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【RIZIN51】地元でRIZIN初出場、フェザー級KOP三宅輝砂「自分で自分を強いなんて思っちゃうと成長しない」

【写真】過信せず。かといって過小評価もしない。きわめてクールに自分のことを見ることができている(C)TAKUMI NAKAMURA

9月28日(日)に名古屋市北区のIGアリーナで開催されるRIZIN51。今大会ではフェザー級KOPの三宅輝砂が高木凌と対戦する。
text by Takumi Nakamura

6月のPancrase354で中田大貴をKOし、RIZIN参戦をアピールしていた三宅。今回はそのアピールが実現する形となり、かつてパンクラスでも活躍した高木との対戦が決まった。

現在5連続KO勝利中の三宅は「高木はRIZINに出ていて人気もある。でもそこまで強くない」と切り捨てる一方で、「まだまだ自分はトップ選手とやり合うには実力が足りない」と自己分析している。

自信と謙虚さが同居する独特の空気感を持つ、国内フェザー級注目のストライカーに話を訊いた。


高木は自分と同い年で、RIZINに出ていて人気もある。でもそこまで強くない。だからオイシイと思って喧嘩を売りました

――地元名古屋でのRIZIN初参戦が決まりました。試合が決まった時はどんな心境でしたか。

「おお、まじで決まった!という感じでしたね。6月にパンクラスでKO勝ちしたあとにRIZINに出たいとアピールしたんですけど、その時にフライングして噂で聞いていた名古屋大会の日時を言っちゃったんですよ(苦笑)。それでしばらくして『やばい!やらかした!』と思って、こういうことしちゃうと声がかからないんじゃないかと思っていましたね」

――アピールこそあったものの実際に決まるかどうかは半信半疑の部分もあったのですか。

「でもさすがにパンクラスでベルトを防衛して、地元の名古屋大会にアピールして決まらなかったら『俺、嫌われすぎだろ』とは思っていました(笑)」

――RIZIN名古屋大会は定期的に開催されていますが、過去も出たいという気持ちはあったのですか。

「そうですね。もちろん出たいとは思っていましたが、周りからは『今の実績とキャリアじゃ相手ありきのマッチメイクしかできないと思うよ』と言われてたんです。そういう意味ではパンクラスでベルトを獲ったことでRIZINに出られたのかなと思います」

――昨年のRIZIN名古屋大会から約1年、三宅選手はパンクラスでの王座奪取もありましたが、どんな変化がありましたか。

「ベルトを獲って周りの人たちからチャンピオン!と言われるようになりましたが、自分の中ではそういう風に言われるのは変な感じがしますね。言われ慣れていないです(苦笑)」

――最近の三宅選手の試合を見ていると自分の打撃に自信を持ってKOしているように見えるのですが、ご自身ではいかがでしょうか。

「倒せる感覚は掴めてきましたが、練習内容は変わっていないし、ようやく練習でやっていることが出せるようになってきたんだと思います。地道に積み重ねてきたものの精度が上がって、誰にでも通用するようになったことが自信につながって、それが試合に出てるのかなとは思います」

――三宅選手は細身ですがパンチ力には自信がありますか。

「それはタイミングだと思いますね。ボクシングの井上尚弥選手が『自分はパンチ力があるわけじゃなくて、当てるのが上手いから倒せるんだ』みたいなことを言っていて、自分もタイミングはすごく意識しているんですよ。何回も打ち込みでタイミングと当てる角度を確認して、これだったら倒せるというのを常に考えています」

――そして今大会では高木凌選手と対戦することになりましたが、以前からSNSでも対戦をアピールしていた相手です。なぜ高木選手と戦いたいと思っていたのですか。

「高木は自分と同い年で、RIZINに出ていて人気もある。でもそこまで強くない。だからオイシイと思って喧嘩を売りました」

――そこははっきりと断言しますか。

「はい。強くないと思います」

――高木選手がパンクラスを主戦場にしていた時期から戦いたかったのですか。

「ちょっと(ランキングに入る)時期がずれていて、高木がランキング1位だった時、自分はまだ下位ランカーだったんですよ。だから当たる可能性はなかったんですけど、僕の先輩(林優作)が高木と試合してKO負けしたことがあったんですね。それでこういうヤツがいるんだなと思って、同じ年なので少しジェラシーみたいなものはありましたね」

