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【DEEP128】ホーム復帰&神田コウヤと暫定王者戦、大原樹理「左右の対称性? 最強のワンパターンで良い」

【写真】これまでのインタビューと異なり、DEEPのTシャツ着用でないのは――DEEPのTシャツは普段使いをしていて、穴が空いてしまったらしい。穴が空くまで日常的に着続けている、流石DEEPER!(C)SHOJIRO KAMEIKE

11月2日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP128で、大原樹理神田コウヤとの同ライト級暫定王者決定戦に臨む。
Text by Shojiro Kameike

1990年11月2日、大原はこの世に生を受けた。つまり彼にとって35回目のバースデーに、2年2カ月振りのDEEP復帰を果たす。前回のDEEP出場は2023年9月、韓国ブラックコンバットとの対抗戦で、同ライト級王者のイ・スンハに敗れた試合だった。以降、大原はイ・スンハへのリベンジとベルト奪取を目指し、ブラックコンバットに参戦した。

翌年9月にはイ・スンハにリベンジを果たし、ブラックコンバットのベルトも獲得。しかし続く12月でローブローを受けたあと、不可解なレフェリングもあり判定負けで無冠に。そんななか韓国で人気ファイターとなった大原は今年5月、RIZIN韓国大会でジョニー・ケースと戦う。1Rに右フックを受けてマットに沈むも、ケースが前日計量で契約体重をクリアできていなかったため結果はノーコンテストとなる。

内容が内容だっただけに、大原自身はケース戦について「自分の負け」と語る。あれから半年——DEEPの発表によれば、ライト級王者の野村駿太が負傷により防衛戦ができず、ここで大原と神田による暫定王者決定戦が組まれることになったという。突然現れた注目のカード。大原が全ての経緯と、神田戦への自信を語ってくれた。


ここで中途半端な相手と試合しても意味はない

――今回は大原選手のDEEP復帰、予想していなかったマッチメイク、そして暫定王者決定戦を、しかも自身の誕生日に行うことになりました。まずRIZIN韓国大会に出場する時点で、次はDEEPに復帰すると考えていたのですか。

「RIZINについては公式記録として負けてはいないけど、ほぼぼぼ負けでですよね。木端微塵にされちゃいましたから。まずはダメージを抜いて、あとはタイミングで――9月以降に試合したいです、と社長(佐伯繁DEEP代表)には伝えていました。その復帰戦がブラックコンバットになるのか、DEEPになるかは分からなかったですけど。結果、DEEPに出場することになりました」

――ということは、ブラックコンバットからオファーがあれば考えるという状態ではあったと。

「8月に駒杵嵩大選手がフライ級王座を防衛した大会がありましたよね。あれがナンバーシリーズで、僕にもオファーがあったみたいです。でも会長(ランボー松風 KIBAマーシャルアーツ会長)が『ダメージがあるから8月は無理』と断ってくれていて。その後、9月以降はどうするかなという時に社長が声を掛けてくれて、じゃあDEEPでお願いしますという話になったんですよ」

――DEEP復帰のオファーが、神田選手との暫定王者決定戦だったのでしょうか。

「いえ、最初は違いましたね。順番で言うと、まず社長とは『ここで中途半端な相手と試合しても意味はない』という話をしていたんですよ。対戦相手の候補に神田選手も挙がっていて――その過程で、暫定王座決定戦という話が出ました。

というのも、野村選手は怪我でRIZINのタイトルマッチがなくなったじゃないですか。いずれ復帰するならRIZINでやるべきでしょうし。でも、そうなるとDEEPライト級も回らない。そこで僕はDEEPの元ライト級王者、神田選手は元フェザー級王者——元王者対決であれば、暫定王座決定戦でも良いんじゃないかと」

――説明、ありがとうございます。大原選手としては2年2カ月振りのDEEP出場となります。

「自分が久しぶりにDEEPで試合をするから、驚いてくれるんじゃないかなと思いました。この2年の間にDEEPを見始めて、僕のことを知らない人もいるでしょうしね。今はDEEPの勢いが凄いじゃないですか。選手の層も厚いし、チケットも完売していて。それだけ新しいファンが増えているので、僕に対して『コイツ、誰!?』と思ってくれるかもしれない。反対に昔からDEEPを見ている人たちは『おぉ、大原が戻ってきた!!』と思ってくれる――そういう意見が半々ぐらいじゃないかと考えています」

