【ONE FF120】アーティ・カトリへ、浜崎朱加と出会った平田樹―02―「『1人じゃねぇな』って」
【写真】「練習仲間ができた」。当たり前のことを、やり直している。良い感じの平田だった(C)MMAPLANET
明日15日(金・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FF120でアーティ・カトリと対戦する平田樹インタビュー後編。
Text by Manabu Takashima
1年2カ月振りのファイトとなる平田は、昨年6月の敗北後は4カ月に渡りMMAから距離を取っていた。やりたくないならやらない――というのは、いかにも平田らしいMMAとの向き合い方だ。それでも実兄・直樹の敗北を目の当たりにして、「このままでは終われない」と思うようになった平田が、これまで以上にMMAに向き合っている。
そこに浜崎朱加との出会いがあった。国内外で日本の女子MMAを――本人にその意思があったかどうかはいざ知らず――引っ張ってきた浜崎のシンプルなMMAの向き合い方が、平田樹に与えた影響とは。
<平田樹インタビューPart.01はコチラから>
あの人……技術的なこと、あまり知らないんです
――HALEOでのフィジカル・トレ。以前はそういう練習というのは?「やっていなかったです。ただ、これは朱加さんを自分の方から誘いました」
――どういう経緯で、HALEOトレをしようと思ったのですか。
「もともとスポンサードしてもらっていて、以前から『来なよ』って誘ってもらっていたんです」
――もう、かなり以前ですが取材をさせてもらったことがあります。相当に追い込む厳しいフィジカル・コンディショニングのトレーニングでした。
「めっちゃくちゃしんどいです。そこに向き合えていなかったのですが、朱加さんと一緒だとできると思って。もう、追い込まれまくっていますけど、朱加さんはめっちゃ足が速いです。すぐに見えなくなるぐらい(笑)」
――浜崎選手は天性の資質で戦い続けてきたようなファイターですが、今もそうなのですね。実際に組み合ってみてどうですか。
「スパーリングはFIGHT BASEでやらせてもらっていて。火曜日の女子練、それと水曜日の夜も行かせてもらっていて。驚いたんですけど、あの人……技術的なこと、あまり知らないんです」
――ハイ(笑)。常にパスをして腕関節です。
「ハハハハ。なんか、教えてもらっていなかったみたいで。なのに強いんですよ。打撃も変則的で、想いもしない攻撃があって。なんといってもトップキープが強いです。だから私が質問をしても、『えっ、分かんない』っていう感じで(笑)。才能でやっています。フィジカルと運神神経が凄くて。逆に朱加さんの方が『技術を知りたい』っていう感じで。
でも凄く健康的で。アルコールはやらないし、夜も遊びに行かない」
――平田選手はアルコールをやって、夜に遊びに行っているのですか。
「行くわけないですよぉ(笑)」
――ならファイターとして、普通じゃないですか。特別に触れる必要もない(笑)。
「アハハハハ、ほんとだ。なんか、朱加さんは人として素晴らしいんです。めっちゃ怖い人かと思っていたけど、誰に対しても気さくで、いっつもふざけている」
――平田選手が女子選手のことを、そういう風に話すのは珍しいですね。これまで取材や企画がらみの交流が多かったので、本当に交友関係として浜崎選手と付き合えているようで。
「初めてって言って良い存在です。お姉さん的な人は。ただ朱加さんが、私を追い込むとかはないんです。ただ頑張ってついていこうと思っても、全く追いつけない(笑)。それに朱加さんって、負荷をどんどん自分で追加していって。それ持ち挙げることできるのっていうぐらい、重いのを追加して。でも『いけるよ』って感じで(笑)」
――らしい、です。浜崎選手以外の女子練のメンバーは、どのような選手たちなのでしょうか。
「NOEL選手、万智選手、サラとか。前はRENA選手も来ていました」
――万智選手と!! 体重的には同じですし。凄く興味深いですね。
「ハイ。ONEは計量方法が違うけど、同じ階級だし。凄く良い練習ができています」
