【ONE FF120】1年2カ月振りの復帰戦、平田樹―01―「直樹の負けを見て、このままじゃって思うように」
【写真】MMA界のビジュアルクイーンは、MMAPLANETのインタビューはプライベートタイムのようだ(笑)(C)MMAPLANET
15日(金・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FF120で平田樹が、アーティ・カトリと対戦する。
Text by Manabu Takashima
昨年6月にヴィクトリア・ソウザのギロチンに落とされ、3連敗。格闘代理戦争、ONEデビュー、SNSの活動などプロデビュー前から注目され続けた平田の求心力は大暴落し、SNSでの発信も極端に減少していった。
J-MMA界で全く前例のないデビューと注目のされ方をしてきた特殊な存在。その経験は誰も共有できないなかで陽の当たる場所に居続け、メディアのバックアップは格闘家・平田樹の孤立化を助長し、彼女自身のMMA、格闘技への向き合い方には常に疑問の目が向けられるようになった。
そんな平田に変化の兆しが見られる。それが女王=浜崎朱加からの「練習を一緒にしよう」という誘いだった。正直、インタビューを通じても平田のMMAへの向き合い方が、如何に変わったのかは分からないが、1年2カ月振りの戦線復帰前の平田樹の声をお伝えしたい。
コソコソ隠れて生きていました
――昨年6月のヴィクトリア・ソウザ戦、ギロチンで落とされて3連敗、その後は音無しの状態でした。試合後の心境は、どのようなモノだったのでしょうか。
「あの試合のあとはもう、心境もなにも……。『何をやってんだ』っていうことだけで。自分にガッカリしたし、人前に出ることが大好きな私が人前に出るのが嫌になりました(苦笑)。だから、コソコソ隠れて生きていました」
――実際、今後の競技生活に関して考えることは?
「辞めようと思っていました。辞めよう……ハイ、辞めようとも思っていたというか、もう自分のなかでMMAをやっていない体にまでなっていましたね。格闘技のことを考えず、やりたくなったらやる。やりたくならないと、やらない。親も『やりたくなければ、辞めれば』という風だし。試合映像も視なかったです」
――う~ん、そこを見つめることなしに次に進むことはできないですよね。引退しようが、続けようが。やはり自分の身に起こったことは受け止めないと。
「そうなんです。その勇気がなかった。本当に2、3カ月は全く何もしていなくて。いや、4カ月ですね。10月ぐらいまで試合もチェックしていないし、試合もやっていないような感じでいたんです……。でも、何も気持ちは楽にならなくて。結局、自分の周りは格闘技があるし」
――それは彼氏もお兄さんもMMAファイターですしね。
「ハイ。だから、全くもって離れることはできなくて。携帯をほぼミュートにして、Xを止めてインスタもデキる限り何もしなかったし。でも、やっぱり格闘技は近くにある」
――そもそもこの間、ONEからオファーがなかったわけですか。
「それは試合後に、戦える状態になるまで試合のことは考えられないのでオファーはしないでくださいと連絡をしていました。だから、3月の日本大会ぐらいまでONEとも試合の話はしていなかったです」
――平田選手に関しては、自分は結局のところ『どこまでMMAが好きなのですか』という部分に行き着くと思うんですよ。直樹選手と同じように、平田選手がMMAに向き合っているのか分からないです。
「私……。結構、好きですよ。勝つ感覚が持てなくて、やっぱり勝つと嬉しいわけで。それがないから、心の底からMMAは好きだとは言えないかもしれない。でも、結果やっているし好きなんだと思うんですよ」
――4カ月間、負けた試合もチェックしなかった。練習を再開し、MMAを続ける流れになったのはいつ頃だったのですか。
「アニキ、直樹がパンクラスのタイトル戦で負けて……。だから去年の12月ですね。10月ぐらいからは、やっぱり体を動かしたくなって、走ったりはしていたんです。でも、誰かと競い合うとか……MMAは全くやっていなかった。
直樹の負けを見て……直樹は、もっとデキるじゃないですか。でも、あんな風に負けて。直樹は色々とデキることがあるのにって思った時、自分もあんな風に負けたままで良いのかって。そういう感情が出てきて。
『樹だって、もっと色々ととできただろ?』って。『まだ、デキるだろう』と。試合展開もそうでしたよね。直樹はもっとデキることがあるのに、焦ってあんな風に動いて負けた。それって、自分もそうじゃんって思えたんです。直樹の負けなのに、半年も前の負けが悔しくなってきて。あの時、自分の負けを初めて受け止めることができたというか。なかったことには、やっぱりできねぇなって。
なんか、今日もそうだけど試合前には威勢よく話して。でも、試合になったら全然で。何をやっているんだろうって。本当にあんな試合、応援してくれる人に見せられるもんじゃないし。焦って、あんな風になって。もう、あんな風に焦らないで、自分のペースで戦わないと。相手が来たからって、相手ありきの試合になってしまって。自分の戦いが出来なくなっていたと思います」
(浜崎)朱加さんから連絡を貰って
――そこから格闘技に戻った?
「ハイ。ミットや柔術、グラップリングをやるようになりました。トライフォースやIGLOO、(鹿志村)仁之介が行くところに一緒に行って」
――ヴィクトリア・ソウザ戦も見直しましたか。
「ハイ。それは直樹の試合の前に、チェックしていました。『何もやってない』。でも、終わったことだから何をいっても変わらないって思っていて。それが直樹の負けを見て、このままじゃって思うようになりましたね」
――とはいえ、これまで通りではという風に考えることはなかったですか。
「結果、そういうことだったんですけど、(浜崎)朱加さんから連絡を貰って。一緒に朱加さんと練習をさせてもらうことで、自分が如何に足りていないか分かりました」
――浜崎選手の方から?
「ハイ。コロナの頃に一緒に練習したことはあったけど、それから接点とかはなかったです。それが急に『一緒に練習やろう』って。その前に一度ご飯でもという話になって、2人で犬を連れて代々木公園に行ったんです」
――凄くハイソな人が集まるドッグランですね(笑)。
「アハハハ。犬も一緒に会って、それからどう一緒に練習していくのかを話してくれて」
――なぜ、浜崎選手は平田選手に声をかけたのでしょうね。
「コレ、分からないですけど。ちょっと、何か私の中にあるモノを見てくれたのかなって」
――……?
「群れになるのが苦手なんじゃないかと……。知らないッスよ(笑)。でも雑誌とか番組の企画以外で、練習しようなんて言ってもらえたの初めてで。凄く嬉しかったです。それが自分がずっと見てきた朱加さんだったから、もう驚いてしまって。
それから一度、AACCに行って。MMAはFIGHT BASEの女子練習で主にやっています。それとHALEOのフィジカルも一緒に行っていますね。そんなに長い期間ではないけど、ずっと一緒にいるからメチャクチャ一緒にやってきた感じがして。今回の試合が終わったら、Black Belt Japanに行かせてもらおうと思っています」
<この項、続く>
■視聴方法(予定)
8月15日(金)
午後9時15分~U-NEXT