【RIZN LANDMARK14】神龍誠と初防衛戦。扇久保博正「東北の子供たちが夢を持ってくれるような試合に」
【写真】試合の4週間前、非常にリラックスしていた扇久保だった (C)HIROMASA OUGIKUBO
6日(土)、仙台市太白区のゼビオアリーナ仙台で開催されるRIZIN LANDMARK14で、RIZINフライ級チャンピオン扇久保博正が神龍誠を相手に初防衛戦を戦う。
Text by Manabu Takashima
2024年7月に初対決が決まった際、5月の記者会見でかつての教え子・神龍に対して、扇久保が「『18歳になったから親父と一緒じゃなく、一人で道場に来い』と言ったよな。そのあとすぐにジムを辞めた。一人でジムに来るのが嫌だったんだろ。掃除の時間にトイレ掃除を頼んだのが気に食わなかったらしいな」と煽った。
ここから神龍が怨恨と言っても過言でない感情を露わにし、判定とはいえ白黒が出ても両者のわだかまりは消えることがなかった。あれから2年を経て、World GPフライ級トーナメントを制しRIZINフライ級チャンピオンとなった扇久保の前に、再び神龍が立ち塞がる。
4月の福岡大会でエンカジムーロ・ズールを破った神龍のコールアウトに、解説席からケージインした扇久保はMMAファイター人生初の乱闘激を繰り広げた。念願の東北大会を前に、平良達郎の敗北、抑え込みと競り合い、神龍との因縁、39歳になったチャンピオンの内面に少しメスを入れさせてもらった。
神龍は競り合いで負けるところがありましたけど、今回もそうなるというような楽観的な考えは持っていない
――いきなりですが、UFC世界フライ級選手権試合について話を伺わせてもらっても良いでしょうか(※取材は5月12日、日本時間でジョシュア・ヴァン×平良達郎戦の翌日に行われた)。
「いやぁ、凄かったですね。ヴァン、強ぇな。こんなに強いんだなと思いました。ただ、あの試合結果が僕の試合に向けての精神面にネガティブな影響を与えるとかはないです。あれだけ劣勢だったけど、最後まで戦う姿勢を持ち続けた平良君の姿を見て、やる気が出ました。
同じ道場で本当に取って欲しかったし、平良君が負けてしまったことは残念だったけど、それで僕の気持ちが落ちることはなかったです。まぁ、究極は自分のことしか考えていないので」
――個人的にヴァンのバタフライガードの巧みさを見て、日本が強くなるためには扇久保博正が必要だ。RIZINには扇久保がいるじゃないかと感じました。
「ヴァンはとにかく、バックを見せなかったですよね。マウントを取られても、落ち着いた顔をしていたし凄かったです。でも、それで僕がっていうのは……どういうことですか」
――実は相も変わらず「フィニッシュがない」、「一本を取れない」という批判がなぜか神戸大会の後も見られ……。
「あぁ、そうなんですね(笑)」
――でも、しっかりと抑えることの重要性、一本とはその先にあるものだとヴァンの防御を見て素直に思いました。
「なるほど、そういうことなんですね。あの試合を見て、自分がどうヴァンを抑えるかよりも、ヴァンの逃げ方とか打撃の入り方とか、勉強になることが多かったです。14歳下の選手が、あれができるわけで」
――しつこいようですが、あのガードワークが標準装備になるなら、扇久保選手の抑え込みやパスから学ぶことは多いはずだと。それゆえにトップ&バック奪取の神龍選手との再戦が、より楽しみになってきました。あの抑えがあるから、競り勝つことができるのかと。
「正直4月のズールー戦を見て、これまでの神龍ではないと思っています。ATTに行って、1カ月以上1人で生活をしてきた。そういう部分からも、あの短時間の試合で成長が見えました。メンタル的にも、今までの神龍とは見ていないです。新しい神龍だという感じで見ています。
もちろん僕の強みは競り合いに勝つこと。絶対にそこは引きませんけど、彼も今までのようにそこで引くことはないようになっていると思います。確かに神龍は競り合いで負けるところがありましたけど、今回もそうなるというような楽観的な考えは持っていないです」
我儘を押し付けていこうと思います
――その神龍戦のズールー戦ですが、極めにいき極めきったことでメンタル面の変化を感じたのでしょうか。
「極めにいったことというか、始まった時点からかなり違っていました。距離感、踏み込みのスピードも。打撃のやり合いも自信を持ってやっていたので、だいぶ成長したなって思いましたね」
――「成長したな」という見方をするということは、自身が上位にあるという視点ですか。
「そりゃあ、試合をする相手ですからね。俺の方が強いと思っていますよ。ただ彼はスピードがどんどん速くなっています。僕は39歳で……自分では感じていないですけど、反応も落ちてくると思います。だから、とにかく集中力が大切な試合になります」
――神龍選手が成長していようが、扇久保選手としては2年前と同じことができないといけないのかと。それこそが扇久保博正の強さなので。
「ハイ。そうやろうと思って、戦っているわけじゃないんですけどね(笑)。試合って、やっぱり5分3Rのなかで全てが出る物語のようなもので。その5分3Rの間、我儘を押し付けるという部分においては、相当に自信を持っています。そこは今回の試合も我儘を押し付けていこうと思っています」
――自分を押し付けるために、しっかりと戦略を立てて実行していくのか。相手の動きを見て、そこで判断しているのか。どれぐらいの割合で、準備をしているのでしょうか。
「試合前はそんなに細かく考えていないです。その瞬間に、全てに対応できる自分を創り上げていく。フィジカル面も、メンタル面も。そうやって僕は、ずっと試合をやってきているので。今回も全部に対応できるように毎日、準備しています」
――おかしな言い方ですが、想定以上のことがきても対応できるように?
