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【SUPER RIZIN04】パトリッキー越えを果たすも、負傷でタイトル戦を逃した野村駿太が話していたこと――

【写真】インタビュー中は終始、野村は穏やかな表情だったが、口にすべきことはしっかりと言葉にしていた(C)TAKUMI NAKAMURA

7月27日の超RIZIN04でパトリッキー・フレイレを下し、リング上でホベルト・サトシ・ソウザとフェイスオフ。名古屋大会でライト級王座挑戦は決定的かと思われた野村駿太
text by Manabu Takashima

しかしながら、パトリッキー戦で左目を負傷し王座挑戦の機会を失してしまった。明日、その名古屋大会でサトシは堀江圭功の挑戦をメインで受ける。MMAPLANETではタイトル挑戦が流れた野村を8月7日にインタビュー。サトシ戦への想い、パトリッキー越えで得た自信、ブレない目標について――敢えてこのタイミング――RIZINライト級選手権試合前夜に伝えておきたい。


2Rからはダブルビジョンで、パトリッキーが2人いて(苦笑)

――8月1日、RIZIN51の会見が開かれる。そのリリースを見た時に、会見出席者の名前に野村駿太という文字が見らなかった。「あぁパトリッキー戦でケガがあったのか」と……(※取材は8月7日に行われた)。

「リング上であのやりとりがあったのですが、控室に戻るときから目の具合はおかしかったです。会見の時も、一点だけを見るようにしていました。だから、あの時には『これは9月は無理だなぁ』という気持ちになっていました。

(C)RIZIN FF

リングの上でサトシ選手を向き合った時は全く普通だったのですが、それは興奮していたからかで。

実際に試合を振り返ると、もう目はおかしかったです。1Rの終わりに跳びヒザから右フックが来て。その瞬間に自分は笑っていたんですよね。それは鮮明に覚えていて。きっと本能的に、目がいったと分かったんだと思います。だからインターバル中も目を冷やしてくださいと伝えていました」

――ではあの肉弾戦、近い距離で戦えたことが野村選手の成長だと勝手に思っていたのですが……実は、ああするしかなかったということですか。

(C)RIZIN FF

「距離とタイミングは1Rで掌握できていたので、2Rで終わらせることができると思っていました。

もう、創り終えた感覚で。でも2Rからはダブルビジョンで、パトリッキーが2人いて(苦笑)。『あれ、パトリシオもリングに入ってきたのかって』(笑)」

――うまいですけど、笑えないですよ。ただ、痛い素振りは見せていなかったですよね。

(C)RIZIN FF

「試合中は別に痛くはなかったです。

でも見えないから、初回にとれていたリズムは崩さないように、少し足を使って行く振りをして行かないというのを繰り返していました。そうしたら、だんだんと視界に靄がかかってきて。そうなると、右目だけを頼り戦いました。これで3Rに決めようと」

――それほどまでの状況だったのですね。しかし、片目で距離感って合うのですか。

「そこは自分のイメージ力を信じていました。パトリッキーが2人いると、どっちを狙えば良いのか分からないですが、1人になったので(笑)。もう距離ではなくて、来たら避ける。自分のリズムを大切にしていました。既に距離とタイミングは掌握できていたので。この掌握に関しては試合前から、世界中の誰と戦っても通用するという自信がありました。距離とタイミングを僕のように大事にしている人は、UFCのトップでもいないと思っています。

それでも一発で目がやられたわけで。当たった場所が違っていたらどうなっていたかと。やっぱりパトリッキーは強かったです。怖さとかなかったですけど、爪痕だけは残してきたなと思います」

ルイス・グスタボ戦とパトリッキー戦は、今後のために自分の技量を確認するために、組んでテイクダウンと近い距離の打撃を実戦で試したかった

――MMAでは長い距離が強い人は、近い距離が得意ではない。特に伝統派空手出身の選手が、近い距離を続けることは難しいいう印象でした。左目が見えなかったから、あの位置で戦ったかもしれないですが、あの距離での戦いは凄く印象的でした。

(C)RIZIN FF

「目がこんな風になっていなければ、もっと近い距離で上手く戦えます。

だから3Rもやり合っているという感覚はなかったです。あの距離でも勝負をしないといけないので、今度のためにアレをやりました。それはあそこでも勝てるという確信があったからです。ルイス・グスタボ戦とパトリッキー戦は、今後のために自分の技量を確認するために、組んでテイクダウンと近い距離の打撃を実戦で試したかった。そして、実際にそう戦いました。

グスタボ戦のテイクダウンにしても、リスクがあるし『しない方が良かった』という風に言われもしました。でも、ずっと自分の得意なところで戦っていても何の意味もないです。もちろん試合は勝たないといけないから、そこまでの試合展開で『やれるな』と思えたからテイクダウンを仕掛けたわけですけど。それでやられるなら、自分はそれまでの技量しかないということです」

