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【UFC317】パントージャ・インタビュー―02―頂点が話した平良×アルバジ、朝倉×エリオット&堀口恭司

【写真】柔術への想いも熱かったパントージャ(C)MMAPLANET

UFC世界フライ級王者アレッシャンドリ・パントージャ・インタビュー後編。前編ではカイ・カラフランスを振り返り、TUF24の同窓生の扇久保博正とエンカジムーロ・ズールーへの熱い想いをパントージャは話した。
text by Manabu Takashima

今回は自身のバトルフィールド=UFCフライ級戦線について話を訊いた。次期挑戦者ジョシュア・ヴァン。8月の日本人絡みの注目カード――惜しくも流れた平良達郎×アミール・アルバジ戦――、朝倉海×ティム・エリオット戦。さらにUFCと再契約を果たしたATTのチームメイト堀口恭司に関して、125ポンド世界の頂点パントージャが何を語ったか。

<アレッシャンドリ・パントージャ・インタビューPart.01はコチラから>


ミステイクだ。ブランドン・ロイヴァル陣営は間違った試合をしてしまった

――そのジョシュア・ヴァンですが、UFC317まで彼が次期挑戦者になるとは想像もできなかったです。

(C)Zuffa/UFC

「UFCフライ級には新しい血、フレッシュなファイターが必要だ。

だから、UFCの判断はとても良かったと思う。僕は既に2度ブランドン・ロイヴァルに勝っていて、2度目はタイトル戦だった。あの試合でロイヴァルが勝っても、すぐに3度目なんてファンも見たくないだろうし。

でもブランドン・ロイヴァルとの試合は簡単じゃなかった。UFCは常にハードな相手を僕に用意する。そういう面でジョシュア・ヴァンと、これほど早く戦うことになるとは思っていなかった。でもファンは、ジョシュ・ヴァンの抜擢を喜んでいるだろう。ロイヴァルを相手に、あの試合内容で勝利したんだから。UFCの判断を支持するよ。それにチョット危険な試合になりそうだしね。当然のように経験では僕がジョシュア・ヴァンを上回っている。でも彼の若さと勢いが、僕を困難な状況に追い込む可能性がある。

結果的にジョシュア・ヴァンがブランドン・ロイヴァルに勝ったことで、UFCにとってはベストな結果になったわけだよ。ジョシュア・ヴァンが僕に挑戦できる実績を手にしたのだから」

――ジョシュアが鶴屋怜選手を相手、どれだけテイクダウンディフェンスが強く、スクランブルに優れているところを見せていたとしても、ロイヴァルが打撃だけで戦ったことには驚かされました。

(C)Zuffa/UFC

「ミステイクだ。

ブランドン・ロイヴァル陣営は間違った試合をしてしまった。やはり、トライはしないといけない。ブランドン・ロイヴァルはたくさんの武器を持っているから、打撃戦に終始したかもしれないけど。それは間違っている。彼は10秒間だけでも、グラウンドに持ち込んでいればフィニッシュできる力のあるファイターなのに」

――と同時に、あの殴り合いをUFCもファンも歓迎します。テイクダウンからコントロール、そしてスクランブルで削っていくよりも。

「今も組み技が軽視さているなんて、散々な状況だよ。フライ級にはデメトリウス・ジョンソンという最高のファイトIQを誇るファイターがいた。階級は違うけど、GSPもそうだ。彼らは高いファイトIQの持ち主だった。アグレッシブなファイトは必要だし、そうなることも歓迎する。僕はファイトIQを駆使して、積極的な試合をしたいと考えている。

単にアゴの強さを競い合うような戦いはしたくないんだ。打撃もレスリングも柔術も混ぜて、より優れた戦いがしたいと思っている。それに僕は今でも柔術を代表して戦っているつもりだ。

柔術は日本からブラジルに持ち込まれた。もちろん日本のことは尊敬している。でも柔術はブラジリアン柔術と呼ばれるように、ブラジルで特別になった。それなのにブラジルでは柔術は今も軽視されている。学校の体育で柔術を指導しないなんて。柔術がどれだけ、ブラジル人の生活を救ってきたのか。僕もその1人だ。柔術が僕の人生を変えてくれた。柔術があったから、僕の人生は選択肢が増えたんだ。

ファイト自体にしても、柔術をやり始めて僕は極められまくった。そこで防御を学んだ。今もそうやって自分の身を守っている。ディフェンスすることで、相手は違う動きを見せる。じゃあ、次はどう防御するのか。そうやって今も僕は柔術を学び続けているんだ。柔術は人生を変えることができる。大きな武器になることを知って欲しい」

――UFC王者として、グラウンドの重要性をファンに知らしめることができると思いますか。

「だから戦い、練習し続けているんだよ。パフンピーニャに柔術を習い続けることで、僕は相手を殴ることができる。柔術で得た技術で殴り、それによって相手はサブミットできる機会を与えてくれる。さっきも言ったように僕は柔術を代表して戦っているんだよ。そしてUFCの世界戦で、絞めて勝っている。

もちろん打撃もできないと、その柔術の力をフルに発揮することは難しい。僕はストライカーが怖くない。子供の頃からムエタイを習い、恐怖を克服した。マスターは小さな子供の僕に、大人とスパーリングするよう指導した。あのスパーリングがあったから、恐怖心が取り除かれた。相手が大きくても、僕がやるべきことは殴ること。パンチ力もついたし、相手が僕のパンチを意識するとフィニッシュするのは簡単になる」

エリオットとアサクラの試合に関しては、僕はエリオットに分があると思っている

――最近はフライ級でもヘビーハンドの持ち主が世界中から生まれてきています。同時に極めの強い選手も。激しさが増す一方のUFCフライ級ですが、8月には3人の日本人ファイターが戦います。その中から平良達郎×アミール・アルバジ、朝倉海×ティム・エリオットの2試合の勝負の行方を占ってもらえないでしょうか。

