【SUPER RIZIN04】ホセ・トーレス一択。扇久保博正「パントージャとカイ・カラフランスの試合を見て」
【写真】大会まで1カ月を切って、この満面の笑み。心身ともに柔術していないと、この笑顔はでないはず (C)MMAPLANET
27日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される超RIZIN04で開幕するRIZIN World GP2025フライ級トーナメント。その1回戦を決める抽選会で、4番目の選択権を持った扇久保博正は迷うことなくホセ・トーレスの隣に並んだ。
Text by Manabu Takashima
38歳、トーナメント参加者のなかで最年長の扇久保はトーレス参戦を知ってから抽選会当日まで、元UFCファイターとの対戦を熱望し続けていたという。さらに抽選会の2日前に見たUFC世界フライ級選手権試合=アレッシャンドリ・パントージャ×カイ・カラフランス戦が、その想いに拍車を掛けた。
10年前に1カ月半を共にしたメンバーが――今回のGPに出場する――エンカジムーロ・ズールーも加えて世界中でフライ級を盛り上げている。
1年のロングレイオフでケガを癒し、対策でなく力を積み上げる練習をしてきた。そしてホセ・トーレスの急遽参戦とTUFシーズン24で触れあった旧友たちの活躍。心身ともに充電完了――抽選会直後に扇久保博正にGPに賭ける想いを訊いた。
――トーナメント抽選会を終え、どのような気持ちでしょうか。
「ホセ・トーレスが空いていたら絶対にやると決めていたので、思った通りになりましたね」
――そもそも論として、扇久保選手としては選ばれるよりも選ぶ立場の方が良いという感覚ですか。
「それは選びたかったッス。だから、僕より先にホセ・トーレスの枠が決まった時は『よしっ、来たっ!!』と。僕が4番目だったので」
――まずは伊藤裕樹選手にズールーかショーティーを選ぶ権利がありました。あの時はドキドキしたのではないですか。
「そうですね。正直、『ホセ・トーレスに行くなよぉ』って祈るような感じで、伊藤選手がどっちに歩くのかを見ている時は緊張していましたね(笑)」
――なぜ、トーレスが意中の相手だったのですか。
「征矢(貴)とトーレスが追加になる前は、正直ガジャマトフかなって思っていました。やっぱり強い外国人とやりたいんですよ。自分の名前を挙げていきたいんで。トーレスが神龍(誠)に勝った直後から、ずっとやりたいと思っていました」
――トーレスには元UFCファイターの肩書もあります。
「そうッスね。UFCファイターが入ってくると、そうなります。自分の強さを証明したい。それが戦う理由なので。そこを考えると、ホセ・トーレスは良い相手ですよね。何と言っても強いですから」
――今回の顔触れを見ると、扇久保選手が挑戦するという感じになる相手はトーレスだけなのかと思っていました。
「確かに……今ソレを言われて、そうかもしれないって気づきました。トーレスが出場すると分かって、『ホセ・トーレスとやりたい』って凄くやる気が出たんですよ。戦って、勝ちたいっていう。確かに、挑戦……挑戦なんですかね」
――自分は正直、8人中海外勢は2人という正式発表があった時は、ガッカリしました。でも、トーレスが追加されたことでまた気持ちが上がりました。
「僕も上がりました(笑)。ホント『榊原社長に呼び出されました』で知って、あの金曜日の夜から今日までずっとホセ・トーレスのことを想ってきました。ここで対戦できるのは、マジで引き寄せですね」
――ホセ・トーレスが抽選会の間に「正直に言えば、この実力者同士の試合は決勝にとっておくべきだと心から思っている。この試合に勝った者がGPで優勝するんじゃないか。正直ショートノーティスのオファーだったので、オウギクボとの対戦は避けたかった。でも決まったのだから、最高レベルの試合を1回戦で見せるよ」とコメントしていました。
「嬉しかったですね。僕の実力を分かってくれていると感じたので。ただ、こないだの試合(※5月30日、BRAVE CFでジアス・エレンガイポフに判定負け)は、どこで視られるのか分からなくてチェックできていないのですが、負けちゃったんですよね」
――個人的には2Rと3Rはトーレスでもおかしくない試合でした。
「あぁ、トーレスってスロースターターですもんね」
――その言葉が出てくるということは、本当に大晦日から意識をしていたことが伺えます。そして、去年の神龍戦前とは表情も違いますね。
「ハハハハ。メチャクチャ楽しいですから。久しぶりですね。試合が楽しみで、ワクワクするというのは。とにかく、トーレスは強いんで」
