【DEEP JEWELS52】日本のアマチュア女子MMAー01ー山吹マリン「端貴代さんが手を繋いで……」
【写真】薬学部の5年生という山吹。国家試験は1年後だが、実習でお世話になった薬局さんから「格闘技選手としても応援するのでウチに来てほしい」と言われているそうだ(C)SHOJIRO KAMEIKE
23日(月・祝)、東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS52のアマチュア戦で山吹マリンが村井成美と対戦する。
Text Shojiro Kameike
オープニングファイトも含めて全13試合が組まれた今大会。そのうち5試合がアマチュアルールであることに、日本女子MMAの大きな変化が感じられる。
日本女子MMAの歴史を振り返る時、過去においてはアマチュアマッチの少なさは大きな課題の一つであっただろう。特に格闘技経験のない選手が、アマを経ずにプロデビューすることも少なくなかった。女子選手も参加できるアマ大会は存在する。しかし応募者が少なく、せっかく応募しても対戦相手がいない――その選手層の差はキックボクシングや柔術大会と比べても明らかだった。
選手、試合、あるいは練習の機会を増やすため、スマックガール時代には「ヒザ立ちグラップリング」で試合を組んでいたこともあった。「まさか、それで試合が……」と思う人もいるかもしれないが、それも20年前の日本女子MMAの現状だった。当時は各ジムに所属する女子選手、あるいは一般の女性会員さんが一堂に会して練習する機会も少なかったのだ。
このような試みを経て近年は選手の増加にともない、全日本アマ修斗やアマパンクラスひいてはアマチュアMMA全日本でプロ昇格を賭けたトーナメントも多く開催されるように。同時に、DEEPジュエルスでは前半にアマチュアルールのワンマッチが数試合組まれている。現ストロー級王者の万智もDEEPあるいはDEEPジュエルスのアマチュアマッチで経験を積み、プロデビューしてベルトを巻いた一人だ。その万智に、アマチュア時代に勝利している百湖は今大会で樹希を相手に、バンタム級王座決定戦に臨む。
そんな移り変わりを見せる日本女子MMAのなかで、今回はDEEPジュエルスのアマチュアマッチに出場する2人のファイターにインタビューを行った。1人目は現在2連勝中、和術慧舟會AKZA所属の山吹マリンだ。端貴代との出会いが、彼女の格闘技人生を変えた――その端貴代のようなファイターになりたいという山吹の声をお届けしたい。
PRIDEライト級GP1回戦、五味隆典さんと川尻達也さんの試合を何度も視ています
――山吹選手は現在、薬剤師になるため勉強しながらプロMMAファイターを目指しているそうですね。もともとは部活でバレーボールをやっていたと。
「最初にスポーツを始めたのは小学2年生の時で、テニスサークルで硬式テニスをやっていました。中学でも硬式のテニス部があれば入りたかったけど無くて。それで中学の部活動見学の時、バレー部の先輩たちを見て『こうなりたい。バレー部に入りたい』と思って、他の部は見ずに速攻で入部しました(笑)」
――ということは、ずっとスポーツ少女なのですね。
「はい、意外とスポーツやっていました」
――意外と、って何ですか(笑)。
「アハハハ」
――高校卒業後、そのままバレーボールや他のスポーツで進学しようとは考えなかったのですか。
「全然考えていなかったです。小学6年生の時に将来の夢を発表する授業があって、その時に『私は何になりたいんだろう?』と考えていたら、病院で働いてお母さんが『薬剤師はどう?』と勧めてくれたんです。薬剤師は女性が多いし、資格を持っていると今後も安心だからって。その勧めがキッカケで、薬剤師になろうと思いました」
――薬剤師の資格を取得するためには6年間、大学に通って国家試験に合格しないといけない。大学入試も、入学してからも勉強で忙しいと思います。その生活の中で、なぜ格闘技を始めようと思ったのでしょうか。
「大晦日は毎年、ガキ使(※『笑ってはいけないシリーズ』)を視ていたんですよ。でも大学に入ったあと放送されない年があって、何を視ようかと思っていたらRIZINが放送されていて。その時に初めてMMAの存在を知りました。そこからMMAを視始めて、自分もMMAをやりたいと思うようになりました」
――一番お気に入りの試合はありますか。
「PRIDEライト級GP1回戦、五味隆典さんと川尻達也さんの試合ですね。メッチャ気に入って何度も視ています」
――我々の世代はあの20年前の名勝負を挙げられるだけで、いろんな想い出が蘇ってきます。
「そうなんですか。私の親も昔から格闘技はよく視ていたと言っていました」
――ただ自分がファンとして見ることと、実際に娘さんが殴り合う競技に出ることは気持ちも違うかと思います。
「お父さんは『打撃がある競技はダメだ』と言っていました。だから私は『グラップリングしかやらないよ』と言って、始めてから段々と……(笑)」
――アハハハ、徐々に懐柔していきましたか。
「そのあと『MMAの試合に出たい』と伝えてからは、反対もせず今は応援してくれています」
皆さんチャンピオンで、皆さん最初から優しく――優しくトップを取ってくれます(笑)
――良かったです。まずグラップリングを始めるために和術慧舟會AKZAへ?
