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【DEEP120】体重超過の神田コウヤと対戦する木下カラテが語っていた──ハマるパンチと空手論

【写真】これが加藤丈博流ハマったパンチ。この湾曲に注目 。そしてゴツイ拳だ(C)MMAPLANET

本日14日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP120 IMPACTで木下カラテが神田コウヤと対戦する。しかし、昨日の計量の結果、再計量でも1.9キロオーバーだった神田のイエロー2枚からスタートし、木下が勝利したケースのみ公式結果として認められるという変則マッチとなってしまった。
Text by Manabu Takashima

(C)TAKUMI NAKAMURA

格闘代理戦争のワンマッチで、ユン・チャンミンから見事なKO勝ちを収めたことでデビュー前から注目を集めていた木下。

だが修斗では打撃の強さを警戒されることとなり、厳しい状態が続いた。4年間で戦績は5勝6敗1分──しかし、2023年5月にからDEEPに戦場を変えると、RIZINでの久保優太戦こそ黒星を喫したが、DEEPフェザー級戦線では3連勝、3試合連続でフィニッシュ勝利と、結果だけでなくパフォーマンスそのものも変化している。

畠山祐輔、梶本保希に続き、タイトルコンテンダーの五明宏人を倒し、タイトル挑戦が見えてきた木下に変化、進歩について尋ねた(※取材は10日に行われた)。

すると空手家時代、そして今も師であり続ける武心塾・加藤丈博師範の「ハメる」論理を掴み、空手への理解を深めたことが好調の裏にあることが分かった。


──MMAPLANET初インタビューとなります。いきなりですが、DEEPで戦うようになってからの勢い。どのような変化が木下選手のなかであったのでしょうか。

「修斗で児山(佳宏)選手と戦って1RTKO勝ちができて、良い勝ち方ができたと思ったら、次の竹原魁晟戦(2022年10月)で酷い負け方をして。あの時に大沢(ケンジ)さんから、『層の厚いDEEPで戦って、より厳しい状況においてしっかりとやっていかないか』というようなことを言われたんです。

それから練習でも細かい部分を意識していくようにして、練習以外でも自分を変えよるようになりました。そうですね、ケージって戦う人間の人となりが出ると思うんですよ。今でも(江藤)公洋さんや大沢さんから『後片付けができない』って指摘されるんですけど(苦笑)、そういう部分ですね。やることは早く済ます……とか」

──つまり普段の自分を律するようにしたと。

「そこまでじゃないんですけど、普通のことを普通にできるように……ですね(苦笑)」

──普段の自分を変えることで、ここまで戦績も良くなった?

「人となりを気にすることで、練習への集中力が変わりました。打撃も組みも細かいところまで気にするようになって。何より練習の時から、本番に挑むイメージを持つようになったんです。やっぱり試合と練習は気持ち的にも違うので、そのズレを少なくするようにしました。

あと打撃の方では、自分の打撃の基礎は武心塾の加藤丈博(1991年、全日本ウエイト制中量級準優勝、第5回全世界空手道選手権日本代表。ボクシングでも活躍し、空手家としてMMA=パンクラスにも挑む)先生なんですけど、DEEP初戦だった畠山(祐輔)戦の頃になって、ようやく先生の言っていることが分かるようになったんです。

先生って技術が独特なんですよ。本人は謙遜されているんですけど、天才なんです。で、天才の言うことって全然分からなくて(笑)」

──アハハハハハ。凄く分かります。リョート・マチダが前蹴りでヴィトー・ベウフォートをKOをして、観空大の前蹴りだと言われても誰が真似ができるのかと。グレイシーがRNCや三角絞めで勝って、皆が影響を受けたのとは違うかと思います。

「そうなんですよ(笑)。空手の人たちってセミナーを開けないです。多くの人にいっぺんに教えるって、彼ては本来はできないものだと思うんです」

──確かに沖縄の手、唐手(トウディ)は、もとは1対1で指導をしていたもので。それが体育の授業に用いられ、集団に指導するようになって武道から運動に代わりました。

「僕は加藤先生から型も1人でやるものだと教わりました。直接の指導になると、ずっと基本稽古をやっていて。そこに先生は自己流でボクシングなんかを融合しているんですけど、その説明の仕方が奇抜すぎて(笑)。ずっと『何、言っているんだ』と思っていたんです。大体、第5回世界大会の日本代表なんて天才だらけですよね」

