【SUPER RIZIN04】元谷友貴とフライ級GP1回戦、ヒロヤ「諦めなかったからこそ今のこの立場がある」
【写真】元谷を下せば人生の大逆転となるヒロヤ (C)MMAPLANET
27日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催される超RIZIN04。9月の準決勝、大晦日の決勝とスケジューリングされたRIZIN WORLD GP2025フライ級トーナメントの1回戦で、ヒロヤが元谷友貴と相対する。
Text by Manabu Takashima
MMA戦績11勝13敗1分は、13の敗北は対戦相手=元谷が50戦で喫した数と同じ。勝率の低さは山本アーセンに次いで、10人中9位。そのアーセンが勝利している伊藤裕樹に、ヒロヤは敗れている。
一方でインスタ、X、YouTube公式チェンネルのフォロワー数は27万人越えで、2位の伊藤の2倍以上を誇る。それ故に着実に力をつけているなかでエンタメ枠、数字で得た出場権という声は絶えない。J-MMAだからこそ見られる人生の大逆転劇の可能性があるヒロヤの出場は、UFCで絶対に見られない。
RIZINスペシャルといえるヒロヤは、このトーナメントで優勝するために試合の1週間前までラスベガスでトレーニングを積んできた。そして、彼は外野の声に「そういう声が僕の格闘家人生で一番大事なんです」と言い切った。負けても諦めなかったから今がある。無謀と言われた挑戦をしてきたから、ここにいる。そんなヒロヤのトーナメントに掛ける気持ち、ファンへの想いを伝えたい。
自分に負けないっていうことが、僕の人生のなかで一番大切にしている部分
――飛行機のゲート変更に気づかず、帰国が1日遅れたということですが……。ただでさえ体に優しくない長旅、気持ちが疲れることはなかったですか。
「日本時間に合わせて頑張って起きていたので、1日ズレることで2日連続で睡眠時間が3時間ぐらいになってしまって眠いッスね(苦笑)。でもフィジカルとかメンタル的な影響は全然ないです」
――今日も湿気を含んだ日本独特の容赦のない暑さに襲われていますが。
「ベガスも同じような感じでした。まぁ暑いですけど、夏なんで。僕は好きですね、どちらかというと湿度がある方が」
――ベガスはドライですよね。
「最初、喉をやられますね。膚とか喉も、2週間ぐらいで適応し始める感じで」
――試合まで1週間というタイミングで帰国することを決めたのは、なぜでしょうか。来日外国人選手とそれほど変わらないスケジューリングになっています。
「2週間前、10日前、1週間前。どのタイミングで帰国するのか考えていて、6月の半ばには1週間前に決めました。日本に戻って、そこからトレーニングバートナーを見つけたりするなら、ラスベガスにそのままいた方が良い練習ができると思って」
――体重の調整も、このタイミングで問題はなく?
「結構ギリギリで最後は落としているんですけど、2カ月前から向うで落とし始めていたので。どんどん体も大きくなってきて、きついと言えばきついんですけど、食にも気を使っていて。栄養分をどれだけ摂っているのか。ドライな環境でどれだけ水が抜けているのか、自分のなかで把握はしていました。だから、上手く体重のコントロールはできていたと思います」
――今回のGPですが、当初の予定は16人制でした。男祭り後に8人制になった時、ヒロヤ選手自身は出場権が与えられるという自信はありましたか。
「もう出るつもりでしたよ」
――つもりということは、確定ではなかった?
