【RIZIN Y.E.S.P.Festival】ジョリーが語る芦澤竜誠戦とMMAキャリア「自分の正味の実力は分かっている」
【写真】ジョリーにとって2018年のグラジ出場以来、約5年半振り3試合目のMMAがRIZIN初出場となった(C)RIZIN FF
2025年12月31日(水)に埼玉県さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催された「RIZIN 師走の超強者祭り」で、ジョリーが芦澤竜誠を1R0分25秒、腕十字で下した。
Text by Shojiro Kameike
RIZIN初出場が発表された昨年11月の記者会見で、ジョリーは芦澤にトラッシュトークを仕掛けた。彼のことを初めて見た格闘技ファンには、そのトラッシュトークのイメージが強かったに違いない。そして、抱いたイメージは時に色眼鏡となってしまう。こうしたトラッシュトークは、あくまで試合を観てもらうために必要なものだと考えているという。
実際の試合では芦澤をわずか25秒、腕十字で仕留めた。大きな反響を得ながらも、今回のインタビューでは「芦澤に対して失礼な風潮」「自分を過大評価したくない」と、トラッシュトークとは打って変わった言葉を発するジョリー。本人は「どれも演技じゃない、全ての素の自分なんです」と語る。だからこそ、知ってもらいたい。どんなフィルターも通していない、素のジョリーを――。
芦澤に失礼のないようにするためにも、俺が次の試合で圧倒的に勝つしかない
――昨年大晦日にRIZIN初出場、初勝利の反響はいかがですか。
「反響、ですか。俺が強かったと認められるというより、芦澤が弱かったという風潮みたいになっていて悔しいですね。これからお互いに試合をし続けて、1R速攻で試合を終わらせて盛り上げられるような選手を目指したいです」
――確かに試合内容は早い段階でジョリー選手が十字を極めました。それはあくまで試合タイムの話であって、本人としては「芦澤が弱かったという風潮」は悔しいですか。
「はい。自分は練習にメチャクチャ時間とお金、それこそ魂を賭けてきました。だから最速のフィニッシュになるのは当然で。そういう努力の部分を認めてもらえるとは思っていなかったです。でも芦澤竜誠はこれまで格闘技界を盛り上げてきた存在じゃないですか。その芦澤が弱いっていうのは世間の目が肥えてへんのかなって思いました」
――そういうことなのですね。「芦澤が弱かったという風潮」は、芦澤選手に対しても失礼である、と。
「そうです。芦澤が格闘技界を盛り上げてきた。それを見てきたのは誰やねん。お前らやないか、って」
――これまでの経歴から考えると、ジョリー選手に殴り合いを求める人、寝技で勝つことをイメージしていなかった人も多かったかもしれません。ジョリー選手のことを知っている人と、知らない人では持っている印象も全く違いませんか。
「どうやろう……、僕のことを知っている人からは『練習してきたんだから、こういう結果になるよね。ジョリーが勝つと思っていた』という反応でした。知らない人たちは芦澤を下げるような反応で。
そういう人って、俺のことを強いと認めたくないっていう深層心理があると思うんですよ。俺を認めたくないから、芦澤を下げるしかない。そこで芦澤に失礼のないようにするためにも、俺が次の試合で圧倒的に勝つしかないですね」
FIGHTER’S FLOWに行ってみると、全部ロジカルに教えてくれました。やっていることが全て新しかったです
――なるほど。ジョリー選手は和歌山県出身で、格闘技を始めたのも和歌山にいる時代なのですね。アマチュア時代はアマ修斗の東海選手権を制し、全日本も出場。プロではグラジエイターで2勝しています。最初からプロ選手になろうと思って格闘技を始めたのですか。
「いえ、全く思っていなかったです(苦笑)。自分は夜の覇者になりたかっただけで。
当時はすごくお金の面で厳しくて、プロのファイターになってもマネタイズの未来は見えなかったです。ただ富と名声と力を追い求めるという意識を、17歳の時から持っていました。たとえ富と名声を持っていても、喧嘩で誰にも勝てんかったらカッコイイ男じゃないと思っていたから、MMAというものをしっかり練習して、鍛錬して人生の一部にしたかったんですよ。それで試合に出たら連勝したから、『俺ってセンスあるんかな』と思い始めて(笑)。
でもお金の面で羽振りが良くなったから、21歳の時にキッパリと格闘技は辞めて。そこから安保瑠輝也君と出会うまでは一切、格闘技はやっていなかったです」
――アマチュアからプロまで実績を残していたのに、勿体ないといえば勿体ないですよね。
「当時、金のことで追い込まれていたのが一番大きかったです。格闘技を続けるどころじゃなくて。(傷害事件の)慰謝料で1400万円……十代の俺からしたら、とんでもない金額だったから」
――十代でなくとも、とんでもない金額です。金銭面で落ち着いたところで、再び格闘技を始めようとは考えていなかったのですか。
「考えていなかったですね。瑠輝也君との出会いが、俺の全てを変えてくれました」
――2020年に安保選手のチームに入ったそうですが、キックボクサーにはならなかったのですね。
「その時は俺もYouTubeで『K-1を目指して格闘技で頑張ります』と言ったんですよ。でもキックボクシングの練習をしているうちに『やっぱり組みたいな。グローブがデカいな』『ガードの隙間から殴りてぇな』と思い始めて(笑)。そこで瑠輝也君に『俺、MMAやっていいスか?』と言ったんです。『瑠輝也君のYouTubeメンバーとしても頑張りつつ、俺はMMAをやらせてください』と伝えたら、瑠輝也君も『ジョリーの好きなようにしたらエエで』と言ってくれて」
――そこから現在のように、FIGHTER’S FLOWに通うことになるのでしょうか。
「その時はまだ和歌山と東京を行き来していて、和歌山のジムにも通っていました。そういう生活を続けて――移動費もハンパなかったし、コロナ禍やったから経営していたお店も開けずに、貯金も全部なくなりましたね。自分のYouTubeは収益もほとんど無いようなもんやったので、その時にまた一回ゼロに落ちました」
――その状況から完全に東京に引っ越したのは?
