【RIZIN51】堀江圭功と防衛戦。ホベルト・サトシ・ソウザ「頭の中で何回も何回も対戦相手を極めている」
【写真】インタビューは8月1日の記者会見後に行われた(C)TAKUMI NAKAMURA
9月28日(日)に名古屋市北区のIGアリーナで開催されるRIZIN51。RIZINライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザが5度目の防衛戦で堀江圭功を迎え撃つ。
text by Takumi Nakamura
昨年3月の中村K太郎戦以降、ルイス・グスタボ、ヴガール・ケラモフ、キ・ウォンビンを次々と撃破して4連勝中のサトシ。しかもK太郎、ケラモフ、ウォンビン戦はスタンドでの秒殺KO勝利で、寝技だけでの打撃もフィニッシュできる戦い方を確立させつつある。
当初対戦予定だった野村駿太の負傷により、堀江との対戦となったサトシだが「極めてフィニッシュする道は出来ている」と自信を口にした。今回のインタビューでは自身の打撃スキル、フィニッシュして勝つことへのこだわりについても語ってくれた。
父の教えは私にとって大事なものですし、その教えは私の子供たちにも伝えています
――対戦カード発表記者会見でも話題になっていましたがサトシ選手はお酒を飲まないそうですね。
「全く飲まないし、飲んだこともないです。みんなでご飯を食べる時、私はお酒を飲まなくても楽しめるし、みんなも私がいるとあまり飲まないですね(笑)」
――サトシ選手のお父さんが「強くなりたかったらお酒は飲んではいけない」という考えだったのですか。
「私は子供の頃から柔術の大会に出ていて、父からいつも『強くなりたかったら体にいいものを食べなさい』、『大人になってもお酒を飲まないようにしなさい』と言われていました。それがずっと頭の中に残っていて、その教えを守っています。それでずっと野菜中心の食生活を送っていて、お酒や体に悪いものは口にしないようにしていますね」
――それも含めてサトシ選手は父(ボンサイ柔術創始者アジウソン・ソウザ)の教えを大切にしているのですか。
「父の教えは私にとって大事なものですし、その教えは私の子供たちにも伝えています。私の父は2011年に亡くなったのですが、亡くなる前は格闘技のことはもちろん、人生のこと、家族のこと、多くのことを父から学びました。私にとって家族は本当に大事なものですし、何かあったら家族を守らなければいけない、家族のために生きていかなければならない……それも父の教えで、私はそれを今も引き継いで生きています」
――そういったサトシ選手の考えは練習仲間やチームメイトを大事にすることにもつながっていますか。
「つながっていると思います。私はRIZINで6年戦っていますが、実は一度も旅行に行っていないんです。6年間いつもジムで練習していて、私だけでなくジムの仲間たちと一緒に強くなるために毎日を過ごしています。だから私にとってジムの仲間は家族と同じくらい大事なものです」
――例えばサトシ選手はチームメイトのセコンドにつくときも、自分が試合をするときと同じ気持ちですか。
「もちろんです。一緒に戦うつもりでセコンドにつきますし、だからこそ私がセコンドにつくのは一緒に練習しているジムの仲間だけです」
――それでは試合のことについても聞かせてください。前回5月のRIZIN韓国大会でのキ・ウォンビン戦では右フックでダウンを奪ってからRNCで一本勝ちでした。試合時間はわずか50秒という短期決着でしたが、あのフィニッシュは想定していたものだったのですか。
「私はいつも色々なことを考えて試合をしていて、今回は色んな打撃のコンビネーションを練習していました。それを実際に試合でやってみたら、相手に効かせることが出来たので、そのまま試合を終わらせました。本当はもう少し長く試合を見せた方がいいのですが、今回も早い時間で終わってしまいましたね(笑)。今までたくさんの人が私がフィニッシュ出来るのはグラウンド、寝技だけだと思っていて。スタンドではフィニッシュ出来ないと思っていたと思います。でも、ここ4試合中3試合はスタンドでKO、ダウンを奪っていて。私の試合は一瞬でも目をそらすことが出来なくなったと思います。みなさんには絶対によそ見をしちゃダメだよとメッセージを送りたいですね(笑)」
――特に最近になって打撃の練習に力を入れているわけというわけではないですよね。
「MMAを始めてからずっと打撃は練習していますし、対戦相手のファイトスタイルに合わせてハイキックを使おう、フックを狙おう、ストレートでいこう……と少しプランや動きが変わるくらいです」
――MMAを始めてからずっと継続してやっている打撃の練習が試合で出るようになったという感覚なのですか。
「そうですね。私は2013年にMMAデビューして、2018年までは年1~2回しか試合をしていなかったので、そこまで打撃の練習はやっていませんでした。一生懸命打撃の練習をするようになったのはRIZINに出るようになってからですね。ただ試合で打撃を出すことに不安もあったり、打撃でミスをしてKOされたらどうしようと思ったり、なかなか思い切って打撃を出すことが出来なかったんです。自信を持って打撃を出せるようになったのは本当にこの2年くらいですね」
――実際試合でKO勝ちや倒す回数が増えてきて、自分の打撃に自信を持てるようになった?
