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【ONE90】長谷川賢の挑戦を受ける、ONE世界ミドル級王者オンラ・ンサン「タフファイトしかしたくない」

Nsang【写真】非常に穏やかな表情を浮かべていた王者ンサンだった(C)MMAPLANET

31日(日)、東京都墨田区の両国国技館で開催されるONE90「A NEW ERA」。同大会でオンラ・ンサンが長谷川賢の挑戦を受け、ONE世界ミドル級王座防衛戦に臨む。

今回の防衛戦は昨年6月にンサンの母国ミャンマーで組まれ、年間ベストバウトに選ばれる激闘の末、ンサンが5R KO勝ちで防衛に成功した一戦の再戦となる。

あれから9カ月、10月には初回KO勝ちで防衛記録を伸ばしたチャンピオンに長谷川との再戦について尋ねると、初めて訪れた東京の全てが新鮮でマジックに掛っているようだと笑顔で話していた表情が引き締まり、声質も低く重量感のあるモノに変わった。


──東京に入ったのは何曜日ですか。

「日曜日の夜だよ。初めて日本にやってきたけど、本当に街が綺麗でゴミが道路に落ちていない。そして人々がとても親切で、まるで別世界──魔法に掛ったように感じるよ」

──そこまでですか!!

「全てが違うんだよ。米国の文化とも、ミャンマーの習慣ともまるで違う。そしてね、その違いの全てが正しく作用しているんだ。街は綺麗で、規律がある。こんなの見たことないし、全く米国と違うね。だって食べ終わったモノを誰も捨てないんだよ。そんなこと信じられないよ!!」

──私たちは他の国へ行って、当然のように日本と違うという印象を得ますが、自分の国がオンラのように良く見えることはやはりなくて……。

「これが当たり前っていうのが、凄いことなんだよ。日本で見たモノの全てが僕にとっては新しい。だから、魔法に掛ったように感じるんだよ。素晴らしい国さ」

──私はヤンゴンを訪れた時、人々の優しさは自分が子供だった頃、40年前の日本のように感じました。そしてオンラの母国のことが大好きになりました。

「日本で育った君にそんな風に言ってもらえると嬉しいよ」

──ところでONEの関係者からオンラが空港に着いたときに、在日のミャンマーの方々が集まって横断幕を持っていた写真を見せてもらいました。

「彼らは僕を迎えに来てくれて、実は最初の2日間はそのうちの一軒のお宅にお世話になっていんだ。だからホテルにチェックインしたのは昨日なんだよ」

──おお、もうそのような親交があるのですね。高田馬場というここから電車で30分ほどの街は、リトル・ヤンゴンというほどではないですが、ミャンマー料理レストランが複数あるんですよ。

「えぇ、そうなの? 行ってみたいなぁ(笑)」

──ぜひ、そうしてください。では、そろそろ試合について話を……日曜日にはこの日本、長谷川選手のホームで挑戦を受けます。

「やることは変わらないよ。プレッシャーを与えて、クリーンでハードな戦いをしたい。僕は彼に勝てる力がある。6月に戦った時よりも、ずっと強くなった。テクニック的にも技術的にも向上し、実力が上がっている。日曜日にソレを証明するよ」

──長谷川選手はベストファイト・オブ・ジ・イヤーも負け試合だったから、何も嬉しくなかったと言っていました。

「分かるよ、その気持ちは。ハセガワとの試合はとても難しかった。彼はタフだし、パンチもたくさんもらったよ。一発のパンチで勝負の行方は分からなくなる──そんな試合展開だった。それこそが、このスポーツなんだ。

僕はもう10度も負けてきた。ハセガワの3倍も負けている。このスポーツは負けて学ぶことが多い。そして成長できる。これまでの敗北があって、今の僕がある。ハセガワにとっても前の試合はそういう敗北だったに違いない。彼はベストファイト・オブ・ジ・イヤーを受賞するに相応しい気持ちを見せた。今度の試合も同じ気持ちでぶつかって来てくれるに違いない。