「タイラは素晴らしいグラップラーだ。彼のようなグラップラーはなかなかいない。ただ、どういうトレーニング・キャンプを行ってきたか。言ってしまうと、ファイトはそこに尽きるんだよ。僕が良い試合ができているのは、良いファイトキャンプができているからだ。

アミール・アルバジは今もUFC PIでよく練習しているようだけど、なぜ他のジムの選手の目が多く光っている場所で練習するのか分からない。タイラは良い選手だから、ランクを上げてくるだろう。アルバジはモレノに敗れて、戦いとはどういうモノかを学んだ。アルバジはあの時とは違うファイターになっているに違いない。きっと良い試合になるだろう。

この試合の予想することは難しい。ただティム・エリオットとアサクラの試合に関しては、僕はエリオットに分があると思っている」

――そこは「分がある」という言葉ですが、断定できると。

「ティム・エリオットは、とても強いグラップラーだ。ベテランで勝ち方も分かっている。長いブランク明けの試合だけど、彼はずっとUFCで戦ってきたからブランクも問題ないだろう。

常に圧力を掛ける。グラップラーだけど、ファイトを好む。ただティム・エリオットがどういうトレーニング・キャンプをしているか分からない。アサクラも、ティム・エリオットにとってハードな試合に持ち込めるかもしれない。アサクラのことは認めている。でも、ティム・エリオットはちょっとした特別な存在で。

TUFファイトのハウスでティム・エリオットが話してくれたことは、絶対に忘れない。皆の前で『俺がオクタゴンで戦うのは、家族のためじゃない。自分のためだ。それが俺の仕事で、俺の望んだことなんだ』と話したことがあったんだ」

――ハイ。

「家族や色々と背負うモノがあって、戦っていると心身ともに疲れ切る。そういうプレッシャーはケージの外に置いて戦わないと。僕も自分のために戦っている。もちろん、やるかやられるかの世界だ。でも、スポーツだ。ジャッジもレフェリーもいる。余計なプレッシャーを持ち込むと、自分が練習でやってきたことも出せなくなる。僕もその経験をしたことがあったから、ティム・エリオットの言葉が胸に刺さった。ティム・エリオットは本当にスマートな人間で、それがファイトにも良い影響を与えている。

とはいってもアサクラが勝つ方がUFCには、良いことなんだろうね。アサクラの方がティム・エリオットより、ファンが喜ぶファイトができる。でもね、ティム・エリオットのゲームは、アサクラが歓迎したいファイトじゃないよ」

キョージが僕のベルトに挑戦することが、僕の夢だ

――平良選手が駆け上がり、朝倉選手が契約。そして堀口恭司選手もUFCに戻りました。日本でUFC熱が高まっているからこそ、その熱を持続させるために彼らの勝利が必要です。

「キョージが、すぐに試合ができることを願っている。キョージとはずっと一緒に練習してきたし、彼は特別だ。キョージが僕のベルトに挑戦することが、僕の夢だ。ぜひとも、実現させたい。

キョージがUFCに戻ってきて、本当に嬉しい。僕らのタイトル戦が実現すれば、2人にとって特別な試合になる。逆にベルトが掛からないなら、キョージとは戦いたくない。僕らはずっと一緒に練習をして、一緒に成長してきた。そしてキョージは今も強くなり続けている。以前より、グラップリングを楽しそうにやっているんだ。今の彼は寝技で相手を仕留めることが、面白いんじゃないかな。

以前はコントロールしていたポジションで、フィニッシュを狙うようになった。キョージは柔術も十分に強いよ。ATTの練習仲間を極めることができるなら、他のジムの選手を極めるのにそう苦労はしないだろう。キョージは、多くのUFCファイターをフィニッシュしているからね。

加えて、誰も『キョージはKOパワーがなくなった』なんて言わせない。キョージのスピードの速さは、誰よりも僕が知っているつもりだ。パワーだけじゃない。スピードもある。なによりタイミングの取り方が絶妙だ。キョージは全てを兼ね備えているよ」

――UFC世界チャンピオンがそこまで褒めちぎる堀口選手のUFC第2章、そしてパントージャとの世界戦が実現するのか。楽しみでしょうがないです。

「僕とキョージは、互いに影響を受け続けてきた。そんな2人がベルトを賭けて戦えるようになれば、本当にハッピーだよ」

――その世界戦が日本で行われると最高ですね。

「そうだね。ジョシュア・ヴァンをぶっ倒して、日本に行くよ」

――パントージャ、今日はありがとうございました。では最後に日本のファンに一言メッセージをお願いできますか。

「いつも応援ありがとう。今、フライ級には最高のファイターが揃っている。そして僕には特別なチームメイトがいる。キョージとリンヤ、そしてユーキも。リンヤもATTに長期滞在中だ。前回とは違い、日本に戻らず試合に向かう。とても良いことだ。レスリングを生かすために、ATTで強いストライカーと練習することでリンヤはもっと強くなれる。

それにキョージという存在が目の前にいることもリンヤにとって良かった。キョージの背中を見て、強くなっていけば良い。キョージもそう。僕もそう。ハードなスパーリング・パートナーだらけだ。そういうスパーリングを続けることでリンヤは強くなる。

ユーキはヒロと同じトーナメントに出場中だ。本当にキョージ、リンヤ、ユーキは僕にとって特別な存在なんだ。そんな彼らの母国、日本にはすぐにも行きたい。その日までベルトを守ってみせる」

■UFC ESPN71視聴方法(予定)
8月8日(日)
午前7時00分~UFC FIGHT PASS
午前6時45分~U-NEXT

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