【DEEP126】フェザー級GP決勝で高橋遼伍と対戦、水野新太「相手のリズムになった時、どう感じて戦うか」
【写真】試合10日前の時点で減量も順調、コンディションの良さをうかがわせた(C)SHOJIRO KAMEIKE
17日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP126のメイン、フェザー級GP決勝で水野新太が高橋遼伍と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
2023年10月のプロデビュー以来、7戦無敗。2025年に入り開幕したDEEPフェザー級GPでは芦田崇宏、海飛を連覇して決勝に進出している。毎試合、新しい要素を見せてくれる水野は、高橋戦でどのようなリズムを見せてくれるのだろうか。そんな新星に、試合と同様に立ち止まることのなかったフェザー級GPの中で起こった進化について訊く。
ボクシングの練習で距離感に対する意識が変わり、パンチの質も向上しました
――試合まで残り10日間を切りました(※取材は8月8日に行われた)。若干ではありますが声のトーンが低めなのは、この時期が疲労のピークということでしょうか。
「そうですね。明日が追い込みの最終日だから、疲労は溜まっています。ただピークではなく、ちょっとずつマシになってきているかなっていう感じで」
――むしろ次の試合に向けて、それだけ練習してきたという証拠ですね。
「自分にとって練習量が、一番自信になるものの一つなんですよ。自分の中では追い込むことができているし、ただ追い込んでいるだけじゃない。ちゃんと質が高くて、意味のある練習できていると思います」
――何にしろ質と量の話になった時、個人的には「質が伴っていないものを量に含んではいけない」と思っています。一方、本田圭佑さんがインタビュー動画で「量をこなさないと質が分からない」といった旨の発言をしていて「なるほど!」と感じました。まずは量をこなさないと、どの練習が自分に良くて、何が良くないかを判別することはできない。
「あぁ、それはメッチャ分かります。もちろん質も大事だけど、量をこなしてから質に辿り着くというのは、自分もプロになってから感じていますね。
それと――もちろん質は大事なんですよ。でも僕の自分の周りでも練習量の足りていない人が、最後の最後で結局は負けちゃうということがあって。僕は学生時代、野球部にいました。言い方は悪いかもしれないけど、野球部って朝から夕方まで長い時間練習しているじゃないですか。だから量をこなすことには慣れているというか、それが普通だと思っている。おかげで怪我もないし、おかげで怪我もないし、疲労が溜まっている状態からもう一つ動くこともできますよね。そういう自信は自分の中にあります」
――5月の海飛戦は、まさに「疲れたところから攻める」という試合内容だったと思います。現在は1週間単位でいうと、どのような練習スケジュールを送っているのですか。
「月曜日をスタートだとしたら、まず月曜日はHALEOでトレーニングとMMAの練習があります。そこから移動して夜はボクシングジムです。
火曜日は朝からボクシングジム、夜は大塚隆史さんのT-GripでMMAレスリングを教わります。今回は水曜日がオフで、木曜日は原口伸さんとのスパーと、ミット打ち。
金曜日はボクシングジムからHALEO、最後にMMA練習で。土曜日もスパーリングという感じですね」
――ボクシングジムに行く割合が高いですね。
「ここ最近はずっとボクシングを磨いています。目黒にある志成ボクシングジムで、山田陽一朗さんというトレーナーの方にパーソナルで教わっているんですよ」
――山田トレーナーからは、純粋なボクシングを教わるのですか。それともMMAのパンチを練習するのでしょうか。
「まず山田さんはジャブが巧いんです。ジムでもジャブ、ストレートとか基本的なことしかやっていませんね。だからボクシングを習うというより、自分のスタイルが生きる真っ直ぐのパンチを指導してくれる。そのパンチの打ち方一つひとつが、自分のMMAに生きるという感じです。
