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【RIZIN51】フライ級GP準決勝、元谷友貴戦へ。神龍誠「最悪のパターンもイメトレするようにしています」

【写真】常に本音、それが神龍誠(C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)に名古屋市北区のIGアリーナで開催されるRIZIN51。フライ級GP準決勝で神龍誠元谷友貴と対戦する。
text by Takumi Nakamura

GP開幕戦では山本アーセンをギロチンチョークで斬って落とした神龍。開幕戦の勝者による総選挙では2度目の投票で準決勝進出=元谷戦が決まる形となった。

選挙演説で神龍は不遇だったデビュー当時のエピソードを明かし、UFCフライ級に対するライバル心も打ち明けた。トラッシュトークや煽りではなく、自分の想いをそのまま言葉で表現する。常に本音で格闘技と向き合い続ける神龍が元谷戦、そしてフライ級GP優勝に向けた心境を語ってくれた。


総選挙は本当にドキドキしていましたね。マジで落ちたらどうしよう?と考えることも多かったので

――まずはフライ級GPの一回戦、山本アーセン戦から振り返っていただけますか。

「僕自身は良くなっていたんじゃないですかね。まぁ、アーセン選手の強さを感じる前に終わっちゃったというのが正直なところです」

――ああいった短期決着は最初からイメージされていたのですか。

「そうですね。アーセン選手を調子に乗らせる前に終わらせたかったんで。アーセン選手は後半になればなるほどギアが上がってくるタイプだと思っていたので、序盤で極めるというのは作戦通りでした」

――試合そのものは短い時間でしたが、あの試合で得た手応えはありますか。

「特にあの試合に向けて(練習した)というのはなくて、いつも通り、自分を強くする作業をずっと続けてきた感じですね」

――さて今回のフライ級GPは選挙で準決勝進出者が決まるという、これまでにない形でした。開幕戦が終わってから選挙当日までどのような心境で過ごしていましたか。

「総選挙は本当にドキドキしていましたね。マジで落ちたらどうしよう?と考えることも多かったので」

――神龍選手は物事をはっきり言うので、ファンとアンチが分かれるタイプだと思います。僕はそれがプロとしての魅力だと思っているのですが、選挙となると話は別です。神龍選手のキャラクターがどう転ぶのか当日まで分からなかった部分があります。

「それは僕もありました。僕の嫌いな層が集まったら、僕は落とされるだろうなと(苦笑)。もっと言うなら伊藤裕樹ファンは絶対僕のことを落としたいじゃないですか。そういうのもあって当日まで変な緊張がありましたね」

――選挙当日は各選手に演説の時間が設けられました。あの演説内容は入念に準備していたのですか。

「言うことをちゃんと考えて原稿にしていました。本当は内容を暗記して、紙を読まずに行きたかったんですけどね」

僕は実力で勝負してここまで来たという自負はありますよ

――僕は2023年8月にライター復帰してから神龍選手を取材するようになり、RIZINで活躍している神龍選手しか知らず、デビュー当初から注目されてきた選手だと思っていました。あの日の演説を聞いていると決してそうではなかったんですよね。

「めちゃめちゃ苦労人だと思いますよ、僕は。それこそ僕は15歳でプロデビューして、その年齢ではずば抜けて強かったと思うんですよ。それこそ『天才高校生』と謳われるような。客観的に見てもそのくらい強かったと思うし、今の時代だったらすぐに注目されていたと思います。でも当時はそういう状況ではなくて、試合に勝ってもそこで終わり。特にファンが増えることもなく、注目が集まることもなかったです。

金銭的にもデビュー当初はファイトマネーが数万円の世界で、同世代の選手は学校に行きながら格闘技をやっているから、それでもよかったんでしょうけど、僕は高校に行かずに格闘技をやっていたから……やっぱりしんどいですよね(苦笑)。試合で勝ってもちやほやされるわけでもなく、生活するためにはバイトしなきゃいけない。むしろ練習を休んでバイトしている方が稼げるような状況だったし、強くなりたくてバイトを削って練習時間を増やすとお金がなくなる、みたいな。頑張って格闘技を続けていましたが、将来どうなるんだろう?という不安はなくならなかったですね」

