【DEEP129】「大塚さんを信じているので、練習するだけ」青井人に挑戦。水野新太&大塚隆史、新師弟物語
【写真】取材が行われた月曜日の夜は、平本蓮率いるSTGジムでのレスリング打ち込み練習が行われており、練習後に対談は実施された (C)MMAPLANET
14日(日)に東京都港区のニューピアホールでDEEP129が行われ、メインで水野新太がDEEPフェザー級チャンピオン青井人に挑戦する。
Text by Manabu Takashima
DEEPフェザー級GP優勝という実績を引っ提げて水野が、青井に挑む。とはいえ、同GP開催の発表があった際に水野の評価は一番下だったといっても過言でない。
それが試合を重ねるたびに、明らかな成長を見せ3月の1回戦と8月の決勝ではMMAファイターとして、別人のような幅の広がりを見せていた。わずか半年の間の急成長の裏には大塚隆史との出会いがあった。
タイトル戦を前にして、強固な絆で結ばれた水野と大塚氏の話を訊いた。
「佐伯さんに『これ、全然持っていける自信あります。行きますよ、見ていてください』って話していたんですよ」(大塚)
――DEEPフェザー級トーナメント開催発表の時点で、NEXUSで3連勝後にDEEPで2連勝とデビュー以来5連勝中とはいえ、水野選手への注目度は高くなかったです。正直、自分たちMMAPLNAETでもそうでした。それが優勝した結果もそうですが、一戦ごとの成長がより印象深かったです。この3試合を経て、何がご自身のなかで大きく変わったと捉えていますか。
水野 一番大きかったのは、大塚さんとトーナメント1回戦前に出会えたことです。芦田(崇宏)選手との試合の時は週一でしたけど、海飛戦からはガッチリと指導してもらうようになって。それから自分のMMAのスタイルが、明確になりました。それまでは選手同士で練習をしていて、コーチという存在がいなかったので。正してくれるというか、大塚さんが一本の道にしてくれました。
大塚 実は芦田戦の前から彼が来るようになった時点で、佐伯さんに「これ、全然持っていける自信あります。行きますよ、見ていてください」って話していたんですよ。
――週一の練習で、そこまで水野選手のポテンシャルの高さを感じていたということでしょうか。
大塚 そこはトーナメントの出場メンバーを見て、水野君は打撃が創れて、組みも最低限できていたので。
――水野選手としては、大塚選手の指導に惹かれたのはどのような点だったのですか。
水野 良いところも悪いところも言ってくれたことです。そうやって見てもらうことも初めてでした。それが嬉しくて、一生懸命練習をするなかでどんどん大塚さんを信用するようになっていきました。
大塚 そういうことを求めていたんだと思います。僕は自分からずかずかと行く方ではなくて。それは平本(蓮)君もそうなのですが、彼が求めてくれたので良い関係になれました。水野君も「相手の研究をしてほしいです」とか「スパーリングに見に来てください」という風に言ってきて、本当に真面目に練習をする子なので、100パーセントで付き合おうと。
――そこから練習する度合いが増えたと?
大塚 ハイ、まずはスパーリングを見て、こういう動きをしてほしいということがあったのでリフティング系やジャンプ系などフィジカルを一緒にやるようになりました。今はフィジカルが週に2回、月曜日と火曜日。試合前は土曜日にトイカツ道場東中野にスパーリングも見に行っています。だから週に5セッション、一緒にやっています。
――水野選手は長身で細めという印象がありましたが、脹脛とかしっかりとしていますね。
大塚 脚は強いです。ただ身体能力だと、もっと高い選手はいます。それでも根本的に体が強くて、ケガをしない。だから、練習も量をこなせる。狂ったような量の練習ができるのも気が強いのと、勝負強さがあるからだと思います。
――格闘技歴がなくMMAを始めたということですが、ベースがないことの長所と短所はありましたか。
大塚 強いベースがあって、それが利点になっている選手は当然います。ただ柔道で国内トップだった選手は首を巻いてしまったり、小手投げに拘ってしまったり、クセが抜けないようなことがありますよね。レスリングでもクラウチングだから、打撃がぎこちなくなるとか。修正しないといけない場合もあります。特に全日本王者クラスになっていると、抜けない人が多いです。
対して格闘技経験のない人は、全ての面で積み上げていかないといけない。一番は組みですかね。組みは時間が掛かるので。水野君の場合はバカみたいな練習量でカバーをしています。もちろん、まだまだこれからなんですけど。