──緑健児、増田章、黒澤浩樹、八巻健志、七戸康博、岩崎達也、加藤丈博……。

「天才ですよ。天才の言うことは分からない(笑)。先生はパンチが巧い人で、その表現がハマるというモノだったんです」

──ハマる……。

「ハイ。もともと僕は蹴りの選手で、パンチは下手で分からないなりにやっているんですけど、『ハマんねぇな』と。でも、ハマるってなんだよって(笑)。そのハマるというのが、畠山戦前からようやく理解できるようになったんです」

──つまり、ハマるとは?

「それが……いざ、分かるようになってくるとハマるとしか表現のしようがなくて(苦笑)」

──ダハハハハハ。最高です。

「あれだけちゃんと説明してくれよって思っていたのに、いざ自分ができるようになると加藤先生と同じことを言っているんですよ(笑)」

──ハハハ。では畠山戦の左フックは?

「完全にハマったヤツです。手首でキュッと持っていくと、肩甲骨がキュッとハマって」

──自然とヒジが湾曲を描く?

「そうそうそう、それです!! そこでハメるんですよ。ヒジを下に向けると、肩甲骨がちょっと立つ。結果、サンチン立ちと一緒なんですよ」

──いや、木下選手からサンチンについて、そのような意見が聞かれるということは──木下選手のサンチンは極真のサンチンではなかったのですね。

「極真とは違って、ガニ股でも内股でもない。ヒザが内側を見ているようで違うんですよね。内も外も向いていない」

──だから内側からも、外側からも蹴られて強い、と。いやぁ、木下選手……面白いです。フルコンタクト空手家でなく、空手家ですね。

「そういうサンチンの構えの強さに気付いたのは、レスリングの練習をしていた時なんです。

時田(隆成。中央大学時代の2021年に全日本大学選手権フリースタイル61キロ級3位。アマパン=東関東選手権Sクラス・バンタム級Tで優勝)さんとトライフォース東中野で、平田直樹選手なんかと一緒に練習をしていて。

いうと、僕がほぼイジメを受けているような練習なんですけど(笑)。そこでテイクダウンを切るときにケツを入れると、親指はどうしても外に開くじゃないですか。そうなると、生物として弱い。簡単に倒されるし。『これはおかしい』って思うようになったんです。ガニ股のサンチンは違うって。

その時にK-1に出ている山口翔大選手に連絡をとって尋ねたんですよ。『ガニ股のサンチン立ちは、弱くないですか』って」

──スミマセン、立ち技格闘技は全く疎くて……。

「山口選手は、もともとは白蓮会館の空手家で白蓮の全日本は当然として正道会館やJFKOでも全日本で何度も優勝しています。今はK-1で活躍していて。そんな山口選手が山城(美智)先生の沖縄空手研究会に参加されていることを知っていたので……」

──「ガニ股のサンチンは違うだろう」と相談した?

「ハイ。山口選手と話して、僕も『親指を思い切り踏んで固定し、ヒザを外に向けてガニ股ということでなく、ケツを入れてヒザを崩れないようにする』ということだと気づいたんです」

──強いからブレず、でも柔軟に動くことできる本来……というのはおかしいかもしれないですが、空手の理ですね。

「そうッスよね。きっと、空手が沖縄から本土に渡って来た時に普及するために分かりやすさが大切になり、そのヒザの固定がガニ股とか流派によっては内股とかに変わってしまったんじゃないかと」

──MMAの試合を控えたMMAファイターとのインタビューから逸脱していますが、非常に面白いです(笑)。

「アハハハハ。でも、それって生き物として強いことだと思うんです。だから別に空手をやっていなくても、生き物として強い選手の姿勢ってそうなっている。

このテイクダウン防御で強い体って、加藤選手が言おうとしてくださっていた強いパンチを打つときの体の構造と同じだったんです。『あぁ、こうして。こうやるんだ』って言われていたことと(笑)。

加藤先生の特別なところは、武道の動きは直線的じゃないですか。そこにフックを加えたことなんですよね。ただ、それがフックじゃない。振っているけど、出し方は真っ直ぐで。

