【DEEP128】大原樹理と暫定王座を争う神田コウヤ「左右の対称性を最強のワンパターンとして落とし込む」
【写真】自分のスタイルを確立させてきている神田。ライト級でその真価が発揮される(C)SHOJIRO KAMEIKE
11月2日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP128で、神田コウヤが大原樹理と同ライト級暫定王座を争う。
Text by Shojiro Kameike
昨年7月、神田は木下カラテ戦で前日計量をクリアできず、即ライト級転向を決意した。Raoda to UFCでの敗退、青井人にDEEPフェザー級のベルトを奪われ、木下戦では計量オーバー&3連敗となり、失意と不安の中でライト級へ。新天地で2連勝を収めたあと、今回はDEEP復帰第一戦となる大原との暫定王者決定戦に臨むこととなった。元DEEP&韓国ブラックコンバット王者の大原を相手に、自身が追い求める「左右の対称性」を発揮することはできるか。神田がライト級転向後と、大原戦への決意を語る。
自分は格闘家でありたいし、戦い続けたい。そのために残された選択肢はライト級転向しかなかった
――改めてフェザー級時代とライト級転向後の試合を見比べると、やはり体の厚みが全く違いますね。よくフェザー級で試合をしていたな、と感じるほどで。
「そうですよね。自分も最近、『あの頃は無理していたんだな』と感じます」
――ライト級の試合に向けて調整する場合、練習中の動きもフェザー級時代とは違いますか。
「全然違います」
――減量幅も変わったのでしょうか。
「フェザー級の終盤は通常体重が75キロ、今は78キロぐらいですね」
――フェザー級時代は75キロ→65.8キロ、ライト級では78キロ→70.3キロなので、減量幅としては2キロほど違うわけですね。ライト級転向に際し、体づくりも変わりましたか。
「はい。まず消費カロリーより摂取カロリーを増やして――栄養素でいえば、より脂質を摂るようになりました。フェザー級時代は、なるべく脂肪を削っていたんです。でも脂肪を減らすためには、少なからず筋肉も減ってしまうもので。だから筋肉をつけるためには、脂質も増やす。男性ホルモンの分泌、テストステロンを上げるためには、しっかり脂質もタンパク質も摂らないといけないですからね。
ただ、ライト級に転向してからまだ1年は経っていないけど、体づくりという面では1年以上続けていました」
――なるほど。ライト級初戦は結果こそ負傷判定でしたが、ウェルター級から落としてきた山田選手に対して体の強さは負けていなかったように感じます。
「あまり力負けなどは感じませんでした。でも、やっぱり実際にライト級で相手と向き合ってみるまで、怖い部分もあって。だけど自分は格闘家でありたいし、戦い続けたい。そのために残された選択肢はライト級転向しかなかったので」
――それが結果こそ負傷判定であれ、勝利したことでホッとした気持ちもあったのではないですか。
「その時はまだ確信はなかったけど、山田選手って僕と試合をしたあと2連勝しているじゃないですか。振り返ってみて初めて分かることもありますよね。次の佐々木選手との試合で確信に変わりました。自分の中では久しぶりのKO勝ちだったから手応えも感じて、メチャクチャ気持ち良かったです(笑)」
――佐々木戦後は試合後、珍しく感情を爆発させていました。
「あの試合で吹っ切れたというか――それまで、ずっとモヤモヤしたものがあったんですよ。もともと減量で苦しんでいて、3連敗で計量オーバーもしてしまいました。さらにライト級転向初戦がローブローで終わってしまい……本当にずっとモヤモヤしていて。それが佐々木戦のKO勝ちで吹っ切れたんですよね。自分の中にあった鬱憤が、全て浄化されたような気がしました」
――山田戦から佐々木戦まで8カ月の試合間隔がありました。それだけの間、ずっとモヤモヤしていたのですか。
「実は山田戦で右拳を痛めていたんですよ」
――えぇっ!?
「試合中はアドレナリンが出ていたから痛みもなくて。ただ、終わってから右拳が痛い。その結果、人生で初めて手術を経験しました。佐々木戦は、そういう状態からの復帰戦だったので不安もあったんですよね」
――ちなみに神田選手は自分の中にモヤモヤしたものがあった場合、感情が表に出てしまうタイプですか。
「いえ、あまり出ないんじゃないですかね。特に右拳を負傷した時は――もともと自分の場合は『練習しなくていい』という選択肢はなかったですよ。毎日ジムに行って、クラスの指導があったあと、そのままの流れで練習に入るので。『練習しなくていい』という選択ができたのは、その時が初めてでした(笑)。そうやって休めるのも、良い心の休養だと捉えていましたね。もちろん勝っていたからこそ、ですけど」
――確かに。心の休養の間に得ることができたものはありますか。
「計量オーバーをやらかして、すごく不安のなかライト級初戦に挑みました。そのあと心の休養ができたからこそ、8月の佐々木戦から3カ月弱のスパンで次の試合に臨めるんだと思います」
大原選手に勝って2階級制覇し、自分も『誰も真似できない』と思われるようなことをしたいですね
――その3カ月後の試合で大原選手と対戦、しかも暫定王者決定戦というのは驚きました。
「8月の試合が終わったあと年内にもう1試合したいとアピールしたら、プロモーターサイドから大原戦のお話を頂きました。その時はまだノンタイトル戦という話でしたけど、話が進んでいくうちに暫定王座戦になって。
DEEPのベルトって、そう簡単に巻けるものじゃない。それは自分が一番身に染みて分かっています。僕がライト級のベルトに挑むためには、少なくとも3R戦で3連勝ぐらいはしないといけないと思っていました。だから2026年の上半期ぐらいには、ベルトを巻けたら良いなぁという計画は立てていたんです。それがまさかこのタイミングでチャンスが来るとは思っていませんでしたね。
そういう形で、いろんな要素が重なりました。大原選手はずっと韓国で試合をしていて、日本のDEEPで戦うのが久しぶり。自分も年内にあと1試合したい。そういった色んなタイミングが化学反応を起こしたというか、まさに巡り合わせで」
――神田選手は木下戦の前から「左右の差をなくす」と言っており、最近では「左右の対称性」という言葉を使っています。当時から流れるようなスイッチを見せていましたが、最近ではオーソドックスでもサウスポーでもなく、正面立ちの時がありますよね。
「あぁ、そうですね。そういう時もあります」
――神田選手の場合は流れるようなスイッチ、あるいは正面立ちができるのは、レスリングの強さを持っていることも大きいかと思います。
「あぁ、そうかもしれないです。打撃戦で相手の重心が高くなったところに、一瞬で入ることができたりとか。逆も然りで、僕の重心が高くなった時に相手が入ってきても大丈夫です」
――とはいえ打撃がある競技で、正面立ちで両足が揃った時などに相手のパンチを食らうと怖いです。その点については、どのように考えていますか。
「う~ん……、考えていないかもしれないです」
――というと?
