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【ONE173】漕ぎ着けた青木真也戦。手塚裕之「ここがゴールじゃない。クリスチャン・リーに勝ちたいので」

【写真】色々とやっています。そしてやってきました(C)MMAPLANET

16 日(日)、東京都江東区の有明アリーナで開催されるONE173で手塚裕之が青木真也と戦う。
Text by Manabu Takashima

Xで舌戦を繰り広げるなど、2人で世間を巻き込んだ時期もあった。結果、メディアに注目を集めることになった手塚が、日本大会で青木戦にこぎ着けた。初めてハイドレーション有りの77キロで戦う手塚に、紆余曲折があって実現する青木戦までの足取り。そして、ライト級国内トップを超える意気込みを尋ねた。


俺はもう日本大会だろうが何だろうが試合ができれば良いんですよ(笑)。バンコクで自分の仕事をシレッとこなすのも僕らしい

――8日後にONE日本大会での青木真也戦を控えている手塚選手です(※取材は8日に行われた)。日本大会、そして77キロのライト級で戦う。ここについてはいかがでしょうか。

「日本人同士、青木さんと僕が戦うということは日本大会だからこそ意味があるカードだと思います。階級に関しては、ハイドレーション有りの77キロは初めての経験です。これまで頑張って食べて86とか87キロをキープしていたので、83.9キロのウェルター級はあっという間に落とせていました。

それこそ10日前や1週間前のオファーでも応じることができる状態でしたけど、本来試合は2カ月間とか使って創っていくものなので。それでいうと僕の身長や骨格的な部分で、77キロは合っています」

――今回の試合、オファーの時点で2カ月あったのでしょうか。

「この試合が正式に決まったのは、3週間前です。ただ8月末ぐらいに一度、青木さんとの試合の打診はありました。でも青木さんからも個人的に『やらないよ』という連絡がありました。僕の方で青木選手と日本大会で戦えることは凄く光栄ですという風に、熱意を持って長文で返答したのですが、『あんたと戦うには、ギャラが足らない』と。

青木さんもファイトマネーに満足がいっていなかったので、ONEにもそれを伝えようです(笑)。で『交渉決裂、今回は縁がなかったね』とLINEが来て。それが9月の頭ぐらいでしたね。その時にONEからも『青木さん、難しかったです。スミマセン』って連絡がきました」

――そこで手塚選手の日本大会出場はなくなったと。

「僕として相手は問わず、日本大会に出たかったです。ウェルター級は選手が少ないので、ライト級の方が可能性が高いと思って減量はしていました。そうしたらONE FN37(11月8日大会)でマゴメド・アカエフ戦のオファーが来ました」

――アカエフといえば10勝1敗のダゲスタン人ファイターですね。

「ハイ。言うと、俺はもう日本大会だろうが何だろうが試合ができれば良いんですよ(笑)。そんなことを言うと青木さんから『プロじゃねぇ』って言われるかもしれないけど、ファイトマネーは変わらないし、日本大会で目立ちたいという気持ちが少しはあっても、バンコクで自分の仕事をシレッとこなすのも僕らしいですし。

相手がダゲスタン人で、強いなら当然戦います。前にムラド・ラマザノフに負けているので、ダゲスタン人を攻略したかったのというのもあります。体重でいえばアカエフと戦うために1週間前倒して、77キロを創りにかかっていました。でも、青木さんとの試合の再オファーが来る1週間前ぐらいにアカデフがメディカルをパスできなくて、試合はなくなりますって連絡があって」

――なんと……。

「『マジですか。それじゃあ、年内は試合がないってことですか? 日本で、できないですか』と。そこも協議中という返答でした。それも仕方ないって思っていたのですが、そのアカエフが12月のFight Nightで試合が決まっていて……」