――ブラックコンバットではなくDEEPに出場することで、韓国の大原ファンの反応はどうですか。

「韓国のファンも連絡をくださるんですよ。『裏切られたのかな?』『韓国に戻ってきてほしい』というコメントもあるなか、『大原が戦うなら、どこでも応援するよ』と言ってくれる人もいて。自分の中では、応援してくれている人のほうが多いのかな、という印象ですね。『DEEPの試合を観に行きたいので、チケットを購入できますか』という連絡も頂いたり」

――韓国での人気は継続中、というわけですね。その韓国で行われた前回の試合については、どのように受け止めていますか。対戦相手のジョニー・ケースが前日計量で300グラムのオーバーだった時、試合を断るという選択肢はなかったのでしょうか。

「ないです。試合をするために韓国へ行っているし、『勝っちゃえばいいでしょう』と考えていて。木端微塵にされましたけどね」

――あのKOシーンを見た瞬間、試合前のインタビューで言っていた「外国人選手特有の一発が……」という言葉が脳裏によみがえりました。

「アハハハ、あのタイプは嫌ですよ。嫌いなものは嫌いなので、仕方ないです。あとは300グラムのオーバーって、やっぱり大きいよなって思いました」

――結果、9月まで休まなければいけないほどのダメージを負ってしまったのですか。

「試合で意識は飛んでしまいましたけど、会長には『早く次の試合をやりましょう』と伝えていました。このペースだと今年は3試合が限界になるから、って。でも会長はダメージの問題については慎重で。昔から、僕がKO負けしたりダメージがある時は『まず休むことが第一』だと言われます」

――会長がダメージに関して、その姿勢であることは良かったです。ではコンタクトのある練習は、いつ頃から再開できたのでしょうか。

「試合が5月で、6月は完全に休んでいました。会員さんの練習もあるのでジムには行っていましたけど、自分自身はコンタクトのある練習はしていなくて。7月半ばから、ゆったりと再開し始めたという感じですね。自分で軽く頭を振ってみて、少しでも痛みがあったら練習しないとか、状態を見ながら再開しました」

――大原選手の場合、ずっと練習と試合を詰めたキャリアを送ってきました。それが今回ブランクをつくったことで、練習を再開した際に体が鈍ったりはしていなかったですか。

「7月半ばから練習を再開して、スパーをやったりとか――でも会長のミットは試合前だけにしているんですよ。シンドイから(苦笑)」

――アハハハ。

「だから再開した時はジムの後輩や会員さんにミットを持ってもらって、ゆっくり体の鈍りを取りながら、打撃の確認をしながらで。おかげで試合に向けた練習が始まった時は、体の動きも元に戻ってはいましたね」

――すると良いスケジュールで復帰戦を迎えることができているのですね。

「はい。体の不調とかは全くなく」

あなたの距離は私の距離ですよ

――そして神田戦ですが……、先ほど言った「外国人選手特有の一発が……」という言葉のように、今回の試合が決まって一つのこと場を思い出しました。以前、「自分と同じくらいの体格の選手は得意ではない」と言っていましたね。公式発表でいえば神田選手も身長、リーチともほぼ同じです。

「覚えてくれていたんですね(笑)。ピエロ(イ・ソンハ)は、さらにリーチが長かったですから。今まで自分が武器としていたものが、相手の武器になる。打っても打っても届かなった。そういう相手との対戦経験が、次の試合ではすごく生きてくると思います。

韓国でやっていた時に、なぜか大きな相手とばかり対戦していたじゃないですか。ピエロとの初戦はもちろん、ハンター(パク・ジョンホン)戦、ピエロとの再戦——こうした試合のおかげで、自分と同体格との戦い方も掴むことができました。今でも自分より大きな相手は苦手意識がないわけではないです。でも自分と同じぐらいなら問題ない、という状態ではありますね」

