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【RISE194】島田知佳とアトム級王座をかけて対戦。平岡琴「ベルトを取ったら今までのすべてが正解になる」

【写真】同門の後輩=宮﨑小雪が長くベルトを保持するという複雑な状態が続いていた平岡。だからこそ今回の王座決定戦にかける想いは特別だ(C)RISE/Chiyo Yamamoto

14日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるRISE194の第3代RISE QUEENアトム級(46キロ)王座決定戦で平岡琴が島田知佳と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

平岡は空手のバックボーンを持ち、2018年からRISEに参戦。2020年2月に初代王者・紅絹が持つ王座に挑戦する判定負けでベルトには手が届かなかった。

その後は同門で後輩の宮﨑小雪が第2代王者となったため、ベルトに挑戦する機会を得られず。MMAグローブでの王座を目指すなど、独自の路線を進まざるをえなかった。そんな中、宮﨑の現役引退に伴い王座を返上。ようやく平岡にベルトを巻くチャンス=第3代王座決定トーナメントのチャンスが巡ってきた。

ベルトを争う相手は武尊や野杁正明を擁するteam VASILEUS所属、プロ戦績5戦5勝の島田。女子キック注目のプロスペクトを迎え撃つ形となる平岡は「小雪がずっと大切にしてきて、価値を上げ続けてくれたベルトを引き継いでいけるのは私しかいない」とベルトへの熱い想いを口にした。


初めてのタイトルマッチ、3Rにダウンを奪って試合中にベルトがことがちらついてしまった。その瞬間にベルトが離れていったと思う

――今日はRISEオフィシャルの取材のあとに時間をとってもらう形となりましたが、オフィシャルの取材でも「調子がいい」ということを何度も口にされていましたね。

「動きもそうなんですけど、気持ちが乗っているなと思いますね。気持ちが動きを引っ張ってくれている感じがあって、逆に動けすぎていて『ちゃんと追い込みできているのかな?』と疑ってしまいます(笑)。いつもだったら疲労が溜まって動けない時期なのにちゃんと動けちゃうので。だから周りに『ちゃんと追い込めてます?』と聞いて『いつも通りにやっているから大丈夫』と確認しながら練習していますね」

――現在平岡選手は3連勝中ですが、ご自身では何が要因だと思っていますか。

「連勝の理由はなんだろうな…最近は結構勝ちに徹していた部分はありましたね。タイトルにつなげるために勝たなきゃいけなかったので。私が負けるパターンは気持ちで行き過ぎて殴り合いに行って、逆に倒されちゃうことが多かったので、ずっと冷静に戦うことをテーマにやってきたんですね。そうやって自分の気持ちをコントロールできるようになったことが一つの勝因かなとは思います」

――例えば延長になっても慌てずにやるべきことをやって勝つ。そういった試合運びの巧さも出せるようになってきましたか。

「そうですね。ここ2試合は延長で判定勝ちすることが多かったんですけど、延長になったら絶対に負けないという自信もあって、それで冷静に戦えるようになっていると思います。あとはタイトルマッチが5Rなので、そこに向けて長いラウンドを経験する意味でも、延長になっても構わない前提で作戦を組んでいた部分もあります」

――平岡選手が初めてRISEでタイトルマッチをやったのが2020年2月の紅絹戦で、あの時は平岡選手が先にダウンを取ったにも関わらず逆転負けだったんですよね。

「私が3Rに先にダウンを取ったのですが、5Rにダウンを取り返されて判定負けでした。あの時は初めての5Rで、試合の作り方という意味でも自分で(試合を)コントロールできず、逆に紅絹さんにコントロールされていたのかなと。ベテランの試合の作り方のすごさを感じましたね。実際にあの時は3Rにダウン取って、今でも覚えているんですけど『この試合勝てる』『これでベルトだ』と思った瞬間があって、試合中にベルトのことがちらついちゃったんですよね。そうしたらベルトが離れていっちゃったという(苦笑)。今振り返ると試合に集中しきれていなかったと思うし、人間的に未熟だったと思います」

――もし3R制だったら平岡選手がダウンを取った時点で勝つ可能性がグッと上がるわけですが、5R制は残り2Rもあって一波乱も二波乱もある。初めての5Rではそこまでイメージできないですよね。

「そういう隙をしっかり突くことが出来るのがベテランの強さだと思うし、その部分ですごくやられたなっていうのはありますね」

ジムの中で私は『同門だけど小雪と戦いたい』という想いを伝えた。私も小雪も号泣しながら話し合った

――それ以降もRISEのベルトを目指していたと思いますが、同門で後輩の宮﨑小雪選手がチャンピオンになって長期政権を築くことになります。同門として応援する半面、宮崎選手が勝ち続ければ挑戦するチャンスもないわけで、どんな心境で日々を過ごしていたのですか。

