【Just Curious 2025~2026】修斗とLemino修斗
【写真】同じように見えて、土壌と基盤が違う。そんなMMA興行が始まった(C)MMAPLANET
2025年を終え2026年を迎えたタイミングで、MMAPLANET執筆陣が昨年の格闘技シーンにおいて、妙に気になった出来事が今年にどうつながっていくのか――を想い巡らせコラム調で気軽にお伝えしたいと思います。題して「Just Curious 2025~2026」、第四弾は高島学が修斗、そしてLemino修斗について書き綴ります。
Text by Manabu Takashima
昨年7月にLeminoで配信、NTTドコモのバックアップを受ける形でLemino修斗の9月旗揚げが正式発表された。その第1回大会で引退試合を行った岡田遼とTHE BLACKBELT JAPANでの先輩&師匠にもあたる松根良太氏が中心となり、10月には沖縄で第2回大会を実施した。
なんせNTTドコモだ。Wiki調べによると2025年3月期の経常利益は8968億9800万、純資産は6兆987億5200万の大企業だ。平良達郎を全面サポートするNTTドコモ、そしてLeminoといえば井上尚弥――などと偉そうなことを書くほど、ボクシングのことは分かっていない。MMAPLANETの読者の方々より、全然分かっていないのが本当のところだ。Lemino修斗の文脈でPHOENIX BATTLEという大橋ボクシングジム主催のボクシング大会の配信をしていることを知ったほどで……。
ともあれLemino修斗がスタートすることに、業界はざわついた。同時に修斗がABEMAからLeminoに配信元が変更されるというような誤解もあった。
「修斗とはプロモーション名ではない」。この言葉と、その意味合いは今から四半世紀も以前の格闘技界の方が浸透していたようだ。競技、流派、団体――と、個々の取りようが違うので「修斗は競技」、「修斗は団体ではない」というそれこそ25年以上も昔に、旧修斗コミッションのメンバーが力説していた言葉も今は誤解を生むだけだろう。よって、修斗とはプロモーション名でないという言い方が一番しっくりくるように感じた次第だ。
1984年に佐山聡氏の「斗いを修める」という理念から、ルールが創られ、試合が行われ、プロ公式戦は興行のなかで組まれてきた修斗。プロ修斗公式戦を組んで大会を開くことができるのは一般社団法人日本修斗協会からプロモーターライセンスを与えられた興行主だけだ。
その日本修斗協会のホームページによると現在、プロ修斗公式戦を組めるプロモーションは越後風神祭り実行委員会、SUSTAIN、TKプロモーション、闘裸男/Torao Nation State、FORCE/TORAO Nation State、THE SHOOTO OKINAWAの6つの組織だ。Torao Nation Stateは中国・九州で闘裸男、四国でFORCEという大会を開いているが、同ホームページではプロモーション名として別団体として表記されている。
Sustainでは主催大会を「プロフェッショナル修斗公式戦」と銘打ち、同様に新宿FACE大会はSHOOTO GIG TOKYOという大会名で取り行ってきた。女子大会のCOLORSもSUSTAIN主催だ。闘裸男とFORCEの主催はTorao Nation State。越後風神祭りを越後風神祭り実行委員会(イベントスケジュールページでの主催は越後風乃陣実行委員会。大会名にはプロクテテス新潟主催興行と記されている)が開き、TKプロモーションはBORDERという大会を行ってきた。
Lemino修斗の主催はTHE BLACKBELT JAPANとなっており、プロモーター一覧とは一致しないが、それがTHE SHOOTO OKINAWAに当たるものと理解している。
いよいよ混乱してしまうかもしれないが、簡略化させていただくと修斗には公式プロモーターが存在し、それぞれのイベントを開いているということ。Lemino修斗はそのうちの一つのプロモーションが主催する一つの大会であり、修斗の配信がABEMAからLeminoに代わるということでは決していない。
しかしながら修斗のプロモーター制は上記にあるように修斗コミッション創世記にはコミッションだけでなく、プロモーターサイドもファン、メディアに強く訴えかけてきたが、今はそうではない。メディアも修斗について、その他のプロモーションと同じ理解でいる場合がほとんどだろう。