――現実的に戦いたいと思うようになったのは高木選手がRIZINで出るようになってからですか。

「そうですね。パンクラスからRIZINに行って一気にバーッと有名になっていたんで、オイシイ相手だなと思って見ていました」

――会見でも高木選手と顔を合わせましたが、高木選手のコメントや反応はどう感じていますか。

「別に人として憎しみがあるわけじゃないんで、特に(相手の反応には)何も思わないですね」

――先ほどの言葉にもあったように自分が高木選手にチャレンジするという意識は全くないですか。

「ないですね。冷静にお互いの能力を比べた時に、僕の方が勝っていると思うので、試合をやったら自分が勝てると思います」

――例えば高木選手の直近の試合を見ていても、そこまで成長しているとは感じていないのですか。

「高木は高木で強くなっていると思いますけど、それに比べると自分の成長具合の方が間違いなく上ですね」

――RIZINファンの間では高木選手の方が知名度もあり、下馬評でも有利だと思います。そういった周囲の評価を試合でひっくり返したいですか。

「そうですね。何かの予想でも8:2で高木の勝利予想だったんで、それをひっくり返せると思うと面白いし、こういう状況の方がやりやすいです」

もちろん名前は売りたいですけど、実力に合わない評価はされたくない

――今の自分の実力だったらRIZINのトップ選手たちともやり合えるという自信はありますか。

「いや、まだまだトップ選手とやり合うには実力が足りないですね。これから僕が強くなっていけば、自然と強い相手・上の選手とやることになると思うので、別に今はそこまで意識はせずに、自分が強くなる方法を考えたいと思います」

――RIZIN初参戦では自分のどのようなところをアピールしたいですか。

「う~ん……アピールポイントがなさすぎるんですよね。ここを見てほしいとかも特にないし」

――せっかくのRIZINデビュー戦、地元での晴れ舞台じゃないですか(笑)。

「(しばらく考えて)本当にないんですよね(苦笑)」

――例えばRIZINで自分の名前を売りたいとは思わないですか。

「もちろん名前は売りたいですけど、実力に合わない評価はされたくないですね。そういう評価をされている選手はいつか脱落していくから気にしてないですけど、自分はそうならないようにしたいし、気持ちが先行しないように気をつけています。僕は自己評価が高くないので、冷静に自己分析してどこを強化すればいいのかだけを考えて練習したいです」

――ちなみにもしRIZINフェザー級にランキングがあったら自分は何位くらいだと思いますか。

「高木よりは上ですけど、秋元(強真)選手に勝てるかどうか。15位~20位の間くらいだと思います」

――こうして話を聞いていると三宅選手は自分に自信を持っているところと客観的に見ているところがどちらもあるようですね。

「いろんな目線を持って自分を見ないとダメかなとは思っています」

――では仮想ランキングのトップ10に入るためには何が必要だと思いますか。

「全部ですね。技術、フィジカル、スタミナ……全部を強化しないと通用しないと思います」

――そういった気持ちがあるかこそ、パンクラスでチャンピオンになっても、そこに違和感があるのかもしれないですね。

「そうですね。例えばUFCの同じ階級の選手たちを見ると、みんな化け物みたいな強さじゃないですか。ああいう選手たちがいるのに、自分で自分を強いなんて思っちゃうと成長しないですよね」

――今回はたくさんの人たちが三宅選手の試合を見に来ると思います。お客さんに対してはどのような試合を見せたいですか。

「勝つ姿を見せることが1番ですけど、お客さんのことを考えて、1~2Rで倒したいですね。向き合ってみるまでは分からないですけど、今の段階ではそのくらいでいけると思います」

――戦い方は、いざ向かい合って決まりそうですか。

「そうですね。ただ僕は試合前にめっちゃ相手のことをイメージするので、そのイメージと大きく違うことってないんです。KOする時も相手の映像を見て『これは狙えるな』という技を幾つか用意していて、そのうちの1つで倒す感じです」

――今後はパンクラスでの防衛戦があると思いますが、RIZINにおける目標とは?

「最終的にはベルトにはなるんですけど、まずは自分自身が強くなることですね。そこで結果を出していけば色んなことが見えてくると思います」

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