCバンタム級準決勝/5分3R>
ソランランポ(中国)
ローレンス・ルイ(ニュージーランド)

<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
ナムスライ・バットバヤル(モンゴル)
アーロン・タウ(ニュージーランド)

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