この星の格闘技を追いかける

【ONE173】ショートノーティス出場、平田樹戦へ。澤田千優「早い段階でパウンドアウトか一本勝ち」

【写真】愛犬ワイマラナーのゾーイ君と。クールに平常心っぽくもあった澤田 (C)MMAPLANET

16 日(日)、東京都江東区の有明アリーナで開催されるONE173。日本史上を狙ったONEのメガショーは17試合のロングラン・イベントで世界戦がキック、ムエタイ、MMAで5試合が組まれている。

Text by Manabu Takashima

そのなか前半戦に集中するMMAワンマッチ、第2試合で澤田千優平田樹と戦う。10月30日、大会まで約2週間でオファーを受けた澤田はタイトルを狙うファイターとして、今回の試合をどのように受け止めているのか。

言葉丁寧に話す澤田が、ある一つの問いに対してだけ感情を露わにした。


強いから試合が組まれているのではないということは明確に分かっているので

――7月にマカレナ・アラゴンに勝利した時、既に11月の日本大会は決まっていましたが、澤田選手自身は年内の活動はどうなると考えていたのでしょうか。

「当然勝つと思って戦っていたのですが、想像以上に上手くいって一本勝ちができました。だからこそ、日本大会はあるかなっていう期待はありました。あと、ボーナスをもらえるかもって(笑)。この勝ち方なら、日本大会で試合を組まれるだろう。ハム・ソヒ選手と組まれないかなとか考えてはいました(笑)。

でも結果的にはどっちも叶わなかったです。三浦(彩佳)選手の世界挑戦がなくなった時に手を挙げてみたりとかしても、無視されちゃったので(笑)。そんななかで平田選手と急遽戦うことができるようになった形です」

――日本大会当確ラインの日本人選手は、この前後の大会のオファーがあった事例もあります。澤田選手の場合はいかがでしたか。

「そういう話もありました(笑)。1カ月弱の準備期間ですけどオファーがあったことは嬉しかったです。ただ(松嶋)こよみ君の試合が予定されていて、良太郎さんも含めセコンドにつけるタイミングとか、仕上げることも難しいと感じてお断りというか、日本大会より後に戦わせてもらえないでしょうかという風に返答をしていました」

――選手の気持ちは考えると複雑ではありますが、そのような形で保険を掛けておくことはプロモーションとして間違っていないとも思います。ただ日本大会出場が平田選手あり気のショートノーティス・オファーを澤田選手がどのように捉えているのでしょうか。

「それはこれまでの平田選手のONEでの功績なので。平田選手に関して、何も思うところはないです。なんというのか……強いから試合が組まれているのではないということは明確に分かっているので。だから、そういうことは何も思わないです。

ただ暫定王座戦が必要な状況になったのだから、日本で日本人対決を呼び掛けた。そこには反応にしてほしかったという気持ちの方が大きいです。あの時に『あぁ、そういうことじゃないんだ』と気持ちの整理もつけることができましたね」

――実際のオファーはいつ頃だったのですか。

「10月30日の木曜日です。その日のうちに『できます』と返答しました。契約を交わして、土曜日に発表されたのかな? さすがに2週間前のオファーがあるとは思っていなかったですけど、万が一あるかもしれないので毎日練習はしていました。

以前、デニス・ザンボアンガと暫定王座決定戦のオファーが3週間というタイミングで貰ったことがあって。でも、チャンピオンを目指すだけの練習はしていなかったのでチームで話し、断りました。こうやってオファーがあったのだから、またチャンスは巡ってくると思って。しっかりと準備ができていない状況で試合はしたくなかったです。

今回は練習ができていたので、ハム・ソヒ選手やスタンプ(フェアテックス)選手だったとしても私はやりたいという気持ちでいたと思います」

――すぐにスイッチが入るモノなのですか。

「良い意味ではなく、『力んでいる』と良太郎さんから指摘されました」

――イデア浅草のキッズたちも、ビビっているのでは?

「私は常に怒っているので(笑)。よく褒めて、でも厳しい。そういう向き合い方をしているので、あまりそこは変わらっていないかもしれないです。でも、子供たちってやっぱり感じるんですよね。

こよみ君の試合前、試合がなくなった今を子供たちも見ていて。気を使うなんてことはないですよ、子供だし。でも試合前はやっぱり『いつもより、こよみ先生怖い』という風に感じているなっていうのは、私が怒っていて思いました。いつもより、言うことを聞いていましたね。

今は今で、少し落ち込んでテンションが下がっているのも分かるみたいで『こよみ先生、大丈夫?』とか言っているんですよ(笑)。だから、私のこともあの子たちは感じているんだろうなって」

