【TUF24】レビュー12 準決勝、接戦&白熱の攻防を制したのは扇久保博正とティム・エリオット
3日(土・現地時間)、ネバダ州ラスベガスのパームス・カジノリゾート内ザ・パールで開催されるTUFシーズン24「Tournament of Champions」。世界各国のプロモーションから集まった16名のフライ級王者が生き残り合戦を戦い、優勝者が今大会でUFC世界フライ級王者デメトリウス・ジョンソンへ挑む。
TUF24レビュー、第12回はエピソード11で組まれたトーナメント準決勝、アレッシャンドリ・パントージャ×扇久保博正戦&ティム・エリオット×エリック・シェルトン戦の2試合の模様をお伝えしたい。
ついにシード01を相手に夢の実現へ正念場、ラスト2を迎えた扇久保。ジョセフ・ベナビデスは「自信を持っている。ヒロはパントージャより打撃が上だし、寝技は簡単じゃないけどトップコントロールできるはずだ。立ち技で優位に立ち、テイクダウンできる」と扇久保を送り出した。
<TUF24フライ級T準決勝/5分2R>
扇久保博正(日本)
Def.decision
アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル)
「試合のことより、家族のことを考えることが多い。でも、優勝して家族に会う姿を想像しながら毎日を過ごしている」と語っていた扇久保はまず左ミドルハイを見せる。パントージャのパンチに距離を取るも、ローでバランスを崩された扇久保は左ジャブを受ける。パントージャは左ボディー、直後の扇久保のミドルをキャッチして倒す。起き上がりながら組み付いた扇久保がパントージャをケージに押し込み、ボディロックから後方に尻持ちをつかせる。
即スタンドに戻ったパントージャのバックを取り続けた扇久保は、後方からパンチを入れる。さらに扇久保はパントージャが胸を合わせてきたところで完璧なタイミングで、ダブルレッグを決めてテイクダウンに成功する。足を一本抜く扇久保、戻すパントージャという展開が続き、蹴り上げにも扇久保は立ち上がることを許さない。左右のパンチを落とし、トップコントロールを続ける扇久保は、クローズドガードからのリバーサル狙いでスクランブルに持ち込まれるも、すぐにバックを取って崩していく。
胸を合わせて離れたパントージャが左右の蹴り、扇久保も左ハイを見せ間合いをしっかりと取ると、右アッパー、ワンツーから右ローという対角線コンビネーション、さらに左ミドルを蹴り込んでいく。前に出てくるパントージャのパンチをかわしてダブルレッグで組み付いた扇久保は、大きく持ち上げてテイクダウンを決め初回をまずは取った。
インターバル中に「ヤツはジャブしかない」というベナビデスの指示に大きく頷いた扇久保は、2R開始直後のパントージャの跳び蹴りに距離を取る。ケージ際でバランスを崩し、テイクダウン狙いにパンチを合わされるシーンもあったが、打ち合いのなかで左ミドルからダブルレッグへ。これをスプロールしたパントージャに、扇久保はジャブから左ハイを見せる。
扇久保は右アッパーと左ハイでパントージャのプレッシャーを突き放すも、蹴り足を掴まれて崩される。パントージャがバックに回ると、直ちに胸を合わせた扇久保だが、蹴り上げで試合がスタンドに戻る。扇久保は打撃の攻防からまたダブルレッグを決め、スクランブルで立ち技になってもパンチを打ち込んで攻勢に試合を進めた。
パントージャは必死になって組みに行くが、これをいなした扇久保がトップを奪取。残り2分となり、扇久保の攻勢が続く。懸命にヒップエスケープでスペースを作ろうとするパントージャを抑え込む扇久保は、足を一本抜いてワキ差しパスを狙う。背中をベタッとマットにつけたパントージャはブレイク狙いか。
残り30秒でレフェリーがスタンドを命じると、パントージャの前進を受け止めた扇久保がバックを奪取。ラウンド終了と同時に、扇久保は右手を挙げて勝利を確信していた。結果、判定勝ちでシード01のパントージャを破った扇久保は「試合が決まった時は複雑だったのですが、準決勝で当たったことは互いに幸せなこと。あと1試合、どんなことがあっても優勝します」と語った。
チーム・セフードのメンバーはここでトーナメントから姿を消した。
<TUF24フライ級T準決勝/5分2R>
ティム・エリオット(米国)
Def.2-0
エリック・シェルトン(米国)
シード15から準決勝に残ったシェルトンに対し、思い切り左を振るって前に出るエリオット。シェルトンも右から左を入れるも、エリオットがシングルでテイクダウンに成功する。トップから右のパウンドを脇腹に落とし、三角狙いのシェルトンをスラムで叩きつけたエリオットは、ガードのなかで左右のパンチを落として削っていく。
起き上がろうとするシェルトンをギロチンに捉えたエリオットが引き込んで絞め上げるも、ケージが背中にある窮屈な状況では極めきれない。頭を抜いたシェルトンがトップから細かいパンチを落としていく。背中を預けつつ立ち上がろうとしたエリオットのバックに回ったシェルトンが両足をフックする。
直ちにエリオットが胸を合わす。下になったシェルトンは腕十字を逃げられた直後にそのスペースを利してシングルで立ち上がって、再びエリオットに尻餅をつかせた。ここで、ケージを背にしてシェルトンの頭を抑えたエリオットだったが、その手をのけるとつっかえが無くなったように、シェルトンの頭が振り上げられエリオットの顔面に直撃する。
アクシデントとしてブレイクが入り、スタンドで試合が再開。直後にダブルレッグで尻餅をついたシェルトンが起き上がってバックに回りドライブ、テイクダウンへ。ギロチンを狙ったエリオットだが頭が外れたところでタイムアップとなった。
持前の受けの強さを見せたシェルトンは、2Rに入ってもラフな打撃からテイクダウンを狙うエリオットの攻撃を切っていく。ダブルレッグをがぶって離れたシェルトンが間合いを取ろうとすると、エリオットはワンツーで前に。逆にシェルトンのテイクダウン狙いを切ると、続くダブルをギロチンで受け止める。
初回と同様に極めきれなったエリオットに細かいパンチを落とすシェルトン。エリオットはガードで固めて掌底を連打する。シェルトンは左のパンチを入れてハーフを取り、バックを狙ったが前方に落とされ、スクランブルから試合はスタンドに戻る。
やや動きが落ちたシェルトンのテイクダウン狙いを潰したエリオットが腹固め+パンチへ。ブリッジから胸を合わせにいったシェルトンが、バックを伺うとエリオットは引き込んでキムラへ。立ち上がった両者、キムラロックのままで投げを打ったエリオットだがシェルトンがバックに回る。
RNC狙いのシェルトン、ロールしながらシングルを仕掛けて上を取り返したエリオット。決勝進出を賭けて、激しいスクランブルの攻防が見られた一戦は、残り15秒になり上を取ってきたシェルトンにエリオットがギロチンを狙ったところでタイムアップに。
試合全般を通してだとシェルトン攻勢と見られた一戦は、エリオットに結局のところ2‐0で凱歌が挙がった。タップを奪えないギロチンに過分な評価が与えられたような勝利にエリオット自身が、「勝利は嬉しいけど、パフォーマンスには満足していない。判定勝ちは少しラッキーだった」と接戦を振り返った。
いずれにせよ、これでTUFシーズン24決勝、デメトリウス・ジョンソンへの挑戦権が掛かった一戦は日本の扇久保と元UFCファイターのティム・エリオットの間で争われることとなった。