「組みで攻めることを指導してもらい、MMAでの攻め方、その考え方が吸収できた」(水野)
――1月中旬に出場メンバーの発表があり、決勝は8月。優勝してタイトル挑戦と、この1年は対戦相手が決まっているなかで練習をしてきたと思いますが、その対策練習も成長を促したということでしょうか。
大塚 打撃のスパーを見てあまり危ない場面がないので、オフェンスとディフェンス。組みの底上げを第一に考えました。やはり、そこが僕の知識と経験が一番生かせるので。やっぱり見ていると、ダメな動きはありましたし。その局面では、してはいけない動きをするとか、そこをまず修正しました。
――組みの練習が必要だということを、水野選手も自覚していたのですか。
水野 それはしていました。背が高いから、下から潜られてしまって。アマチュアの時に、負けるのはそのパターンでした。だから組みをしっかりとやりたいと思っていました。
大塚さんには、組みで攻めることを指導してもらい、MMAでの攻め方、その考え方が吸収できたと思います。それが防御力の強化に通じていました。以前はディフェンスしかやってこなかったんですけど、自分から攻めることで理解が深まってディフェンス力も上がったと思います。その結果、ファイターとして幅が広がりました。
大塚 水野君はストライカーだから打撃で試合を組み立てる選手です。でも、MMAを続けていると水野君を上回るストライカーは当然出てきます。その時、どうすれば良いのか。とことん打撃で勝負するのか。テイクダウンという武器を増やすのか。トーナメント準決勝の海飛選手との試合は、打撃はやや向うが上かというのがあったのでテイクダウンを混ぜて行くプランで戦いました。
――海飛選手との試合は、相当にしんどい試合を課していたようにも見えました。
大塚 水野君はかなり人間離れした練習量をこなせるんですよ。休まずに連続で動いて、それでもオールアウトはしない(※出し切らない)。「もう無理だ」ってならない。
――それが先ほどから度々出てきた尋常でない練習量を誇るという部分ですね。
大塚 ハイ。逆にいうと超瞬発力型ではなくて。でも、ずっとスパーを続けることができちゃうんです。テイクダウンは疲れるけど、それを続けることができるスタミナがあるので。そのスタミナを生かすには、組みを混ぜること。海飛戦は実戦で良い具合に試す機会が得られたと思いました。
水野 テイクダウンを仕掛けても、切られる。切られてからが、勝負だよ。切らせることに意味があるからね。大塚さんにそう言われて、あの試合は戦いました。
――疲れる怖さはなかったですか。
水野 疲れると思って戦っていました。それが当然だと。
大塚 海飛戦の前は5分3Rのスパーリング、全てを入らせて。3Rをやり切れていましたからね。切られて良いマインとで、でも序盤から入っていく。テイクダウン狙いを切っていると相手は疲れる。そうなると、無尽蔵のスタミナで2Rの後半から持っていける、と。
「やり切らないということが、できないんです。全部、全力でやらないと」(水野)
――8月ですかね。弥益ドミネーター聡志選手の取材でトイカツ東中野を訪れた際、週末に高橋遼伍選手との決勝を控えていた水野選手がなかなか強度の高い打撃の練習をしていて驚いたことがありました。
水野 あれぐらいは、いつもやるッスね。中途半端が苦手というか……。どの練習に対しても、やり切らないと済まない人間なんで。HALEOのストレングス・トレーニングにしても、その日一番早い練習で、他にもMMAスパーだとか、レスリングの練習があります。3部練の最初がフィジカルでも、次の練習のことを考えないでやりきる。やり切らないということが、できないんです。全部、全力でやらないと。
大塚 以前は1週間ずっと練習をして、1日も休息日を創っていなかったよね。
水野 ハイ。
大塚 本当に動けなくなると、休む。そんな風にとんでもない練習量をこなしているから、「1週間に1日は休んでくれ」と話しました。あれは確か……。
水野 海飛戦の前でした。
大塚 そこで初めて、週に1日は休むようになったはずです。でも、ここまで練習をする若いヤツが来ると嬉しかったですね。フィジカルトレの日に、蜂窩織炎で足首がパンパンになっていると「足が痛いので、上半身で出来ることないですか」って足を引きずってやって来たんですよ。あの時も、「いや、すぐに病院に行け」って……(苦笑)。そこまで練習をする人間だから、僕としては指導しやすいです。
――より組み力が強い選手と戦う日もくる。そこも頭に置いて、指導してきたのでしょうか。
大塚 それこそ決勝の高橋選手との試合は、組んでくることを想定していました。高橋選手が準決勝の五明(宏人)戦で、かなり良いテイクダウンとコントロールをしていたので。