――そのトーレスの強さ、改めて説明してください。
「まさに北米、UFCファイターっていう感じじゃないですか。心身ともにタフで、打たれ強い。意外にまだ32歳とかなんですけど、UFCで戦っていますからね」
――やはり北米の香りを求めているのですか。
「北米の香りを求める(笑)。求めるというよりも、結局……UFCへの復讐というか。引退するまで想い続けるのか、分からないですけど。あの時に契約してもらえなかった。結局、根に持っているだけかも知れないですね」
――復讐、根に持っているという言葉ですが、ネガティブに感じないです。ポジティブに、そう捉えているような。
「だからこそ、UFCでも名が通っている強い選手と戦いたいんです。戦って、勝ちたい」
――それだけの想いがあると、1回戦を突破した時にモチベーションを保つことができるのでしょうか。
「モチベーション? 大丈夫だと思います。トーナメントの扇久保ですからね(笑)。メンタルの保ち方は知っています。でも今までで一番厳しいトーナメントになりますね。1回戦がホセ・トーレスなので」
――優勝したVTJフライ級トーナメント、RIZINバンタム級GP。準優勝だったTUFシーズン24と違うのは勝者5人のなかから、ファンや有識者の投票で準決勝進出選手が選ばれるという点です。
「気にならないです。ホセ・トーレスは、固めて勝てる相手ではないですから。打撃も当然として、僕の持っているモノを全て出さないと勝てない選手なので」
――トーナメント戦の一番の敵は負傷ともいえますが。
「次のことを考えていると、それこそ勝てないです。ホセ・トーレスに勝つには、ケガをすることだって全然あると思います。蹴りも強いから足もボロボロになるかもしれない。テイクダウンも上手いし、テイクダウン防御もそう。簡単な試合にならない……強い相手です」
――結果、ファンの支持を得られる試合になると。
「そう思いますよ、僕は」
――ホセ・トーレスも同じ気持ちなら、とんでもない試合になりそうですね。あのショートディスタンスで、どんどん打撃を仕掛ける。自分の記者人生で、MMAグローブでガードを固めて圧力を掛ける選手はトーレスが最初でした。
「そうですね。防ぎ切れていないけど、打たれ強い。距離を潰して、守っていますよね。フィジカルも強いんだろうなぁ。足が細くて、ガッチリした上半身で。初めて戦うタイプになりますね」
――先ほど言われたスロースターターという一面。つまりは盛り返す体力と精神力があるということかと。
「そういう意味でいえば、一番強いのはメンタルじゃないですかね」
――そんなホセ・トーレスに対して、扇久保博正の強みとは?
「ホセ・トーレスは強いです。強いですけど、全部僕の方が上かなと思っています。これ本当に、嘘でなく。打撃もテイクダウンも、寝技も」
――乱打戦で来られても、問題ないと。
「乱打戦を受けて立つか分からないですけど、乱打戦でも負けないと思います」
――トーレスは根性で乱打戦に巻き込むことがありますが。
「あぁ、そうですね。そこに乗ったら、お客さんも盛り上がるんじゃないですか。トーナメントだし、すかして勝った方が良いかもしれない。でも、すかして勝てるのか。もう、そこは始まってみないと分からないですね」
――いやぁ改めて、楽しそうな顔で話していますね(笑)。
「アハハハハ。ホセ・トーレスはやりたかった相手なので。神龍戦、つまらなそうでした?」
――それ以前に複雑そうでした。今日も、神龍選手はオギ塩の受け取りを拒否しましたね。
「まぁ、予想はしていましたよ」
――いかにも神龍選手らしいですが、アレを受け取った方が扇久保選手の予想を覆すことになるわけですし。大きく見えて、精神的に強くなったという印象を与えることができるのかとも思いました。
「それは、どうなんですかねぇ……。ちょっと分からないですね。でも、受け取ってはくれないだろうなって」
――扇久保選手が1年休養を取った。その間に神龍選手はホセ・トーレス、伊藤裕樹選手と戦った。この間の成長度合いは、神龍選手に分があるかと。
「それは間違いないです。年齢的にも若いし。僕はこの1年ケガもあったので治して、なかなか最近はできていなかった積み上げる練習をしてきました。全体練習から外れて個別の練習をすることが多かったのが、試合がない間は全体練習にも参加してスキルを上げてきました。
(鶴屋)怜は米国に行っていたので、あまりやる機会はなかったですけど。(松井)斗輝とか若手たちとも、やり合ってきたので」
――では対策練習でないことで、この間に積み上げてきたこととは?
