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【ONE173】展望 吉成がヌンスリンと初代ムエタイ・アトム級王座決定戦。武尊とKANAは再起のリングへ

【写真】9月の記者会見でのフェイスオフ時ににやりと笑った吉成とヌンスリン。実力者同士のハイレベルな試合が期待される (C)TAKUMI NAKAMURA

16日(日)有明アリーナで開催される「ONE173」では吉成名高がONEムエタイ世界アトム級(52.2キロ)王座決定戦でヌンスリン・チョー・ケットウィナーと対戦。また3月の日本大会で敗れた武尊とKANAの再起戦も組まれている。
text by Takumi Nakamura

吉成は日本人初のラジャダムナン・ルンピニースタジアムの統一王者(ミニフライ級)にして、ラジャダムナンスタジアムでは3階級制覇(ミニフライ級・フライ級・スーパーフライ級)を達成。そのほか数々のタイトルを獲得し、タイスポーツ省認定・WMO(世界ムエタイ機構)が選ぶパウンド・フォー・パウンドランキングではスーパーレックやロッタンを押さえて1位にも選出された。


2023年以降、タイではラジャダムナンスタジアムで行われているRWSで戦ってきた吉成だが、3月のONE日本大会に参戦してラック・エラワンからKO勝利を収めると、この試合をきっかけにONEとの複数試合契約を結び、本格的に主戦場をONEに移す。契約締結後の初戦、6月のONE Friday FightsではONEで3連勝中だったバンルーロック・シットワチャラチャイをテクニックで完封すると、8月のハマダ・アズマニ戦でも当然のごとく圧勝。MMAグローブ着用のONEムエタイでも吉成はそれまでと変わらぬ強さを見せ続けた。

そして吉成のONE参戦が起爆剤になる形で、アトム級のムエタイルールで初のタイトルが制定され、吉成とヌンスリンの間で初代王座が争われることとなった。ヌンスリンはONEで6戦6勝と無敗を誇るファイター。8月に吉成のライバルになると目されていたソンチャイノーイ・ゲッソンリットとのONE無敗対決(当時ソンチャイノーが9戦9勝、ヌンスリンが5戦5勝)に臨んだヌンスリンは、2Rにソンチャイノーイからダウンを奪って勝利を収め、吉成との王座戦に駒を進めた。

ヌンスリンは自分から前に出てプレッシャーをかけるONEムエタイ向きの好戦的なファイトスタイルで、クンスックノーイ・ブーンデクシアンを沈めた左ストレート気味のジャブ、パエイム・ソー・ブンミリーリットをKOした左ボディ、そしてソンチャイノーイからダウンを奪った左フックなど鋭いパンチを得意にしている。

ただしソンチャイノーイ戦では1Rにソンチャイノーイのショートの右をもらってダウンを宣告されてもおかしくない場面があり、3Rのソンチャイノーイの猛反撃を凌いで判定まで粘っての勝利でもあった。吉成にとってヌンスリンの一発は怖い武器ではあるが、吉成がこれまで通りのパフォーマンスを発揮すればベルトはぐっと近づくはずだ。ONEにおいて日本人はタイや海外の強豪に挑む側がほとんどだが、吉成の場合はタイ人の挑戦を受ける立場での王座戴冠を目指す。

そして3月の日本大会でロッタン・ジットムアンノンにKO負けを喫した武尊が今大会で再起を果たす。悲願のロッタン戦を実現させた武尊だが試合2週間前の練習で左胸骨と肋骨を骨折。その状態でロッタンと拳を交えることとなり、武尊にとっては悔いが残る試合だった。

もちろんロッタンの勝利の価値は揺るがないが、武尊はロッタンとのリマッチを目指してデニス・ピューリックと対戦。ピューリックはパワフルなフック系のパンチと打たれ強さが持ち味で、過去にロッタンと判定までもつれる試合も演じている。

ロッタン戦以外のピューリックの試合を見ると典型的な先行逃げ切り型で、短期決着or1R~2Rでダウンを奪うなどポイントをリードして、それを守り切るのが勝ちパターン。武尊としては序盤はピューリックの強打を警戒しつつ、カーフや三日月蹴りでダメージを蓄積させて後半勝負で勝ちを掴みたいところだ。

また3月の日本大会、女子キックボクシング世界アトム級(52.2キロ)王座戦で王者ペッディージャー・ルッカオポーロントンに敗れたKANAも今大会で再起戦。2023年9月のハム・ソヒ戦以降、左膝の怪我で長期欠場が続いていたスタンプ・フェアテックスの復帰戦=キックルールの相手を務めることになる。

キック・ムエタイ王座を戴冠してMMAでもベルトを巻いているスタンプだが、主にキック・ムエタイで試合をしていたのは2018年~2020年で、2021年以降はMMA中心のキャリアを積んできた。スタンプが最後にキックルールの試合をしたのは2023年1月のスーパーガール・ジャルンサック戦で、実に2年10カ月ぶりのキックルールとなる。

一方のKANAは2024年12月のONE参戦以降、1勝2敗と黒星先行となっているが、敗れた相手は前述のペッディージャーと元GLORY王者のアニッサ・メクセンという世界のトップ中のトップ。現在進行形のキックルールの最前線で戦っているという部分ではKANAにアドバンテージがある。しかも今回は3分3Rのワンマッチ、KANAが序盤から持ち前のフットワークと手数の多さでスタンプを守勢に回らせれば勝利が見えてくる。

新生K-1で一時代を築き、30歳を超えてからONE参戦という道を選んだ武尊とKANA。日本大会で復活の狼煙を上げる姿を見たい。

■放送予定
11月16日(日)
午後12時00分~U-NEXT PPV

■ONE173対戦カード

<ONEキック世界フェザー級王座統一戦/3分5R>
スーパーボン・シンハ・マウィン(タイ)
野杁正明(日本)

<ONE世界フライ級(※61.2キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] 若松佑弥(日本)
[挑戦者]ジョシュア・パシオ(フィリピン)

<ONEムエタイ・アトム級王座決定戦/5分3R>
吉成名高(日本)
ヌンスリン・チョー・ケットウィナー(タイ)

<ONEムエタイ世界フライ級王座決定戦/3分5R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
ノンオー・ハマ(タイ)

<ONE世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] クリスチャン・リー(米国)
[挑戦者] アリベク・ラスロフ(トルコ)

<キック・フライ級/3分3R>
武尊(日本)
デニス・ピューリック(カナダ)

<キック・フェザー級/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
安保瑠輝也(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
与座優貴(日本)
スーパーレック・キアトモー9(タイ)

<キック・フェザー級/3分3R>
ナビル・アナン(アルジェリア)
和島大海(日本)

<キック・女子アトム級/3分3R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
KANA(日本)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
タイ・ルオトロ(米国)
磯嶋祥蔵(日本)

<サブミッショングラップリング・ミドル級(※93.0キロ)/10分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
ラファエル・ロバトJr(米国)

<ムエタイ・バンタム級/5分3R>
ジェイク・ピーコック(カナダ)
スアキム・ソー・ジョー・トンプラジン(タイ)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
竹内龍吾(日本)
シャミル・エルドアン(トルコ)

<ライト級(77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
手塚裕之(日本)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
澤田千優(日本)
平田樹(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
ウェイ・ルイ(中国)
秋元皓貴(日本)

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