――RIZINは2015年大晦日旗揚げで神龍選手は2016年デビューなので、RIZINという舞台こそあったもののフライ級選手がそこで食っていけるようになる未来が見えていたわけではないですよね。

「そうですね。デビュー当初は、プロを舐めているわけじゃないですけど、すぐに上手くいく姿を想像するじゃないですか。俺は15歳でデビューして、試合にも勝ち続けているから、すぐRIZINにも出て有名になれるんだろうなって。だから余計に現実とのギャップを感じていたかもしれないです」

――しかも神龍選手は初めてのタイトルマッチ、DEEPでの和田竜光戦(2018年4月)では判定負けしているんですよね。

「負けていますね。あそこで初めて挫折を味わって、俺って1番になれない人間なのかなって思いましたよ(苦笑)。結局プロデビューしてからRIZINに出るまで4年くらいかかったし、RIZINが主戦場なるまで6年くらいかかったんです。だからポッと出でRIZINに出ている選手に対するジェラシーはありましたよね」

――神龍選手は紆余曲折を経てRIZINで戦っているのですね。

「だから逆に僕は実力で勝負してここまで来たという自負はありますよ。キャラ先行のポッと出とは違うし、結局そういう選手は自然に消えていくじゃないですか。なんだかんだでこの業界、最後は強さだと思っているので、自分の強さを信じて戦い続けるという信念はずっと変わらないです」

――選挙の結果、準決勝の対戦相手は元谷選手に決まりました。今まで元谷選手と対戦することは意識していましたか。

「いや、なかったですね。それこそ僕がデビューした時はもうトップにいたし、途中から元谷さんがバンタム級に上げたじゃないですか。僕がバンタム級に上げることはないと思っていたんで、あまり対戦相手として考えたことはなかったですね。それもあって元谷さんとは練習したこともありますし」

――時期的には神龍選手がデビューした頃、すでに元谷選手はDEEPチャンピオンになってRIZINにも出ていたので、DEEPを主戦場にしていた時期がかぶっているわけでもないのですね。

「そうですね。今回のGPが決まるまで、フライ級で被っていた時期もあまりなかったと思います」

どちらが真のDEEP最高傑作なのか。そこはお客さんも楽しめると思います

――対戦相手として見て、元谷選手の印象は?

「独特なリズムがありますよね。感性で戦っているというか。だからみんなやりづらいのかなと思います」

――確かに練習で身につくものとは違う、元谷選手独特の動きを感じます。

「絶対そうですね。考え方とかも含めて、普通の選手とは違う感じがあります」

――サブミッションを極める時も、ここでこの技にいくのかと驚くこともあります。

「ちょっと他の選手と違いますよね。技も結構独特じゃないですか。フロントチョークにしても形が特殊というか」

――例えば感覚的に動くという部分で、自分と元谷選手が似ていると思うことはありますか。

「違うタイプではあると思うんですけど、戦い方が独特という意味では似ているのかもしれないです」

――元谷戦に向けて、特別に力を入れて練習をしてきたことはありますか。

「何か一つで勝負するというのではなくて、全部で勝負しようと思っています。MMAがそういうものだと思っているし、本当に全部できるようにしようと思って練習しています」

――元谷選手をフィニッシュするパターンはある程度イメージできていますか。

「いつもそこは何パターンか考えていて、試合までに色々とイメトレしていますね。最低のパターン、通常のパターン、最高のパターンみたいな」

――神龍選手は試合前に最悪のパターンも想定されるのですか。

「その方が楽というか、いざそうなった時にギャップが生まれないんで。僕はイメージトレーニングの段階で、最悪に苦しんでいる姿、スタミナもボロボロで鼻も折れて…みたいな想定をすることもあります」

――ただ劣勢になる展開だけでなく、そこまで具体的にイメージされるんですね。

「はい。僕がそれをやろうと思ったのが、CFFCで試合をした時に試合中に右目尻をカットして流血しちゃったんですよ。それで2Rは血のカーテンみたいな感じで右目がほぼ見えなくて、めちゃくちゃテンパったんです。あの時は結果的に一本勝ちできたんですけど、ああいう経験をしてからは試合中に焦る状況をできるだけなくしたくて、最悪のパターンもイメトレするようにしています」

――ずっとMMAやDEEPを見ているファンにとっては元谷選手と神龍選手の試合は思い入れがあるものだと思います。神龍選手も元谷選手と戦うことに特別な想いはありますか。

