【RIZIN】過密スケジュールの中、柏木さんと焼き鳥屋MMA談議─02─「木村選手は当てたら勝てるを体現」
【写真】アルコールの勢いも若干感じられる内容となっております(C)MMAPLANET
RIZIN男祭り、RIZIN World Series in Koreaを経て本日14日(土)にRIZIN LANDMARK11、7月27日(日)はさいたまスーパーアリーナで超RIZINの開催も公式発表されたなかで、柏木信吾氏インタビュー後編。
Text by Manabu Takashima
MMAを愛するが故、ファイトビジネスに身を置く苦悩が感じられつつ、氏と焼き鳥屋MMA談義はいよいよ熱さを増していきました。札幌大会、そして真夏の決戦へ。
<柏木さんと焼き鳥屋MMA談議Part.01はコチラから>
ちゃんとしたモノがあるから、影にも光が届く
――韓国大会が佐藤将光、中原由貴とすれば6月14日の札幌大会はSASUKE、安藤達也でしょうか(笑)。
「外国人選手と戦いますよね。格闘家は格闘家であるべき。それが僕の想いなんです。強いと分かっているからこそ、試合を受ける。そういう選手がいてくれることは嬉しいです。不器用で、強い選手がいれば戦う。そのために人生を賭けていたいと思う選手が自分は好きです」
――SASUKE選手はインタビューの時に「コレスニックだからRIZINで戦う」と言っていました。あの口ぶりでは、今後のことか考えていないような気がします。
「全然、全然。もう本人が望むならノジモフとやっていただいて、ラジャブアリともやっていただきたいです。だって……」
――やはり、そこはケラモフとは違うような気がします。ケラモフは強さが浸透しているし、元チャンピオンとの対戦は名乗りを挙げる選手もいるかと。チャンピオンになったシェイドゥラエフはともかく、問題はノジモフやコレスニックですね……。
「ノジモフはおいしくない。そういうことですよね。新居すぐる選手は自分からやりたいと言ったそうです。そのノジモフですが、ヒザの靭帯を切って試合間隔が空きましたね。ラジャブアリと同じで、ああいう選手は勝った時に畳みかけて試合をして欲しかったのですが……」
――ケガはつきものですが、コレスニックも欠場して1年以上空きましたし。そこも難しいところでしょうか。
「そうですね。空いてしまうと勿体ない。時間が空いちゃうと忘れられてしまいます。そうするとおいしい相手でなくなってしまう」
――今のRIZINを見ていると、RIZINだけを見てMMAファイターになりたいという世代が生まれてくるはずです。シェイドゥラエフに勝ちたい。サバテロに勝ちたい。ガマジャトフに勝ちたいという。そういう世代が、どこで戦ってRIZINにたどり着くのか。
「貧乏ゆすりが始まっているじゃないですか(笑)。めっちゃ力が入っていますよね。よく分かります。おっしゃりたいことは。そういうことなんですよ。そこもお金がなきゃ、皆やっていけないんで。だから、否定するつもりはない。けれども……貧乏ゆすりが始まってしまうことも重々理解できます」
――自分はPRIDEの時代から、ガラスをダイヤモンドといってもガラス玉だという考えを持っていて。格闘技もどきは、格闘技もどきでしかない。
「格闘技が盛り上がっているから、もどきも出てきます。本物がなくなれば、もどきなんてすぐに飽きられます」
――ベアナックルと同じですね。
「ハイ、そうです。ちゃんとしたモノがあるから、影にも光が届く。そういうことはあるはずです。それは榊原さんも、いつも言っていることなんです」
――格闘技の本質が変わって、商売になってもしょうがないと思うのですが。
「まぁ、そこはしょうがあると思う人もいて然りで。でも、武士は食わねど高楊枝でいたいですよね(笑)」
――悲哀に満ちた笑みですね。
「今日はちょっと、いつも以上に心の内をおおっぴろげにし過ぎてしまったかもしれないです(笑)」
――ハハハハ。明るく行きましょう。実際、札幌大会ではケラモフと木村柊也選手、これは武士は食わねど高楊枝系にもRIZINの良い面が出た楽しみなカードだと思います。
「木村選手がよく受けてくれたと思います」
ケラモフって、あまり動ないですよね。ドシっと真正面から攻めてきて。いや、当たりそうですね
――自信があるのだと。
「実際、ケラモフも中島太一選手のパンチで効かされていますからね。決してガードが上手くて、テクニカルな打撃ができるわけではないです。反応が速いわけでもない。木村選手のパンチは、一発食らうと終わってしまいますからね」
――MMAは4戦でも、無差別、組みが強い選手もいる日本拳法で養った当てる感覚と倒す感覚は図抜けているように思います。相手によって当て方も変化させる力を持っています。
