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【UFC317】フライ級の頂点パントージャ―01――「ヒロやズールーの戦いが、誰かのモチベーションに」

【写真】フライ級はUFCとRIZINがリンクしているとまでは言わないが、シンクロしているのはTUF24キャストの今も続くトップ戦線の活躍があるからだ (C)MMAPLANET

6月28日に行われたUFC317でUFC世界フライ級王者アレッシャンドリ・パントージャがカイ・カラフランスを3RにRNCで仕留めた。同大会でブランドン・ロイヴァルを下したジョシュア・ヴァンの挑戦を受けることになったパントージャをインタビュー。
text by Manabu Takashima

TUFシーズン24から10年、そのTUF24キャスト対決となったカイ・カラフランス戦を振り返ると同時に、パントージャは「ヒロやズールーのGPでの戦いが、きっと誰かのモチベーションになる」とRIZINフライ級T出場の扇久保博正とズールーにも言及した。


――パントージャ、カイ・カラフランスを相手に再び素晴らしいファイトで王座防衛に成功しました。おめでとうございます。

「ありがとう」

――5R制で初回からバックを奪ってコントロール。2Rはややペースを落とし、3Rは再びバックを取り一本勝ち。25分の試合で、初回からあれだけポジションを取りに行くのは自らの体力を使うことかと思うのですが、躊躇することはなかったですね。

「最初の1分でバックを取ることができ、そのまま4分間バックを維持し続けた。あの時、フィニッシュできるなら力を使おうと思った。そうでないなら5Rということを考えて、体力をセーブしようと考えていたよ。

この戦い方は、キョージ・ホリグチとの練習で教わってきたものだ。彼が防御に回った時、僕は仕留めにかかる。結果、僕の方が疲れてしまうんだ。それこそが、MMAという戦いなで。最高だよね。こうやって学んできたことを生かして、バックを取っても急いでフィニッシュを狙うことはなかった。ずっとバックコントロールされたカイ・カラフランスは疲弊していくから。

2Rは彼が初回よりテイクダウンディフェンスに注力していることが分かった。5分間の狙いは、動かせてさらに疲れさせることだ。そして3R、カイ・カラフランスからオーラがなくなっていた。凄く小さな存在に見えたんだ」

――おお、そこまでハッキリと分かるのですね。

「これはもう盛り返す力は、心身ともに残っていないと感じたよ。その状態でバックを取れば、フィニッシュを狙うだけだ」

――確かに初回と比べて、カイ・カラフランスは防御に粘りがなく淡泊でした。

「そうだね。しっかりと終わらせることができる瞬間が訪れるのを待つ。そんな試合ができた。あの戦い方ができて、僕は一つ上の段階に上がったと実感している。それもパフンピーニャが1日中、ジムで僕に指導してくれるからだ

それに打撃コーチのルシアノ・アンダーソン・フランサもいる。彼らのおかげで自分が強くなっていると自覚でき、凄くリラックスして戦えるようになった。35歳になりキャリアは30戦を超えた。色々な経験をしてきたことが、全てつながってきて僕は最高に強くなっている」

――テイクダウンとバックコントロールが、如何に仕掛けた方を削ってしまうのか。そこは伝わりにくいですが、とにかく見後な攻めでした。

「確かにバックコントロールも、力を使うと当然のように疲れる。だからこそボディトライアングルにとり、まずは自分を安全な場所に置く。逆に対戦相手は、絞めを怖がって動き続ける。呼吸も粗くなるし、疲れるに決まっている。

同時にポジションを失った時のリカバーをしっかりとやっているから、あの支配が可能になるんだ。カイ・カラフランスが仮にポジションを返せたとしても、絶対的に力を使って体力を消耗するわけだから。柔術が僕のMMAを技術面だけでなく、戦術面でも支えてくれているんだ」

――27日にRIZINフライ級GP1回戦に臨む扇久保博正選手が、2人の試合から物凄い刺激を受けたと言っていました。TUFシーズン24の物語が今も継続していることが感動的ですらあります。

「ヒロがそんな風に言ってくれたんだ」

――もともと気合十分だったのが、さらに気合が入ったとも話してくれました。

「あぁ、それは何よりの言葉だよ。僕がヒロのような素晴らしいファイター、素晴らしい人間のモチベーションになっているなんて。そうだね、あれから10年も経ったのに僕らは戦い続けている。しかも、世界のトップとして活躍できている」

――10年……一つのディケイドを経て、なおです。

「フライ級はなかなか世の中に認められてこなかった。だからフライ級のファイターは、当然のようにライバルだけど皆でフライ級の価値を高めようと努力してきた。

UFCがフライ級を諦めかけた時は、本当に皆が真剣にこの階級を残そうと懸命に戦った。互いをリスペクトして戦ってきたから、フライ級の試合にはトラッシュトークなんて必要ない。そうやって今のフライ級を創ってきたんだ。

今やメインカードでも、フライ級の試合が増えた。ファンがフライ級の試合を求めている。アルバジとタイラはメインイベントだ。ジョシュア・ヴァンのような若いフライ級ファイターは、TUFシーズン24を戦った皆に感謝する必要がある(笑)。僕らが頑張ってきたから、彼は僕のベルトに挑戦できるんだよ(笑)。

RIZINのGPではヒロだけでなく、ズールーも戦うようにね。二人とも最高のファイターだ。ヒロは素晴らしいグラップラーだった。ただし、あの頃とフライ級の戦いも変わった。ヒロがあれから、他の局面での強さをどれだけ身に着けているのか、僕は分からない。そしてフィニッシュが欠かせなくなってきた今のMMAで、ヒロがそこを積んできたのか。実際のところ僕は知る由もない。でも、とにかくヒロには頑張って欲しいと思っている」

――扇久保選手からは「このトーナメントで優勝した選手が、『UFCのチャンピオンにも勝てるんじゃないか』と言われるようなトーナメントにしたい」という発言も聞かれました。

「ヒロがそう思っていること自体が、素晴らしい。そして、UFCにとっても良いことだ。それに世界中のファンが求めていることだろう。RIZINフライ級GPウィナーが、UFCチャンピオンと戦えるようなことが可能になるなら、その時まで僕はベルトを持ち続けないといけないね(笑)」

――ズールーは「トーナメントに出る自分がこんなことを言うべきじゃないけど、GP優勝者がパントージャと戦えるのなら、それはヒロであるべきだ」と。

「おお、なんていう……。最高だね。GPだからズールーもヒロも勝ち上がると、どこかで戦う可能性もあるのに。いやぁ、ズールーも本当に良いヤツだよ。ヒロやズールーのGPでの戦いが、きっと誰かのモチベーションになる。

だから僕もジョシュア・ヴァンに勝って、世界中の強い選手といつでも戦える状態をキープできるようベストを尽くすよ」

<この項、続く>

■UFC ABC09視聴方法(予定)
7月27日(日)
午前1時00分~UFC FIGHT PASS
午前0時45分~U-NEXT

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