【RIZIN51】ガジャマトフに快勝。扇久保博正から事前取材で掲載を控えて欲しいと伝えられていた勝負の肝
【写真】扇久保、快勝。MMAの奥深さを再確認させてくれた一戦だった(C)RIZIN FF
昨日28日(日)に名古屋市北区のIGアリーナで開催されたRIZIN51で、アリベク・ガジャマトフを判定3-0で下した扇久保博正。
text by Manabu Takashima
MMAPLANETでは試合前に扇久保のインタビューを行い、技術的な局面も尋ねていたが、一点だけ本人から活字にしない欲しいという要望を受けた。
弱小専門サイトといえども、相手陣営に伝わる可能性もある――からか。それだけ扇久保が今回の試合の核としていた攻防がある。昨夜の勝利を受けて、本人の了承を得たうえで記事化を控えたインタビュー部分を紹介したい。
『――如何に右腕を差すことができるのか。逆をいえば右ワキを差されずに戦えるのか。ここに凄く注目しています。
「良いところをついていますね(笑)」
――組み技、寝技は番狂わせが少ない。打撃のバリアーを気持ちで乗り越えた先に、根性の組みを制した方が勝つ。
「そういう試合になるんじゃないですか。おそらく。ホセ・トーレスも左のワキを絶対に差させないように戦ってきました。でも俺、めちゃくちゃ差せたんで大丈夫です。俺、誰でも差せると思っているので。そんなこと言って、させないかもしれないけど(笑)。そこは自信を持っていくしかないです」』
ガジャマトフは7月の征矢貴戦を含め、クリンチの攻防になった時のテイクダウンは左腕を差してのモノ。つまり相手の右ワキを差してからだ。ストライカーのガジャマトフが、自分の試合をするには、第一にテイクダウンをされないこと。そればかりか、自らもテイクダウン力があることを既に示してきた。
扇久保としては、まさに生命線。そして上の言葉にあるように一度も右ワキを差されることなく、自身は右ワキを差し続けた。試合後の会見で「右腕を差して(ワキを潜り)バックに回ること」を想定していたと話していた扇久保。ただしガジャマトフのウィザー(小手)が強く、そうはできなかった。ならばとばかりに彼は左腕も差して、ダブルアンダーからの小外刈りでダゲスタンの強豪を削っていった。
もちろんシングルレッグ、あるいはダブルレッグという導火線がクリンチの前に存在しているわけだが、扇久保は自らも打撃を見せ、何よりもガマジャトフの打撃を被弾しにくい場所に立ち、頭を置いていた。そして、何度も組みついていった。
その勇気が、今回の勝利の第一要因だ。ガジャマトフは殺傷能力のある武器が多い。それを無効化した、アンダーフック。本当にMMAは奥深い。それでもホセ・トーレスを下した時と同様に、ガジャマトフにある意味完勝しても「塩」とう表現をして、軽んじる反応が見られる。
奥が深いMMAという戦いは、本当に多くの材料が揃っており、多くの道具と香辛料がある料理のようなものだ。調理方法はそれこそ十人十色、千差万別――シェフ次第だ。ただし、どの料理でも塩加減が大切なことは言うまでもない。塩が上手く使えないファイターは、栄養のある美味しい料理を創ることはできないだろう。
素晴らしい調理方法で、最高の料理を創った扇久保は一晩が過ぎ、上のインタビュー未使用部分の掲載を了承してくれたメッセージをこのような一言で締めくくっていた。
「僕の右差しは世界中の誰も防げません(笑)」