「それこそ一本、KOを取れるフィニッシュに向けた部分を積み上げることができたかと思います」
――正直なところ扇久保選手に関しては完成しているので、伸びしろを見つけるのが難しいと思っていました。ただ伸びしろというのは不安定で、経験値はステイブルということもあって。その辺りが、このトーナメント全般の面白さに通じているかと思います。
「それはそうですね。もう20年、やっていますからね(笑)。ただ自分の殻を破るというか、そういうことが今回はできそうな気がします」
――トーナメント正式発表前から、積み上げる練習をしてきた成果がトーナメントで発揮できるか。
「でも、このトーナメントの話は以前からあったじゃないですか。去年の秋ごろには現実味を帯びて来ていて、それこそ堀口(恭司)選手も出るという話でしたし。ずっと、トーナメントに向けてやってきていました。そのためにケガを治さないとダメだということで、ちゃんと治してきたので」
――挑戦という点にいえば、堀口選手がUFCに転じてチャンピオンがいない状態になったことは、何かガッカリしたとか精神的な影響はありましたか。
「ないです。逆に堀口選手が抜けたことで、僕がフライ級GP、RIZINフライ級を引っ張っていかないといけないという気持ちになりました」
――それが抽選会でも聞かれた「ここで優勝したら、UFCのチャンピオンにも勝てるんじゃないかというトーナメントにしたい」という言葉で表れているかと。UFC317後に、あのように言えるのは凄まじい意気込みですね。
「UFC317……凄かったですね」
――だから、あの言葉が印象に残りました。「届かないんじゃないか」と思う選手もいたと思いますし。
「そうなんですかね。届かない……僕はそうは思わないですね。メチャクチャ刺激を受けました。ブランドン・ロイヴァル×ジョシュア・ヴァンからも受けましたが、やっぱりアレッシャンドリ・パントージャとカイ・カラフランスの試合は、バリバリ刺激になりました。
1カ月半、一緒に暮らした2人がUFCの世界戦を戦っていて。再戦という形で世界王者のパントージャが、どっちが挑戦者なんだっていうぐらいガンガン攻めていて」
――いえばTUFシーズン24で扇久保選手はパントージャとカイ・カラフランスより上位の成績だった。ブランドン・モレノ戦とカイ・カラフランス戦を生き残ったパントージャに勝っているわけですよね。
「まぁ彼らの試合を見て、『一緒にやっていた連中が……』って思うのは僕、それとズールー以外はいないですよね」
――あぁ、ズールーも。ズールーは扇久保選手に最初に負けたから、ここで戦うと10年振りのリベンジになるわけですね!! いやぁ、凄いドラマが織り込まれています。
「ティム・エリオットとの試合が終わってパレスステーションに戻るバンで、僕とブランドン、カイ・カラフランス、パントージャとズールーが一緒だったんです。これって、振り返ってみると、凄くないですか」
――いや、凄すぎます。
「動画も残っていて。それが2025年になって、世界各地でフライ級を盛り上げている。でも、思いっきり下ネタを皆で話していたんですけどね(笑)」
――いやぁ、トーレスが来てパントージャ×カイ・カラフランスを見て刺激を受けた。扇久保選手にとって、凄く良い流れになっているのかと今、思いました。本命、扇久保博正だっていうぐらいに。
「本当ですか(笑)。めちゃくちゃ影響されていませんか(笑)。でも、本当に何か若い時の気持ちを思い出したというか」
――実際にカメラのファインダー越しに見ても、若返っていますよ。
「アハハハハ。それ、結構言われます(笑)。でも本当にパントージャとカイ・カラフランスの試合を見て、ホセ・トーレスと戦いたいっていう気持ちがさらに強くなりましたからね。他のヤツじゃ、ダメだって。
これって、流れが来ていることですかね?」
――来ていますよ。
「鳥肌が立っているじゃないですか(笑)」
――扇久保博正のRIZIN World GP2025フライ級トーナメントが、それだけ痺れる展開になってきたということです。改めて1回戦、ホセ・トーレス戦に賭ける気持ちをお願いします。
「20年やってきて、またこれだけやってやるという気持ちになれる。それもホセ・トーレスだからです。一回戦が、決勝戦です。本当に良い試合になりますよ。良い試合というか、レベルの高い試合。相手に不足なし。だからこそ、本当に勝ちたい相手で。絶対に勝ちます」
■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!