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【ONE FF116】女子アトム級王座挑戦も目前。オタロラ戦へ、三浦彩佳「格闘技はファッションじゃない」

【写真】オタロラに対して腹が立っている理由は、笑いながらも少しガチっぽかった(C)SHOJIRO KAMEIKE

18日(金・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FF116で、三浦彩佳がコロンビアのジュリアナ・オタロラと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

三浦が現在ランキング2位につけているONE女子アトム級は、強豪がそろいながらも混迷の時期に突入している。ベルトを巻いていたスタンプ・フェアテックスが負傷により長期欠場。今年1月にデニス・ザンボアンガが暫定王座に就き、両者による統一戦が8月1日(現地時間)に米国で開催予定だったONE FN34で行われるはずだった。しかしスタンプの負傷が悪化したため統一戦は中止に。スタンプはベルトを返上し、ザンボアンガが正規王者に昇格している。

結果スタンプがランキング1位となり、2位は三浦に。3位のハム・ソヒは2023年9月にスタンプとの王座決定戦に敗れて以降、ONE出場はない。4位は一昨年11月、三浦に敗れているモン・ボー。5位の澤田は今年1月のモン・ボー戦で敗れ、11日にマカレナ・アラゴンとの復帰戦を控えている。そんななか、ストロー級王者のシィオン・ヂィンナンも3月にアトム級で試合を行う(モン・ボーに判定勝ち)など、今後の動向が注目される。

そんななか、6月に入ってONE FF116における三浦×オタロラ戦と、11月16日にONE日本大会が行われることが発表された。ONEのチャトリCEOは日本大会について「アヤカも出る」と明言している。ランキング的にも王座挑戦が予想される三浦に、女子アトム級の現状と今回のオタロラ戦について語ってもらった。


スタンプの負傷で統一戦が中止になって、私に『5R戦、いけるか?』という連絡が来たんですよ

――今年2月、リトゥ・フォーガットをヒザ十字で下して以来の試合を控えています。リトゥ戦は試合前のインタビューで「今回はアヤカロックが出ないかもしれない」と発言しており、その言葉どおりアヤカロック以外のフィニッシュとなりました。それはアヤカロックを封印して戦おうと考えていたのですか。それとも流れの中でアヤカロックではなくヒザ十字を極めたのでしょうか。

「あの流れだったらヒザ十字が一番極まるかなと思って、ヒザ十字を極めに行きました。試合ではその場面に合わせて動こうと思っていて、そのためにいろんな技を練習しています。前回の試合も、流れの中でヒザ十字が出ました」

――そうだったのですね。以前は「アヤカロックにこだわりすぎるのは良くない」という意見もありながら、最近は三浦選手が相手の首に腕を回した瞬間、アヤカロックを極めるのを期待するようになりました。

「アハハハ! ONEの映像サイドも、アヤカロックを撮りたいみたいですね。映像として使いやすい技だからか、スタッフさんからも『アヤカロックを出してくださいね』みたいなことを言われたりはします。私は別にそういうことを意識せず、いろんな技を出しますけど。

アヤカロックに限らず、ONE側からもサブミッションでの勝利を求められているのは感じますよ。女子で極めきる選手ってそうはいないし、私って特殊なタイプなんだと思います」

――そのリトゥ戦を経て今回、オタロラ戦が発表される直前に11月のONE日本大会開催も明らかになりました。

「11月に日本大会があるのは聞いていて、その前に私はもともと8月の試合に向けて準備していたんです。でもビザを取得している途中、米国大会がなくなって」

――8月に米国といえば、デンバーで開催予定だったONE FN34ですよね。もともとスタンプとザンボアンガが王座統一戦を行うはずだった……。

「はい。もともとその大会で私も試合する話があって、まだ対戦相手は決まっていませんでした。でもスタンプの負傷で統一戦が中止になって、私に『5R戦、いけるか?』という連絡が来たんですよ」

――つまり『負傷したスタンプの代わりにザンボアンガとタイトルマッチを行えるか』ということですか。

「そうです。でもその話については連絡がなくなり、いろいろあって7月18日にタイでオタロラと戦うことになりました」

――それは驚きの情報です。一方、ストロー級王者のシィオン・ヂィンナンがアトム級で試合をしました。

「そうなんですよ。でも今もまだストロー級のチャンピオンで、アトム級のランキングには入っていないので、今後の展開が読めないです」

――もしもヂィンナンがアトム級に転向するならば、アトム級で再戦したいですか。

「ジンナンだったらストロー級でリマッチしたい気持ちはあります。でも自分は今、アトム級で一番ベルトに近い位置にいると思っているので、まずアトム級のベルトを獲ってからジンナンとやりたい気持ちもありますね。

