この星の格闘技を追いかける

【ONE FN40】ONE初陣。LFA7勝0敗、日系ブラジリアン=ガビ・フジモト「日本で戦う夢に近づけている」

【写真】前半の通訳をしてくれたのはガビのいとこで、同じく日系ブラジリアンの藤本あゆみさんで、現在は日本在住。ガビは2003年2月14日生まれ、現在はリオのKOスクワッドに所属している(C)MMAPLANET

14日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムでONE FN40が行われガビ・フジモトが、ジヒン・ラズワンと戦う。
Text by Manabu Takashima

日系ブラジリアンのガビは、2022年11月にLFAブラジル大会でプロデビューを戦って以来、キャリア7戦の全ての舞台がLFAだった。目標は当然UFCだったが、なぜガビはONEを選んだのか。日系ブラジリアンの生い立ちから話を訊いた。


計量に失敗しない。1グラムも超えない。練習に遅刻もしない。それが日本の血だと思っているわ

――UFCへの登竜門LFAを追っていて、ガビ・フジモトという選手がブラジル大会で快進撃を続けていることに気づきました。フジモト姓であることが一層関心を高めたことは絶対です。ガビは日系何世なのでしょうか。

「4世で曾お爺ちゃんが熊本からの移民だったの。私はブラジル生まれでブラジル育ち、ブラジル国籍で日本に行ったことがなくて。格闘技……空手を始めたのも、家族に勧められたとかじゃなく、礼儀の面とか自分が興味を持ったからだったわ」

――成長する中で、日本の風習や慣習の影響を受けたことはありましたか。

「お爺ちゃんが2世で、日本の習慣がかなり残っている人だった。お爺ちゃんは柔道をやっていたようだけど、それはさっきも言ったように空手を始めたきっかけではなかったし。私の家は普通にブラジル的な環境だったと思うけど、目上の人の話をしっかりと聞くとか、そういうことは家で教えられたかな」

――これまで取材で15度ほどブラジルを訪れているのですが、現地では日系ブラジリアンは勤勉だという風に周囲が思っているような印象を受けました。

「私もそう思うわ。やるべきことをやりぬく。だからMMAを戦っていても、計量に失敗しない。1グラムも超えない。練習に遅刻もしない。それが日本の血だと思っているわ。だからこそ、私はMMAで結果を残せてきたのかなって」

――私は「ブラジル人は悪いヤツも、どこか良いヤツ」、「金銭的には貧しくても、心は豊かだ」という印象を持っています。同時にあのラテンの空気感が羨ましくて。あのテンポの国で、日本人らしさがあるとそれは得だと思うこともありました(笑)。

「アハハハハ。もうその通りね。道場やジムで練習をしていても力はあるのに、勤勉さがないから強くなれない選手をたくさん見てきたわ。日本のような整った環境がブラジルにあれば、最高なのに。私はさっきも言ったけど小さな頃から、年上の人を敬う。言うコトには耳を傾けるということが身についていたので、コーチと意見が違っていても、まずは理解しようという風でいられるの。そこは日系でないと、ブラジルではないかもね」

――他の練習生たちは違うと。

「ブラジルではジムに来て練習をし始めたばかりでも、コーチに対して自論をぶつけることが多くて(笑)。最初からそうでなくて、まずは頷いて練習をしていればもっと成長できるのに。本当にブラジルはそんな感じよ」

――取材で1時間、2時間待ちは当然で。それでこちらが15分遅れると「日本人なのに遅れるとは」と帰ってしまったファイターもいました(笑)。

「ハハハハ。本当にブラジルらしいわ。とにかく口が達者なのよ(笑)」

――ハハハ。格闘技を始めたのは空手からだと言われていましたが、フルコンか伝統派がどちらだったのでしょうか。

「私はサンパウロの郊外モジ・ダス・クルーセズの出身で(世界中から移民を受け入れていた地域で、サッカープレイヤーのネイマール、空手&MMAファイターのアンドリュース・ナカハラの出身地。日本移民百年記念公園があり、岐阜県関市と富山市と姉妹都市)。そこでブラジル人の先生に極真空手を習っていたけど、途中から松濤館空手に代わって」

――えっ、つまり松濤館空手の距離とタイミングと、極真空手の直接打撃が身についていたわけですね!!