「まさに撃ち落とすということができる。めちゃくちゃ、MMA向きですよね。MMAPLANETのケラモフのインタビューに同席させてもらっていたのですが、あの余裕振りは逆に良くない。木村選手のパンチを被弾するかもと思いました。
木村選手は当てたら勝てるを体現できるというか。木村選手と横山武司選手との試合。それと日拳ではないですが、空手の野村駿太選手がルイス・グスタボに勝った試合もそうで……空振らない強さ。空振りをしない強さっていうのは、香川大会で痛感しました。堀口恭司選手もそうですよね。着弾率の高いストライカー、その武器は凄まじいです。
グラップリングがそこまででなくても、ジャンルとして確立しているというか。伝統武術では昔からあったのでしょうが、MMAにおいて空振りをしない強さというのは木村選手と野村選手の試合を見て、改めて脅威だと気づきました」
――それが日本の武器になるかもしれないですね。いきつくところはボクシングもそうなのでしょうが。彼らはMMAをやるためにそこを身に着けているのではなくて、もともと身に着けてMMAにやってきた。それが楽しみです。
「空間把握能力、距離の掴み方が常人とは違うのでしょうね」
――木村選手は空振りと当てる時は、力の入れ方も変えると言っていました。
「あぁ、空振りは分かってやっているのですね。それは凄まじい……。センチ単位、ミリ単位で分かるのでしょうね」
――日拳出身の中村優作選手が、木村選手のデビュー前から「日拳って言うても、僕らとは違いますから。史上最強です」と力説してくれたことがありました。
「へぇ……そこまでだったのですね。当たったら勝つ。組まれたら負けるという言葉も潔くて良いです。気持ち良くて。
――そんな木村選手に宮田和幸さんが「レスリングをしないためのレスリング」という組み技を指導していました。
「いやぁ、めちゃくちゃ楽しみじゃないですか。突き放して、空間を創る。それって自分の得意な距離でしか戦わないということですよね。いや、当たると思いませんか」
――正直、思います(笑)。
「ケラモフって、あまり動ないですよね。ドシっと真正面から攻めてきて。いや、当たりそうですね」
――木村×ケラモフ……コレスニックにSASUKE選手、ノジモフに新居選手。それにマゲラム・ガサンザデに安藤達也選手。MMAPLANET的に推したいカードです。
「安藤選手はレスリングベースで、でも全く太田忍選手と違う。色々と化学反応が期待できる選手が、RIZINにやってきたなと思います。日本人の中でも全く違った魅力を持ったバンタム級のファイターですね。新しい色、キャラクターとしてRIZINバンタム級に定着してほしいなと思います。
今回の相手は厳しいかもしれないけど……でも、普通に戦う感覚でいるわけですし。いや、本当に『こんな地味強に勝ってもうま味がない』って言う選手もいるんですよ。うま味はあるよ、経験になるだろうって……。
そういう意味では、山本空良選手も『ノー』と言わない選手なんです。でもケラモフ、ノジモフと戦って負けた。まだ24歳だし、そこはそこでマッチメイクを考えないといけないところですし」
――そういう意味でも、鈴木博昭選手とのマッチアップは楽しみです。
「空良選手に関しては、RIZINでつまることもあるだろうから、NEXUSでも試合経験を積んでほしいなとは思います。この試合はまさにLANDMARKらしいカードで、札幌は実の有る試合が揃っていると思います」
世界ってどんどん強くなって、どんどん先に進んでいます。日本の格闘技が世界から離れきってしまうのか。その転機は、まさに今なんです
――ここから超RIZINに流れるわけですが……、どういう夏の大舞台が用意されるのか。
「超RIZINは豪華なナンバーシリーズです。タイトル戦線有りきで、ファン・フレンドリーな皆のお楽しみファイトもある。人気選手がたくさん出つつ、レベルの高い試合が続く。豪華な幕の内弁当ですよね。色々なモノが楽しめて、感情の投資ができる試合が詰まっている。RIZINの良さである個性的なマッチアップが、上から下まで見られる。そういうモノが並ぶのだと思います」
――そこをもう少し詳しく(笑)。
「アップされる時点で発表があったものだけ、インタビューで触れて欲しいのですが(笑)。ヘビー級GPの準決勝。札幌大会でフライ級GPのメンバーの発表、そしてフェザー級とバンタム級、あとは女子スーパーアトム級のベルトが絡む試合ですかね」
――つまりフェザー級は札幌大会の試合結果によりますが、木村選手の挑戦もあると。
