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【DEEP126】フェザー級GP決勝=水野新太戦へ、高橋遼伍「若くて格闘技をがむしゃらにやる体力もある」

【写真】言葉の端々から、充実ぶりが伝わってきた(C)TAKUMI NAKAMURA

17日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP126、フェザー級GP決勝で高橋遼伍が水野新太と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

高橋はGP一回戦の相本宗輝戦が不戦勝となり、準決勝=五明宏人戦から登場。前に出る圧力と組みを活かした試合運びで五明の左ストレートを完封し、水野との決勝戦に駒を進めた。

決勝に向けて水野と準決勝を戦った海飛ともスパーリングを重ね、対策・戦略を練ってきた高橋。新世代を代表するプロ無敗の水野を迎え撃つ心境、さらにGP制覇にかける想いを訊いた。


五明選手に勝って、自分自身でもまだまだ頑張れるなと思いました

――GP準決勝の五明宏人戦では五明選手に得意の打撃を出させず、高橋選手が試合をコントロールした上での判定勝利でした。あの試合を振り返ってもらえますか。

「イメージ通りでしたね。パーフェクトに近い試合だったと思います。練習仲間に五明選手と似たような体型でサウスポー且つ伝統派空手出身の選手がいて、試合前はその相手と練習を続けていたんですよ。その練習通りの展開になって、周りのみんなも驚いていましたね」

――想定していた五明選手と実際の五明選手、そこまで大きな違いはなかったのですか。

「スピードは思ったよりも速かったですけど、距離感さえミスらなければ大丈夫だなと。で、最初にテイクダウンを取った時点で、これでいけるなと思いました」

――そのテイクダウンを織り交ぜて試合を進めるあたり、高橋選手のMMAファイターとしての引き出しの多さを感じる試合でもありました。

「今まで自分は戦術的に戦うことがなくて、ちゃんとMMAとして戦わないといけないと考え始めたのが最近なんですよ。具体的には戦術とか対策を練って試合するようになったのも久保優太戦くらいからで。それまでは思いっきりぶん殴ってローを蹴れば何とかなるやろみたいなノリだったんです(苦笑)」

――対戦相手を想定したスパーリングパートナーと練習することもなかったのですね。

「まさにそれも最近やり始めたことで、自分がやられて嫌なこと、相手がやられて嫌なこと。その2つをしっかりあぶり出して、それを自分の動きに当てはめていく感じで組み立てました」

――GP一回戦は相本宗輝選手の計量失敗で試合がキャンセルとなってしまいましたが、五明戦は改めて高橋選手の強さをアピールする試合にもなったと思います。

「五明選手は知名度があるんで、五明選手経由でたくさんの人に自分の試合を見てもらえたことはありがたかったですよね。特に自分の場合は連敗していた時のイメージが強かったと思うので、『高橋、まだまだいけるじゃん』と思った人は多かったと思います」

――決勝進出を決めてホッとした部分もありましたか。

「そうですね。優勝が目標なので勝ち続けないと意味がないし、自分も今年36歳になって1~2回戦で負けるようでは次世代の選手に勝つのはきついかなと思います。それも込みで五明選手に勝って、自分自身でもまだまだ頑張れるなと思いました」

――トーナメントであることはもちろん、キャリア的にも一戦一戦が負けられない戦いですね。

「はい。五明戦の前に取材してもらった時、『相本戦が決まった時、相本君に勝てるタイミングは今しかない』と言いましたけど、まさにその感じで戦っています」

実は今回の試合に向けて海飛と一緒に練習しているんですよ

――決勝は水野新太選手との対戦となりましたが、水野選手の勝利は予想していましたか。

「正直、僕は海飛が上がってくると思っていたので、ちょっと予想が外れましたね」

――水野選手の準決勝(海飛に判定勝ち)はどのように見ていますか。

「水野選手は若くて格闘技をがむしゃらにやる体力もあるから、試合間の成長スピードがすごいですよね。あとはすごく体格に恵まれていて(フェザー級で)身長183センチでサウスポーというのは大きな武器だと思います。打撃も寝技もそこまでテクニックがなくても、あの体のサイズでなんとかなってしまうところも多少あると思いますね。あれだけフレームがある選手に暴れられると、対戦相手からすると結構しんどいです」

