【Black Combat15】アシスと防衛戦、駒杵嵩大「韓国の団体にも強い日本人フライ級ファイターがいる」
【写真】前日計量をクリアし、アシスとバチバチに向かい合う駒杵(C)BLACK COMBAT
23日(土・現地時間)、韓国はインチョンのインスパイア・アリーナで開催されるBlack Combat15「Parabellum」で、駒杵嵩大がブラジルのトーマス・アシスを挑戦者に迎え、同フライ級王座の防衛戦に臨む。
Text by Shojiro Kameike
昨年12月にユン・ホヨンとの王座決定戦を制し、Black Combatフライ級王座を獲得した駒杵は、今年5月にキム・ソォンジェを下して初防衛に成功している。続く2度目の防衛戦の相手はBlack CombatのYouTubeコンテンツ「Black Table」に出場していたアシスだ。韓国、日本だけでなくブラジルに加えて中央アジア勢も参戦し、グローバル化が加速中のBlack Combat。さらに世界中で日本人フライ級ファイターの戦いが続くなか、駒杵が韓国で自分の存在を見せつけるための進化とは(※取材は8月15日に行われた)。
打撃が見えるようになったおかげで、グラウンドでも余裕を持てるようになりました
――前回の防衛戦が5月で、今回は8月末です。以前と比べて試合間隔も短くなっているのでしょうか。
「どうでしょうね? 僕としては年間4試合ぐらいやりたかったんですけど(笑)」
――年間4試合とは、ここ最近のMMAでベルトを巻いている選手としては多めの試合数かもしれません。
「今年もまず3月に試合をして、そのあと5月、8月、そして年末とか――。でも今年の始めにナンバリング大会がなかったんですよね。僕の試合はタイトル戦になるので、ナンバリング大会でなければ組めないという面もあったと思います」
――ただ「年間4試合やりたい」という気持ちがあるのは、それだけコンディションも良いということですか。大きな負傷もなく。
「負傷も前回のインタビューでお話したものぐらいですね。それも完全に治るものではないけど、しっかりとケアしながら怪我と付き合っていく感じで試合ができる状態にはあります。もともと体が丈夫なのか何なのか、柔道時代から大きな怪我をしたことがなくて」
――それは何よりです。前回のキム・ソォンジェ戦は、試合前のインタビューでも仰っていたとおり「緩急をつけた試合ぶり」だったように思います。
「そうですね。相手が打撃を振ってきても、しっかり見えていました。その中で自分の抜きどころ……相手が僕のグラップリングを阻んできたら、そこで相手に力を使わせる。体(たい)の浴びせ方で『ここはもう簡単に倒れるな』ということも分かるので、そういうとことで軽く倒したり、足を掛けたりとか。そうして序盤はコツコツ削っていくと、相手がどんどん焦ってきたので、最後は自分が極められるような体勢になりましたね」
――試合スタイルの面で大きな変化が感じられたのは、アナコンダが極まらなかったあと深追いしなかった点です。以前なら、グラウンドをキープしようとして力を使っていたような気はします。
「あぁ、そうかもしれないです」
――しかし現在は、相手を立たせてから再度テイクダウンを狙う選択肢がある。その攻防の中で相手に力を使わせることができる、と。
「昔は、あそこから立たれてしまった後の展開に自信がなかったです。だから余計にグラウンドで焦って、相手を逃がしてしまう。そこから相手にペースを握られたり、負けちゃったりした経験もありますからね。でも打撃が見えるようになったおかげで、『いつでも倒せるよ』という自信もついたし、その結果グラウンドでも余裕を持てるようになりました」
――その言葉どおり、スタンドに戻ったキム・ソォンジェを即ダブルレッグで倒して、肩固めを極めました。テイクダウンした時点でキム・ソォンジェから「これは力を使っているな」と感じられるようなものはありましたか。
「もう一度テイクダウンする前に『相当、力を使っているだろうな』と思っていましたね。あれだけ力を使ってアナコンダを外して立ち上がったので。離れ際に打撃を振ってくることも分かっていたので、そこにテイクダウンを合わせた形でした」
――アナコンダの体勢で、駒杵選手はそこまで消費していない。となると二度目のテイクダウン時には自身の体力も以前とは違いますよね。
「はい。昔はずっと力を使い続けていたので、せっかく形に入っていても自分の力が入らないことがありました。そういう面でも、最近ずっと取り組んでいることを出せた試合だったと思います」
――勝利後、駒杵選手がインタビューを受けている時にアナウンサーからガブリエル・ロドリゲスの名前が出て、ロドリゲス本人もケージインしてきました。キム・ソォンジェ戦前から次の挑戦者がロドリゲスになるような流れはあったのでしょうか。
「いや、僕は特に何も言われていなかったです。だから『あれ、何かケージに入ってきた……』という感じでした(苦笑)。ロドリゲス選手が入ってきた時に、僕も『1位か2位の選手に勝てば――』と答えて。確か当時、ランキング上位が韓国の同門選手ばかりだったんですよ。上位4人の中に3人も同門がいて」
――ユン・ホヨン、キム・ソンジェ、そしてジョン・ウォンヒですか。
「はい。僕は煽り映像の中で『同じジムの仲良し3兄弟で試合はしないでしょ? だったら俺が3人全員倒してやるよ』と言っていたんですよ。だから次はもう1人になるのかなぁ、と考えていて。ブラックコンバットはYouTubeで展開するストーリーを重要視しているし、同門の3選手と対戦していったほうが韓国のファンの方も盛り上がるじゃないですか」
――韓国で開催される大会で、韓国人ファイターを煽っていますからね。
「だから煽り映像でそう言ったのに、試合後にロドリゲス選手が入ってきたので『どうすれば良いのかな?』って思いました(笑)」
モカエフに極めさせなかった相手を極めたら自信になる
――アハハハ。
「そこで突然入ってきたブラジル人選手と対戦しても盛り上がるかどうか分からない。同じ大会で3位のキム・ソンウンに勝っていたので、『1位か2位の選手に勝てば――』と答えたんです」
――しかし実際はロドリゲスとの対戦はなく、当のロドリゲスはユン・ホヨンと対戦することになりました。
「最初はロドリゲス選手との防衛戦でオファーが来て、OKですって答えたんですよ。当時4位だったジョン・ウォンヒ選手が、前回の試合で負けてしまって。その試合で勝っていたら僕と対戦するはずでした。そこでロドリゲス選手でオファーが来て、僕たちも対策練習に入っていて。そうしたら向こうから『まだタイトルマッチは早い』と断ってきたと聞きました……」
――えぇっ!?