よって修斗内の常識は外部では常識でなく、LeminoでTHE BLACKBELT JAPANのプロ修斗イベントが配信されることが、SUSTAINのプロ修斗イベントもそうなるという風に理解され、「そんな話は一切聞かされていない」とABEMAおよびサイバーエージェント上層部が色めき立ったのも致し方ない。もう長い間、修斗の成り立ちと競技及び興行形態が理解されていない状態が続いてきたのだから。
ONEが修斗と提携していた時期があった。これも実際にはONEとSUSTAINの提携にアマ修斗がほんの少しばかり絡んだに過ぎない。同時期に見られたパンクラスとONEのパートナーシップ(結果的に破談に終わったが……)とは違う。パンクラスはワールド・パンクラス・クリエイト~スマッシュ・パンクラス事業本部~スマッシュ格闘技部門パンクラス実行委員会~FENパンクラス事業本部という運営団体が、パンクラスという大会を開いてきた。よってONEとパンクラスの提携は成り立つ。
一方で修斗のプロモーターライセンス制度を含めた競技性という文脈では、ONEという大会と修斗がパートナーシップを結ぶということは、本来はありえない。ONEと柔道が提携するなんてことが、決して起こりえないのと同じで。
実際に「ONEとのパートナーシップは自分たちには恩恵がない」という言葉も、他プロモーション関係者から聞かれることもあった。当然だ。チャトリ・シットヨートンの提携先は実質SUSTAINだったのだから。同時にSUSTAINが、それこそ25年以上に渡り後楽園ホール大会に代表されるプロ修斗公式戦の最高峰のイベントを主催してきた事実に変わりはない。他のプロモーションは、SUSTAIN興行に選手を送り出すため、修斗内フィーダーショーを開いてきたのだ。
いわば「修斗の看板を背負い続けてきた」のがSUSTAINなのだから、「恩恵」ぐらい受けても良いだろう。そんな修斗の世界に、Lemino修斗が誕生した。後楽園ホールでプロ修斗公式戦を行い、国際戦を組む。松根氏が36歳の岡田をプロモーターとして育てようとしている。
SUSTAINの坂本一弘代表は29歳の時に、この興行会社を起ち上げた。実際には27歳の時にワールド修斗のプロデューサーとしてプロ修斗公式戦のプロモート業を行ってきた人だ。真剣勝負の総合格闘技など、一つの興行の失敗で吹き飛ぶような荒野でプロ修斗公式戦を組み続けてきた。
あの頃と今では修斗、MMAを取り巻く環境は全く違う。SUSTAINが道なき道を切り開いたのに対し、松根氏と岡田氏は交通網が整った状態で、日本人選手を世界最高峰に送り出すための幹線道路を創り上げようとしている。この大きな理想は野望、夢と呼んでも語弊はないだろう。野望や夢が大きければ大きいほど、多くの障害が待ち受けている。
NTTドコモのバックアップは、サブカルだからと世間(あるいは社会性)を斜めから捉えることができている日本の格闘技興行の方法論を踏襲することは決して許されない。いわば何も無いところから道を創るよりも、やっかいな事業に取り組んでいる。現時点では松根氏も岡田氏もゴールに向かって測量を開始し、同時に土を掘り起こし始めたばかり。そんな彼らは第2回大会を終えた時に、このような言葉を取材で話していた。
松根良太
「5年、10年、次の世代にバトンを渡し、20年、30年と如何に続けていくか。30年続けることでMMAという競技をサッカーや野球のように日本の文化として根付かせる。僕は今43歳になりますけど、60歳まで17年あります。選手を指導し、活躍する場を提供するという人生を送る。次の世代にバトンを渡すためにLemino修斗を継続させます。僕の人生を賭けて」
岡田遼
「Lemino修斗という船を絶対に沈没させない。そのために選手ファーストでLeminoさん、NTTコモさんとの橋渡しという重責を担い、全うしていきます。この船の航海を続けるために、その責任と向き合って生きていきます」
相当な覚悟が備わっているのは、2人の表情にまるで余裕がなかったことで伝わってきた。2月18日、Lemino修斗第3弾。彼らの覚悟がどのような形となって、可視化できるのか。松根と岡田には申し訳ないけど、ワクワクしている。














