【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その参─三浦彩佳×ラウラ・バリン「首投げで解決しちゃう」
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2月の一番、第3弾は22日に行われたONE88から三浦彩佳×ラウラ・バリンの一戦を語らおう。
──2月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。
「三浦のONEデビュー戦ですね。なんか笑っちゃって。何て言うんですかね……。彼女もリング上で色々とあったとかマイクで話していたけど、僕が土曜日にTTMで柔術を指導していて──その時に急に血液検査をする必要があるっていう風になっていたんです。
で、在宅医療をしている知り合いがいるので、すぐに来てもらうと月曜日に出発に間に合うとか色々と動いていたんですよ。その伝で看護師の人がジムに来てくれたり。
それだけ周囲が色々と動いているのに、三浦ってしてもらうことが当たり前になっていて。長南さんに『俺たちがこうやって必死になって、三浦のあの態度はおかしくないですか』って言っても……長南さんもソコにムカつかないようになっていて。それが許されている環境ってすごいですよね。ダメな奴だと思ったんですよ。ヤバい、コイツって。で、そんな風にしていると……」
──まだ何かあるのですか?
「ジムに彼女のコスチュームが届いたんです。代引きで」
──ハイ。
「そうしたら『私、給料日前で今はお金がないから長南さん立て替えてください』と言い出して。で、長南さんも払っていて(笑)」
──もう娘の感覚ですね(笑)。
「いや、介護施設ですよ」
──青木選手、今回三浦選手をピックするということはアオキ・アワードの受賞者なのですが……ディスっていないですか?(笑)。
「だって、変じゃないですか!! そこで格闘技ってセーフティ・ネットになっているなって思ったんです。彼女は普通に生きていると、あんなに風に周囲に優しくしてもらえないですよ。何を考えているのか、聞いてみたいです」
──それでアオキ・アワードに。いや、それは2月に国内でMMAの大会がなかったからこそ──ということですが、三浦選手持っていますね。
「3月だったら、絶対に三浦になっていないです。そういう部分でも運があるんですよ。何を想ってMMAをやっていて、アレに何の価値があるのか尋ねてみたいですよね。う~ん、格闘技ファンってアレに乗れるんですかね? どうなんですか南さん(※取材に同行していたONEDAYの南和輝ディレクター)? あれ見ても、焼き回しだろうって思わないですか」
南 えっ、僕は乗れましたよ。取材をしているので。
「ふ~ん、そうなんだ。高島さんは?」
──あの涙には乗れなかったです。ステファン・シュトルーフの引退のコメントにはもらい泣きするのに。
「だって、三浦の涙ってマルシアっぽいじゃん」
──ダハハハ。
「分かりますよね(笑)。プロレスで言えば、すべてがセールっぽいんですよ。一人相撲じゃん。これまでも1人で体重オーバーして、1人で苦しんで。格闘技っていう全てが自己責任の世界で、あの悲劇のヒロイン振りはなんなのって」
──青木選手、やはりディスっていませんか?
「いや、ディスっていないですよ。面白いじゃないですか。それと技術面ですね。あの首投げと袈裟固め」
──あそこからヒザ蹴りとか見たかったですね。そこからスカーフホールドという流れだとONE用の練習をしたと思えますから。
「でも、そのまんまでしたよね(笑)。あそこまでやっていると一芸ですよね。それで勝っているんだから」
──相手が防げないのですから、彼女の武器です。
「戦績だけ見ると、立派なモノだし。実力はあるかとは思うんです。そこで頑張っているのだから、評価してあげないと。ロンダ・ラウジーだって払い腰から腕十字で勝ち続けていたわけだし。
日本の女子はRIZINを向いている子が多い。そのなかでONEはタイミングと流れでチャンスを掴んで行く場所になっている。黒部三奈選手とか実力がある選手をONEも契約すべきだと僕は思っているんですが、トライアウトで落とされたとかって話を聞くと……三浦はその場に立っているわけですから。
全部、首投げで解決しちゃう人間力……鈍感力も凄いと思います。だからこそ……真面目に伝えたいことは格闘技を大事にしてほしいってことです。格闘技をなめて欲しくないので」