この星の格闘技を追いかける

【ONE FF116】またも中央アジアの新鋭と対戦、日本屈指の実力者=和田竜光「僕は特別な人間じゃない」

【写真】積み上げたきた力を、如何に正しく選択し、ぶつけることができるか (C)MMAPLANET

18日(金・同)にタイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FF116で、ウズベキスタンの新鋭アバスベク・ホルミルザエフと対戦する和田竜光。
text by Manabu Takashima

誰もが認めるJ-MMA軽量級屈指の実力者は、1月にONEストロー級に階級を落とすが、ホルミルザエフと同じウズベキスタン人ファイターのサンジャル・ザキロフに敗れた。これでONE戦績は6勝6敗。それでいて、完敗という試合はほぼない紙一重、あるいは審判の嗜好で落としたといっても過言でない敗戦が少なくない。

とはいえ、その逆を行き微差を取ることはできないのか。次戦を前にして、和田竜光が実力者であるが故、気になる点を尋ねた。


ザキロフがチャンピオンになったら、またそこに挑戦したいと思っていました

――これから2週間強で、アバスベク・ホルミルザエフと対戦します。1月のサンジャル・ザキロフ戦の敗北から、7カ月振りのファイトです。ザキロフ戦は試合前のインタビューでの挑発もあって、強度高めのMMAファンは和田選手の勝利を心から願っていたと思います。

「ハハハハ。ただ、あるあるで普段はザキロフって良いヤツ……というか普通のヤツなんですよ。試合後に連絡してきたり、フレンドリーで」

――必殺のあるあるですね。とはいえストロー級転向初戦を落としました。

「ザキロフは強かったです。映像を見て強いと思っていましたが、実際に強かったです。フレームも大きくて、意外と削ることができなかった。まぁ、でも一番の敗因というか……自分のコンディション管理が余り良くなかったです」

――水抜きなしの56キロは、創りから難しいところがありましたか。

「う~ん、階級変更で減量の工程が違って上手くいかなかった部分はあるのですが、減量がどうこうということではないですね。ちゃんと仕上げることができなかった」

――そうなると、考えられるのは一つだけですが……。

「それは……言い訳になるので」

――押忍。勝った時に改めて伺います。

「ただしザキロフが、強かったのは確かです。まぁ鼻血がでたのも、イメージは悪かったですよね。それでも圧倒的にやられたという感じはなくて」

――そこです。

「敗因はバックにつかれて、あそこで完全にポイントをリードされました。たらればですけど、あれが無ければどうなっていたかという戦いではあったと思います」

――ギダギダにやられると諦めもつくのですが、やられていないから抑えるところを抑えて接戦を手にできないのかと。

「あの時もテイクダウンに入られて、切れたんですよ。切れるタイミングでした。でもロープの間から外に出てしまって……」

――一番下と二番目の間から、エプロンへ肩から足まで出ていました。対応している最中に。

「そうなんですよね。ただリング中央で再開になると、あの一瞬の切り返しって、ブレイク後はできないです。スプロールしている時は相手の姿勢も前のめりなのが、再開の時はそうではない。で、やっぱりリスタートをすると切れなくてバックに回られました、

あそこは反省点です。日本人っぽさが出てしまいました。『そうじゃない。切れていた』と言えないのが、良くなかったです。まぁ、再開の形としておかしくはなかったからレフェリーとしても、ああするしかなかったとは思います。ただ、僕の感覚では切れていた……あの場面、やり直したいですね(笑)」

――ぶっちゃけていうと、この微妙なところで落としていることがONEでは多いではないですか。その逆で微妙なところを取って、勝ってほしいです。

「そうなんですよね。向こうが損をした状況を創れないといけないですね。試合中のパフォーマンスとしては、悪くはなかった。結果、負けた。言い訳として体調が万全でなかったけど、練習でやってきたことも出せた」

