【Grachan77】スタートから4年、岩﨑ヒロユキ代表に訊く大阪大会の展開「発掘から育成の段階へ」
【写真】北海道出身の岩﨑代表だが、関西人が好きだという(C)SHOJIRO KAMEIKE
14日(日)、大阪府豊中市の176BOXでGrachan77が開催される。Grachan大阪大会は2021年にスタート。現在は年2回のペースで、アマチュア大会「Grachanチャレンジ」との同時開催となっている。
Text by Shojiro Kameike
今大会のメインは荒東”怪獣キラー”英貴が韓国のベ・ドンヒョンを挑戦者に迎えて行われるヘビー級選手権試合。コメインではウェルター級1位の青木忠秀が前ライト級王者の林RICE陽太の練習仲間対決を行う。8月30日に初の福岡大会を開催し、続いて11月9日は札幌大会を予定するなど、首都圏以外での開催についてGrachan岩﨑ヒロユキ代表に訊く。
発掘や育成を含めてもう一度、アマチュアからグラチャンをつくり直さないといけない
――久々の岩﨑代表インタビューとなります。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします! そういえばMMAPLANETさんのリー・カイウェン選手インタビュー、すごく興味深かったです。カイウェン選手の考え方と、中村京一郎の考え方は似ていると思って。強い選手、勝ち上がる選手は同じ気持ちなんだな、って京一郎とも話していました」
――結果、Road to UFCフェザー級準決勝では中村選手がカイウェンを下して決勝に進みました。現在のグラチャンからRTUに向けた戦略は、どのように考えていますか。
「一応は3年連続、グラチャンのレギュラー参戦選手がRTUに出場しましたよね。来年もフライ級王者の小田魁斗が出場を希望していて、それと今はROAD FCに出場している原口伸も再々チャレンジを狙っています。今はRTUかDWCSを経由しないとUFCと契約するのは難しい。あとは海外から強豪を呼ぶという考えもありますが、それは意味がないと思っているんですよ」
――国際戦は意味がない、と?
「違います(苦笑)。日本ではなく海外で戦わないと、世界では勝てないでしょう。アウェイを体感しておくことで、いざRTUになっても勝つことができる。そのためにも豪州エターナルMMAや韓国ROAD FCを含めて、常に選手にとって経験になる場を開拓しています。そうしてグラチャンの場合は、目標がUFCになっていますね。
もちろんRIZINにも――28日の名古屋大会には、ライト級王者になった芳賀ビラル海が出場することになりました。それはそれで素晴らしいことだと思っています。目標はUFC1択ではなく、今は2択になっている。どちらにしてもグラチャンはゴールの大会ではなく、成長過程であり経験を積むための大会だと考えています」
――ただ厳しい言い方をすると中村選手、原口選手、そして小田選手の次にUFCを目指す存在がいるかどうか。
「いません!」
――……。
「だから発掘や育成を含めてもう一度、アマチュアからグラチャンをつくり直さないといけないですよね。去年ぐらいから、そう考えていました」
――昨年は12月大会で中村京一郎×原口伸という注目の一戦が予定されていたものの、中村選手の負傷により消滅してしまいました。
「京一郎が怪我した時、僕は伸に言ったんです。『試合がなくなって申し訳ない。でも正直、ホッとしたところもある』って」
――ホッとした、とは?
「本当なら京一郎と伸という強い2人のファイターが戦い、勝ったほうが上に行く。それが格闘技の醍醐味であり、成長過程の場であるグラチャンの役割だと思います。でもそれって本当にグラチャンでやって良いのかな、と考えてしまったんですよ。
結果2人の道は分かれて、京一郎がRTUに出ている。伸もROAD FCに出ながら、またRTUを目指している。それぞれの道があって、いずれ成長した時にまたその道が繋がるほうが良いのかな――とか。もしかしたら2人ともUFCに行って、オクタゴンで戦うことがあるかもしれないし、あるいはグラチャンに戻ってきて対戦するかもしれない。
実際のところ『改めて春にどうかな』という話もありました。この試合が実現すれば、みんな持ち上がってくれるでしょう。でも伸は早く海外で戦いたがっていたし、京一郎はRTUが決まりましたからね。結局……、自分はもともと単なる格闘技ファンだから、2人がUFCで戦う姿を見たいと思っちゃいました(笑)」
大阪大会は成功している。同じ形で、全国でやっていきたい
――アハハハ。そんななか今年は初の福岡大会を開催し、次に大阪大会と札幌大会を控えています。まず福岡大会の手応えはどうでしたか。
「福岡はメチャクチャ熱かったですね。初開催にしてはお客さんも結構来てくれて」
――福岡大会には、なぜ小田選手が出場しなかったのでしょうか。
「魁斗は福岡在住のチャンピオンだから、もちろん出てほしかったですよ。でも彼に海外からのオファーがあったので、『そっちを優先していいよ』と言いました。やっぱり小田魁斗という選手の将来を考えたら――彼の挑戦を応援する側に回ったんですよね。結局はいくつか話が来ていたのも流れてしまいましたけど」
――対して2021年にレギュラー化した大阪大会については危惧する面もあります。ここ最近は出場メンバーが固定しつつあり、今後どのように展開されていくのかと思っています。
「えっ、そうなんですね。僕の中で大阪大会は成功していますよ。先ほど『育成と発掘』というテーマを挙げたじゃないですか。今回の大阪大会に出る選手は、多くがアマチュア=グラチャンチャレンジを経験しているんです」