――相手のスタイルとタイミング、どちらも合致したトーナメント3試合を経て、タイトル戦です。この間の成長をぶつける場でもあるかと思います。
「全部です。全部で上回っていると思います」(水野)
水野 青井選手は打撃も組みも混ぜた総合でやってくると思います。それを全て受け止めて、打ち返したい。自分のトータル的なMMAを見せたいです。
――現状、青井選手に対してアドバンテージがあるのはどの点だと考えていますか。
水野 全部です。全部で上回っていると思いますが、向うもチャンピオンなので……2年前のBLACK COMBATとの対抗戦の時(シン・スンミン戦。3RTKO勝ち)は、凄かったです。あの時の青井選手をイメージしています。そうなると、かなり激しい試合になりますよね。ただ海飛戦で最後、熱くなりすぎて一発被弾してしまったので。あの反省点を生かして戦おうと思います。
「コレスニック、ノジモフ、ケラモフ、ラシェイドゥラエフ達と戦う。そんな遠い日じゃないですよ」(大塚)
――ここでチャンピオンになった後、どのようなキャリアアップをしたいと考えていますか。
水野 ROAD TO UFCとRIZINという選択肢があると思いますが、僕のなかでは日本で試合をしたいという気持ちの方が大きいです。ただチャレンジできるなら、したい。そういう気持ちもあるし。そこはまだ分からないです。タイトル戦が終わってから話し合って決めて行こうと思います。ただDEEPでやらないといけない相手もいて。
――それはやはり……。
水野 ハイ、相本(宗輝)さんですね。
――トーナメントで戦えなかったことが、心残りに?
水野 いえ、そういうことではないです。逆に注目度が上がってラッキーでした。相本さんが欠場になった時、トーナメントの価値が落ちたみたいなことを言われることもあって。それにムカついていたのですが、芦田選手に勝ってから僕のことを見てもらえるようになりました。トーナメントでなくても、いつか戦うことになるという気持ちだったので、相本選手の欠場は特に残念とかはなかったです。
――大塚さん的には、水野選手の器としてどのような将来を考えていますか。
大塚 僕はどこで戦うべきだとか、どこのチャンピオンを目指そうとかないです。ただ強さ的にいうと、UFCフェザー級、国内だったらビクター・コレスニック、イルホム・ノジモフ、ヴガール・ケラモフ、ラジャブアリ・シェイドゥラエフ達と戦う。そこら辺を見ています。そういう選手たちとやり合えるようにすることを、頭に置いています。
そんな遠い日じゃないですよ。身に着けるべきモノを見に付ければ、全然勝負できると思っています。
――という大塚さんの言葉を聞いて、いかがですか。
水野 僕は大塚さんを信じているので、その通りになるように練習するだけです。
――押忍。では最後に今回のタイトル戦に向けて意気込みの方をお願いします。
水野 タイトル挑戦が決まってから4カ月。チャンピオンとは何かと考えるようになりました。色々な考え方があるスけど、僕の中でのチャンピオン像を意識しながら4カ月を過ごしてきました。それが正しいのか、答え合わせになります。しっかりチャンピオンになって、皆が喜んでくれる姿が見たいです。
■DEEP129 視聴方法(予定)
12月14日(日)
午後4時35分~U-NEXT、サムライTV、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ
■DEEP129 対戦カード
<DEEPフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者] 青井人(日本)
[挑戦者] 水野新太(日本)
<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
相本宗輝(日本)
<フェザー級/5分3R>
武田光司(日本)
奥山貴大(日本)
<バンタム級/5分3R>
石司晃一(日本)
河村泰博(日本)
<バンタム級/5分3R>
雅駿介(日本)
平松翔(日本)
<メガトン級/5分3R>
水野竜也(日本)
稲田将(日本)
<フライ級/5分2R>
杉山廣平(日本)
橋本ユウタ(日本)
<フェザー級/5分2R>
高橋正親(日本)
杉野亜蓮(日本)
<フライ級/5分2R>
横内三旺(日本)
石原射(日本)
<ライト級/5分2R>
荒井銀二(日本)
平石光一(日本)
<アマチュア フライ級/3分2R>
琥(日本)
斎藤冬翔(日本)
<アマチュア メガトン級/3分2R>
TAKUMA(日本)
ハチミツ大魔王(日本)
