「想定以上のことが来るだろうと思っています。かなり成長していると踏んでいるので。でも、それは向き合ってみないと分からないです。『あれ? 前回と変わらないんじゃん』と思うかもしれない。いずれにしても小さく見て試合の時に焦るよりは、大きく見ている方が良いことなので。常に凄く強い神龍誠というモノを想像して、それに勝てるように自分で考えて毎日の練習で積み重ねています」
――神龍選手って、凄く真面目ではないですか。
「ハイ。真面目ですよね」
――そして、自分の気持ちに正直です。だから、あの「おい、誠」で始まり、「うるせぇ、黙れ」という流れの煽りは定着しましたが、神龍選手には遊びがない。それでも、扇久保選手も嫌がらせのように続けていますよね(笑)。
「いやいやいやいや(笑)。まぁ、だから……なんだろうなぁ。言っても僕の教え子というか、元生徒なので……。そういう子と戦うというのは、やっぱり自分でああいう風に持っていかないと。そこは難しいモノがありますよ。こういう関係で試合をするって、世界を見渡してもそれほどないことかと思います。
何より神龍が本気で返すのは、それだけ僕のことが嫌いだからじゃないですか」
――悪い大人が、真面目な青年をからかっている。
「アハハハ。そんな言い方……(笑)」
――ただ神龍選手も福岡では会見の席で、「受けていれば構わない」という主旨のことを話していました。
「あぁ、そういう風に言えるようになったんですね。でも、仙台だし本気で盛り上げないと。俺と彼の試合がメインになると思っていましたしね」
引退した後に後悔がなるべくないようって考えることが増えた
――仙台大会、そこは特別だと。
「特別ですね。東北でRIZINが行われることは、夢だったので。RIZIN東北大会があるなら、絶対に出たいと思っていましたし。そこで戦うのは夢が叶うというか、現役の間にやっておきたかったこと。今、引退した後に後悔がなるべくないようって考えることが増えたんですよ。『これ、やらなかったな』ということが出てくるのが嫌で。
岩手のどうしようもない子供が、PRIDEを見て『俺もこういう舞台に立ちたい』と思っていた。それがPRIDEと同じような舞台で、地元は岩手ですけど……東北でRIZINが開かれ、メインで戦えるっていうことは夢が叶ったという気持ちになります」
――RIZIN LANDMARK14 in SENDAIであり、in TOHOKUではないじゃないですか。それでも、やはり地元という意識になるのですね。自分は兵庫県神戸市出身ですが、京都や大阪で何か開催されても地元という感覚はなくて。
「あぁ、そういうものなのですね。俺だけか分からないですけど、東北の人って東北は一つという意識があると思います。東北は東北、別の県という感じはあまりないというか」
(※ZOOMインタビューに同席していたRIZINのY広報(福島県出身)から『福島、宮城、岩手、山形、秋田、青森は東北で何かあると地元大会と捉えます』とメッセージが届く)
――あぁ、そういうことなのですね。白河の関を越えるとみちのく、奥州だと。ただし、神龍選手は仙台出身でも完全ホームかと。普段は扇久保選手を応援していても、今回は神龍選手の応援で会場に行くというファンもいそうです。
「あぁ、いるでしょうね。でも、僕はアウェイ感は全くないです。仙台大会とは、つまり東北大会なので。地元という気持ちで戦います。久慈からもバスをチャーターして応援に来てくれます。さいたまスーパーアリーナでやる時よりも、久慈から来てくれる人の数は全然多いです」
――それはもう、やはり地元大会ですね。
「特に地元の友達が来てくれますし。それはデカいですよね。岩手から埼玉までは、なかなか来られないので。でも『仙台だったら、行けるよ』と言ってくれる友達もいますし。そこは力になりますし、それだけ力も入ります。
東北で戦うからこそ、いつもは出ないパワーがでるんじゃないかというワクワクがあります。リスクを冒せるというか。そういうことへの期待感がありますね」