ヒジがやや湾曲している縦から横への拳の動きで。そこに加藤先生は手首を入れることを加えたんですよ。足からヒザ、腰、肩、ヒジと固めてフレームから、手首を振って」

──つまりは、それが加藤丈博師範のハメる理論なのでは……。 

「あっ、そうですね。これが一つ掴めると、他のことも分かって来る。幹ができたから、神経が枝葉にも行き渡るというか。こういう風にちょっとずつ理解を深めている際中ですね。

接近戦でも、決してボクシングではないんですよ。ただディフェンスは加藤先生も完全にボクシングで。防御という部分での空手は僕はまだ分かっていないです。同時にパンチの質は誰が見ても分かってもらえるぐらい変わりました。デカいグローブでミットをやっても、皆が痛いと言っています。

それをいうと加藤先生は試合用の小さなグローブでやっていて、中指と人差し指のところはグローブが破けるんですよ」

──えぇ、凄まじいですね。

「それを見せてくれていたので。説明は何を言っているか分からないですけど(笑)」

──アハハハ。そんななか神田選手との試合に向けて、組みに打撃戦を加えて神田選手のスタイルに、木下選手はハメることができるのか。

「打撃の時間を多く創れたら、神田選手はおっかなくてしょうがなくなると思います。組みは……木下カラテって言っていても、MMAの門を叩いてずっとやってきた部分です。HEARTSでこれだけやってきたので、そんなに簡単にやられない自信はあります。それでやられればしょうがない。でも、そんな緩くないですよ。僕がここでやってきたことは」

──今回の試合でDEEP4連勝となると、タイトル挑戦も見えてくるかと。そこから先はどこを目指しているのでしょうか。

「やっぱり、海外。ベストはUFCです。現役でやる以上、そこを意識しないと。でも僕はレコードが汚いんで、現実的かどうかといわれと、まぁ非現実的ですよね。だったらMMAを続けている限り、少しでも強いヤツと戦っていきたいです。

RIZINのフェザー級で中央アジアとか強いし、チャンスがもらえるならどんどん戦っていきたい。それに僕みたいに強くなるためにUFCを意識している人間と、本気でUFC一本でという選手ってキャリアの積み方も違うと思うんです。

UFC一本の選手は、やっぱりキレーなレコードでいないといけないから、強い相手に触れないで進むことも必要で。対して僕の場合はカルシャガ・ダウトベック選手然り、ラジャブアリ・シェイドゥラフ選手然り、ヤバい連中に触れて負けても損はない。

UFCが現実的でないから、そういう相手を望んでいける。それでもUFCへの想いを完全に消すことはできないのですが、強いヤツと戦うことができるなら場所は問わないです」

──では世界の猛者と戦うために、越えないといけない神田コウヤ戦。どのような戦をしたいと思っていますか。

「やることは決まっています。レスリング×空手、グッといって、そこでガガァとやってからドンと仕留めます」

──完全に加藤イズムを継承していますね(笑)。

「アハハハハ」

■視聴方法(予定)
7月14日(日)
午後5時45分~U-NEXT, サムライTV, YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ

■DEEP120計量結果

<DEEPウェルター級選手権試合/5分3R>
[王者]鈴木槙吾:76.95キロ
[挑戦者]佐藤洋一郎:77.05キロ

<バンタム級/5分3R>
CORO:61.45キロ
瀧澤謙太:61.50キロ

<フェザー級/5分3R>
中村大介:66.20キロ
白川Dark陸斗:66.20キロ

<ウェルター級/5分3R>
阿部大治:77.40キロ
嶋田伊吹:77.30キロ

<フェザー級/5分3R>
神田コウヤ:68.05キロ
木下カラテ:66.05キロ

<ライト級/5分3R>
野村駿太:70.75キロ
泉武志:70.70キロ

<メガトン級/5分2R>
誠悟:119.30キロ
朝太:103.90キロ

<ライト級/5分2R>
石塚雄馬:70.75キロ
佐々木大:70.75キロ

<68キロ契約/5分2R>
太田将吾:67.75キロ
相本宗輝:67.95キロ

<フライ級/5分2R>
木村琉音:57.10キロ
斎藤璃貴:57.00キロ

<アマ・フェザー級/3分2R>
菅涼星:66.15キロ
平石光一:65.90キロ

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