――やはり試合モード、子供たちに伝わるのですね。

「だからこそジムの皆が応援してくれていることが、ひしひしと伝わってきます。その想いが力になっていますね。良いパワーを貰っています。子供たちもそうだし、指導しているアマチュアの選手たちにも勝って、格好良い姿を見せたい。彼女、彼らのパワーの一つになれればと思います。そのためにも、しょうもない試合はできないです。出るからには、ショートノーティスを言い訳にしても何にもならない。そういう覚悟もデキています」

目指すところはチョット違う

――そのようななかで、平田樹というMMAファイターをどのように評価していますか。

「柔道ベースの選手で、くっついたら巻いてきたりだとか。そういう私にはないテイクダウンの攻防が得意なのかなとは思います。あとは……なり切るのが上手なので、自分に言い聞かせているというか。腹を括ったら、ネジを外して前に出ることができる選手です。

ただ、これまでの試合を見る限り萎縮して、自分で行きたくても行けない。そういうことも多々あった。そういう風になるのか、吹っ切ってくるのか。それは試合が始まってみないなと分からないです」

――アリス・アンダーソン戦、そして前回のアーティ・カトリ戦では途中から吹っ切った面を見せていました。

「う~ん、そうですね。ただ相手の選手に関しても『おーい。ここまで勝っているんだから、もう少し頑張れよ』という感じではありました。実力がトントンであっても、平田選手も相手に良いところを与えてしまう。それが前回の試合も見えました。だから……平田選手の仲間からすると『そんなことねぇよ』って言われるかもしれないけど、そういうところは変わっていないかなって。

私は仲間じゃないし、一緒に練習をしていないから変わっていない……って、言い方が悪いですかね(苦笑)」

――良いと思います。平田選手は常にMMAへの想いが問われている選手ですし。そこはリング上で見せるモノかと。想いが違うと多くの人が思っている。それも事実で。

「それは……もちろん違うし。多分、私の方がやっている。なんていうのか……目指すところはチョット違う。打撃一つにしても、私は凄く綺麗な打撃をしようと思っているわけじゃないです。自分なりの打撃をMMAにアジャストして、良太郎さんがいうことを守り、こよみ君がくれるアドバイスをなるべく再現できるようにやっています。だから……前回の試合で体が浮いてしまったことが、凄く悔しくて」

――目に見える目指す場所というのは、短絡的に王座かと思います。と同時にMMAとの向き合い方が違うとも受け取ることができます。ベルトを目指すために、平田選手を相手にどのような試合をしないといけないと考えていますか。

三浦選手が平田選手に判定で勝っています。ただ、思ったようにテイクダウンは取れなかった。私は早い段階でテイクダウン、もしくは打撃を効かせてパウンドアウトか一本勝ちを狙っています」

――ここに来るまで凄く丁寧に言葉を選びながら話していましたが、今の一言とその表情に全ての感情が出ていたかと思います。その空気感で改めて、今回の試合に向けて意気込みのほどをお願いします。

「ONEに出ていてルンピニー以外で戦うのと、Fight Nightでなくナンバーシリーズで戦うのも初めてなので、頂いたチャンスをしっかりとモノにして、一歩でもベルトに近づく戦いをしたいと思います」

■放送予定
11月16日(日)
午後12時00分~U-NEXT PPV

■ONE173対戦カード

<ONEキック暫定世界フェザー級王座決定戦/3分5R>
スーパーボン・シンハマウィーン(タイ)
野杁正明(日本)

<ONE世界フライ級(※61.2キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] 若松佑弥(日本)
[挑戦者]ジョシュア・パシオ(フィリピン)

<ONEムエタイ・アトム級王座決定戦/5分3R>
吉成名高(日本)
ヌンスリン・チョー・ケットウィナー(タイ)

<ONEムエタイ世界フライ級王座決定戦/3分5R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
ノンオー・ハマ(タイ)

<ONE世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] クリスチャン・リー(米国)
[挑戦者] アリベク・ラスロフ(トルコ)

<キック・フライ級/3分3R>
武尊(日本)
デニス・ピューリック(カナダ)

<キック・フェザー級/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
安保瑠輝也(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
与座優貴(日本)
スーパーレック・ギアットムー9(タイ)

<キック・フェザー級/3分3R>
ナビル・アナン(アルジェリア)
和島大海(日本)

<キック・女子アトム級/3分3R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
KANA(日本)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
タイ・ルオトロ(米国)
磯嶋祥蔵(日本)

<サブミッショングラップリング・ミドル級(※93.0キロ)/10分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
ラファエル・ロバトJr(米国)

<ムエタイ・バンタム級/5分3R>
ジェイク・ビーコック(カナダ)
スアキム・ソー・ジョー・トンプラジン(タイ)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
竹内龍吾(日本)
シャミル・エルドアン(トルコ)

<ライト級(77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
手塚裕之(日本)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
澤田千優(日本)
平田樹(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
ウェイ・ルイ(中国)
秋元皓貴(日本)

PR
PR

関連記事

Movie