「もう4年ぐらい経つんかな……2022年か2023年やったと思います。コロナ禍のあとで。去年の4月にFIGHTER’S FLOWに入るまでは、瑠輝也君のジムでMMAの仲間を呼んで練習していました」
――えっ! 指導者がいない状態ですか。
「その時はCANDY GYMの星野大介さんにお願いしたり、キックボクサーの雄大さんにMMAの動きをしてもらっていました。あとは地下格闘技に出ていた人たちと練習したり。
RIZINに出たいというのは3年前から言っていたけど、FIGHTER’S FLOWに入りたいと思ったのは去年の1月でした。もともと泉武志選手が僕の練習に付き合ってくれていて、『武志君がいるジムはどんな感じですか?』って聞いたんですよ。FIGHTER’S FLOWの上田貴央代表がチョケて指導している動画がTiktokにアップされていて」
――アハハハ、上田代表の世界観が表れていますよね。
「俺もその世界観がメッチャ好きで。それでFIGHTER’S FLOWに行ってみると、全部ロジカルに教えてくれました。4月に入ってから、今までしたことがなかった練習しかしていないです。FIGHTER’S FLOWでやっていることが全て新しかったですね」
実は大晦日で勝ったあと、バッドに入って……
――しかし新しいことをやろうとすると、それを継続するのはキツかったのではないですか。
「いや、大晦日の試合に向けた練習は今までで一番楽でした」
――というと?
「今までの練習は根性論で。怪我をしていても『試合やから、そんなことは言ってられん』という感じだったんですよ。手首を痛めた、肩が上がらん、ヒザの関節が緩い――それでもトレーニングは続けていました。でも大晦日に向けては、ロードワークをしたのも2回ぐらいでした。その代わり、どういう練習をするのかはFIGHTER’S FLOWの秘密です」
――おぉっ!
「FIGHTER’S FLOW独自の秘密の練習があるんですよ。そこは守秘義務で(笑)」
――芦澤戦で見せた足関節から腕十字という動きは……。
「あれは上田さんと練った、完全な芦澤対策です。寝技の展開に持っていければ100パーセント勝てると思っていました。芦澤が梅野(源治)さんとの試合で、梅野さんが三角を狙った時に反応できていなかったんですよね。だから『この人、寝技を練習していないわ』って。でも絶対に足関は対策されている。そこで足関を抜かれた時の対策もメッチャ練習していました。
基本的にFIGHTER’S FLOWの練習は一つの動きだけをやるのではなく、その動きに対して相手がこう動いたら――って派生させていくんです。その動きをひたすら打ち込みします」
――そうだったのですね。これまでのキャリアを振り返るとプロデビューした2018年当時、そしてRIZINに出る前とRIZINに出たあとでは、ファイターとしての意識も全く違いますか。
「全然違いますね。実は大晦日で勝ったあと、バッドに入って……」
『アンタが強くなったらエエだけちゃうん?』
――バッドに入る、とは?
「精神的に悪い、喜べないという状態ですね。確かに大舞台で芦澤に勝つことはできたけど、自分の正味の実力は分かっていて。言うたら――DEEP、パンクラス、修斗とかの中堅やオープニングファイトで戦う選手がいるじゃないですか。自分はその中間にいるというか。まだ中堅の選手には勝てない。でもRIZINって、その修斗、DEEP、パンクラスの王者クラスが出て来る舞台ですよね。そういう人たちと戦って、3連敗したとする。それで『なんや、ジョリーって雑魚やんけ』とか言われる未来を想像したら、メッチャ怖くなったんです」
――……。
「自分を応援しくれる人からは『おめでとう!』『めっちゃカッコ良かった!!』とかメッセージが来る。もちろん『ありがとう!』って返事をするけど、返事をするごとにスマホが重く感じられるんです。『皆、俺の実力を分かっていないわ』って(苦笑)」
――逆の意味で分かっていないと。
「アハハハ、そうなんです。でも翌日、それを嫁に言ったら『アンタが強くなったらエエだけちゃうん?』と――その言葉で自分も格闘家としての覚悟が決まりました」
――素晴らしい奥様の言葉です。
「メッチャ考えるんですよ。平本丈や篠塚辰樹との試合は、もっと温めたほうがいい。すると次はメッチャ強い相手と組まれるんかな、とか。だからできるだけ早く対戦相手を定めて、ひたすら対策を練習する。それしかないですよね。俺って練習では強くないんですよ。でもガチ練習になったら勝てたりとか」
――何より周りが自分のことを過大評価しようとも、自分が自身を過大評価していなければ良い。そして練習で負けて試合で勝つ、というのもファイターとして重要かと思います。
「ありがとうございます。……そう言ってもらえたら自信がつきます。
2026年は『格闘家として一番努力した』って自分で言える年にしたいです。今までは仕事のこともそうやし、格闘技の試合を観てもらえるようSNSとかインフルエンス力も頑張ってきました。これからはやることを絞って、そのぶん格闘技に集中します。ここまで来たら、もうやるしかないですよね。もっともっと成長を早くして強くなるので、よろしくお願いします!」




