――う~む……。

「わけが分からなかったです。もうね、なめんじゃねぇって」

――分かります。

「それでも日本大会はあるかもしれないということで」

――あるかも、ですよね。

「ハイ。モヤモヤはしていましたけど、もう慣れっこだと。それに僕の憶測ですけど、青木さんが日本大会に出るなら、僕が相手で。体重を整えられるように、ONEの人も動いてくれていたのかなって、俺もプロだから、そうなった時のために準備だけはしておこうと体重はキープしていました」

――……。人が良いですよ、手塚選手は。

「ふざけてですけど、先輩とかに『俺もパニック障害、メンヘラになりますよぉ』って言っていましたけどね(笑)。

MMAとして青木さんは完成度が最高に高い選手

――結果、青木戦が決まった時の気持ちというのは?

「よっしゃぁとなりましたね。まず試合ができること。そして相手が青木さんということ。それは嬉しいですよ。自分のなかで世間を巻き込んできたことで。その着地点として、殴り合いの場に持ってくることができたので」

――その時の体重はどれぐらいだったのですか。

「81キロぐらいですかね。3週間あるので、全く問題なかったです」

――ダゲスタン人を食ってやろうという気持ちと、青木選手と戦う時の気持ちに違いのようなモノはありましたか。

「同じです。今の青木さんが衰えたとか、全然思っていないです。日本のライト級のトップだと思っています。寝技だけでなく、MMAとして青木さんは完成度が最高に高い選手です。今年、2回だけですけど青木さんと練習をさせてもらったことがあって、その時に青木さんの強さを体感しているので。ダゲスタンと比較して云々というのは、一切ないです。自分がやってきたMMAを全てぶつけるのに最高の相手だと思っています」

――試合が実現する限り、青木真也という選手は手塚選手を殺すぐらいの気持ちと体を創ってくる人だと思います。

「間違いないです」

――練習で強さを感じたということですが、どのような練習だったのでしょうか。

「キックのマススパーと、ケージのなかで組み技をやりました」

――グラップリングは当然として、キックのマススパーでも強さが感じられた?

「巧さを感じました。ムエタイの巧さ、長い距離の左ミドルとか足の運び方、被弾しない位置取り。打撃に関して臆病なところはあると思いますけど、臆病だからこそディフェンス技術の精度の高さを感じます。本当にムエタイは上手でした」

――青木選手に勝つという視点で、やるべきことは決めていますか。

「決めています。自分の持ち味である打撃で、仕留めたいと思います。ただ青木さんの寝技に関しても、もちろん強さは理解していますけど僕も今成柔術に通っていた時期もあって。グラップリングに関しても、自信はあります。

青木さんの組みを警戒しつつも、大きく見すぎない。それがテーマかと思っています。焦って、逃げなきゃってなると、そこをつけ込まれるので」

――青木真也に圧勝はあっても名勝負なし。勝つ時は一方的。そこを凌がれると終わる。山と谷が繰り返す試合というのは、もうずっとなかったかと。

「その通りですね。だから最初が凄く大切になってくると思っています。出だしが勝負です。俺もエンジン全開で行きます。先手をどちらが取るか。一発で、青木さんの意識を断ち切る自信はあります」

――一方で先手を取られた場合は?

「まぁ……そこは避けたいです。秋山(成勲)さんは、耐えて反撃という風にできましたけど、僕はアッチのペースにさせたくないです」

――青木選手の出鼻をくじく。組ませない打撃というのも、なかなか想像ができないです。

「打撃に関しては、二瓶(孔宇)さんのところに3年ほど通っています。二瓶さんを平本蓮君に紹介したのは、僕なんです。二瓶さんのMMAストライキングの凄さは、僕が一番知っています。空手もそうだし、MMAでの打撃も凄く研究されていて。それとボクシングトレーナーの新井(誠介)さんの指導も受けてきて……」

――NEP BOXING STYLEの新井さんですか?