「そうね。今は空手の稽古はしていないけど、松濤館の距離、タイミング、ステップワークと極真の本気で打ち込むためのタイミングと忍耐力。この二つを切り替えが、私の特徴だと思うわ。MMAではリョート・マチダに憧れていて、リョートのような戦い方がしたい。少しでもリョートに近づきたいと思っていたわ」

UFCは女子選手と契約する数がかなり減った

――松濤館と極真の融合と切り替え、まさにMMAに適した打撃の理を持っているのですね。そのMMAを始めようと思ったきっかけは、何だったのですか。

「4歳から空手をしていて、ずっと大会に出ていたわ。12歳になって空手の道場で、柔術のクラスも始まって。最初は余りにも空手と違うから『これ何?』って思ったけど、練習をやってみると柔術の技術が、どんどん体に入ってきて。空手と同じように、柔術も大好きになったの。

ただ空手家で生きていくことは困難で。柔術もそうね。経済的に厳しい環境だと強くもなれないし。なら打撃も柔術もやってきたんだから、MMAが自分に一番合っているんじゃないかと考えるようになって。18歳の時に、MMAのジムに通うようになったわ。

でもMMAは全然、私が思っていたような簡単なことじゃなかった。空手と柔術を混ぜるだけでなくて、もっと色々なことを学ばないといけなかった。逆にそれが楽しくて、今はMMAにしっかりと向き合い、そのなかで小さな頃からやってきた空手と柔術を生かそうと思っているの」

体重オーバーで120.8ポンド契約になったシオマラ・ピリス戦で、ギロチンで一本勝ち(C)LFA

――プロになって以来、全てをLFAで戦ってきました。

戦績も7勝0敗と無傷で。昨年3月には初の国際戦で一本勝ち。この先は絶対にUFCを目指すモノだと思っていました。それがONE参戦、非常に驚かされました。

「私もUFCで戦うことが夢だった。だからLFAで戦ってきたのは絶対ね。でも去年のコンテンダーシリーズをみても分かるように、UFCは女子選手と契約する数がかなり減ってきていて。LFAでも対戦相手が限られてきた。これからどうしようかと考えていた時に、ONEからオファーがあったの。

ONEのことを調べると、アジアの選手が多いし。しっかりとMMAに向き合うという部分でも、私はONEに合っているかなって思うようになってきてね。私には日本の血が流れていて、ONEで自分をアピールしたい。UFCが夢だったけど、ONEという新しい夢ができたような感じで。ONEのチャンピオンになれるよう、これから頑張っていこうと思っている」

実は今回のインタビューは時間の都合で、2月3日と11日の2度に分けて実施された。リオと長旅を終えてバンコクでのガビ。ファイトウィークはよりシャープになったか

――ONEはリング使用。

グラウンドでのヒザ攻撃が認められていますその点は、これまでガビが戦ってきたMMAと違う部分があります。

「ONEルールは、MMAを戦いやすくしてくれるわ。グラウンドでの攻撃の幅が広がるわけだから、特にルールの違いは問題にならないわ。これまでの自分にはなかった、新しい攻撃ができるようになるはず」

――ではONE独特の階級とハイドレーション・テストに関しては、いかがでしょうか。

「私にはホジェリオ・カモエスという、とても経験豊かなトレーナーがいてくれる。私にとっては初めて海外で戦う試合になるけど、彼はその点も経験豊富で。ホジェリオは何度も日本に行っているし、凄く心強い存在なの。それにユニファイドルールのアトム級よりも、ONEアトム級の方が私には合っているみたいで。いつもより計量の心配がないぐらいで、凄く良い状態よ。今は計量の時間が来るのを待っているだけで、どれだけリカバリーできるのかも楽しみだわ」