――結果、初出場のRIZINで試して勝ったことで、超RIZINでパトリッキー戦の機会を得た。そして今度は近い距離を試せることになりました。

「グスタボ戦で試してやることができたので、パトリッキー戦も練習で積んでいればやれると思って戦いました。そこをしないと、僕のなかでは全部がつながらないような気がして。それをすることで自分の得意な部分と、こうやって行きたいというのが噛み合ってくると思うので。

UFCに行って、いきなりあの連中と近い距離やテイクダウンの攻防をするって無理じゃないですか。それまでに実戦で、どこの距離でも戦えるようになっていないと。例えばUFCでも接近戦でできても、もともと僕が得意だった距離が苦手な選手もいるかもしれない。近い距離だけでなく、遠くでも戦えてテイクダウンもできる。

それぐらいでないとUFCでは勝つことはできないと思っています。だからグスタボやパトリッキーという相手に、実戦でやっておきたかった」

――そして、できた?

「……できていたスね(笑)。あの日の自分はちゃんとやってくれました」

本当に幸運だったのは、自分が強くために必要だった試合をすることができてきたことです

――RIZINに出るまで、対戦相手でストライカーは2戦目の宇佐美正パトリック選手だけでした。あの時と今では、打撃はどこが一番違っていますか。

「倒すことができる。あの時は、遠いところからしかできなかった。それでも打撃は当てることができていましたが、組まれると全然で。だからこそ、組み技の練習ばかりを積んできました」

――MMAを知れば、慎重になる。分かっていないことが多かった時の方がアグレッシブだったというケースも少なくないです。ただ野村選手は、それに当てはまらなかったわけですね。

「正直レスラーとの試合ばかり続いていた時と比べると、今の方が全然楽しいです。やっと今、格闘技をやっている感覚になれました。レスラーと戦い続けたことで、我慢を覚えることができましたね。組みの強化に専念し、自信が持てたから打撃も変わる。結果、好きなことがMMAでできるようになりました。先に宿題を終わらせたから、好きに遊びに行けるような感じですね(笑)。

本当に幸運だったのは、自分が強くために必要だった試合をすることができてきたことです。試合を通して、勝手に強くなっているような。毎試合、与えられた課題を克服してきたような」

――ではテイクダウンができたグスタボ戦、接近戦を戦ったパトリッキー戦で自信が得られましたね。

「パトリッキーに勝てたことで、ちょっと自分への期待値が上りました。正直、自分のことを疑っているので。なのでケガをしたことなんて、どうでも良いです。パトリッキーに勝ったことも大きいですが、自分がどこまでできるのかを感じられるようになったことが大きいです。

以前から石渡(伸太郎)さんと『こういうことができれば、良いよね』という風に話をしてきました。それが最近では『これができるようになったのか』と言ってもれるようになって」

――打撃が好きに使えるようになれば、組まれて切るということではなく組ませないMMAが可能になりませんか。

「そこは江藤(公洋)さんとの試合で、少し感じることができました。それこそBRAVEの練習で原口伸に組まれると、凄く厳しいです。そうされないよう伸との練習では、触れられないことに徹するようにしています」

――それは伸選手にとっても、良い練習になるのではないですか。

「僕と伸はストロングポイントが全く違うから、エゴとエゴのぶつかり合いになって一番しんどいスパーになります。試合前は互いによくないイメージをつけたくないですけど、僕らが強くなるためには欠かすといけない、そんな意識です。だから僕はテイクダウン有りのスパーリングの打撃の方が、キックのスパーよりも強いと思います

逆にロータスでの岩本(健汰)さんとの練習は触れられてからの練習です。それが、寝技でやられないようになるためなので」

サトシ選手に極められなかったら、UFCでも極められない

――もしかしてサトシ選手との試合を熱望したのは、実戦で彼の寝技を味わうためですか。

「そうッスね。本当に、そこに合致する人が日本にいてくれて。しかも世界最高レベルで。ベルトを軽んじるわけではないですけど、DEEPのベルトもレスラーの江藤さんを相手に自分のやってきたことの答え合わせをしたかった試合に付随したモノでした。

だから、RIZINのライト級ではチャンピオンのサトシ選手が僕の好奇心を満たしてくれる相手なんです。本当にサトシ選手の強さを知りたい。触れたいし、超えたい。打撃のダメージは抜きにして、MMAグラップリングの展開のなかでサトシ選手に極められなかったら、UFCでも極められないと言っても良いぐらいの相手なので。王道のMMAから外れていて、あれだけ強いサトシ選手と戦いたいです。

サトシ選手と戦えるから、グラップリングに力を入れるわけじゃないんで。もう何年もロータスで揉まれてきました。朝早く起きて、2時間かけてロータスに通っていた。本当にちゃんとグラップリングをやってきて良かったと思っています。今度こそサトシ選手と戦うことになったら、火の中に飛び込むような気気持ちで向かっていきます」

――パトリッキー超えの対価はタイトル挑戦でなく、サトシ戦だと。

「それがRIZINで戦う理由です。実は佐伯(繁DEEP代表)さんからRIZINの話を頂いた時に『サトシ選手以外だったら行けます』って言ってしまったんですよね。そう言ってしまった自分が、嫌で。それって、違いますよね? 矛盾しているじゃないですか。一番強い人間がいるところで戦いたいのに、そんなこと言うなんて」