海飛戦も打撃で勝負できたのは、ボクシングの練習で自信がついたことも大きくて。以前は『何となく打っていた』ものが、ちゃんと自分の中で確実なものになってきたんですよ。自分の中でまず距離感に対する意識が変わり、おかげでパンチの質も向上しました」
――水野選手のパンチといえば以前は中長距離のものが多いという印象がありましたが、海飛戦では至近距離で回転の速いパンチを見せていました。
「海飛戦は距離が近かったですね。中間距離や遠い距離の戦いは、もうできます。だから近い距離で、できるだけ相手の打撃をもらわずに自分が当てていくことを習ったりしていますね」
――近い距離で戦うことを選択したのは、それだけ相手のパンチも見えるようになったということですか。
「はい。ディフェンスもメッチャ学んだんですよ。ディフェンス面での安心感と自信があるからこそ、自分が行きたい時に行けます」
MMAファイターとしてレベルアップするために、原口さんと練習する必要がある
――なるほど。練習スケジュールについてもう一つ、原口伸選手とのスパーというのは……。
「もともと自分が原口さんと練習したいと思っていて。高橋さんとタイプは違うけど、今後のためにレスリングの強い人と練習したかったんです。そうしたら原口さんも韓国の試合の前(※6月28日、ROAD FCのパク・ヒョングン戦)で、一緒に練習させてもらうことになりました。
原口さんは強いです。もともとレスリングが強いし、それを上手くMMAに落とし込んでいるって感じました。MMAPLANETさんのインタビューで木村柊也さんが原口さんとの練習について話をしていたじゃないですか。その記事を読んだ時、『うわぁメチャクチャ分かる!』と思ったんですよ(笑)」
――原口選手が相手となると、やはりテイクダウンを取られてしまいますか。
「回を重ねるごとに対処はできるようになりました。でも最初の頃は取られまくりましたし、今でも――原口さんって崩しとか、組んでくる前の打撃が巧いんですよ。だから一緒に練習して、やっぱり自分がMMAファイターとしてレベルアップするために、原口さんと練習する必要があると思いましたね。周りに同階級で、原口さんほどレスリングが強い選手がいないから、本当にありがたい存在です」
――もともとは高橋戦のためではなかったとしても、ボクシングジムで学ぶ距離感や、原口選手との練習は高橋戦で効果を発揮するのではないでしょうか。高橋選手も五明戦では絶妙な距離感とテイクダウンの使い方を見せていました。
「高橋さん、今まで見たことがないスタイルで戦っていましたね。ただ、こう言ったらアレですけど……前回の試合は五明さんの戦い方が良くなくて、正直なところ参考にならないです。高橋さんは試合中、メッチャやりやすかっただろうなって思います」
――というと?
「全てにおいて五明さんが選択をミスしていたと思うんですよね。昔のイケイケだった頃の五明さんとは違うと感じました。特に打撃で下がってしまうと、高橋さんのプレッシャーが強まっていきますからね。結果、テイクダウンを取られて」
――当日は水野選手のほうが試合順は後でした。ケージサイドでは高橋×五明戦を観てはいないのですか。
「観ていないですね。歓声が聞こえるぐらいで、自分の試合に集中していました。現場で試合を観ていたほうが良いかもしれないけど――結局は当日、向かい合って感じることのほうが多いと思うんですよ。正直、向かい合わないと分からない。だから自分は相手の試合映像を視るタイプでもないですし」
――芦田戦前のインタビューでは「相手との戦いの中のリズムから、自分の新しいリズムを創ったりとか」と語っていたのが、とても印象深かったです。それこそセッションですよね。ちなみにリズムの創り方でいえば、芦田戦と海飛戦はいかがでしたか。
「海飛戦は最初から自分がやりたいことを押し付けようと考えていたので、自分のリズムの中で戦っていました。芦田戦に関しては打撃でしっかり冷静に、相手のリズムの中で倒せたと思っています」
――相手のリズムの中で倒す、というのは?
