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【PFC37】POD生まれ・POD育ちのプロ=佐藤陽向「間違いなく北海道の格闘技人気は上がっている」

【写真】POD入会と同時に格闘技を始めてプロデビューした佐藤。「今はコツコツ下積みをして、PFCで結果を出してベルトを巻きたい」と目標を語った(C)TAKUMI NAKAMURA

明日13日(日)、北海道札幌市北区のPODアリーナで開催されるPFC37で、佐藤陽向が吹田琢と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

学生時代はバスケットボールで汗を流し、高校卒業後に運動不足解消のためにPODジムに入会した佐藤。アマチュアでの試合出場をきっかけにプロの道を目指し、Nexus SPROUT NORTH内で行われたプロ昇格トーナメント優勝を経て、今年3月のNEXUS38でプロデビューを果たした。佐藤にとってプロ2戦目で迎える地元・北海道札幌での試合。POD生え抜きとして、プロの舞台に立つ佐藤に話を訊いた。


――MMAPLANETでのインタビューお願いします。佐藤選手はメディアの取材を受けるのが初めてだとお聞きしました。

「初めてです。少し緊張していますが…よろしくお願いします!」

――プロフィール的なところからお伺いしたいのですが、もともと佐藤選手はバスケットボールをやっていたそうですね。

「学生時代は6年間バスケットボールをやっていました。高校を卒業したあとはOBとしてたまに練習に参加させてもらっていたのですが、ものすごく運動不足になっているなと感じるようになって、職場の帰り道にこのジムがあることを見つけたんですよ。それでフィットネス感覚でジムに通い始めました」

――ではPODが山本喧一さんのジムということもあとで知ったのですか。

「はい。会長がUFCのトーナメント(UFC-Jミドル級トーナメント)で優勝していて、PRIDEでケビン・ランデルマンと試合しているのもあとで知りました。ランデルマンの攻撃をあれだけ受けていたのに、試合後ピンピンしていたところを見て、この人はどれだけタフなんだ…と思った記憶があります」

――バスケ部時代から格闘技そのものは好きだったのですか。

「いえ、一切格闘技を見たことがなくて、むしろ格闘技=おっかない印象があって、正直輩みたいな人たちがやるようなイメージが強かったです」

――ではまさにバスケ一色の学生時代だったんですね。ちなみに好きなプレイヤーは誰ですか。

「ものすごくミーハーっぽいんですけど、やっぱりマイケル・ジョーダンですね。世代は全く違っていて、そもそも靴の印象しかなかったんですけど(笑)、勉強としてジョーダンの試合を見るように言われて、それから完全にハマりましたね。プレーはもちろん、練習に対する姿勢や練習量の多さだったり、アスリートとして偉大な選手だなと思って尊敬しています」

――野蛮なものだと思っていた格闘技をいざ始めることになって躊躇はしなかったですか。

「最初はそうでしたね。ちょうど初めてジムに行った時にプロの選手たちがスパーリングをやっていて、めちゃめちゃおっかないなと思ったんですけど、ずっとバスケをやっていたので全く違うことをやってみたいという気持ちもあったし、プロ以外で優しく教えてくれる一般会員さんもいて雰囲気はすごくよかったです」

――実際に格闘技を始めてみていかがでしたか。

「めちゃくちゃ大変でした。バスケとは使う体力が全然違うじゃないですか。ミットやサンドバックを殴ったり蹴ったりするのがこんなに大変だとは思わなかったです。でもやっていくうちに練習に行く回数や練習頻度も増えて、格闘技にのめり込みましたね」

――佐藤選手は青木真也選手が好きなんですよね。

「そうですね。YouTubeで青木選手の試合を見たのがきっかけなんですけど、その試合が廣田(瑞人)選手とやった試合なんですよ。対抗戦で相手の腕をへし折って、最後に中指を立てているシーンのインパクトが強すぎましたね」

――確かにあの一戦は他の試合にはない衝撃があります。

「こんなにぶっ飛んだ人がいるんだなと思いました。いざ格闘技を始めて、僕のなかで格闘技=ボクシングみたいな感じで、すごく紳士的なスポーツだという印象に変わっていたんですよ。試合が終わったら相手と握手して健闘を称え合う、みたいな。そういう価値観を一気にぶっ壊された感じですね。でも青木選手はそれだけじゃなくて、格闘技に対する信念や考え方もすごいじゃないですか。そういうところで青木選手のことが好きになりましたね」

――練習をやっていくうちに段々と格闘技にハマって、プロを目指すようになったのですか。

「その気持ちが芽生えるきっかけがアマチュアのデビュー戦なんですよ。自分は練習でやられると周りから『全然ダメじゃん!』みたいな感じで茶化される感じのキャラクターだったんですけど、アマチュアのデビュー戦で勝った時に、みんながめちゃくちゃ褒めてくれてスーパーヒーローになったような感覚だったんです。アマチュアでこれだけ気持ちよかったら、プロで勝ったらもっと褒められる・たくさんの人の自分のことを認めてもらえるんじゃないかなと思って、自分もプロになりたいと思いましたね」

――アマチュアの試合に出たことで試合で勝つ喜びを知った、と。

「そうは言ってもアマチュアの練習でもキツいくらいだったので、プロの練習を隣で見ていて『やっぱりプロはレベルが違うよな』と思っていました。そうやって気持ちが揺らいでいたのですが、本気で決意が固まったのがNexusのプロ昇格トーナメントに出た時ですね。縁があってトーナメントに出ることになったのですが、その時に塩谷(優斗)選手にボコボコにされたんですよ」

