【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月編<その壱>ジョシュ・トムソン×パトリッキー・フレイレ
【写真】このような感じで青木の軽快なトークは続く(C)MMAPLANET
1月のロングインタビューのなかで浮上した『月刊・青木真也のこの一番』が実現。この1カ月に行われたMMAの試合から青木が気になった試合をピックアップして語る。
背景、技術、格闘技観──青木真也とのMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2月の一戦=その壱は18日のBellatro172から、ジョシュ・トムソン×パトリッキー・フレイレを語らおう。
──前回のインタビューのなかで出て来た『月刊・青木真也のこの一番』、気になる一番ということで連載としてスタートをさえていただきます。まず、2月に入って気になった試合はありましたか。
「ジョシュ・トムソンとパトリッキー・フレイレの一戦ですね。トムソンの試合はスバリ頭突き論なんですよ。ぶっちゃけ、MMAを見ていると佐藤ルミナ×イーブス・エドワーズ、石川真×戸井田カツヤ戦と過去にも事例があって。2試合とも頭突きからチョークで試合が終わっています。
今回のトムソンはその後にテイクダウンを狙って右アッパーで負けました。つまり頭突き絡みで勝った選手の頭突きは問われない。文面では反則だけど、実際は流される。なら、上手く使えば効果的なダーティーテクニックになるんですよね」
──う~ん、最初は分からなかったですが、スロー再生があって、明らかな頭突きが見て取れてもなお、反則があったのではないかという論議にならない。
「だから、やったもん勝ちなんですよ。頭が入るのは、有りということです」
──UFCではロビー・ペラルタが頭突き後のパウンドでTKOした試合(※2011年11月12日 ×マッケンス・セメザー)は後日ノーコンテストに結果を変更しています。
「後からですよね。でも、ノーコンテストなんですよ。反則負けじゃない。つまりはやったもん勝ちなんです(笑)。だから、効こうか効くまいが頭が当たったらコーナーも抗議する必要があるし、僕なんかも目の場合も危ないと思っただけで、アピールします。それが抑止効果にはなるはずなので。
まぁ、トムソンはもうそんなアピールできる状態じゃなかったですけどね(苦笑)。頭から入って来る選手は多いですし、まぁ一つ、こういうことがあるということは頭に置いて戦うべきなんですよ」
──ローキックが急所に当たるのも偶発性ですが、蹴った方がしっかりとコントロールせず、当たっても──なんて感じで蹴ることもありますし。頭も接近戦では当たるかもということは、頭に入れておかないといけないということなのですね。
「だから、アゴを引いて頭から当たるような構えで備えることが必要になるんです。ヒジだって頭突きと一緒に入れることできますよ。そんなのレフェリーはもう分からないですよ。
これは僕の考えですが、やられた方が悪いから」
──う~ん……。
「当たっちゃたらゴメンね──じゃないですけど、そういうことがあっても文句は言えないです。反則のことを想定して戦うのは大変ですけど、指が目に入る、フィッシュ・フィックがあるかもしれないと思って戦っていますよ」
──……。
「この競技、しんどいです(笑)。目を突かれることはいくらでもある。ダーティーテクニックは頭に入れて戦わないと。プロレスの5秒以内の反則じゃないですけどね。やっぱり考えて戦わないといけない。
パトリッキーは当てようとまで思っていないかもしれないけど、打ち気のあるファイターだから前に出てきますしね。それに1Rもパトリッキーは優勢だったから、ガンガン行く。
でも、あの選手は強いですね。Bellatorが好きそうなファイターですよ。マイケル・チャンドラーに負けても、ジョシュ・トムソンに勝った。良いポジションにいますしね」
──トムソンが勝てば、チャンドラー戦だったのでしょうが。
「潰しちゃいましたね。でも、跳ねた試合だったから良かった。それにトムソンも負けましたけど、良い味を出している。凄くテクニカルで、あれだけ年を重ねても戦い続けているっていうのは、やっぱり良いですよ。
負けても、トムソン目線で見てしまう試合です。それが僕らの年齢ってことなんでしょうね。トムソンがどれだけできるかっていう風に試合を見るわけじゃなくて、どんなもんなんだろうって見ているんですけどね。
MMAが綺麗ですよね、トムソンは。強いというよりも、引き出しが多い。綺麗で引き出しが多い、つまり恰好良いです」
──なるほど。
「トムソンがメレンデスと戦った時に、テイクダウンに来られてスイッチで切り返した。あの試合でスイッチを見て、僕はスイッチを覚えたんです。それに前蹴りに足払い。MMA、格闘技が好きな人が好みになるファイターですよね、ジョシュ・トムソンは。
そんな綺麗なファイターが頭突きで負ける。だからこそ、もらってしまう。それもMMAです」
<この項、続く>