――いやぁ、筋が撮っていますね。ところで満員のさいたまスーパーアリーナで戦った収穫はありましたか。

「どれだけお客さんが入っていても、相手だけに集中できた。それが収穫ですね。もう、レフェリーの存在もほぼ見えていなかったです。あの環境でパトリッキーと戦わせてくれたRIZINに感謝しています」

30歳という年齢にモロにプレッシャーを感じているわけではないですが、やはりタイミングは大切にしたい

――目指すところは世界最高峰として、直近の平良達郎選手と中村倫也選手の勝利はどのように映りましたか。

「単純に日本人強いなって。フィジカルでも負けていないし、平良選手なんてフライ級なのにあんなにデカいのかって(笑)。倫也さんは顔つきが前と違っていて、膚の感じがメッチャ良くて『絶対勝つじゃん』と思いました。倫也さんからは、自分の得意じゃない場所で戦って強くなるという意識が凄く感じられます。強くなりたいから、試していますっていうところで倒している」

――野村選手と似ていますね。

「ハイ。伸びしろを創っている。今が集大成じゃないから」

――と同時にこの2試合で、RIZINで頑張って欲しいというファンも相当数いるかと思います。

「RIZINのおかげで、知名度が上がりました。さっきも言ったように、パトリッキーと戦わせてもらったことも含め感謝しかないです。そして、RIZINで戦い続けて欲しいという声があれば、それは嬉しいです。と同時に30歳という年齢にモロにプレッシャーを感じているわけではないですが、やはりタイミングは大切にしたい。

これまでもRIZINで戦う理由はサトシ選手という目標があったからで、『あと何試合だろう』と思っていました。それが次に戦えるところまできた。だから、そこはこれからとは別のところで感じる部分があります。とにかく9月には戦えなかったし、堀江選手が勝つこともあります。その結果が出るまでは、サトシ選手と戦うこと一択で。それからのことは、サトシ選手との試合が終わってから考えます」

――目の回復具合もありますが、現時点で次はどのように考えていますか。

「実は本当に名医の中の名医といわれる先生に、すぐに手術をしてもらって。本当だったから何カ月とかかるところ、すぐに練習も再開できそうなんです。もともと目の底でなくて、端の方に問題があって鼻の方に筋肉がよってしまって痛みを感じていたようで。眠れないぐらい、めちゃくちゃ痛かったのですが、そこを戻してもらったら痛みも全くなくて、腫れも収まっていたんです。今日、目の周囲が腫れているのはシャワーでつい鼻をかいでしまって……」

――えっ、それで空気が入ってしまったのですか!!

「そうなんです。それまでは。もう腫れも引いていたのに。次の受診の時には先生に怒られますね(笑)。だから、大晦日も大丈夫です。

9月の中旬ぐらいから普通に練習できると思います。それで名古屋大会が終わったら、ATTに行きます。堀口(恭司)選手がコンタクトを取ってくれていますし、堀口選手の試合が決まればサポートさせてもらえると嬉しいです。試合に向かう姿勢を見られるだけでも嬉しいですし。そこに触れるのも今後のためです」

■視聴方法(予定)
9月28日(日)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

■RIZIN51対戦カード

<RIZINライト級選手権試合/5分3R>
[王者]ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
[挑戦者]堀江圭功(日本)

<フェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
[挑戦者]ビクター・コレスニック(ロシア)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
扇久保博正(日本)
アリベク・ガジャマトフ(ロシア)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級T準決勝/5分3R>
元谷友貴(日本)
神龍誠(日本)

<RIZIN WORLD GP2025フライ級Tリザーブマッチ/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
山本アーセン(日本)

<RIZIN WORLD GP2025ヘビー級T決勝/5分3R>
マレク・サモチュク(ポーランド)
アレクサンダー・ソルダトキン(ロシア)

<バンタム級/5分3R>
佐藤将光(日本)
ダニー・サバテロ(米国)

<バンタム級/5分3R>
梅野源治(日本)
芦澤竜誠(日本)

<フェザー級/5分3R>
高木凌(日本)
三宅輝砂(日本)

<ライト級/5分3R>
矢地祐介(日本)
芳賀ビラル海(日本)

<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
ファン・イェーロウ(中国)

<フライ級/5分3R>
冨澤大智(日本)
平本丈(日本)

<フェザー級/5分3R>
大和哲也(日本)
奥山貴大(日本)

<100キロ契約/5分3R>
金田一孝介(日本)
チャートゥ・バンビロール(セネガル)

<ライト級/5分2R>
太田将吾(日本)
Street♡★Bob洸助(日本)

<バンタム級/5分2R>
山木麻弥(日本)
石坂空志(日本)

<フライ級/5分2R>
佐藤執斗(日本)
小林大介(日本)

<フェザー級/5分2R>
YUHEI(日本)
脇田仁(日本)

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