――塩谷選手は同じPFC37に出場しますが、アマチュア時代にそんなつながりがあったんですね。

「僕もそれまでアマチュアではほぼ負けなしだったんですけど、過去に経験がないぐらいボコボコにやられました(苦笑)。その負けが本当に悔しくて、いつか絶対にやり返したいという気持ちが芽生えて、自分も絶対にプロになろうと思いました。それでプロ昇格トーナメントに何度か挑戦して、去年7月のトーナメントで優勝してプロになることができました」

――アマチュアで勝つ喜びと負ける悔しさをどちらも経験できた、と。

「そうですね。アマチュアで負けるたびに自分が情けないと思って。でも今の自分には格闘技しか頼れる・誇れるものしかないと思って、格闘技で頑張ろうと思いましたね」

――3月NEXUS38でのプロデビュー戦(野村颯にTKO勝利)がいきなりメインイベントという扱いでしたが緊張はなかったですか。

「アマチュアの時よりも緊張がなくて、アドレナリンもすごい出ていましたね。試合中は相手のことしか見えていなかったのですが、自分のやりたいことを全部出せた感じですね」

――佐藤選手にとってはアマチュアよりもプロルールの方がやりやすかったですか。

「そうですね。プロの方がやりやすさはありましたね。試合で使うグローブもアマチュア時代は分厚いグローブだったんですけど、プロになるとすごく薄くなるじゃないですか。試合前はこんな薄いグローブで殴られたらかすっただけでも失神するんじゃないかと思ってビビっていたんですけど、いざ試合になったらすごく動きやすくて、薄いグローブの方が自分のやりたい動きもできましたね」

――今回はプロ2戦目となりますが、どんな練習や準備を続けてきましたか。

「実はデビュー戦のあとの練習で怪我をしてしまって、それがめちゃくちゃ悔しくてメンタル的にも落ちていたんですよ。だから試合が出来なかった分の悔しさを今回の試合で出しきれたらいいなと思います」

――対戦相手の吹田琢選手にはどんな印象を持っていますか。

「吹田選手は試合を見ていても打撃が好きな選手だということが分かるので、そこに気をつけながら自分の得意な形に持ち込んでフィニッシュしたいですね」

――先ほどは青木選手が好きということもありましたが、やはり自分の一番の武器は組み技・寝技ですか。

「そうですね、ただ好きなこと(組み技・寝技)ばかりやって、打撃が疎かになってはダメじゃないですか。だから打撃でも戦えるように練習もしていて、それをどう試合で出すかも考えています」

――青木選手以外に好きな選手や参考にしている選手はいますか。

「練習で真似するのは同じのジムの選手なんですけど、打撃はPFCフェザー級王者の森崇純選手。寝技やレスリングはパンクラスで試合をしている遠藤来生選手ですね。同じジムに参考になる先輩たちがいることは本当に心強いです」

――これからの格闘技での目標を聞かせてもらえますか。

「今のところはっきりした目標がなくて、聞かれる度にパッと思いついたことを言っちゃうんですけど(苦笑)。今はコツコツ下積みするしかないと思っていて、PFCで結果を出してベルトを巻くことが出来たらいいなと思います」

――北海道でもMMAを練習できるジムが増えて、PFCのような地元に根付いた大会が行われたり、先日はRIZINも開催されました。北海道のMMAの盛り上がりを感じることもありますか。

「最初は自分もあまりそういうことは分かっていなくて、北海道は格闘技をやる人が少ないんだなというのを感じたり、漠然と東京に行ったりした方がいいのかなと考えたことがありました。でもどこにいても強くなる選手は強くなるし、僕自身は北海道の格闘技を盛り上げたいという気持ちが強くなりました。このまま北海道で格闘技を続けて、北海道の格闘技人口とか増やしたりしていきたいですね」

――例えば佐藤選手がMMAを始めた時期と比べてもMMAをやる人は増えていますか。

「それはすごく感じます。僕がジムに入った当初と比べると会員さんの数は年々増えているし、ジムが人でぎっしりになることもあるので、間違いなく北海道での格闘技人気は上がっていると思います」

――その中で佐藤選手はPODの生え抜きでプロになった選手なので、まさに近年の北海道のMMAを体現している選手ですよね。

「確かに格闘技経験ゼロの素人から始めてプロになったのは自分くらいかもしれないです。自分はそんなに模範になるような選手じゃなくて。甘えちゃうことも多くて(苦笑)、むしろアマチュアでめちゃくちゃ頑張っている選手を見て、自分の方が刺激をもらっています。ただバックボーンなしで素人からプロになった僕がプロで上まで行けたら、自分と同じ境遇の人にも勇気づけられたりはするのかなと思います」

――それでは最後に今回の試合でどんなものを見せたいですか。

「今回の試合は怪我からの復帰戦なので、自分の力を出しきれるかどうか心配なんですけど、自分の持っている限りの全ての技術を出して、相手を徹底的にコントロールして倒す試合を見せたいと思います」

■PFC37 対戦カード

<グラップリング・バンタム級選手権試合/5分3R>
渡部修斗(日本)
ジミー西将希(日本)

<PFCフライ級選手権試合/5分5R>
黒石大資(日本)
中西テツオ(日本)

<PFCストロー級選手権試合/5分5R>
木内SKINNYZOMBIE崇雅(日本)
ザ・タイガー石井(日本)

<ヘビー級/5分2R+ExR>
キングuk(日本)
カタナマン(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
中場ガッツマン大地(日本)
青木大地(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
吹田琢(日本)
佐藤陽向(日本)

<ライト級/5分2R+ExR>
佐藤力斗(日本)
鈴木淳斗(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
塩谷優斗(日本)
鳴海秀哉(日本)

<グラップリング・フェザー級/5分2R+ExR>
河永重春(日本)
中里侠斗(日本)

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