「試合中は特に考えているわけではなく、かといって迷いながらでもなく、感じながら動いています。そのなかで一番効率の良い動きを求めて、今の状態に辿り着きました。正面立ちも自分の中では危なくないようにスイッチしています。
だから今は、一つの理想的な形に近づいているのかなって思います。階級を上げたらスタミナや瞬発力も上がる。プラス、マインド的には積極性が練習の時から高まっていて。その点を考えると、次は今までと違う試合を見せることができると考えています。
とはいえ、まだライト級のトップ選手とは戦っていないですからね。大原選手を相手に、その戦いができるのかどうか。やっぱり試合を観るだけでは分からないことが多すぎるので、実際に向かい合ってみないと――」
――ベルトを賭けて戦う前にもっと試合数をこなし、そのスタイルを試したかったという気持ちはありますか。
「いや、今タイトルマッチができて良かったです。前の試合で久しぶりにフィニッシュし、そのメンタルのままで。間に試合を挟むと、また何か違ってくるかもしれないですしね。大原選手についてはファイターとしても人間的にも尊敬していて、それだけの選手とベルトを賭けて戦うことができるのが嬉しいです」
――神田選手の「左右の対称性」について、大原選手は大会トレーラーでも「やれるものなら、やってみろ」と発言しています。
「自分の中では、あまり……大原選手も盛り上げてくれているから、それも嬉しいです。自虐的に『自分には打撃しかないから』と言っていたじゃないですか。大原選手って謙虚だな、と思いました」
――そう受け取る神田選手も、すごく謙虚だと思います(笑)。大原選手はMMAPLANETのインタビューで「自分は最強のワンパターンで良い」と言っていました。
「それが一番強いと思いますよ。相手が分かっているのに掛かるのが本当の技だと思うし、誰に対しても同じ戦い方ができるのは……それこそが『強さ』ですよね。
ただ、僕も同じ動きを試合で繰り返して、それが効率化されて試合に出ているんですよ。だからワンパターンといえば、ワンパターンで。自分の中で『左右の対称性』を最強のワンパターンとして落とし込めている――かどうか、それを試合で証明したいですね。勝たないと何も言えないですから。
大原選手は誰も真似できないことをやってきた選手です。60戦も試合をして、DEEPのチャンピオンにもなった。それも簡単にベルトを巻いたわけではなく、敗戦から強くなって。さらに韓国でベルトを獲るとか、誰も真似できないキャリアを築いています。その大原選手に勝って2階級制覇し、自分も『誰も真似できない』と思われるようなことをしたいですね」
――大原選手に自身のスタイルを展開できるか、とても楽しみです。最後にMMAPLANET読者の皆さんへメッセージをお願いします。
「木下選手との試合前にインタビューしていただいて、偉そうなことを言っていたのに計量オーバーしてしまい、申し訳ありませんでした。僕はファイターなので、戦うことでしか償えません。『あの野郎!』と思った人も、『また頑張れ』と思った人も、僕の戦いを見届けてほしいです。命を懸けて戦います」
■視聴方法(予定)
11月2日(日)
午後5時35分~U-NEXT、サムライTV、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ
■対戦カード
<DEEPライト級暫定王者決定戦/5分3R>
大原樹理(日本)
神田コウヤ(日本)
<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
椿飛鳥(日本)
<ライト級/5分3R>
大木良太(日本)
倉本大悟(日本)
<ライト級/5分3R>
北岡悟(日本)
山田聖真(日本)
<フェザー級/5分2R>
直樹(日本)
三井俊希(日本)
<バンタム級/5分2R>
高野優樹(日本)
山本有人(日本)
<59キロ契約/5分2R>
木村琉音(日本)
火の鳥(日本)
<メガトン級/5分2R>
誠悟(日本)
バッファロー(日本)
<バンタム級/5分2R>
寺崎昇龍((日本)
唐沢タツヤ(日本)
<アマチュア フェザー級/3分2R>
大越充悟(日本)
マイティ・saw(日本)
<アマチュア フライ級/3分2R>
大将(日本)
金子蒼空(日本)




