「そのあとブラックコンバットのYouTubeで『Black Table』という企画があったんです。今回対戦するブラジルのトーマス・アシス選手と、キルギス人選手(ダニヤル・トイショベク・ウルル。同じ大会でカザフスタンのルスラン・サリエフと戦う)でスパーリングして勝った方と対戦するはずでした。そこでキルギス人選手が勝ったけど、体が大きすぎて『フライには落とせない』と言ったらしくて(苦笑)。結果、アシス選手と対戦することになったんですよ」
――ブラックコンバットの場合はYouTubeチャンネルの企画やストーリーがあるので、いろいろと経緯が複雑ですよね。
「そのキルギス人選手は戦績を調べたらACAで10勝0敗、ラジャブアリ・シェイドゥラエフ選手と同じチームで。あのチームも含めて今ブラックコンバットには、どんどん強い選手が来ていますね。もう上位陣は対戦したことのある選手が多くなってきたので、そうやって強い選手がどんどん入ってくるのは楽しみです」
――確かにスパーリング企画で敗れたとはいえ、今回対戦するアシスも戦績は11勝3敗。試合映像を視ても強豪という印象を受けます。
「喧嘩ができる柔術家、というイメージですね。日本でいえばクレベル・コイケ選手とか」
――喧嘩ができる柔術家! 何となくバーリトゥードの匂いを感じるといいますか、すごく懐かしいと同時に、腑に落ちる表現です。
「試合ではテイクダウンも取られていて。柔術のレベルがどれくらいなのかは気になりますけど、相性は悪くないのかなって気はします」
――テイクダウンを取られるのも、スイープができる前提で試合をしているように感じました。
「バタフライガードとか足がうるさい選手ですよね。その点は、これまで戦ってきた相手よりも器用な部分だと思います」
――振り返ってみると、こうした柔術タイプのファイターと対戦した経験はないですね。
「はい。僕は基本、ストライカーと組まれることが多かったですから」
――現在どのように、アシス対策の練習を行っているのでしょうか。
「一緒に練習している横山武司君や、体格的に近い将光さんとしっかり対策できています」
――将光選手と横山選手! あまり対戦相手の情報がないなか、最も対策にピッタリな練習相手が一番身近にいるという。
「アハハハ、そうですね。将光さんと武司君のおかげで、そういう柔術家タイプの選手に対して苦手意識はないです。あとプロMMA選手ではない柔術家の黒帯の方もとかも練習に来てくれて、自分の中でも慣れてきた感覚はあります。
アシス選手は前回の試合でモカエフと対戦していて(7月、ムハンマド・モカエフに判定負け)。負けてはいるけど極めさせなかったので、その相手を僕が極めたら自信にもつながるし、自分の中でもモチベーションは高いですね」
――なるほど。
「今、自分の中でも感覚が変わってきています。いつもどおり打撃を見つつ、カウンターを出しながらテイクダウンを取れたりとか。ただ、試合でそういうものを出そうとした時ほど相手のパンチを食らったりするんですよね(苦笑)。試合の流れに任せて、極められるチャンスがあれば極めますし、打撃も出していきたいです。今回は選択肢が広がっているので、気持ちにも余裕は生まれています。
今はUFCでもRIZINでもフライ級が盛り上がっているじゃないですか。そこに引けを取らないように『韓国の団体にも強い日本人のフライ級ファイターがいるんだよ』っていうところを見せますので、応援よろしくお願いします!」
■視聴方法(予定)
8月23日
Part.2 午後6時~Black Combat YouTubeメンバーシップ
Part.1 午後1時~Black Combat YouTubeメンバーシップ
■ Black Combat15計量結果
【Part.2】
<フェザー級/5分3R>
キム・ジェウン:66.3キロ
アディレット・ヌルマトフ:66.5キロ
※ヌルマトフは計量オーバー(フェザー級リミット+1ポンドをクリアできず)のため、ペナルティとしてラウンドごとにマイナス1ポイント。ヌルマトフが勝利した場合、公式結果はノーコンテストとなる。
<Black Combatライト級選手権試合/5分3R>
[王者]ムン・ギボム:70.1キロ
[挑戦者]フラービオ・サントス:70.2キロ
<Black Combatフライ級選手権試合/5分3R>
[王者]駒杵嵩大:56.7キロ
[挑戦者]トーマス・アシス:56.4キロ
<ウェルター級/5分3R>
オ・イルハク:77.6キロ
ミウソン・カストロ:77.4キロ
<ミドル級/5分3R>
チェ・ウォンジュン:84.2キロ
エドゥアルド・ガルヴォン:84.4キロ
<フライ級/5分3R>
ユン・ホユン:58.7キロ
ガブリエル・ホドリゲス:58.7キロ
<バンタム級/5分3R>
キム・ソォンビン:61.6キロ
キム・ダオンギュ:61.7キロ