ただ、ヂィンナンとモン・ボーの試合はフライデーファイツだったじゃないですか。土曜日、ファイトナイトでやっても良いカードなのに――えぇっ、と思って」

――それは三浦選手が出場する大会も同じだと思います。

「和田竜光さんや箕輪ひろば選手も出ますからね。でも1週間前のファイトナイトには澤田千優さんが出るじゃないですか。ちょっとマッチメイクも読めなくなっています。

私、フライデーは初めてなんですよ。同じONEの大会ではあるけど、フライデーは他の大会と少し違っていて。飛行機の日程もそうだし、コスチュームについても……」

オタロラは伸びしろもセンスもあるとは思います。でも映像やSNSを視ていたら腹が立っちゃって

――現地入りのスケジュールも、ファイトナイトとは異なるのですか。

「フライデーのほうが現地入りは遅く、帰るのは早くなると思います。コスチュームについては、フライデーではフェアテックスのロゴを――しかも現地で入れないといけないらしくて」

――フェアテックスのロゴを入れることでコスチュームのデザインが変わった場合、スポンサーフィーも変わりますか。

「そこまでではないですね。問題は今のコスチュームにフェアテックスのロゴが入るスペースがあるのかな、っていうところで(苦笑)。そこは工夫しながらやりますけど。現地での写真撮影日程も、ファイトナイトより早くなるようです。でもファイターとしては、そういうのは関係なく戦わないといけないですからね」

――三浦選手の場合、ケージではなくリングで戦うことも、これまで何度も経験していますし。

「正直言うと、この試合について最初に聞いた時は『う~ん……』という気持ちもありました。タイトルマッチの可能性もあったので。ただ、短期間で結構いろいろあっただけで、最終的には試合に向けて気持ちをつくることはできています」

――今回対戦するオタロラはプロデビュー以来3連勝。とはいえ、これまでコロンビア国内のプロモーションのみで戦っており、国際的な舞台はこの試合が初めてです。三浦選手はベルト挑戦目前という状況で、このクラスの相手と戦うことをどのように捉えていますか。

「私としては、強い相手との試合を1つ挟んでからタイトルマッチになるのかな、と思っていました。長南(亮TRIBE代表)も『強い相手と当ててほしい』と伝えていたようですし。もちろんONEが考えているストーリーもあると思うんですよ。私とダニエル・ケリーが対戦した時って、ケリーが推されていたじゃないですか」

――それが今や、三浦選手がONE女子アトム級の軸になってきています。

「私は何を言われても自分のやるべきことを貫いて、TRIBEで揉まれてきました。今回もファイトキャンプで気を抜くことはないし――TRIBEにいるかぎり気は抜けない(苦笑)」

――アハハハ。

「今回の試合に関してはプラスマイナスを考えず、しっかりコンディションをつくって、しっかり勝ちます。今、大切なのは勝つことであり、怪我をせず無事に試合を終えること。そのために覚悟を決めて前に進むしかないです」

――なるほど。オタロラの印象を教えてください。

「試合映像を視ると、組んだ時に押されているんですよね。でもカーフを蹴る時とか、女子の中で打撃に関してはセンスが良いと思います。自分としては最近、クロスポイント吉祥寺で練習させてもらっていて。栗秋祥悟選手をはじめキックボクサーの方にカーフを蹴ってもらうなかで組みに行く練習もしています。

前回の試合から半年ぐらい経っていて、どれだけ成長しているかにもよりますね。まだ伸びしろもセンスもあるとは思いますよ。でも映像やSNSを視ていたら腹が立っちゃって」

――腹が立つ、というのは?

「フェイスオフの時に彼氏とチュッとしてから、キックミットをやったりとか。また『格闘技をナメんな!』と言っちゃうかも(笑)」

――三浦選手の場合、恋人である山本アーセン選手とのイチャイチャをアピールすることはないですね。SNSにツーショット写真を投稿するのは普通のことですし、同じ場所で練習していれば一緒に写真に収まることも当たり前であって。

「まぁ……今回の相手に限らず、同じような感じの人はいますよね。でも格闘技はファッションじゃないから。私も最初は試合が決まらないなかでファイトキャンプを行っていて、彼女が試合を受けてくれたことについては感謝しています。私は今しっかり集中し、勝って、笑って日本に帰ってきたいです。いつもどおり私の我儘を貫きます。勝って、またちゃんと言いたいことを言います」

――毎回、言いたいことがあるのですか。

「前回も言ったんですけど、タイトルマッチですね。でも日本大会があることは意識せず、この試合でしっかりと勝ちます。3日にはTRIBEの後輩の試合があるので(7月21日の修斗に黒部和沙が出場)、そこに繋げたいですね」

■視聴方法
7月18日(金・日本時間)
21時30分~ U-NEXT

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