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【ONE FN33】初黒星からの再起、澤田千優「全然終わりじゃなかったです」(対戦相手が1.4キロオーバー)

【写真】アラゴンが計量失敗。118.25ポンド契約、計量時点で1.4キロほどオーバーの相手と戦うことになった澤田(C)MMAPLANET

明朝12 日(土・現地時間)にタイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されるONE FN33で、澤田千優がマカレナ・アラゴンと対戦する。
text by Manabu Takashima

1月のモン・ボー戦で初黒星を喫した澤田が、半年振りにリングに上がる。思ったようにテイクダウンができない――いつかは訪れる時をついに迎えた。この敗北を機に、澤田は如何に成長を遂げてきたのか。バンコク入りした澤田に心境を尋ねた(※取材は9日に行われた)。

負けたら終わりだというぐらいでいました

――1月、モン・ボー戦で喫した初黒星。負けた直後の捉え方と、7カ月を経て感じる敗北。何か違いはありますか。

「負けることを考えていなかったというか……MMAを始めてから、負けたら終わりだというぐらいでいました」

――えっ、1度負けると終わりだ?

「MMAが甘い世界じゃないことは分かっていて。だからこそ、負けたら精神的にしんどいだろうって思っていたんです。ONEで世界王座を目指しているなら、負けることはあると思いつつも負けたことがなかったので……。

でも(松嶋)こよみ君もそうだし、絶対に負けられないという風に生きている人を見てきたので。それだけ腹を括ってやっているから、そこで負けると相当にしんどい気持ちになる。自分がそうなったら、もう立ち直れないんじゃないかとか凄く考えていました」

――澤田選手はレスリング時代に、一番になるという部分では挫折も経験したかと思います。そして、どこかでそれを受け入れることもあったかと。でも、前回の負けは許容したがたいモノだったのでしょうか。

「レスリングの時は、レスリング一本で五輪を目指すという気持ちでは全くなかったです。もちろん勝ちたいし、試合に出るからには優勝したい。でも絶対に決勝で勝てない相手がいて。勝てれば良いなぐらいの感覚になっていたのは、否定できないです。でもMMAは本当にやりたかったモノだから、ここで負けると何が残っているんだって思えて」

――それだけの覚悟をもって、MMAを戦っていたのですね。

「ただ試合が終わった時は、相手の手が挙げられる瞬間とかも、自分が負けていることも分かっていたし。凄く悔しいけど、涙が出るほどじゃない。『ああ、やってしまったな』ぐらいでした。それが……帰国して色々と考えて、初めて敗北を実感しました。

そこから映像を視て『なんで、コレやらなかたんだろう』、『アレはできたのに』と思うようになって。立ち直れないとか言っていられなかったです。やらないといけないことが、多すぎて。

モン・ボーと対峙して『前に出たらやられてしまう』と思ってしまって。でも今から考えると『なんで、そこで殴らないんだよ』とか、『なんでテイクダウンにこだわっていたの』って色々と考えるようになりました。

それから練習を重ねてきて、できなかったことを試さないといけない。負けを経験してレベルアップしたところを試合で見せたいという気持ちです。だから、全然終わりじゃなかったです」

――では技術的、戦い方という部分で初黒星を経験してこの間に積んできたのはどういう部分でしょうか。

「打撃、いかにテイクダウンにつなげるかですね。そのためにどう散らせるのか。そこをミットで創って、スパーリングで試す。上手くできないと、ミットでまた練る。それを良太郎さんとこよみ君とやってきました」

――試合は途中から、倒せずに動きが単調になっていたように映りました。

「凄く焦っちゃって。セコンドからも2Rには口が開いて、息が上がっていた。だから、相当に焦っていたのは相手にも伝わっていたと指摘されました」

――自分は正直、何回かに1回はテイクダウンに入ってクラッチもできていたと思いました。あれで倒せないのは、もう単純に体格差だろうと。

「入れていた……自分の見方よりも、テイクダウンを褒めてくれていますね(笑)」

――ハハハ。褒めているというか、入ってはいたので。倒せないと打撃に戻るけど、その打撃が課題なのは周知の事実ですし。同時にレスリング力を生かすなら、ONEルールでリスキーかもしれないですが、ハーフガードを取ってからレッスルアップ等、スクランブル柔術的なリバーサル方法が欲しいなと思いました。