――決定カードを見ながら、グラチャンチャレンジ経験者を教えてもらえますか。
「青木忠秀、八木匠、前田snake海、野村伶生、川畑翔聖——田中仁、岡田達郎もそうですね。藤田大地、櫻庭泰裕、高松愁、加々田優人、吉永光輝もチャレンジ経験者。あと別の話ですけど、足立晃基はMMA甲子園出身者で」
――全28選手中12選手というのは、大きな割合を占めていますね。
「だから時間が掛かって当然なんですよ。でもそのおかげで来年は年3回、大阪大会をやりたいと思っています」
――それだけ発掘と育成を行ってきたと、もっとアピールすれば良いのではないですか。
「いや、そのアピールって必要ですか?」
――う~ん……。
「これだけアマチュア大会をやってきたぞ、こんなにアマチュアから出ているぞ――それをオープンにしようとも思っていないんですよ。今回もインタビューだから答えている、というぐらいで。僕としては選手が育ってプロに出てくれることが嬉しいし、上がってきた選手にチャンスを与えることが自分の仕事であって。
だから今、大阪大会は発掘から育成の段階に移っているともいえます。グラチャンチャレンジを経験した選手のプロデビューに繋がっている。それは僕にとって成功なんですよ。次は大阪と同じ形で、福岡で発掘&育成をやっていきたいです。大阪と同じというのは、アマチュアとプロの試合を同じ日に開催し、アマチュアの子たちがプロの先輩たちの試合を見て『自分もああなりたい!』と思ってくれることが良い形で。やるからには常に3年後、5年後のことを考えていかないといけないです」
――なるほど。
「最近、『東京で大会を続けていく意味ってあるのかな』とすら考えてしまうんですよ。以前は練習環境も首都圏が中心だったじゃないですか。だけど今は名選手が引退して、地元に帰ってジムを開くことも多いですよね」
――特に福岡は弘中邦佳マスタージャパン代表をはじめ、そのケースが多いと思います。
「そうなんです。だから今後は大阪の発掘&育成をモデルケースに、福岡や札幌だけでなく全国でやっていきたいというプランもあります。……ちなみに今回のカードで『一番危惧している』と感じたのは何ですか」
青木×林RICEの勝者が山田哲也と対戦します
――コメインの青木×林RICEですね。ウェルター級1位であり大阪大会の軸となっている青木選手が、大阪在住だからといってライト級の林RICE選手と戦うというのは……。
「あぁ、そういうことですか。これはまず、林RICEがウェルター級に転向します。最初は青木が『ライト級でやりたい』と言っていて。それを聞いた林RICEが『青木さん、自分とやる気があるのか』と思ったらしいんです。
林RICEもライト級ではベルトも巻いたし、やれることをやり尽くした。だったら階級を上げよう――ということになったけど、僕としてはウェルター級転向初戦で青木戦は早いとは思ったんですよ。もともと青木と林RICEは仲が良いし」
――青木選手と林RICE選手は練習仲間ですよね。その点も「ここでこのカード!?」と思った要因ではあります。
「それで青木サイドに伝えたら数日後、『それって僕に勝てると思っているということですよね。だんだんムカついてきました。試合やります』という返事があって。2人の感情を別としても、青木はランキング1位で林RICEは元チャンピオンだから良いんじゃないかと思って組んだ試合です」
――そうだったのですか。
「青木がウェルター級王者決定トーナメントで負けたのは、まだプロで数戦しか経験していない時でした。今はしっかり勝ってきているし、この試合の勝者が次は山田哲也と対戦します。王者の桜井隆多は怪我もあるから、まずは暫定王座決定戦を行って、あとは隆多さんの復帰次第ですね。いずれにせよ、そのための青木×林RICEです」
■視聴方法(予定)
9月14日(日)午後12時30分~
GRACHAN放送局、GRACHAN公式YouTubeメンバーシップ
■対戦カード
<ヘビー級選手権試合/5分3R>
[王者]荒東”怪獣キラー”英貴(日本)
[挑戦者]ベ・ドンヒョン(韓国)
<ウェルター級/5分2R+ExR>
青木忠秀(日本)
林RICE陽太(日本)
<フェザー級/5分2R+ExR>
高橋孝徳(日本)
大搗汰晟(日本)
<フェザー級/5分2R+ExR>
八木匠(日本)
村田俊(日本)
<ライト級/5分2R+ExR>
アリアン・ナカハラ(カナダ)
村瀬賢心(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
前田snake海(日本)
野村伶生(日本)
<ライト級/5分2R+ExR>
増田比呂斗(日本)
川畑翔聖(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
田中仁(日本)
岡田達朗(日本)
<フェザー級/5分2R+ExR>
藤田大地(日本)
櫻庭泰裕(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
高松愁(日本)
松本将希(日本)
<フェザー級/5分2R+ExR>
平野堅吾(日本)
加々田優人(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
天馬(日本)
田岡桂萌(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
足立晃基(日本)
セイヤ(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
麦谷悠成(日本)
吉永光輝(日本)