「相手が倒すと思った瞬間に、こちらも倒せるようになったというか。自分のリズムになっている時は当然、自分から行けるんですよ。それ以上に、相手のリズムになった時が一番大事じゃないですか。相手のリズムだからって下がってしまうと、そのまま押されてしまう。ただ、試合の中で相手のリズムになる時は、絶対にあるんですよ。その中で自分がどう感じて、どう戦うかが重要だと思うので」
――高橋×五明戦でいえば、ずっと高橋選手のリズムで……。
「そうなんです。五明さんは15分間、ずっと高橋さんのリズムのままで戦っていましたよね」
自分の全てを高橋さんにぶつける。そうすることで試合中に相手の気持ちも感じることがあるんです
――最も興味深いのは、水野選手が芦田戦と海飛戦で、過去の試合とも違うリズムを展開している点です。毎回新しい水野選手が披露されている。
「今回も楽しみにしていてください。深くは言えないけど、今回も新しい自分を見せることができると思います」
――まだ新しいものがありますか。
「もちろんです。芦田戦から海飛戦って、2カ月弱しか間がなかったじゃないですか。それでも全く別人のような自分を見せることができたと思うので」
――かなりハイペースで試合していますよね。休む暇がないぐらいで。
「練習が好きなんですよ。動いていないと気持ち悪いぐらいで。正直、野球をやっていた時はそういうモチベーションがなかったです。今はMMAが大好きだし、MMAのおかげで自分も変わることができたと思っています。
MMAをやっていると、いつ体を壊すか分からないじゃないですか。だから若いからこそ体力がある、体を動かすことができるうちに『MMAって、どういうものなのか』と考えながら練習したくて。だから海飛戦からここまで休んでいないです」
――2カ月弱で別人のようになっていると、3カ月あれば……。
「海飛でも本当に多くのことを得ましたからね。試合でしか得られないもの部分って大きいし、そこで得た技術や気持ちを次の試合に向けて落とし込んできました。メッチャ充実した3カ月間だったと思います」
――対して高橋選手も、ONEで戦っていた頃と比較して大きく変化しているように感じられます。
「あれだけキャリアを重ねると、落ちている部分もあると思います。でも逆に、ベテランとしての巧さが増していますよね。佐藤将光さんと練習しているからか、いろいろと細かい攻撃を見せたりとか。五明戦だけでは何とも言えないんですけど」
――確かに試合運びの巧さに関しては、佐藤将光選手の要素は十分に見えます。
「だから次の試合は、まず相手がどう出てくるのか楽しみですね」
――水野選手の場合は、大塚さんの要素が増していて。
「そうだと思います。海飛が決まった頃は、自分からテイクダウンに行くタイプじゃなかったです。でも試合が決まってから当日まで、自分から行けるように仕上げていきました。さらにこの3カ月で色んな技術を学んで、大塚さんの技術を生かせるようになっています。
だから自分自身でも、次の試合に対してワクワクしています。自分の全てを高橋さんにぶつける。そうすることで試合中に相手の気持ちも感じることがあるんです。その気持ちの部分の対決になった時に自分が勝てるよう、3カ月間やってきました。当日は楽しみにしていてください。きっと凄い試合が見られると思います」
■視聴方法(予定)
8月17日(日)
午後5時40分~U-NEXT、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ
■対戦カード
<DEEPフェザー級GP決勝/5分3R>
高橋遼伍(日本)
水野新太(日本)
<DEEPフライ級王座決定戦/5分3R>
村元友太郎(日本)
KENTA(日本)
<DEEPメガトン級王座決定戦/5分3R>
酒井リョウ(日本)
大成(日本)
<58.0キロ契約/5分3R>
関原翔(日本)
北方大地(日本)
<ライト級/5分3R>
神田コウヤ(日本)
佐々木大(日本)
<フライ級/5分3R>
本田良介(日本)
力也(日本)
<バンタム級/5分3R>
平松翔(日本)
諏訪部哲平(日本)
<フライ級/5分2R>
原虎徹(日本)
松岡疾人(日本)
<フェザー級/5分2R>
杉野亜蓮(日本)
中尾響(日本)
<アマチュア フライ級/3分2R>
琥(日本)
海佑(日本)