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【DEEP129】6年振りのDEEPで仕切り直し。武田光司「めちゃくちゃ飢えていますね。全員食ってやるよ」

【写真】 充実さとやる気に満ち満ちた言葉が聞かれた(C)MMAPLANET

14日(日)に東京都港区のニューピアホールでDEEP129が行われ、武田光司奥山貴大と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

デビュー前から所属していたBRAVEを離れ、フリーでの活動を経て、今年2月にTRIBE TOKYO MMA所属となった武田。その初陣となった5月のRIZIN韓国大会でのジ・ヒョクミン戦では勝ちを掴むことが出来なかったが、6年振りに古巣であるDEEPで復帰することが決まった。

出稽古中心だった練習環境を一新し、練習のすべてをTRIBEに集約。武田は「TRIBEは僕に必要なピースがたくさん落ちている場所」と語る。2026年の巻き返しに向けた第一歩となる奥山戦を前に武田に話を訊いた。


TRIBEという長南さんの船に乗ったわけだから、今は長南さんの言うことが全て

――5月のRIZIN韓国大会以来の試合が近づいてきました。韓国大会後に首を手術されたんですよね。

「あの試合が終わった後に首の調子が悪くて、右手の握力が下がってしまったんですよね。それで病院に行ったらヘルニアだと診断されて。もともと今年の始めに首のヘルニアで手術していて、そことは違う場所を痛めてしまった感じですね」

――それは長年の蓄積もあるのでしょうか。

「それもあるとは思うんですけど、今まで一度も首を痛めたことはなかったんです。それが今年に入って二回もやっちゃって…。今年は怪我や色んなことを向き合いながら、ここまでやってきました」

――年内の復帰は想定されていたのですか。

「想定していなかったですね。むしろ7月の頭に手術をして、年内は試合はやらないつもりだったんです。ただリハビリを通じて大分治りもいい感じで、自分のなかでいけるなって感覚があって。それで長南(亮)さんから試合どうする?という話があって、その流れでDEEPで復帰することになりました」

――RIZINではなくDEEPで復帰することになったのは時期的な部分ですか。

「もちろんRIZINで復帰する話もちょこちょこしてもらっていたんですけど、去年くらいかな、僕自身は佐伯(繁)さんに『いつかDEEPに出たいです』という話はしていて、色んなタイミングと巡り合わせでDEEPで復帰することになりました」

――改めてですが今年からTRIBE TOKYO MMA所属となり、練習環境もガラリと変わったと思います。武田選手自身、どんな変化がありましたか。

「去年の7月にBRAVEを辞めて、しばらくフリーとして活動していたんですけど、BRAVE時代から色々なジムで練習していたんですね。しかもBRAVEは支部も多かったので、当時から練習場所が多かったんです。でもTRIBEに入ってからは全て練習が一カ所で完結している感じです。以前は『今日は誰々と練習するからここに行って…』というスタイルでしたが、今は色んな選手がTRIBEに来てくれているので、他のジムに練習しに行く必要もないですね」

――なるほど。では移動時間もぐっと減って、生活のサイクルそのものも変わったのではないですか。

「めちゃくちゃ変わりましたね。フリーの時は午前中から練習を始めて、遅くても夕方6時~7時には練習が終わっていたんです。でも今はTRIBEで午後と夜に練習するので、夜の10時くらいに練習が終わる感じです。

例えば今日(金曜日)の昼間はプロ選手がフリーで練習する日なんですけど(後藤)丈治と永井(奏多)くんとミット打ちと打ち込み中心に1時間半くらいやって、そのあたりも上手く調整しながら必要な練習が出来ていますね。いずれ出稽古に行くことがあるかもしれませんが、自分はTRIBEという長南さんの船に乗ったわけだから、今は長南さんの言うことが全て。

