【PFC37】塩谷優斗、沖縄修行&中村京一郎との練習を経て「やってきたことを全て出してフィニッシュする」
【写真】タイ、東京、沖縄など出稽古を経て成長していく塩谷。さらに中村京一郎との出会いが何を変えるか(C)YUTO SHIOYA
13日(日)、北海道札幌市北区のPODアリーナで開催されるPFC37で、塩谷優斗が鳴海秀哉と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
青森スカーフィストに所属する塩谷は、5試合のキャリアを全てネクサスで戦ってきた。そんな塩谷とって初となるネクサス参戦――現在、ネクサス×札幌PFC×大阪ワードッグの連携があり、各々を主戦場とするファイターが別の試合の機会を得ることは、選手のキャリアにとっても大きいことだ。
昨年12月、平山諒にKO負けを喫した塩谷は今年5月の復帰戦で、アマチュア時代に敗れている中里俠斗をKOしてリベンジを果たした。そして今回は沖縄での練習、さらに中村京一郎との邂逅を経て、塩谷が鳴海戦で見せたいものとは。
何に対しても疑問を持って、人に説明できるレベルまで自分でやりこむ。それが自分のスタイルです
――今回の試合について、今日から3週間前(※取材は7月3日に行われた)にSNSで「急遽参戦が決まりました」と投稿しています。それだけ突然の決定だったのですか。
「ハハハハ。格闘技界のオファーって、いつ来るのが一般的なのかは分からないんですけど――自分としては試合の2カ月ぐらい前だったら、急だとは思わないです。今回は1カ月プラス1週間ぐらい前にオファーをもらって、自分の中で検討してから1週間後に『やります』と伝えました。まだこんなキャリアの選手が言うのも何ですけど」
――キャリアによってオファーに差があるかどうかはともかく、たとえばオファーが来るのが2カ月前と1カ月前では何が変わってきますか。
「自分は結構ウェイトトレーニングをやるんですよ。2カ月前に試合が決まると、まずウェイトに重きを置く期間があって。そのあと体を絞りこみながら、スタミナをつける期間になります。技術的な練習はずっと並行してやっていますけど、試合前の1カ月から相手の癖とか苦手な部分をイメージしながらスパーの数を増やします。試合から1カ月ぐらい前のオファーだと、そのスパーリングが少なくなる感じですね」
――これまでのキャリアの中で、1カ月前にオファーがあった結果、試合で違和感を抱いたこともあるのですか。
「いえ、1カ月前のオファーだと断っていました」
――徹底していますね。そんななか今回は約1カ月前のオファーを受けた理由は何だったのでしょうか。
「オファーが来たのって、沖縄のTHE BLACKBELT JAPANさんで練習させてもらっていた時だったんですよ。ちょうど沖縄の練習で気づいたことを試合で出したいと思っていたところでした。
11月22日にネクサスの後楽園ホール大会があるじゃないですか。自分としてはその後楽園ホール大会に出たくて、11月に照準を合わせて練習していました。ネクサスのビッグマッチで勝てば、絶対今後のために何か変わると思っていて。そのためにも『夏に一度、沖縄でやっていることを出すために試合をしたい』と思っていた時にオファーが来たので、やりたいと返事したんです」
――これまでも沖縄で練習したことはあったのですか。
「今回、生まれて初めて沖縄に行きました。ジムの会長(小蒼卓也スカーフィスト代表)と松根良太さんは修斗時代から繋がりがあったらしくて。僕は格闘技修行として年1回どこか別のジムへ練習に行かせてもらうんですけど、昨年はタイで今年は沖縄に行ったんです」
――最近は沖縄へ練習に行く選手が増えています。塩谷選手はその沖縄で、どのようなことに気づいたのでしょうか。
「まずスパーリングだけじゃなく、打ち込みの時間が長いって感じました。あとはシチュエーションスパーも多くて。スパーリングで自分の弱い部分を見せない、ということじゃなくて、毎日毎日違うポジションからスパーをしていくことが多かったです。
そのあと青森に戻って、ウチのジムでもそういう打ち込みやシチュエーションのスパーを増やしました。今まで自分も軽くミットやシャドーをやってからスパーを回す、ということも多くて。だけど考えながら練習することが重要なんだなって感じましたね」
――塩谷選手は野球出身で格闘技のベースがありません。にも関わらず、先ほどの練習スケジュールに関する考えもそうですが、しっかりとした格闘技観を持っているように感じます。
「ただ練習しているよりは、たとえばUFCを視て『これは凄いな』と感じたものを研究して練習で試したりするほうが、単純に楽しいというか。練習して『疲れた』『今日は調子良いわ』っていうことだけじゃなく、何に対しても疑問を持って、人に説明できるレベルまで自分でやりこむ。それが自分のスタイルなんですよ。普段から格闘技の話をするのも好きで、止まらなくなります。先日も中村京一郎選手が青森のジムに来てくれて――」
