この星の格闘技を追いかける

【DEEP129】MMA甲子園×RIZIN甲子園=横内三旺戦へ、石原射「眉毛のところをカットしてやります」

【写真】現在19歳、とても礼儀正しいファイターです。この日はアルファメールのパーカーを着用(C)SHOJIRO KAMEIKE

14日(日)に東京都港区のニューピアホールで行われるDEEP129で、石原射が横内三旺と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

石原は2024年2月、第1回MMA甲子園全国大会のバンタム級を制し、同年6月にネクサスでプロデビュー。今年9月から戦いの場をDEEPに移し、今回はRIZIN甲子園2024を制した横内三旺と相まみえる。このMMA甲子園×RIZIN甲子園という構図について本人はどう感じているか。また、米国チーム・アルファメールで練習した際のエピソードも語ってくれた。


『自分は勝って負けてというキャリアなのかな』というメンタルだったんです。でもMMA甲子園で優勝できて、メッチャ自信になりました

――MMAPLANET初登場の石原選手です。石原選手は高校3年生の時にMMA甲子園で優勝していますが、格闘技を始めたのはいつだったのでしょうか。

「中学時代にバレーボール部に入っていて、部活を引退したあと赤羽のGRABAKAに入りました。もともと赤羽に住んでいて、父から『赤羽に菊田早苗さんという凄いファイターのジムがある』と紹介されたんです」

――お父さんが格闘技ファンだったのですね。

「父はずっと自分に格闘技をやらせたかったらしいです。自分は記憶がないけど、幼い頃にはキッズレスリングに通わせてそうで。小学校高学年の時も柔道を習っていて――なのに中学でバレーボール部に入った時、母に『アイツに格闘技をやらせる道は途絶えた』と、残念がっていたそうです(笑)」

――石原選手はなぜバレーボール部に入ったのですか。

「自分が中学に入った年にバレーボール部が出来たんですよ。先輩がいない、ということで入りました(笑)」

――なるほど。それでも部活を引退したあとGRABAKAに入るのは、石原選手も格闘技に興味があったということですか。

「はい。レスリングと柔道を少し経験していたおかげか、練習でも組みのほうは最初から少しだけ対応できたんですよね。自分が格闘技を始めて、父も喜んでいました」

――GRABAKAでMMAを始めて3年後、MMA甲子園で優勝した時の気持ちを教えてください。

初のMMA甲子園全国大会でバンタム級優勝。高校生ファイターの中で打とレスリングのバランスは光っていた(C)MMA KOUSHIEN

「メチャクチャ嬉しかったですよ。自分はこういう大会で優勝できる人間なんだ、とビックリしましたね」

――それまでアマチュアでも大会優勝経験はなかったのですか。

「それがなくて……正直、『自分は勝って負けてというキャリアなのかな』というメンタルだったんです。でもMMA甲子園で優勝できて、メッチャ自信になりました」

――そして2024年6月、ネクサスでプロデビューして判定勝ちを収めています。

「自分はグラバカの小池秀信さんにお世話になっていて。小池さんから『6月にネクサスがあるけど、プロデビュー戦どう?』と声をかけてくださったんです。せっかく声をかけていただいたから『やろう!』と思いました」

――続く2戦目はKO勝ち。同年末の3戦目は韓国で行われた試合でした。MMA甲子園の代表として、「高校天王」という韓国で行われている高校生MMA大会の代表、パク・チャンスと戦いRNCで勝利しています。このタイミングで、海外で同じキャリアの選手との試合を経験できることは大きなチャンスだと思います。

「韓国で試合ができると聞いて『えぇ~、マジか!』って思いました(笑)。相手は同い年で、十代対決。メッチャ良い経験になりましたね。デビューした年に海外で試合できることなんて、なかなかないと思うので。ただ、水抜きしようと思っても向こうのホテルにバスタブがなくて……」

――海外だとホテルにバスタブがないことは多いようですね。その場合、近くにサウナがあるかどうか確認することも。

「そういうのも勉強になりました」

サクラメントではシェアハウスに泊まり、スケボーでジムに通っていました。そのスケボーは……

――韓国で勝利したあと、翌年5月にプロ5戦目に臨んでいます。その前に米国サクラメントのチーム・アルファメールで練習していたと、川原波輝選手がインタビューで語っていました

「そのインタビューは読みました。(川原)波輝さんが『今年の2月に――』というふうに言っていたんですけど、実は去年なんですよ(苦笑)。去年の7月後半から9月半ばぐらいまでお世話になっていました」

――ということは、デビュー戦の直後にアルファメールへ?

「はい。デビュー戦が終わって、すぐ行きたいと思って」

――数ある米国のジムから、なぜアルファメールを選んだのでしょうか。

「まずアルファメールでは日本人選手が多く練習しているというイメージがありました。それと自分は名字が石原じゃないですか。同じ名字だから石原夜叉坊さんのことが昔から好きで。その夜叉坊さんと同じ名字なら、現地でも覚えてもらいやすいかなと思ったんです」

――しかし行ってみると、その夜叉坊選手がいなかったという……。

「そうなんですよ。いなかったです」

――おそらくその頃はハワイの路上生活か、帰国した後に負傷して大変だったのでしょうね(詳しくはこちら)。川原選手は「DMを送ってきていて、返事をしていなかったけどサクラメントに来た」と、石原選手の覚悟を認めていました。どのような道程でアルファメールに向かったのですか。

「最初は家族と旅行で、一週間ぐらいLAにいて。そのあと家族と離れて、バスに乗ってサクラメントに行ったんです。向こうではシェアハウスに泊まり、スケボーでジムに通っていました」