石の上にも3年じゃないけど、所属になった以上はTRIBEで腰を据えて練習することが筋だし、TRIBEは僕に必要なピースがたくさん落ちている場所なので、それを拾って磨き上げる期間だと思っています」

TRIBEの選手はストライキングが強いからMMAが出来ないわけじゃなくて、MMAが出来た上でストライキングが強い

――色々な選択肢がある中でTRIBEを選んだ理由は何だったのですか。

「フリーの時に1回だけTRIBEにお邪魔することがあったんですけど、ジムを転々とするのではなく練習を見てもらえる人がいる練習環境がいいなと。それで長南さんにDMして、という流れです。TRIBEを選んだのは……フィーリングですかね。僕がBRAVEに入ったのも地元の後輩が先にBRAVEに入っていて近所だったからというのが理由で、宮田(和幸)先生がジムの代表をやっていることも知らなかったんです。

そうやって直感で選択して、それがいい方向に転ぶことが多いので、そういう直感も含めて長南さんのところにお世話になろうと思いました」

――TRIBEの練習、どのような点が武田選手の必要なピースになっているのでしょうか。

「TRIBEの選手はどちらかというとストライキングが強くて、僕は組技系じゃないですか。僕にないものを持った選手が多いんですよね。だから最初はポンポン打撃をもらっちゃっていました。でもその中で組むための打撃やしっかり打撃を当てるための組みを考えるようになって、それがまさに自分に必要なピースだったんですよね」

――なるほど。

「しかもTRIBEの選手はストライキングが強いからMMAが出来ないわけじゃなくて、MMAが出来た上でストライキングが強いというか、ストライキングが目立っているだけで、みんなMMAのスキルが高いんですよね。そこにレスリングがベースの僕が入ることで、みんな僕にレスリングのことを聞いてくるんですよ。みんな同じジムの仲間だから、そこはお互いに技術を教え合って、いい意味でミックスアップできていると感じます」

――永井選手を取材した時に「武田選手からレスリング技術を教えてもらっている」と話していて、まさに今の武田選手の言葉と同じですね。

「永井くんがそう言ってくれているんだったら嬉しいですね。年齢・キャリア関係なく永井くんから学ぶこともあるし、本当にTRIBEには色んな選手がいるんですよ。萩原(京平)選手みたいなリーチが長いストライカーもいるし、修斗で活躍している後藤亮は柔術がめっちゃ強いし、エフェヴィガ雄志はバケモノだし。さっきの表現を使うと色んなパズルのピースを持った選手たちがいるから、それが集まるとハマりますよね」

――日々の練習で自分に足りないものが埋まっている感覚もありますか。

「どうなんですかね。そこは試合で見せるしかないと思います。いくら練習で動きがよくなっていても試合で見せられなかったら意味がないので」

お前には無理だよという人もいると思うけど、今に見とけよって

――さて今大会ではシュートボクシング日本ウェルター級王者の奥山選手と対戦することになりました。奥山選手にはどんな印象を持っていますか。

「特にないですね。もちろん試合を受けてくれてありがとうございますという気持ちはあるし、相手のことを舐めているわけではないですが、今は自分のことにしか興味がないという感じですね。試合が決まった時は映像も見ましたけど、参考にはしてないです」

――今日のインタビューにもつながるところで、試合における軸が対戦相手ではなく自分に置いているということですよね。

「はい。自分がやってきたこと、やっていることを出せば結果は自ずとついてくると思っています」

――先ほどは「石の上にも3年」という言葉も出ましたが、TRIBEに所属してからは自分と向き合った時間が続いているのかもしれないですね。

「そうですね。フリーは気軽に何でも出来たし、コーチはコーチでいたので、すげえ良かったんですよ。ただなあなあになっていた部分もあって。僕はまだ縛られている方がいい人間なんじゃないかなと思います。そういう意味では厳しく指導してくれる長南さんは最高ですよ」

