この星の格闘技を追いかける

【Road to UFC2023 Ep05】リー・カイウェン戦へ。神田コウヤ─01─エルボー秘話「ヒジはMMAじゃない」

【写真】精悍な表情の神田コウヤ。実はヒジ打ちアレルギーだった (C)SHOJIRO KAMEIKE

27日(日・現地時間)、シンガポールのインドアスタジアムで開催されるRoad to UFC 2023 Ep05のフェザー級準決勝で、神田コウヤが中国のリー・カイウェンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

神田といえばテイクダウン&首相撲、ヒジ打ちとダーティボクシングの印象が強い。試合内容でもその点に強いこだわりが見られる。そんな神田のスタイルは、いかにして確立されてきたのか。超ストライカーであるリー・カイウェンとの準決勝を前に、神田が自身のスタイル――特にヒジ打ちへの想いを語る。


――Road to UFCの準決勝を控えている神田コウヤ選手です。お会いするたびに精悍な顔つきになっていますね。

「試合が近づいているからですかね。減量や練習もありますし」

――減量や練習の影響もあるかとは思います。それ以上に今年4月、修斗沖縄大会の翌日に那覇空港で遭遇した時も、「初めてインタビューした時より雰囲気が落ち着いたなぁ」と感じました。ベルトを巻いて、立場が人を創るというのか……。

「あぁ、たまに言われます。『5年前とは雰囲気が違うよね』って。ここまで勝ってきて、ベルトを巻いたといっても、自分の中で大きな変化はないです。別に生活水準も変わっていませんし。ただ、『ここまで自分は苦痛を味わいながらMMAをやってきたんだぞ』という自負はありますね」

――苦痛、ですか。

「そういうキャリアを経て、自分の中にも覚悟が生まれてきているという実感はあります。RTUに出ている他の日本人選手と比べても、自分は負けが多くて。それだけ苦労してきたんだっていう気持ちは負けないです」

――戦績で全てを語れるものではありませんが、そう言われてみると今年のRTUに出場した日本人選手の中で、神田選手の過去4敗というのは黒星が多いほうかもしれません(※注)。

「これまでの敗戦が、自分をしぶとくしてくれていると思います」

(※注)Road to UFC 2023:1回戦出場時の日本人選手の戦績
■ライト級:原口伸 5勝0敗1NC、丸山数馬 11勝6敗
■フェザー級:SASUKE 11勝2敗1分、神田コウヤ 11勝4敗
■バンタム級:上久保周哉 12勝1敗1分、野瀬翔平 10勝3敗2分
■フライ級:鶴屋玲 6勝0敗

――プロデビュー当時は、ここまで黒星を重ねることなく頂点にたどり着けると思っていましたか。

「思っていました。少なくとも、こんなに険しい道のりになるとは考えていなかったです。自分はもっと人気者になって、もっと稼いでいると……でも現実は違っていて(苦笑)。『それでも自分はMMAを続けるしかないんだ』って、諦めているというか開き直っています。負けて腐っていたら、そこで終わり。『とにかく勝つしかないんだ』っていう気持ちでやっていますね」

――自分が思い描いていた夢と現実が異なると感じたのは、いつ頃なのでしょうか。

「2戦目でKO負けした時です(高塩竜司戦、8秒でKO負け)。自分の中ではプロデビューから10連勝ぐらいして、すぐに海外へ行ったりするのかなと思っていました。でも現実は、そういうわけにはいかなかったです(笑)。そのあと4戦目でも負けて(加藤貴大にRNCで一本負け)、次の5戦目は『また同じ負け方をしたらどうしよう?』という気持ちにはなっていました」

――そこで試合に対する恐怖心などは生まれなかったのですか。

「恐怖心はありました。でも戦っていくなかで、勝つと負けたことが相殺されていきました。自分の中で自信がついたのは、5戦目以降に3連勝した時ぐらいですね」

――2019年頃ですね。連勝し、自分に自信を持つことができた要因は何かありましたか。

「だんだん自分のスタイルが固まってきたことですね。負けることで自分の弱い部分を知ることができたり、自分の強みを考えるようになってきて。それって戦いの中でしか知ることはできないんですよ。

たとえば、技術が格段に増えることも重要だとは思います。でも『試合の展開によって、どの技術をどう使うか』という判断能力は、戦いの中でしか養われないので。どの技術を使うのか一瞬でもためらってしまうと反応が遅れてしまうし、その一瞬が勝敗を分けることもある。そんななかで、自分は試合で迷うことなく動けるようになってきたと思います」

――結果、レスリング+ムエタイのスタイルが確立されてきたわけですね。特にケージへ押し込んでヒジを連打する展開には、強いこだわりを感じます。

「アハハハ、ありがとうございます。グレコ出身なのでムエタイの首相撲や、ダーティボクシングも相性は良いですよね。グレコも首相撲も、相手に対して上のほうで組むことが多いので。でも自分の中で、ヒジはMMAじゃなかったんです」

――ヒジはMMAじゃない、とは?

「僕がMMAを始めた頃は、国内でもヒジがOKの団体は少なかったので。だから――PRIDEで観ていたマウリシオ・ショーグンがUFCに出た時、ヒジで血だるまにされて負けたんですよ。『卑怯だ。これはMMAじゃない!』と思って」

――卑怯(笑)。確かに現在は国内MMAでもヒジ有りがスタンダードになってきていますが、当時の国内と海外MMAの違いといえばケージかリングか、そしてヒジ打ちの有無は大きかったです。

「そのショーグンの姿が本当にショックで。海外を目指すうえでは、ヒジ打ちを練習しないと勝てないって思いました。だからプロデビューが決まった時から、ヒジ打ちは練習していたんです。ヒジ打ちについて考えれば考えるほど、パンチよりも効率的だなと思うようになって。でもスパーリングで思いっきりヒジを打ち込むことはできないから、とにかく試合でフルスイングして試す。練習ではサンドバッグで打ち方を考えながら、試合後に映像を視ながらフィードバックする。そうやってヒジ打ちが上手くなってきたと思います」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
8月27日(日・日本時間)
Ep.05午後5時~UFC FIGHT PASS
Ep.06午後7時~UFC FIGHT PASS
午後4時30分~U-NEXT

PR
PR

関連記事

Movie