――韓国での戦いを経て、まさに凱旋復帰に……。

「凱旋かぁ。そうですね。DEEPERとしては、ここで勝ちたいです」

――DEEPER! 先日、Lemino Shootoで岡田遼さんが「シューター」として引退し、砂辺光久選手は「パンクラシスト」としてLemino Shooto02に出場しています。DEEPの場合を考えた時、大原選手のDEEPERという言葉が真っ先に浮かびました。

「アハハハ! まだ皆さんの中に、DEEPERとしての印象が残ってくれていたら嬉しいです」

――一方で大原選手の中に、後楽園ホールのケージで戦う感覚は残っていますか。

「ジムの人が後楽園ホールでキックボクシングの試合に出ていたりするので、会場に対する感覚は今もあります。それとDEEPのケージって広いから戦いやすいんですよ。ケージはブラックコンバットよりもDEEPのほうが広いんですよ。中に入ってみると、ブラックコンバットのケージはひと周り小さかったですね」

――そのケージで向かい合う神田選手は、大原選手がDEEP以外に出ている間にフェザー級からライト級に転向してきたファイターです。これまでは対戦相手として意識はしていなかったですか。

「試合を観てはいましたけど階級が違ったので、『いつかやるかな』という気持ちは一切なかったです。ライト級に上げてきた時も『減量がキツイのかなぁ? そりゃ180センチもあったらフェザー級は厳しいよね』と思ったぐらいで。自分も同じ状況を経験していますからね。

だけど自分のクセで、誰の試合でも『自分ならこう戦うかな』というふうには観ていました。体格は同じですけど、スタイルは真逆じゃないですか。だから我の押し付け合いかなって思います」

――神田選手が目指す「左右の対称性」、つまり流れるようにスイッチしてオーソドックスでもサウスポーでも同じことができる戦いについて、大原選手の考えを教えてください。

「言っとけよ、という感じですね」

――おぉっ! 今の笑顔から、ものすごい自信が伝わります。

「自信はあります。試合前だから、その理由は言えないですけどね」

――そこを一つ、何かヒントをお願いします。

「僕もアマチュア時代に、スイッチできたら強いんじゃないかと思ってチャレンジしたことはあるんですよ。でもボコボコに殴られたから、すぐに止めました(笑)」

――アハハハ。いや、そういうことではなく……。

「う~ん……スイッチした時の距離とか、そのあたりは実際に向かい合ってみないと分からないです。とはいえ体格は同じなので『あなたの距離は私の距離ですよ』と言いたいですね。

漫画『はじめの一歩』で最強のワンパターンという言葉を見た時、それで良いじゃないかと思いました。サウスポーでうまくできなくても、最強のワンパターンで良い。打撃しかやらない、という意味では自分もワンパターンなので。

僕の中では、この二人のスタイルは水と油だと思っています。だから、いかに自分のやりたいことを相手に押しつけることができるかが、試合のキーポイントになると思いますね」

――あくまで自分のやりたいことを、自分らしく。

「はい。しばらくKOから遠ざかっているので、理想はKO勝ちしたいです。ただ、それ以上にベルトが欲しいので、今回はどんな勝ち方でも――というのが本音ですね。そのうえでKOできれば一番良いですけど、狙いすぎても良くないし。僕はいつもどおりのことを、いつもどおりやります」

■視聴方法(予定)
11月2日(日)
午後5時35分~U-NEXT、サムライTV、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ

■対戦カード

<DEEPライト級暫定王者決定戦/5分3R>
大原樹理(日本)
神田コウヤ(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
椿飛鳥(日本)

<ライト級/5分3R>
大木良太(日本)
倉本大悟(日本)

<ライト級/5分3R>
北岡悟(日本)
山田聖真(日本)

<フェザー級/5分2R>
直樹(日本)
三井俊希(日本)

<バンタム級/5分2R>
高野優樹(日本)
山本有人(日本)

<59キロ契約/5分2R>
木村琉音(日本)
火の鳥(日本)

<メガトン級/5分2R>
誠悟(日本)
バッファロー(日本)

<バンタム級/5分2R>
寺崎昇龍((日本)
唐沢タツヤ(日本)

<アマチュア フェザー級/3分2R>
大越充悟(日本)
マイティ・saw(日本)

<アマチュア フライ級/3分2R>
大将(日本)
金子蒼空(日本)

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