彼がNYのロンゴ・ワイドマンMMAでキャンプを張ってきたのも知っているよ。それだけこの試合に向けてシリアスに取り組んできたということだし。僕はレイ・ロンゴの教え子と戦ってKO負けしているんだ」

──オンラがコスタ・フィリッポウに敗れたことも、長谷川選手がロンゴのところでキャンプを張った一つの要素かと思われます。

「気にしないよ。あの時の僕は今のレベルになかった。まだヘンリー・フーフトと練習をしていなかった頃だし。8年前に11秒でKO負けをしたことは、今回の試合に何の意味も持たない。ハセガワは自分の思った相手と練習すれば良いけど、僕は全く気にならないよ」

──前回のヤンゴンでの試合と、日曜日の両国での試合は会場の環境が違います。トゥウンア・インドアスタジアムは空調がなく、湿度が異様に高かったです。

「そうだね。だから日曜日の試合では組み技という部分も、重要になってくるだろうね。僕のレスリング力を見せたいと思う。インタビューで長谷川は『1RでKOする』と言ったようだけど、そんな言葉は信じていない。きっと打撃でなくて、すぐにレスリングを仕掛けてくるだろう。そして、その作戦が上手くハマらないことに気付くよ。

10月に戦ったモハマド・カラキは柔術家で、テイクダウンを狙って戦ってきたけど、問題なくレスリングで対応できたからね」

──オンラの総合力も日曜日には見られるわけですね。ところで以前にヤンゴン以外でも試合がしたいと言っていて、今回ようやく実現するわけですか。そこに関しては、どのような気持ちですか。

「ミャンマーでないというだけでなく、日本で戦うことができる。10代の頃、PRIDEを見てから日本で試合をすることが僕の夢だった。あの時に芽生えた想いが、願いになった。その願いが通じ、日曜日に夢が叶う。こんなに嬉しいことはないよ」

──では日曜日の防衛戦。前回のようなタフファイトを望みますか、それてもスっと勝ちたいでしょうか。

「タフファイトしかしたくない。僕は楽勝を憎んでさえいるよ。大嫌いなんだ、楽な試合は。大勢のファンの前で試合をするんだから、良い試合をしたい。だから10月のカラキ戦には満足していないんだ(※1R2分21秒でKO勝ち)。例え負けたとしても、厳しい試合がしたんだ──ファイターとしてね。

父親の立場でいえば、勝ってお金を家に持って返ることができれば、それで良いんだけどね(笑)。でも、僕はファイターだし、ファンがいてくれて戦っているわけだから。日曜日もハセガワとタフファイトを戦いたい」

■ONE90対戦カード

<ONE世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
[挑戦者]青木真也(日本)

<ONE世界女子ストロー級(※56・7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィォン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者]アンジェラ・リー(米国)

<ONE世界ミドル級(※93.0キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]オンラ・ンサン(米国)
[挑戦者]長谷川賢(日本)

<ONE世界バンタム級(※65.8キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]ケビン・ベリンゴン(フィリピン)
[挑戦者]ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)

<ONEフライ級(※61.2キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
デメトリウス・ジョンソン(米国)
若松佑弥(日本)

<ONEライト級(※77.1キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
エディ・アルバレス(米国)
ティモフィ・ナシューヒン(ロシア)

<キック72キロ契約/3分3R>
ヨーセングライ・IWE・フェアテックス(タイ)
アンディ・サワー(オランダ)

<ONEフライ級(※61.2キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
仙三(日本)

<ONEフライ級(※61.2キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
カイラット・アクメトフ(カザフスタン)
リース・マクラーレン(豪州)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
V.V Mei(日本)
クセニア・ラチコワ(ロシア)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
アンソニー・アンゲレン(オランダ)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
ハキーム・ハメック(フランス)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
パニコス・ユーサフ(キプロス)
モハマド・ビン・マフムード(マレーシア)

<キック・フライ級/3分3R>
秋元皓貴(日本)
ヨゼフ・ラシリ(イタリア)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ユン・チャンミン(韓国)
バラ・シェッティー(インド)

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