「本当に複雑な心境でしたね。小雪がどんどん強くなって“絶対王者”と言われることは本当に誇らしかったし、チームメイトとしてはすごく嬉しかったのですが、一選手としては『私と試合していないのになんで日本一と言われるんだ?』という悔しさはもちろんありました。私自身、連敗した時期もありましたが、それ以降は勝ち続けてランキング2位の座をキープして、普通だったら挑戦できる立場にいるのに、同門だからという理由で挑戦できない。一時期は『同門とか関係ないからやろうよ』という気持ちになって(小雪と)複雑な関係になったこともありましたね」

――例えば主催者サイドに「同門でも戦うので試合を組んでください」と言ったことはなかったのですか。

「一度、ジムの中での話し合ったんですよ。そこで私は『同門だけど小雪と戦いたい』という想いを伝えたのですが、小雪本人の意思とジムの方針としては(同門対決は)やらせたくないということで……私も小雪も号泣しながら話し合いました。ただ最終的には同門対決は誰も幸せになれないからということで、私がOFGのベルトを目指す形でOFGの試合に行ったという経緯があります。小雪がいる間はアトム級のベルトのことは一度置いておいて、他で輝けるところを探しつつ…という感じでしたね」

――平岡選手にとって小雪選手はどんな存在ですか。

「どんな存在………私の中では妹みたいな感じですね。初めて小雪と会ったのは小雪が高校1年生ぐらいの時で、その時はまだ華奢でプロデビューもしてなくて、私たちが守ってあげなきゃいけない妹みたいなイメージだったんです。今もその感覚は抜けていないかもしれないですね。ただ小雪が間近にいることで、トップに立つ人間がどれだけ練習しているのか?やトップに立つ人間が感じるプレッシャーを身近で見ることが出来ました。こういう人間がチャンピオンになるべくしてなるんだという姿をずっと見せ続けてくれたので、後輩であり妹的な存在ですが、ファイターとして目指すべき選手像ではありましたね」

――同門・後輩であることはもちろん、リスペクトしている選手が巻いていたベルトだからこそ、自分が巻くことに意味があると感じていますか。

「めちゃめちゃ感じますね。小雪もそうですし、紅絹さんもそうだし、RISEアトム級のベルトは今まで私が本当にすごいなと思った選手たちがずっと巻いてきたベルトなんで、私はこのベルトを巻くことにものすごく価値があると思っています。しかも小雪がずっと大切にしてきて、価値を上げ続けてくれたものなので、それを引き継いでいけるのは私しかいないと思っています」

――ここまで紆余曲折もあったからこそ、今の自分が強くなれたと思いますか。

「いろんな経験をしたことは自分の強さになっていると思いますが、心の底からそう言えるのはベルトを取った時だと思います。ベルトを取ったら今までのことが全て正解になると思うし、だからこそ今回しっかり結果を出したいです」

私のように山あり谷ありで、いろんな挫折を味わって、それでも諦めずにずっと続けている選手に夢を託してくれる人もたくさんいる

――今回のタイトルマッチがラストチャンスだと言われることも多いですが、平岡選手自身はそのことはどう捉えていますか。

「もちろんその気持ちは強いですが、勝てばこの先に夢がつながっていくと思いますし、ここで勝ったからといって終わりだとも思っていないです。むしろベルトを取ってからがスタートだと思っているので、まだまだやれるところを見せたいなと思ってます」

――対戦相手の島田知佳選手はデビューから無敗でタイトルマッチまで辿り着いて、期待・注目を集めている選手です。ベルトを巻くことの難しさや重みを知っている平岡選手としては、それを知っている差や違いを見せたいですか。

「はい。そこはしっかりと見せたいですし、RISEのベルトはそんなに簡単に取れるものではないと思っています。島田選手はまだまだこれからチャンスがあると思うので、一回ここでベルトを取る難しさを勉強してもらって、もう一回並び直してほしいなと思います。今回は私が取らせてもらいます」

――同じ大会では小雪選手の引退式も行われ、その日に平岡選手がタイトルマッチを戦うことに感情移入するファンの人たちも多いと思います。どんな試合を見せたいですか。

「島田選手のように無敗で期待されている選手に夢を託す人もたくさんいると思います。でも私のように山あり谷ありで、いろんな挫折を味わって、それでも諦めずにずっと続けている選手に夢を託してくれる人もたくさんいると思います。私はそういう方たちの希望になるような試合をして、結果でしっかり証明したいと思っています。そういう執念の強さも次の試合では見てほしいです」

■放送予定
12月14日(日)
午後5時00分~ABEMA格闘チャンネル

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