「オファーとか関係なく、出るつもりでした。(榊原信行)社長は試合前日のルールミーティングの時も、皆に『負ける覚悟を持って勝ちに行け』って話していて。プロとして試合内容も伴っていないといけないと。本当にその通りで、自分も勝ちっていう結果を手に入れたいけど、如何にファンの皆が求めているものを見せることができるか。皆が『見たい』と思っている内容で勝つことが、グランプリ参戦に向けて自分がアピールできるポイントでもあったんで。そこはしっかりとアピールできたとは思っていました」
――現実的にGP出場選手のなかでアーセン選手とヒロヤ選手は戦績的に明らかに見劣りしている。そのなかで出場選手にインタビューするとタレント枠という言葉が聞かれ、肯定的な意見も「注目されているので」というモノでした。このような声に対して、ヒロヤ選手はどのような想いでいますか。
「う~ん……まぁ、どこまで行っても戦績はついてまわります。でも自分の戦績に対する価値観っていうのは、他のプロの選手とは全然違うモノで。俺は負けてた数は多いけど、諦めなかったからこそ今のこの立場があると思っているので。それが自分の良さだと思っているし、勝ち負けでいえば勝ちがないと生き残れない世界ではあるからこそ、そういう声が僕の格闘家人生で一番大事なんです。
その声があるからこそ、皆は『ヒロヤ、どこまでやれんの?』って試合を見たくなるので。そういう声に対して、腹が立つとかっていうのは別にないですね。そこも含めて自分の仕事だと思っているので」
――その諦めないという部分ですが、負けても負けても続けられたのは敗北から学んで、次につなげてきたからなのではないかと。その経験があって、今、力をつけてきているという想いはありますか。
「僕のなかで格闘技は、人生なんで。戦績が綺麗、綺麗でないというのは正直関係なくて。これが人生で、自分の負けた数が多ければ多いほど濃いモノになっている。それに自分に負けないっていうことが、僕の人生のなかで一番大切にしている部分で。
相手に勝つか負けるかというのは、誰と戦っているのかっていうのと当日の運もあるじゃないですか。RIZINのトップで戦っていると、そういう運は正直なくなってきます。でも昔とか、若い時って格上と当てられると負ける確率が上がるのは当たり前で。自分より格下と戦えば、勝てる。
そのなかで皆が支持してくれたのは、僕は『勝てるわけないじゃん』という人と戦ってきたからで。負けたけど、そういうところを評価してもらったんだと思っています。他の綺麗な戦績を持っている選手でなくて、負けが多くても僕のことを応援してくれる人たちがいてくれて。その人達の期待に応えるために、人生を賭けて戦います。そうやって戦ってきたことが成長につながったし、それをやっていることが楽しいです」
――戦績括りの話になってしまうのですが、伊藤裕樹戦、中村優作戦と負けても力をつけていることは見せていたと思います。対して新井丈選手に勝った後の所英男戦の敗北はさすがに痛くなかったですか。
「あれだけを見ると凄く痛かったんですけど、あの右ストレートを一発貰うまで流れ的にも悪くなかったし。あの一発は俺の人生のなかで絶対に必要だったんですよ。
というのも次に柴田モンキー(有哉)という、僕がRIZINで戦ったなかでかなりの強敵と戦いました。そして攻め急ぎすぎない、自分が優位な立場になっても急がないで絶対に勝ち切るというマインドで戦えました。所戦の負けがあったからこそ、あのマインドを手に入れることができて。あの負けがあったから柴田モンキーから、判定勝ちすることができたと思っています。
米国で3カ月練習をして本当に強くなって、自信もあるところでちゃんとああいう試合で負けた。あれは必要な負けでした。だから元谷選手との試合で、有利な展開になった時に攻め急ぎ過ぎないと思うんですよね」
相手に負けるのより自分に負けるのが嫌いやからこそ多分、相手に負けることはない
――その元谷選手との試合ですが、アリベク・カジャマトフとヒロヤ選手の隣が空いていて。元谷選手の次は征矢選手。あの時点で、どちらに「来いっ!」と思っていましたか。
「余裕で元谷、来いって感じでしたね」
――その真意は?