「そこは元谷さんも言っていることですよね。確か元谷さんがDEEP王者の最年少記録を持っていて、僕がそれを塗り替えたんですよね。そういう意味では同じ時代にDEEPで戦っていたらうどうなっていたんだろう?と思うし、今ここで実現するのも興味深いですよね」

――もし同じ時代にDEEPで戦っていたら間違いなくライバルになっていたでしょうね。

「ですよね。元谷さんもDEEPの最高傑作みたいに言われていて、僕にもそういうあだ名があったりするので、どちらが真のDEEP最高傑作なのか。そこはお客さんも楽しめると思います」

――今は準決勝に勝つことに集中していると思いますが、決勝では扇久保博正選手とアリベク・ガジャマトフのどちらと戦いたいですか。

「やっぱりそこは扇久保にリベンジしたいですね。去年7月に扇久保にああいう負け方をして、ずっと大きい舞台で借りを返したいと思っていて。お互い勝ち上がれば大晦日、GP決勝、タイトルマッチで戦うわけじゃないですか。借りを返すには最高の舞台だと思います。そのためにもまずは次の元谷戦を乗り越えます」

平良選手からしたらまだ僕は眼中にないかもしれないけど、いつかはやってやるぞと思っている

――もう一つお聞きしたかったのが、選挙の演説時のコメントでUFCと平良達郎選手のことに触れた場面がありました。選挙が平良選手の試合直後ということもあったと思うのですが、同じ階級の選手として平良選手にはライバル心はありますか。

「同じMMAファイターとして悔しいですよね。年齢も平良選手は一つしか変わらないのに、あれだけ注目される舞台で試合をして(フライ級日本人)“最強”って言われているじゃないですか。平良選手からしたらまだ僕は眼中にないかもしれないけど、いつかはやってやるぞと思っているし、僕はもうずっと燃えていますね」

――現時点で2人が戦うことはないと思いますが、フライ級GPでの結果や勝ち方という部分で「神龍の方が強いんじゃないのか」と思わせるような試合にしたいですか。

「彼はすでに世界のトップにいるわけで、何よりもまず僕は日本でトップに立たないといけない。どんな形になるかは分からないですが、僕と彼が戦うことになったら、日本格闘技界がめちゃくちゃ盛り上がることになると思います。だからその時が来るまで、お互いの価値を高めようぜって感じです」

――分かりました。それでは最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

「今回は特に相手を煽ったりもせず、純粋な試合だけで魅せようと思います。最高の、最高峰のMMAの試合を見てください」

■視聴方法(予定)
9月28日(日)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

■RIZIN51対戦カード

<RIZINライト級選手権試合/5分3R>
[王者]ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
[挑戦者]堀江圭功(日本)

<フェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
[挑戦者]ビクター・コレスニック(ロシア)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
扇久保博正(日本)
アリベク・ガジャマトフ(ロシア)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
元谷友貴(日本)
神龍誠(日本)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級Tリザーブマッチ/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
山本アーセン(日本)

<RIZIN WORLD GP2025ヘビー級T決勝/5分3R>
マレク・サモチュク(ポーランド)
アレクサンダー・ソルダトキン(ロシア)

<バンタム級/5分3R>
佐藤将光(日本)
ダニー・サバテロ(米国)

<バンタム級/5分3R>
梅野源治(日本)
芦澤竜誠(日本)

<フェザー級/5分3R>
高木凌(日本)
三宅輝砂(日本)

<ライト級/5分3R>
矢地祐介(日本)
芳賀ビラル海(日本)

<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
ファン・イェーロウ(中国)

<フライ級/5分3R>
冨澤大智(日本)
平本丈(日本)

<フェザー級/5分3R>
大和哲也(日本)
奥山貴大(日本)

<100キロ契約/5分3R>
金田一孝介(日本)
チャートゥ・バンビロール(セネガル)

<ライト級/5分2R>
太田将吾(日本)
Street♡★Bob洸助(日本)

<バンタム級/5分2R>
山木麻弥(日本)
石坂空志(日本)

<フライ級/5分2R>
佐藤執斗(日本)
小林大介(日本)

<フェザー級/5分2R>
YUHEI(日本)
脇田仁(日本)

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