「今は自分の打撃に自信あるし、パンチだけじゃなくて蹴りにも自信があります」
――ちなみにサトシ選手はストライカーで好きな選手はいるのですか。
「私は色んな選手の得意技を見るのが好きで、例えば那須川天心はジャブが速いから天心のジャブを勉強する。鈴木千裕は右ストレートが強いから千裕の右ストレートを勉強する。誰か一人の打撃を参考にするのではなくて、色んな選手の得意技を真似して覚えて、自分のファイトスタイルを創っています」
――色々な選手の良い部分をミックスするというのは柔術時代からやっていることなのですか。
「そうです。柔術の頃から人の試合を見ていいなと思った技を練習して、自分の技術にプラスして試合で勝てるようにしていました。だから今はMMAでもそれと同じことをやっています」
――ではサトシ選手のMMAのスタイルはサトシ選手オリジナルのものなんですね。
「そう……………ですかね(笑)。自分でそう言うのは恥ずかしいので好きじゃないですが、私のベースと動きが似ている選手はあまりいないかなと思います。私のファイトスタイルは普通ではないですよね」
――そのうえでジャッジに勝敗を委ねない。一本かKOで試合を終わらせることにはこだわっていますか。
「私がAJ・マッキーとやった時、自分では勝ったと思いましたが、結果は判定負けでした。ただし判定になった時点で結果がどうなっても仕方ないし、私はそれまでずっとKOか一本で勝ち続けてきたから、改めてジャッジに勝ち負けを決める機会を絶対に与えたくないと思いました」
――例えば仮に判定で勝っても喜びは少ないですか。
「私もMMAで一度だけ判定勝ちしたことがあって、もちろんその時もうれしかったですが、やっぱりKOか一本で勝つ方がうれしいです。私のフィニッシュ率は95パーセントくらいあって、見ている人たちも私の試合は面白いと思うし、私もフィニッシュして勝ちたいです」
堀江に勝ってベルトを防衛出来たら次は野村と戦うことに
――さて次戦では堀江圭功選手の挑戦を受けます。堀江選手をフィニッシュするイメージはできていますか。
「もちろんイメージはありますね。先ほど話したように色々な打撃のコンビネーションや動きはありますが、極めてフィニッシュする道は出来ています」
――サトシ選手は対戦相手の映像を見た時にこういった技が決まるというものがすぐイメージできるのですか。
「対戦相手の試合映像をチェックして、相手が攻められている時の動きを見ながら『自分だったらこうやって攻めるな』と色んなことをイメージします。例えば堀江とルイス・グスタボの試合を見たら、グスタボのパンチをもらったあとに堀江はクリンチして試合を続けました。もし自分があの場面になったらグスタボとは違う動きで堀江を極めることが出来ると思います。そうやって試合の状況や相手の動きを色々と想定して自分の攻め方をイメージしていますね」
――実際に対戦相手とコンタクトしなくても自分の頭の中で対戦相手と戦っているのですか。
「私が生徒たちによく言うのは、練習の時に自分の頭で相手を極めるイメージをして、そのイメージ通りに動くことが大事だということ。それが出来ていれば試合の時に初めて相手と戦うのではなく、練習で何度も極めている相手と戦うことになります。そうなると自然に試合でやる動きと練習でやってきた動きが同じになるんです」
――なるほど。サトシ選手は試合までにイメージや練習のなかで何度も対戦相手と勝っているのですね。
「そうです。試合になった時に頑張るだけではなく、試合までにたくさん勝つための道のりを考えます。例えば私が三角絞めで勝った試合、試合までに『このタイミングで私がテイクダウンして、相手がこういうディフェンスをしてきたら三角を極める』や『この流れで私が仕掛けて最後は三角を極める』など、具体的に極めるパターンをたくさんイメージしていますね」
――そういったシミュレーションが出来ているからこそ、サトシ選手は一瞬で相手をフィニッシュすることが出来るのですか。
「そうだと思います。試合を見ている人たちはいつも私があっという間に技を極めているように思うかもしれませんが、それは私が頭の中で何回も何回も対戦相手を極めているから出来ることです」
――今回はサトシ選手の地元からも近い名古屋での大会です。サトシ選手にとって名古屋でタイトルマッチが出来ることは特別ですか。
「私がRIZINでタイトルマッチをやるのは次で5試合目ですが、名古屋でやるのは初めてです。私の地元から名古屋まで1時間くらいで移動できますし、当日は私の生徒も友達もたくさん応援に来ます。それで少しプレッシャーもありますが、タイトルマッチはいつもプレッシャーがあるものなので名古屋でも東京でも変わりません。絶対に今回もベルトを守ります」
――RIZIN51ではライト級とフェザー級(ラジャブアリ・シェイドゥラエフ×ビクター・コレスニック)の2階級でタイトル戦が組まれていますが、自分がメインイベントを務めたいという気持ちはありますか。
「どの試合順になっても私の気持ちは変わりませんが、最近4試合のうち3試合はメインイベントだったので、今回もメインイベントでやるのがいいんじゃないかなと思います。キルギス出身のシェイドゥラエフとロシア出身のコレスニックのタイトルマッチより、日本に住んでいる私と日本人の堀江のタイトルマッチの方が日本のファンには興味を持ってもらえると思います(笑)」
――今大会では野村駿太選手と対戦を想定していたと思いますが、野村選手とはいずれ戦いたいですか。
「もちろんです。野村がケガしたことは残念ですが、ケガがなければタイトルマッチに一番近いのは彼ですし、堀江に勝ってベルトを防衛出来たら次は野村と戦うことになるだろうと思います」
――これからもRIZINが選んだ相手だったら誰とでも戦うというスタンスは変わらないようですね。
「そうです。私はRIZINに出るようになって対戦相手を選んだことは一度もないです。RIZINが選んでくれた相手だったら誰でも大丈夫です。一つだけあるとすれば試合までの準備期間。先ほど話したように私はメンタルを作ってプランを練って試合をするから、試合まで1~2カ月は準備期間が欲しいです。それがあれば私は誰が相手でも問題ないです」