「いえ、最初に入ったのはトイカツ道場の東中野です」
――そういえば、リモート画面の背景が……。
「今日も東中野にいます。ジムを探していた時に、『ここのグラップリングが一番充実しているなぁ』と思って、東中野に入りました。いつかMMAをやりたい、でも最初から全てできるわけじゃない。MMAをやるためにも、まずは寝技を練習したほうが良いと思ったんです。それが1年前ですね。
でも高校を卒業してからスポーツは全くやっていなくて、ジムに入った時はアップについていけませんでした(苦笑)。マットの端から端までエビ、横エビをやっていくんですけど、最初はそれもできなくて。悔しくて違うところでエビだけ練習していました」
――テニスやバレーボールと動きが違うため、最初は苦労したかもしれません。しかしそれだけスポーツ経験があれば、一度何か掴めば上達は早いのではないかと思います。
「そうですね。相手がこう来たらこうする、という対応はすぐに頭に入りやすかったです。最初はサクサク行きました」
――最初は、というと?
「テクニックを学んで覚えるのは得意だったけど、それをスパーリングの中でスムーズに出すのは難しかったです」
――その状態から2025年に入りMMAを始めたということですが、自分の中で目標や基準など、何かキッカケがあったのですか。
「自分の中では最初、2~3年グラップリングをやってからMMAを始めようと考えていました。それが……グラップリングの練習の時に端貴代さんと出会って。端さんに『いつかMMAをやりたい』という話をしたら、トレーナーの小泉慶嗣さんを紹介してくれたんです。手を繋いで、小泉さんのところまで引っ張って行ってくれました」
――手を繋いで! その瞬間に立ち会いたかったです(笑)。
「アハハハ。まだ早いかもしれないけど、MMAを始めることができる機会というか、縁を逃がしたくなくて。小泉さんからは『AKZAに来たらMMAを教えることができる』と言われて、AKZAに行くようになりました」
最初のスパーリングは、5分間ずっと下でもがくだけでした。スパーが1時間半あったら、その1時間半はずっともがくだけ……。いつになったら、皆さんみたいにスパーリングができるんだろうと思っています」
――今、一緒に練習している選手を教えてください。
「端さん、藤野(恵実)さん、万智ちゃん、SARAMIさん……皆さんチャンピオンで、皆さん最初から優しく――優しくトップを取ってくれます(笑)」
――優しく(笑)。なかなかのメンバーが揃っていますが、それだけのトップ選手たちが優しく強さを見せつけてくれるわけですね。
「最初から皆さん本気の方たちに囲まれたのが、環境として良かったと思います」
格闘技への気持ち、努力——端さんのようなファイターになりたいです
――そのなかで端選手とは、よく話をする仲だったのですか。
「その時は、週1回のスパーの時間したお会いしたことはなかったです。どういう話の流れだったかは忘れましたけど、みんなと話をしている時に『いつかMMAをやりたい』とお話して」
――端選手と練習した印象は?
「強いです。強いの一言です」
――その端選手から学んでいることはありますか。
「格闘技への気持ち、努力——全部です。人柄にもすごく惹かれていて。人って誰でも苦手とか、悪い印象とか一つぐらいあると思うんです。でも、端さんのことを悪く言う人はいなくて。端さんのようなファイターになりたいです」
――端選手はずっとストイックにMMAと向き合い続けている選手です。山吹選手もそんな端選手と同じく「とにかく練習する。言ったら永遠にやっている」というタイプだと聞きました。昨年11月の試合(※村松美直と対戦予定だった)は、負傷欠場で……。
「ローを思いっきりスネで蹴って、スネが折れました(笑)」
――怖いことを笑顔で言い放ちますね。
「アハハハ。その時は減量していて疲労もあったし、試合前だから出力も上がっていて。いろいろな要因が重なって、ボキっと。
バレーボール時代から骨折したことがなかったので、その時は骨折の痛みだと分かりませんでした。私があまりにも普通に動いているから、周りも骨折していると思っていなかったみたいです。でもどんどん足が腫れていって、立てなくなったので救急車で病院に行きました。そこで骨折だと分かったんですよ。
あの時はとにかく悔しかったです。試合に出られず、それまで練習したことを出せませんでした。いろんな人に助けていただいて感謝しかないですし、皆さんに早く勝つところを見せたいです。骨折する前より強くなって、皆さんを喜ばせたいですね」
――なるほど。今後はどのようなMMAファイターになりたいですか。
「全部できるファイターですね。バックボーンがないのを生かして、逆に全部うまくできる。どんな対応もできる選手になりたいです。そして学生のうちにプロ選手になりたいです。これからも練習を頑張って、もっともっと強くなって――DEEPジュエルスでプロになったあとも勝ってトップに行ける選手になります。よろしくお願いします!」
■視聴方法(予定)
2月23日(月・祝)
17時05分~U-NEXT、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ
■DEEP JEWELS52 対戦カード
<DEEP JEWELSバンタム級王座決定戦/5分3R>
百湖(日本)
樹季(日本)
<ストロー級/5分3R>
万智(日本)
キム・ダンビ(韓国)
<49キロ契約/5分2R>
竹林エル(日本)
海咲イルカ(日本)
<ストロー級/5分2R>
桐生祐子(日本)
堀井かりん(日本)
<ストロー級/5分2R>
横瀬友愛(日本)
岡美紀(日本)
<キック ストロー級/2分2R>
坂本瑠華(日本)
ダイナマイト♡ユラ(日本)
<49キロ契約/5分2R>
横瀬美久(日本)
渡邊花美(日本)
<キック 50キロ契約/2分2R>
島村優花(日本)
中澤諒香(日本)
<アマチュア 49キロ契約/3分2R>
山吹マリン(日本)
村井成美(日本)
<アマチュア ストロー級/3分2R>
あきぴ(日本)
ちゃんりな(日本)
<アマチュア ストロー級/3分2R>
谷山心優(日本)
村松美直(日本)
<アマチュア 50キロ契約/3分2R>
せりな(日本)
山岸佳音(日本)
<アマチュア フライ級/3分2R>
たから(日本)
田川真帆(日本)