――しかも準決勝から決勝までの期間でもさらにレベルアップしていることも予想されます。

「伸びしろって言うんですかね。向こうもそれだけかけて格闘技をやっているだろうし、ものすごく練習量もやってるんやろうなと思います」

――高橋選手としては五明選手も長身のサウスポーだったので、準決勝に向けてやってきたことが水野戦にも活きてきそうですか。

「フェザー級は意外とみんな175センチ以上でサウスポーの選手が多いんで、自分からすると毎回同じようなタイプの相手と戦うことになるんですよ。多少その人の特徴に合わせたファイトはしますが、大まかな部分ではそんなに変わらないかなと思います。だからある意味やりやすいところはありますね。まぁ自分みたいに170センチくらいの選手からすると、あれだけリーチが長いのは面倒くさいですけど(苦笑)、そこは色々と考えて戦いたいと思います」

――ちなみに今回は仮想・水野選手としてどのような相手と練習されているのですか。

「実は今回の試合に向けて海飛と一緒に練習しているんですよ」

――同じトーナメントに出ていた選手と。何がきっかけで海飛選手と練習するようになったのですか。

「パンクラスのISAO選手がキルギス人(カリベク・アルジクル・ウルル)と試合をした時に、ISAO選手から一緒に練習しましょうと声をかけてもらったんです。ISAO選手たちと一緒に練習すれば自分自身の練習にもなるし、試合に向けた体力作りにもなると思って、NEVER QUITに行かせてもらったんです。それでいざジムに行ったら海飛がパッとジムに現れたんですよ(笑)」

――海飛選手と天弥選手は兄弟でNEVER QUITまで出稽古に行っていますよね。

「ちょうど僕も仮想水野に相応しい練習相手を探していたところに海飛が現れて『いた!』みたいな(笑)。身長的にはちょっと水野選手の方が大きいですけど、打撃の精度とかプレッシャーは海飛の方が上だと思うし、実際にスパーリングをやってもプレッシャーが強くて。こういう相手と向き合うことは距離感を確かめる上ではすごく大事だと思うし、それプラス直近で水野選手と試合した選手やから、今一番相手に対する感覚を知っている選手だと思うんですよね。そういう意味では偶然ですけど最高のパートナーと練習出来ているなと思います」

――では水野選手攻略のイメージはしっかり出来上がっていますか。

「そうですね。最後はK-1ジム五反田で鈴木勇人さんとスパーリングして対人練習は終わりにして、振り返ると練習仲間にはすごく恵まれていたなと思います」

自分が若くて優秀なファイターに勝てるタイミングは今しかない

――今回はベテランの高橋選手が新世代の水野選手を迎え撃つ図式の一戦ですが、高橋選手はどんな試合を見せたいですか。

「先ほども少し話したように、相本くんと試合が決まった時に自分が若くて優秀なファイターに勝てるタイミングは今しかないと思いました。あと2~3年すると自分は辞めているかもしれないし、試合する機会すらなくなると思うので、今こうして若いファイターと試合できることはすごく嬉しいです。こういう相手と試合を組んでもらえるからこそ、今でも試合前の緊張感や不安を感じることが出来るし、試合に向けて学びもあります。それを考えたら僕と戦ってくれる若い選手たちはみんなありがとうって感じです」

――また対戦相手に対してもそうですし、そういう試合を組んでくれるDEEPにも感謝ですね。

「特に水野くんなんかは成長スピードが早いから、試合前は正直不安になりますよ。良い準備はできているけど『今回やばいんちゃうかな…』とか思うことはあるんで。でもそうなった時に『俺もタン・リー、タン・カイ、久保優太…強いヤツとはたくさんやってきたから自信を持ってやっていい』と思い返すし、試合が決まってから自問自答しています。でもそれを感じられることがありがたいです」

――それでは最後に会場、もしくは中継で見てくれるファンのみなさんにメッセージをお願いできますか。

「水野戦はここ最近では一番大事な試合になると思います。もちろんファイターにとっては全試合大事なんですけど、ここで勝つか負けるか。グランプリのベルトを獲るか、若手の勢いに飲み込まれるか。そこには雲泥の差があるし、自分も水野くんに負けたら進退について考えることにもなると思います。これからの自分、セカンドキャリアを考えた上でも、グランプリ優勝という肩書きはどうしても欲しいので、今回は絶対に負けられないですね。あとは何て言うんですかね、自分のイメージで今回のグランプリは世代交代じゃなくて、水野くんが決勝で負けて更に強くなるためのきっかけの大会だと思うんですよ。水野くんがベテランに勝って新しい道を切り拓くんじゃなくて、あとで振り返った時にあのグランプリの決勝で負けたから水野くんは強くなったよねというストーリー、みたいな」

――堀口恭司選手がデビュー6戦目で上田将勝選手に敗れて、そこから更に強くなったように、ですね。

「そうです、そうです。あのイメージです。なのでここは僕が優勝して、グランプリのベルトを巻きます」

■視聴方法(予定)
8月17日(日)
午後5時40分~U-NEXT、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ

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