――ONEでザキロフが思い通りにならない場面は、過去にも余り見た記憶がなかったですし。和田選手の力を見せることはできていたと思います。

「きっとザキロフはストロー級のなかでは一番の実力者だと思います。触った感じで、ジャスティン・ブルックスよりも強いと思いました。相性的にはジョシュア・パシオより強い。だからザキロフがチャンピオンになったら、またそこに挑戦したいと思っていました。そこで倒したいという勝手なプランを持っていて。

そうしたら、試合後のやり取りで『お前はストロー級のチャンピオンになれる』って言われて。何を言っているのか分からなかったのですが、『俺はデカすぎる。減量がキツイ』と。そのあと、フライ級転向があって。アイツ、俺がいないストロー級ならお前はチャンピオンになれるって言ってきたんですよ(笑)。いやぁ、やり返したかったですね」

――ザキロフがフライ級に去り、前回の試合から半年。練習がフルにできるようになったのは、いつ頃だったのでしょうか。

「万全になったのは、4月でした。そこから全開で練習はしています。なので5月、6月でも戦えましたけど、このタイミングは全然悪くないです」

触ってみないと分からない部分はありますけど、いつも通り戦いたい

――そして対戦相手のホルミルザエフです。ザキロフに続きウズベキスタン人ファイターで、12勝2敗の24歳の新鋭ですね。

「僕が解説しているONE FFに出ていて、良い選手だと思っていました。ストロー級だし、戦うこともあるかもと。試合が決まって映像を見返すと、やはり良い選手です。

ストロー級に転向したのは、フライ級だと相手が大きかったからで。減量もほとんどなくて。ストロー級では体格的に有利になるだろうと思っていたのに、2試合連続で僕より大きい相手になってしまいましたね(笑)」

――ただホルミルザエフは、ままバックを許すという試合がありました。

「ハイ。組みに関してはザキロフより、雑ですね。組まれると、小手を巻いて投げてグチャっとさせて逃げるとか。テイクダウンもそれほどこだわっているように見えない。同時に雑な分、ザキロフよりアグレッシブですよね」

――アグレッシブだから、インパクトのある勝ち方ができている。ただし、ONE FFの相手だと判断が難しくて。ベクチュル・ジェニシュベクにはほぼドミネイトされて負けました。なら和田選手もバックを取って、オタツロックかと。

「そうですね。どれぐらい懐が深くて、組んだ時の力がどんなものなのか。テイクダウンもできるだろうし、打撃でも勝負できる。打撃で勝負できないとテイクダウンもできないですから。ただ、そうやっていると打撃で勝負し切ることもあるかと思います。組めたら、テイクダウンも狙います。触ってみないと分からない部分はありますけど、いつも通り戦いたいです。

ここまで戦ってきてスピニングバックキックとか、ONEのジャッジに好かれるような攻撃をするなんてこともないですし。あの回転系の技はホルミルザエフもよく使っていますけど、僕がああなることはない。だから向うの方が、良く見えることもあるだろうけど、そこに屈するつもりはなくて。

しっかりと細かいパンチを当てて、ダメージを与えます。それが僕のスタイルなので、パンチを当ててテイクダウンをして削っていきます」

――和田竜光なら、中央アジアに勝てるんだというところを是非とも見せて欲しいです。

「中央アジア、強いですね」

――だからこそ、MMAが今の形になる前から色々な経験をし、自分で積み上げてきた強さを見せて欲しい。強くなる指導方法も今のように明確でない時代を知っている経験値で。

「ここまでの経験値は、メンタル的でもデカいです。DJとやったり、カイラット・アクメトフとか本当に強い相手と戦ってきて、僕ってボコられたことがないんですよ。だから心に余裕があって、恐怖とか感じることもなくて。ただし、相手は強い。自分の持っている手札を、どう上手く使うことができるのか。

その持っているモノを出すタイミングが合わないと、競り勝てない。タイミングは合っていても、精度が低いこともある。そこをしっかりと揃えて戦いたいですね。僕は特別な人間じゃないので、ずっと練習をしてきたことの積み重ねで戦ってきた。試合ごとの自分が、最新アップデート・バージョンなんです」

<この項、続く>

PR
PR

関連記事

Movie