――いろいろと要素が多すぎるので、一つひとつ整理して良いですか(笑)。まず家族旅行も、サクラメントに行くためのものだったのですか。

「はい。もう向こうにいられる間に必要なものも全部持っていって」

――現地で見て、感じた日本のジムとアルファメールの違いを教えてください。

「まずジムの広さが全然違いましたね。あと人の多さもそうですし、何よりコーチがジャンルごとに一人ひとりいる。何か……楽しかったです。アルファメールの人たちは皆フレンドリーで、温かくて。日本って良くも悪くも真面目じゃないですか。もちろんアルファメールでも、皆やる時は真面目でやります。そんななかでも皆が笑顔で。だから楽しかったです。

【写真上】現地でお世話になった川原波輝と【写真下】アルファメールで練習した仲間たちとの集合写真。90日ほどの滞在だったが、大きな経験となったはずだ(C)ISHIHARA IRU

向こうでは波輝さんにお世話になりました。車で送り迎えしてくださったりとか。週末はジムがお休みなんですけど、自分はスケボーしか持っていなくて。どこか遠くに行けるわけでもないじゃないですか。すると波輝さんが車で、すごく景色が綺麗なところに連れて行ってくれて。すごく優しい人です」

――心温まる川原選手のエピソードです。と同時に、まず移動手段としてスケボーを選んだことも驚きます(笑)。

「アハハハ。自転車って高いじゃないですか。サクラメントに1年とかいるわけじゃないし、自転車を買うのは勿体ないなぁと思って。だけど歩いて通うには遠いから、現地でスケボーを買ったんです。それまでスケボーに乗ったこともなかったんですけど」

――えぇっ!?

「だから道路に出てしまったりとか、3回ぐらい事故りかけました(苦笑)」

――そのスケボーはサクラメントから日本に持って帰ってきたのですか。

「いえ、それが……シェアハウスを出る2日前に、朝起きたらスケボーがなくなっているんですよ。室内に置いていたのに。どうやら他の誰かが退去する時に、間違えて僕のスケボーも持っていったみたいで。実質、パクられました。結構気に入っていたのに」

自分はMMA甲子園のほうがレベルは高いと思っています

――想い出の品が残念な結果に……。キャリアの話に戻すとプロ5戦目はNEXUSで藤原俊樹選手と対戦し、初黒星を喫しています。

「気分は最悪でした。でも正直——去年はずっと勝っていたじゃないですか。だから気持ち的にも『自分はいけるだろ』と自信を持っていて。そのせいで、いつもと同じ練習をしちゃっていました。試合に向けて何も考えていなかったんです。いつもどおりやっていれば大丈夫だ、って」

――あの試合だけ距離の取り方が違いましたよね。前に出すぎていたように感じました。近くなったところでボディに左ヒザを食らってKO負け。MMA甲子園の頃から考えても、あのヒザをもらうような距離や位置で戦っていなかったはずです。

「そうなんです。試合中も――今までは絶対にチャレンジャーのマインドで頑張ろうと考えていました。でもあの試合は『ここで負けていたらダメでしょ。KOしないと』みたいな考えを持ってしまっていて。倒そうと焦っていたところを倒されました。

負けないに越したことはないけど、終わってみれば必要な黒星だったと思いますね。あの時はなんとなく気持ちもフワフワしていて。最近はFIGHT BASE都立大にも通っています。佐藤将光さんと話をしながら、前回の試合(今年9月、颯斗に判定勝ち)は良いマインドで戦うことができたし、なんとか勝つことができました」

――DEEP初戦をクリアし、ここでMMA甲子園×RIZIN甲子園という絶妙な試合を迎えます。

「最高ですよ。ずっと自分も『横内選手と試合させてください』とお願いしていました。横内選手も試合を受けてくれて感謝です。彼は知名度もあるし、『おにぎりくんと試合するの!?』って聞かれます」

――MMA甲子園×RIZIN甲子園という構図は意識しますか。

「自分はMMA甲子園のほうがレベルは高いと思っています。もし自分がRIZIN甲子園に出ていたら、そこでも優勝していたんじゃないかなぁと思いますし。どちらのほうがレベルが高いかはさておき、お互い思うところがある試合じゃないですかね」

――MMA甲子園に出ていた時、芝商業高校3年生でした。芝商業高校とニューピアホールはすぐ近くなのですね。

「メチャメチャ近いですよ。前回の試合、ニューピアホールに行く時『通学路だったなぁ』って思い出しました。そういう意味では、ニューピアホールはホームです(笑)。

今回は2試合目で、会場を盛り上げるような試合をしたいですね。おにぎり君って眉アートで眉毛を綺麗に形作っているじゃないですか。せっかく綺麗にしている眉毛のところを、思いっきりカットしてやろうかなって思います」

■DEEP129 視聴方法(予定)
12月14日(日)
午後4時35分~U-NEXT、サムライTV、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ

■DEEP129 対戦カード

<DEEPフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者] 青井人(日本)
[挑戦者] 水野新太(日本)

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
相本宗輝(日本)

<フェザー級/5分3R>
武田光司(日本)
奥山貴大(日本)

<バンタム級/5分3R>
石司晃一(日本)
河村泰博(日本)

<バンタム級/5分3R>
雅駿介(日本)
平松翔(日本)

<メガトン級/5分3R>
水野竜也(日本)
稲田将(日本)

<フライ級/5分2R>
杉山廣平(日本)
橋本ユウタ(日本)

<フェザー級/5分2R>
高橋正親(日本)
杉野亜蓮(日本)

<フライ級/5分2R>
横内三旺(日本)
石原射(日本)

<ライト級/5分2R>
荒井銀二(日本)
平石光一(日本)

<アマチュア フライ級/3分2R>
琥(日本)
斎藤冬翔(日本)

<アマチュア メガトン級/3分2R>
TAKUMA(日本)
ハチミツ大魔王(日本)

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