勝利というバースデープレゼントを用意して自分に贈ることにするわ(笑)

――試合に向けて、対戦相手のジヒン・ワズワンの印象を教えてください。

「彼女はONEでの戦いが、私より慣れていることは間違いないわ。立ち技も寝技もできるウェルラウンダーね。でも、私も立ち技も寝技も問題なく戦える。どちらが自分の試合ができるか。ただ正直にいえば、あまりジヒンのことを考えていなくて。私は自分がやってきたトレーニングを信じている。チームで積んできたことに自信を持っているわ。どの局面でも、私の方が上だと」

――どのような試合をしたいと思っていますか。

「いつだってフィニッシュを狙ってきた。それが私のMMAで。それと今回の試合は、私にとって特別な試合になるの。実は試合の日が、私の誕生日で」

――おお。それはおめでとうございます。

「そんな特別な日にONEで戦うことになったから、勝利というバースデープレゼントを用意して自分に贈ることにするわ(笑)」

――ONEアトム級はチャンピオンが現状、戦線離脱状態で。日本の三浦彩佳選手、澤田千優選手がトッププロスペクトです。今後、どのようにONEアトム級のタイトルラインに割って入ろうと思っていますか。

「体重も変わり、ルールも変わった。新しい環境にジャンプインしたばかりなので、とにかく一歩一歩ステップアップしてタイトル戦線に加わっていきたいと思っているわ。

この階級のトップに日本人選手が2人いるなら、彼女たちと戦いたい。日系4世として、いつか日本で戦いたい。日本で試合をすることは、もう一つの私の夢だから。それにブラジル人とってPRIDEのあった日本はMMAのメッカだし。でも、急がない。まずは今回の試合に勝って、彼女たちに近づきたい」

――ONEは今後、日本大会が増えるという噂もあります。

「えーっ。それが本当なら凄く嬉しいわ。日本で戦う夢に近づけているのね。どれだけ嬉しいか、もう顔に出ていると思うわ(笑)」

―確かにその通りですね(笑)。では最後に、その日本のファンにメッセージをお願いします。

「これまで多くのファイターから『日本のファンは特別だ。他の国には、日本のようにファイターを尊敬し、愛してくれるファンはいない』って聞かされてきたわ。それがどういうことなのか、自分の身をもって知りたいと思ってきたの。私はブラジルで生まれて、ブラジルで育った。でも、日本の血が流れている。しっかりと今回の試合で戦って、日本で戦うチャンスを手にしたい。私のことを応援してもらえると嬉しいわ」

■放送予定
2月14日(土・日本時間)
午前10時45分~U-NEXT

■ONE FN40対戦カード

<ONEムエタイ女子世界ストロー級王座決定戦/3分5R>
[王者]ジャッキー・ブンタン(米国)
[挑戦者]ステラ・ヘメッツバーガー(オーストリア)

<ONEムエタイ暫定世界フェザー王座決定戦/3分5R>
シャドウ・シンハ・マウイン(タイ)
ニカ・カリロ(英国)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
フー・ヨン(中国)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
ベン・タイナン(カナダ)
竹内龍吾(日本)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エイドリアン・リー(米国)
磯嶋祥蔵(日本)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ルーカス・ガブリエル(ブラジル)
マゴメド・アカデフ(ロシア)

<サブミッショングラップリング・フェザー級フェザー級(※70.3キロ)/10分1R>
ファブリシオ・アンドレイ(ブラジル)
ジョアン・ペドロ・ブエノ・メンデス(日本)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ジヒン・ラズワン(マレーシア)
ガビ・ブジモト(ブラジル)

<ムエタイ・フライ/3分3R>
ブラック・パンサー(タイ)
ディエゴ・パエス(米国)

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