――では次戦に向けて戦略を立てたり、対策を考えるのは誰になるのですか。
「それはセコンドに就いてくれる仁之介とか、直樹ですね。仁之介は自分の良いところを伸ばしてくれる感じで。試合も『自分の強いところをぶつけろ』って言っています。
アイツがこないだ負けたのは、打撃の練習をやりこんでいたから試合で打撃をやりたくなっちゃって。その反省からか、『樹も打撃をやっているかもしれないけど、自分の強いところで勝負しろ』って。でも、それって前からそうだったはずなんですよね」
――あまり対戦相手云々ということでは、ないのですね。
「相手こととかは、朱加さんにも聞いてもいますね。ただ作戦とかは余りないですね。仁之介も直樹も、自分がやりたいことを伝えて修正してくれるというか。そうやって話して、やりたいことを明確にするような感じですね」
自分が勝って、浜崎朱加に『やってこいっ!!』って伝えます
――明確になってきましたか。
「そうですね。何でも手を出すんじゃなくて、無駄をしないようになってきました。なんか、MMAに対しての向き合い方が、『やっと』という感じになってきた気がします。それはやっぱり朱加さんの存在が大きいです。
朱加さんと知り合って、私は須田(萌里)さんとの試合は絶対に朱加さんが勝つと思っていました。でも首投げでバックを取られて……。これまではぶん投げることができたのに、できなかった。それで何かしら、環境を変える必要があると感じたみたいで。私たちの共通点は、『やりこみたい』という気持ちだったんです。
それに私がもっと強ければ、練習で朱加さんを追い込んで役に立てると思って。だから、そうなりたいけど本気を出されるとボコられる。あの人は1階級下なのに、いつも皆のことをボコっています」
――ともあれアーティ・カトリ戦、「やっと」の平田選手が見られることを期待しています。
「そうですね。直樹がタイトル戦で負けて、朱加さんと一緒にやるようになってから『夏には絶対に戦う』という気持ちになっていました。そうしたら、6月にまた直樹が負けちゃって。あの試合を見て、本当に試合に戻りたいってなりましたね。それからはONEに連絡をしまくっていました」
――とはいえ3連敗、また負けたらという怖さはなかったですか。
「そうッスね。『また負けたら』っていうのは、考えてしまいます。周囲の期待も、怖い。でも、こんな私を応援し続けてくれる人には感謝の気持ちでいっぱいです。それに、今回は怖さよりも、試合がしたいという気持ちの方が強いです。私に関わってくれる人、練習仲間とか増えて。『1人じゃねぇな』っていう気持ちが出てきたから」
――自然発生的な人間関係なのですね。
「あっ、そういうことかもしれないです。朱加さんと接していて、あれだけの選手でも試合を戦うことが平気じゃなくて、怖さを感じていることが分かりました。朱加さんだって、負けることが怖いと感じる。なら、樹がそう思ってもおかしくねぇじゃんって。なら、絶対にできる。
こんなこというと失礼かもしれないけど、私も怖さを乗り越えて戦って、勝つ。そうやって、朱加さんにつなげたい。本当にそうなんですっ!!」
――こんな言葉に力が入った平田樹は初めてです。
「自分が勝って、浜崎朱加に『やってこいっ!!』って伝えます。って、練習ではぶっ飛ばされるんですけど(笑)」
――ハハハハ。アーティ・カトリは随分と昔の試合映像しか残っていなくて。ちょっと、研究材料にするには危険かと感じました。
「そうですよね。絶対にあんなままじゃない。凄く成長していると思っています。少しでも『勝てるから』っていう空気にならないよう気を付けています。同時に相手なんて、知らない。とにかく自分がやってきたことをぶつけます。ほんと、そろそろさすがに勝ちたい」
――ここで勝って日本大会へと?
「日本大会に出るには、ここで勝つのが当然で。でも、今は11月のことより、次の試合。次の試合に勝って帰国したら、朱加さんに飯を奢ってもらう。そこですね。今、一番思い続けていることは」
■視聴方法(予定)
8月15日(金)
午後9時15分~U-NEXT