2年前のような展開にはならないです。僕も神龍も攻める試合になる
――リスクを冒さないで良い場面でも、東北で戦うからリスキーな仕掛けを心がけるということですか。
「無謀なことはしないですけど、う~ん、それは試合が始まってからの感覚によるかと思いますが、『今、いく』という時に一歩を踏み出せるんじゃないかと。そういうことが地元だから、東北だからこそできるんじゃないか――と言う風に、自分に期待しています」
――弱い自分を乗り越えるという扇久保選手が自らに課し続けてきた課題は、ガジャマトフ戦で絶対的にクリアしたと思っています。でも、扇久保選手はその先の一歩を今も追及しているのですね。
「その気持ちはまだあります。見ている人達が感動できる試合がしたい。そのなかで勝ちたいという気持ちは持ち続けています。仙台では、そういう試合をしたい。いや、希望でなくそういう試合ができると自分に期待しています。それが可能になるのが、東北での試合で。
中学、高校の時にPRIDEを見て衝撃を受けました。僕と神龍の試合を見に来てくれた東北の子供たち、そして若者が『うわっ、すげぇ。俺もやりたいっ!!』と夢を持ってくれるような試合にしたい。そう思っています」
――現役時代にやっておきたいことリストに、一つチェックが入る。それはやはり来るべき日が近づいているのか、という空気にもなります。
「この試合で最後ということはないです。ただ39歳になったわけですし、大きなケガをすると回復まで時間が掛かります。ここ1、2年は毎試合のように、最後の『つもり』でリングに上がっています」
――そういう扇久保選手の生き様が、THE BLACKBELT JAPANの若い選手に影響を与えています。先日、内田タケル選手が「扇久保さんのセコンドについて、MMAにもう一度チャレンジしよう」と思うようになったと話してくれました。
「えっ、マジっすか!?」
――ガジャマトフ戦など、強烈に影響を受けたようでした。
「タケルがそんなことを言ったんですか!? それは……ちょっと嬉しいですね。タケルがそんなことを想ってくれていたんだ。いやぁ、嬉しいです。直接、俺には言ってくれないから(笑)」
――あの口下手な内田選手がそう話してくれたことは、感動的ですらありました。
「タケルはメチャクチャ強いですよ。マジで期待しておいてください。打撃は試合で本気の相手とやるとどうなるか分からないですけど、グラップリングに関して言うとフライ級ではずば抜けていると思うので」
――押忍。では内田選手の扇久保選手への想いも知ったことで、改めて6月6日仙台での神龍誠戦への意気込みの方を宜しくお願いします。
「2年前のような展開にはならないです。僕も神龍も攻める試合になる、良い試合になると思うので皆さん期待してください」
■視聴方法(予定)
6月6日(土)
午後1時~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■ RIZIN LANDMARK14対戦カード
<RIZINフライ級選手権試合/5分3R>
[王者] 扇久保博正(日本)
[挑戦者] 神龍誠(日本)
<59キロ契約/5分3R>
元谷友貴(日本)
トニー・ララミー(カナダ)
<ヘビー級/5分3R>
酒井リョウ(日本)
貴賢神(日本)
<ライト級/5分3R>
ブラックパンサー・ベイノア(米国)
芳賀ビラル海(日本)
<ライト級/5分3R>
矢地祐介(日本)
ISAO(日本)
<フライ級/5分3R>
冨澤大智(日本)
加藤瑠偉(日本)
<フェザー級/5分3R>
直樹(日本)
黒井海成(日本)
<バンタム級/5分3R>
赤田功輝(日本)
井上聖矢(日本)
<フライ級/5分2R>
颯斗(日本)
湯浅帝蓮(日本)
<キック 67.5キロ契約/3分3R>
齋藤紘也(日本)
TAaaaCHAN(日本)
<キック 56.5キロ契約/3分3R>
赤平大治(日本)
内田晶(日本)
<キック 62キロ契約/3分3R>
岩城悠介(日本)
中泉翔(日本)



