「やっぱどうせやるなら、強い方とやりたいし。元谷選手はずっとバンタム級で戦っていて、年末まででベルトが狙えるから出たいとか言っていて。もしかしたら、今回が最後のフライ級かもしれないので。だったらタイミング的にも、元谷選手とやれるのは今回しかないのかって思って。それに挑戦したい相手じゃないですか。だから『来いっ!来いっ!! 来いっ!!!』って思っていましたね。しかも、その声が放送事故で入ってしまっていましたからね(笑)」
――アハハハハ。
「それからも『元谷選手になりましたね』って電話がかかってきて。『あぁ、元谷になって最高ッスね。伊藤裕樹とやりたかったッスけどねぇ』ってボソッと言って(笑)」
――伊藤選手ですか!!
「このトーナメントでしか、当たることがないんじゃないかなって。やっぱ僕は一回負けているんで、リベンジ戦ですね。ワンマッチで組まれるかっていったら、それは巡り合わせなんで。もう1回戦は元谷選手になったので、伊藤も俺も勝ち上がってやれれば盛り上がるやろうなと。どうせ、最後は強いヤツが上がってくるやろうと思うし」
――GP制覇という目標があるなかで、元谷戦に対する自信のほどは?
「メチャクチャありますね。メチャクチャあるからこそ、所戦の時と同じで。あの時も自信があって、僕は試合中にプレッシャーとかで感情が変わるタイプじゃないんです。だから試合当日の自分を信じて、気負い過ぎず。かつ自信を持ちすぎてワイルドにならないようにして、自分の実力を出せれば絶対に勝てると思っています」
――元谷選手の動きで、何を警戒していますか。
「組みがどこまで強いのかなっていうところですね。気持ちも強いと思うので、ホントに気持ちの勝負になるかなって」
――打撃に関しては、いかがですか。元谷選手は色々な距離で、複数の攻撃手段を持っていますが。
「でもMMAなんで。別に打撃だけでコレ、グラップリングだけでコレっていう風には見ていなくて。MMAを戦おうと思っています」
――ではベガスの練習で一番得られたモノは何でしょうか。
「米国と日本の戦い方、スタイルが違うと思います。そういうところですかね」
――それは、どういう部分で?
「それはちょっと……言いたくないなっていう(笑)。でも、戦い方が違います。新しい戦い方ができるなって思っています。やっぱりチームで練習しているので、よく指摘してもらえますよね。日本人特有のリズム感が、染みついているので。そこをちょっとずつ直している段階です」
――コディ・ガーブラントにリモートインタビューをさせてもらった時に、後部シートにヒロヤ選手と高木凌選手が座っていて。本当に楽しそうで。遠足にいく小学生かって(笑)。
「アレ、練習に行く途中です。あの10分後から練習だったんですよ(笑)。ハイっていうか、普通ッスよ」
――ベガスでやってきたことで、このGPメンバーに混ざっても気後れなどしなさそうですね。
「気後れっていうか、マジでリングで死ぬ覚悟はできていますし。ホンマにクソっほどしんどい試合をして。メチャクチャしんどい試合ができる覚悟があるんで。でも、それは米国に行く前からありました。自分に負けるのがメチャクチャ嫌いなんで。相手に負けるのでなく、自分に負けるのが。相手に負けるのより自分に負けるのが嫌いやからこそ多分、相手に負けることはないッスね。
だから気負う、気負わないは全くなくて。試合当日に自分を信じて。米国で経験してきて、自分は世界で通用するって分かってるんで。あとは本当にやるだけですね。UFCファイターもたくさんいて、『自信を持て』と言ってもらえたので」
――下馬評があるからこそ、トーナメントを一番面白くできるのはヒロヤ選手になります。
「僕もそう思っていますね。自分のグランプリだとホント、思っているんで。自分がチャンピオンになれたら、色々な人に勇気や希望を与えることができると俺、絶対に思うんで。俺は格闘技がないと、夢を持てなくて空回りしている人生だったんで。そういう俺みたいな奴らに、元気を与えられたらなって。そのためにも、自分がチャンピオンになる人生を生きないといけないと思って、米国に行ったので。
ただなんといっても元谷選手は優勝候補で、凄くリスペクトしている選手なので。次とかでなく、この試合しか頭にないです」
■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!