――武田選手は今回の試合をクリアしてから、どこを目標に戦っていこうと思っていますか。

「ちょっと話がそれちゃうんですけど、僕は6歳からレスリングを始めて人生の半分以上をスポーツに費やしてきて、死ぬまで格闘技を続けることは無理というか、今の体のコンディションをキープして試合を続けることには賞味期限がある。僕の賞味期限は長くはないし、あと何年やれるかと言われたら5年もないと思います。

その中で僕はMMAを始める前からUFCという目標と掲げている目標があって、そこに辿り着くためにはどの団体で戦うかは関係なく、とにかく勝ち続けるしかねえだろって。それで今回は6年ぶりにDEEPに出ることになって、この6年間僕がどこで戦っていたかと言ったらRIZINだから、そこでやっぱり勝ち切らないと。RIZINのベルトを巻きたいですよね。最近はこういう発言を控えていたんですよ。でも口に出さないと夢は実現しないし、何を目指しているかも分からないじゃないですか。

やっぱりやるからにはトップになりたいし、ベルトを巻きたいです。今のお前には無理だよという人もいると思うけど、今に見とけよって。今はなにくそ魂でやっていますよ。僕は一時期勝ったり負けたりでもチヤホヤされていて、それは自分でも分かっています。で、今はどん底にいる状況だけど、それが逆に良かったかもしれないです。こういう気持ちになっているので」

――凄くハングリーに感じます。

「めちゃくちゃ飢えていますね。全員食ってやるよって。美味いものを食う時って歯がよくなかったら食えないし、自分自身に目を向けてないと食えないわけじゃないですか。そういう意味でも今は自分自身をしっかり磨く時間で、試合までラストしっかりやりきろうと思います。

そうすればいい景色を見られると思うし、僕自身もファンのみんなもいい僕を見ることが出来ると思います。本当に今は自分が軸になっていて、そこを軸に色んなものを回してくれているのがここなんで、自分を信じてやるだけですね」

――2026年の武田選手は貪欲にガツガツ行く、と。

「僕も勢いでいける年齢ではありますけど、勢い“だけ”でいける年齢ではない。深い話になっちゃうんですけど、絶妙な精神状態をしっかり保った上で試合をします。今は気持ち的にすごく高まっているし、殺気立っているんですよ。でも冷静さを忘れず狩りをする。落ち着いてやるべきことを遂行する感じですね」

――次の試合では様々な面で今までとは違う武田選手の姿を見ることが出来そうですね。

「なんか落ち着いていますね、平常心で。相手は僕のことを食ってやろうと思っているだろうけど、俺のことを食えるのか?と。そもそも僕は僕のことしか見ていません。ぶっ飛ばす……そういうところではなく、自分を信じて自分のやるべきことを任務遂行するだけです」

■DEEP129 視聴方法(予定)
12月14日(日)
午後4時35分~U-NEXT、サムライTV、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ

■DEEP129 対戦カード

<DEEPフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者] 青井人(日本)
[挑戦者] 水野新太(日本)

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
相本宗輝(日本)

<フェザー級/5分3R>
武田光司(日本)
奥山貴大(日本)

<バンタム級/5分3R>
石司晃一(日本)
河村泰博(日本)

<バンタム級/5分3R>
雅駿介(日本)
平松翔(日本)

<メガトン級/5分3R>
水野竜也(日本)
稲田将(日本)

<フライ級/5分2R>
杉山廣平(日本)
橋本ユウタ(日本)

<フェザー級/5分2R>
高橋正親(日本)
杉野亜蓮(日本)

<フライ級/5分2R>
横内三旺(日本)
石原射(日本)

<ライト級/5分2R>
荒井銀二(日本)
平石光一(日本)

<アマチュア フライ級/3分2R>
琥(日本)
斎藤冬翔(日本)

<アマチュア メガトン級/3分2R>
TAKUMA(日本)
ハチミツ大魔王(日本)リロン・サントス(ブラジル)

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