11月のネクサス後楽園ホール大会に照準を合わせている。ちゃんと目的を持って臨む試合にしたい
――えっ、それは貴重な機会ですね。
「中村選手は青森に親戚の方がいるそうで、ウチのジムにも寄ってくれたんです。翌日には北海道に帰省する予定だったけど、『今日も行くわ』ってグラップリングの練習時間に来てくれました。練習後にお食事に行かせてもらったら、お互いに格闘技の話が止まらなかったです」
――中村選手とはどのような話をしたのでしょうか。
「UFCの試合についてもそうですし、格闘技に対する考え方とか。あと自分は今、グラップリングの極めに力を入れているんです。極めるためには、まずポジションをキープしないといけないけど、自分はキープ力が足りない。そう話をしたら中村選手は『グラップリングのことだけを考えてはダメ。MMAだから打撃がある。グラウンドでも打撃を上下に散らすから、ポジションをキープできるし極めることができる』とか。そういう話を朝5時ぐらいまで……」
――まさに夜通し語り明かしましたね。
「基本的に試合が近い時は、自分は誰とも食事に行ったりしないんですよ。でも今回はせっかくの機会だったので――本当に最高の時間でした。今回の試合が終わったら、次は自分が中村選手のところへ練習しに行かせてもらいたいと思っています」
――なるほど。今回は鳴海選手と対戦します。鳴海選手の印象を教えてください。
「パンクラスで3敗していて、もともとフライ級で試合をしていると聞き(※今回の試合はバンタム級戦)、それもオファーを受けようかどうか検討した理由でした。自分が戦いたいのは、次につながる試合です。毎試合、自分は命を削って戦っているから、そういう想いを懸けられる相手が良いと思っていて。
一応、相手の試合映像は視ました。自分がフィニッシュできると思っています。だから――これは相手のことを舐めているわけじゃなく、今回は練習試合というか、それぐらいのイメージで自分の技を試したいです」
――練習試合、ですか。
「自分はずっと野球をやっていたんですけど、野球って本大会と練習試合があるじゃないですか」
――野球の練習試合、というのは分かりやすいです。練習試合という言葉を使うと、眉をひそめる人もいるかもしれませんが、練習試合に本気で挑まない野球選手はいないわけで。
「そうです。練習試合でも単なる練習のつもりで出たら、監督にメチャクチャ怒られますよ(笑)。自分が照準を合わせているのは11月のネクサス後楽園ホール大会なので、そこに向けてちゃんと目的を持って臨む試合にしたいですね。試合で『コレをやらないといけない』とガチガチに決めて行くのではなく、ここまで自分がやってきたことを出していく。全て出して、最後にフィニッシュする。そのつもりで今回のオファーを受けました」
――なるほど。
「これは関係ない話かもしれないけど、プロの興行に出たら自分はもうプロだ――というふうには考えていないんですよね。かといって実力があるからプロだ、というわけでもなくて。自分は実力をつけて、しっかり格闘技でメシを食っていきたいです。そうやって自分が格闘技からもらった夢を、他の人にも与えることができる選手になりたいです。
そのためには次の試合も勝って、11月の後楽園ホール大会にも出て、全勝して来年はタイトルマッチをやりたいですね。でもネクサスのベルトを獲ってすぐ次、他のところに行くわけではなくて。後楽園ホールよりも大きな会場で、『コイツの試合なら観に行きたい』と思ってもらえるような選手になってメインを務める。それを他ではなく、ネクサスで実現させたいです」
■PFC37 対戦カード
<グラップリング・バンタム級選手権試合/5分3R>
渡部修斗(日本)
ジミー西将希(日本)
<PFCフライ級選手権試合/5分5R>
黒石大資(日本)
中西テツオ(日本)
<PFCストロー級選手権試合/5分5R>
木内SKINNYZOMBIE崇雅(日本)
ザ・タイガー石井(日本)
<ヘビー級/5分2R+ExR>
キングuk(日本)
カタナマン(日本)
<フェザー級/5分2R+ExR>
中場ガッツマン大地(日本)
青木大地(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
吹田琢(日本)
佐藤陽向(日本)
<ライト級/5分2R+ExR>
佐藤力斗(日本)
鈴木淳斗(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
塩谷優斗(日本)
鳴海秀哉(日本)
<グラップリング・フェザー級/5分2R+ExR>
河永重春(日本)
中里侠斗(日本)