「ハイ、そうです」

――自分も以前、コディ・ガーブラントやTJ・ディラショーが出てきたことに技術解説をお願いしたことがあります。組みを消化したボクシングを、しっかりと言葉で解説していただけました。

「本当ですか!! 新井さんは論理的に相手の特徴、僕の特徴を捉えて対策を授けてくれます。二瓶さんと新井さんに、僕のストライキングは育ててもらいました。その打撃をレジェンド青木真也に出せるチャンスが回ってきた。物凄くワクワクしています」

栃木の自然とガレージで鍛え上げた肉体をぶつけて、絶対に倒します

――MMAのライターとして、今年のONE日本大会はキックが主流という空気で見ています。でも手塚選手の話を伺っていて、MMAファイターの反撃の狼煙が見たくなりました。

「ここ数年はムエタイとキックが主体になっていて。アジアのマーケットを考えると、そこも致し方ないのかっていう気持ちもあります。選手層も違うし、そっち側にシフトしていったのは必然的なことだと。ただMMAも縮小はしていても、存在はしているので試合を担保してもらえると、自分はいつでも仕事をします。

青木さんは僕がここで勝っても「お前には背負えない」とか、そういう感じでいます。ただ僕は僕なりの路があって、自分のやり方で進んでいきます。もともと業界を背負っていなくて、栃木の米農家なので(笑)。

そんな僕が青木真也を倒して、手塚米の宣伝になれば良い。同時に僕はここで止まるわけではなくて、青木さんを倒してONE世界ライト級チャンピオンシップを戦えるまで登っていきたいです。その踏み台になってもらいます。

ここがゴールじゃない。ダゲスタン超えもしたいし、クリスチャン・リーに勝ちたいので」

――では改めて青木戦に向けて、意気込みのほどをお願いします。

「プロで10年やってきて二瓶さんもそうだし、荒井さんもそう。本当に人に恵まれて、ここまでやってくることができました。セコンドに就いてくれる山田道場の酒井(幸助)さん、梅田(恒介)さんにも凄くお世話になっていて。色々な人に拾ってもらって、僕は創ってもらえました。

そういう人たちの想いも背負って、殺される覚悟を持って殺しに行きます。栃木の自然とガレージで鍛え上げた肉体をぶつけて、絶対に倒します」

■放送予定
11月16日(日)
午後12時00分~U-NEXT PPV


■ONE173対戦カード

<ONEキック暫定世界フェザー級王座決定戦/3分5R>
スーパーボン・シンハマウィーン(タイ)
野杁正明(日本)

<ONE世界フライ級(※61.2キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] 若松佑弥(日本)
[挑戦者]ジョシュア・パシオ(フィリピン)

<ONEムエタイ・アトム級王座決定戦/5分3R>
吉成名高(日本)
ヌンスリン・チョー・ケットウィナー(タイ)

<ONEムエタイ世界フライ級王座決定戦/3分5R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
ノンオー・ハマ(タイ)

<ONE世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] クリスチャン・リー(米国)
[挑戦者] アリベク・ラスロフ(トルコ)

<キック・フライ級/3分3R>
武尊(日本)
デニス・ピューリック(カナダ)

<キック・フェザー級/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
安保瑠輝也(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
与座優貴(日本)
スーパーレック・ギアットムー9(タイ)

<キック・フェザー級/3分3R>
ナビル・アナン(アルジェリア)
和島大海(日本)

<キック・女子アトム級/3分3R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
KANA(日本)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
タイ・ルオトロ(米国)
磯嶋祥蔵(日本)

<サブミッショングラップリング・ミドル級(※93.0キロ)/10分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
ラファエル・ロバトJr(米国)

<ムエタイ・バンタム級/5分3R>
ジェイク・ビーコック(カナダ)
スアキム・ソー・ジョー・トンプラジン(タイ)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
竹内龍吾(日本)
シャミル・エルドアン(トルコ)

<ライト級(77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
手塚裕之(日本)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
澤田千優(日本)
平田樹(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
ウェイ・ルイ(中国)
秋元皓貴(日本)

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