「それがRIZINらしさではありますよね。まだ、何も決まっていないですが。シェイドゥラエフにも確認を取る必要がありますし。まぁ木村選手……勝てばですが。あとケガがなくてということですね」
――とはいえ……。
「そうなんです。木村選手が勝つなら、ケガはしていない。一発で勝つ。死闘になることはまずないですから。前回の試合のように一発でケラモフに勝てれば、一発幻想を持ったままシェイドゥラエフって結構ですよねっ!!」
――貧乏ゆすりが……(笑)。
「アハハハ。それからバンタム級はこれだけ今回の取材でサバテロを押していたのですが、福田龍彌選手がチャレンジャーになります」
――えっ……。
「井上直樹選手は外国人選手と試合がしたいでしょうね。他の日本人と同じ土俵には立ちたくないだろうし。でも福田選手は強いから、やるしかないよと。
それから秋元強真選手とダウトベック、これは秋元選手自身が望んでいて、ならダウトベックに尋ねてみるかと。あとは野村選手とパトリッキー・フレイレですね」
――おお!! 柏木さん、RIZINって。
「面白いでしょ(笑)。だからこそ、選手には『なんでこんな強いヤツを呼ぶの』とか絶対に言ってほしくないです。シェイドゥラエフと木村選手か、あるいはケラモフか。それって面白いわけじゃないですか」
――ハイ、超絶に。
「それはシェイドゥラエフが強さを武器に、ここまで来たからであって」
――ハイ。やはりMMAの軸は強さです。もちろん、ビジネスとして生き残らないといけないのですが。柏木さんは第三者ではないので、理想と現実の狭間にあるかと思いますが……。愛を持って突破してください。
「毎日がジェットコースターです(笑)。でも、やっぱりファイターの性って居心地の良さよりも、強さへの探求心だと思いたいです。世界ってどんどん強くなって、どんどん先に進んでいます。日本の格闘技が世界から離れきってしまうのか。その転機は、まさに今なんです」
――このインタビューの最初の話題、世界のプロモーションの期待がRIZINに集まってきています。それは柏木さんのアイデンティティがあるからだと。
「ありがとうございます。そこは金に換えられない。そのブランディングと世界に胸に張れるアイデンティティを構築し続けていきます。そこは守っていきます」
■視聴方法(予定)
6月14日(土)
午後12時30分~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE
■RIZIN LANDMARK11計量結果
<フェザー級/5分3R>
ヴガール・ケラモフ:65.70キロ
木村柊也:65.95キロ
<ライト級/5分3R>
堀江圭功:70.80キロ
西川大和:70.35キロ
<フェザー級/5分3R>
イルホム・ノジモフ:65.7キロ
新居すぐる:65.85キロ
<フェザー級/5分3R>
山本空良:65.65キロ
鈴木博昭:65.95キロ
<フェザー級/5分3R>
ビクター・コレスニック:65.8キロ
SASUKE:65.95キロ
<RIZINワールドGPヘビー級T一回戦/5分3R>
アレクサンダー・ソルダトキン:113.9キロ
プリンス・アウンアラー:111.55キロ
<バンタム級/5分3R>
後藤丈治:60.85キロ
鹿志村仁之介:60.9キロ
<ヘビー級/5分3R>
シナ・カリミアン:106.95キロ
荒東“怪獣キラー”英貴:119.45キロ
<52.5キロ契約/5分3R>
ソルト:52.35キロ
万智:52.3キロ
<バンタム級/5分3R>
中島太一:61.0キロ
CORO:60.85キロ
<バンタム級/5分3R>
マゲラム・ガサンザデ:60.95キロ
安藤達也:60.8キロ
<キック 64キロ契約/3分3R>
上野空大:63.95キロ
ファーパヤップ・GRABS:64.9キロ
※ファーパヤップが900グラム オーバーのためレッドカード1枚、減点2からスタート。上野が勝利した場合のみ公式記録となる
<フェザー級/5分3R>
遠藤来生:65.4キロ
ザーシバーディン:65.8キロ
<キック 55キロ契約/3分3R>
としぞう:55.0キロ
鵜澤悠也:54.95キロ
<キック 61キロ契約/3分3R>
上野奏貴:60.95キロ
山川賢誠:60.95キロ
<フライ級/5分2R>
鈴木嵐士:55.85キロ
早坂優瑠:55.60キロ
<バンタム級/5分2R>
小林大希:60.45キロ
森永ユキト:60.95キロ
<キック 52.5キロ契約/3分3R>
西島恭平:52.45キロ
林修斗:52.2キロ
<ウェルター級/5分2R>
成田佑希:75.95キロ
能登崇:76.45キロ