「柔術ですか。一応、新しい道着は買いましたけど、道着を着て柔術という柔術をやることはなかったです。ただグラップリングやMMAスパーリング、シチュエーション・スパーリングはやってきました。MMAのなかでやることに重点を置いていましたね。下はあまり得意じゃないし、下になるとまずは自分が上になること。そうでないと、がぶるとか。

シチュエーションでは下から逃げる……一本を取る力はないので立ち上がる練習をしています。基本、あまり極められることもないので、立ち上がることを頭に置いていました」

――つまり立ち技の強化に通じることですね。他に敗戦を糧に改善してきたことはありますか。

「ラウンド毎に考えて、3Rを組み立てる。そういうことをラウンドごとに意識するようになりました。同じ動きでなく、2R目は違う動きをする。そうすることで、違うことが見えてきて。相手の反応を見て、作ることができるようになったかと思います。

ただ、相手が伊澤(星花)さんなんで(笑)。そこまで攻めることはできないですが、それでも試すことができています。そういう練習が成長につながるので、凄く伊澤さんには感謝しています」

――2人がバチバチのスパーリングをするという話を聞いたことがあります(笑)。

「ガンガンやっているように見るかもしれないです(笑)。でも互いに良いスパーリングができて、本気のスピードでやりやっても伊澤さんは反応してくれるので、ケガをしない。そういう良い練習が伊澤さんとは、週に3度できています」

まずはここを取って、ONEのアトム級のベルトを取りに行きたいです

――なるほで、です。そして今回の相手マカレナ・アラゴンもゴツゴツのフィジカルを持った選手のように見受けられます。

「前蹴りを使って前に出て、掴みにくるスタイルですね。ドンドン来ます。横でなく前に動く選手だと思います」

――そんな相手に対しては?

「外を取って良い位置取りをし、有効打を当てる。向こうが焦れて出てきたところにテイクダウンを狙うのがベストです」

――ここも距離とタイミングなのですね。

「国内で試合をしている時は、自分の思い通りの動きができればテイクダウンが取れる。取れなくても、ちょっと動くと触ることができていました。でも前回は自分の距離が創れず……創れないときの手段が何もなかったので負けました。

今回も突き放されたり、腰が重いからテイクダウンも切られることも出てくると思います。そんなときに組みだけにこだわらず、手数を出して打撃を当てる。蹴りも、ですね。前回の試合でダメだったのは、蹴りが使えてなかったからで。

後ろ足で蹴って、見せるだけでも三日月を出して創る。そこからテイクダウンを取る。頑固に取りに行くのですが、色々なアプローチをしようと思います。同時に殴ろうとすると顔が前に出てしまう癖があるので、そこは自制しつつ足を広げず、ヒザの向きとか気にして戦います。最終的には……倒してTKOできれば、と」

――思い通りにいかなくなるのが怖いのか。そうなった時のために練習してきたことを出すことが楽しみなのか。どちらでしょうか。

「半分半分……楽しみもあると言わないと、不安になってしまいます(笑)。でも、この試合はベルトに向かって駆け上がるために必要な一生なので。まずはここを取って、ONEのアトム級のベルトを取りに行きたいです」

■放送予定
5月12日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT

■ONE FN33対戦カード

<ONEムエタイ女子アトム級選手権試合/3分5R>
[王者] アリシア・エレン・ホドリゲス(ブラジル)
[挑戦者] ヨハンナ・パーソン(スウェーデン)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
シャドウ・シンハ・マウイン(タイ)
モハメド・ユネス・ラバー(アルジェリア)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
イブラヒム・ダウエフ(ロシア)
ペドロ・ダンタス(ブラジル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ランボーレック・チョー・アッジャラブーン(タイ)
パルハム・ゲイラティ(イラン)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ウラジミール・グズミン(ロシア)
ステファン・コロディ(アイルランド)

<118.25ポンド契約/5分3R>
澤田千優(日本)
マカレナ・アラゴン(アルゼンチン)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ノンタチャイ・ジットムアンノン(タイ)
アブドゥラ・ダヤカエフ(ロシア)

<ムエタイ女子アトム級/3分3R>
マルティナ・キエルチェンスカ(ポーランド)
シンシア・フローレンス(メキシコ)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ジャンロ・マーク・サンジャオ(フィリピン)
シネチャグタガ・ゾルツェツェグ(モンゴル)

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