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【UFC311】必勝ガフロフ戦へ、中村倫也─01─「軸の創り方を見つめ直し、プチスランプになっていました」

【写真】風呂上りで、顔が真っ赤だった中村倫也。新陳代謝はすこぶる良さそうだった(C)MMAPLANET

18日(土・現地時間)、カリフォルニア州イングルウッドのインテュイット・ドームでUFC 311「Makhachev vs Tsarukyan 2 」が行われ、中村倫也がムイン・ガフロフと戦う。
Text Manabu Takashima

待ちがなく、過去にオクタゴンと向き合って来た相手とは別モノ。と同時に、2025年の飛躍の年にするには負けられないばかりか、フィニッシュが必要だと中村はガフロフ戦について語る。しかし、試合から1カ月と2週間前に撮影されたFight Farmにおける修斗世界バンタム級王者で、格闘DREAMERSの同期だった齋藤奨司とのスパーリング映像には『これで、大丈夫なのか』と不安になるしかない中村の姿が確認された。

あの動きが固く、テイクダウンを決まらない。息が上がるという姿は、一体なんだったのかを渡米直前の中村倫也に尋ねた。


迷いに迷って、さいたまスーパーアリーナに行きました(笑)

──オクタゴン3戦目が迫ってきました。渡米はいつに?

「今週の土曜日に現地入りします(※取材は9日に行われた)。UFCのスケジュールより2泊早く入る形ですね。月曜日入りだと、金曜日の計量まで時差が整わないで入ってしまう恐れがあります。この2泊があるだけでも違うかと思って。早く入り過ぎても練習環境が整っていないので、2泊か3泊早いのがちょうど良いかと思います。

ホテルのマットスペースが用意されるのも、月曜日からなので。この2日間は現地の空気に慣れて、ジョグをする。今回はFight Farmの齋藤奨司も同じ日に入ってもらうことになっているので、ちょっと向き合って確認作業をやろうかと。もう何をやるのかは決まっているので、その確認ですね」

──1月18日に試合がある。以前は正月は練習相手の確保が難しいという話がありましたが、その辺りは如何でしたか。

「大晦日まで選手練習で。EX FIGHTの(中村)京一郎なんかに付き合ってもらっていました。元旦は毎年お墓参りに行くのが恒例で。8キロほど走って、墓参りをしてきました。ちょうどピーキングが終わって、テーパリングに入る時期なので2日と3日は体を休めて、疲れを抜いていました。正月でなくても体の様子を見て、休むことはしているので大きな影響はなかったです」

──ではインフルエンザも流行しているし、大晦日の格闘技観戦は自宅でという感じだった?

「迷いに迷って、さいたまスーパーアリーナに行きました(笑)」

──アハハハハ。

「(堀口)恭司さんと元谷(友貴)さんの応援と、2人からパワーを貰おうと。でもズールー、強かったですね。テイクダウンをオフェンスにも使っていましたし、アレは想定外でした。ストライカーと思っていても、当たり前にああいう風に戦える。幅のあるMMAをやっていました。対して、恭司さんはしっかりと上を取ってハーフで抑えながら、コツコツなのに重いパンチを打っていた。分からない人も多いかもしれない、ああいう技が北米レベルだと改めて感じました。結果、見にいって良かったです。パワーを貰って、確実に追い風になりました」

半歩、届かない要因

──そんななかTHE 1 TVのグラジ029プレビューでは、モンゴル人ファイター分析という動画で解説を行うのと同時に、今回の試合に向けたFight Farmでのスパーリングの場面がありました。アップされた動画では未使用だった部分も気になったので拝見させてもらったのですが、撮影は12月5日だったので今から1カ月以上も前なのですが……正直、あの動きを見た時はどうしたんだと。

「あっ、そういう風に見えました。それこそ齋藤奨司とやっているMMAスパーですよね。あぁ、分かっちゃいました?」

──何か狙いがあるのだろうし、良くないところをあぶりだすための動きかもしれないと思いつつ、背中と首、頭が全く同調していて硬い。ブリキの人形かと……スミマセン、試合前に。

「いえ、まんまその通りで。ムイン・ガフロフ戦が決まり、今までの自分だと呑まれるかもしれない相手が来たなと。もう1回、一から創りなおそうと思ってやっていたんです」

──拳の届かない距離で、あの構えでバーンとダブルレッグに入るのは全然良いことだと思いました。足から尻、背中、肩、手と力が伝わっている。でも、相手の踏み込みに対して、その位置で同じ姿勢だと危ないだろうと。

「ハイ。ATTでは毎日のように色々なファイターと組み主体のスパーリングを続けて、組みの持久力なんかを積みかさねて創ることができました。その一方で、打撃の方はどう創っていくのか。迷いがあったんです。そこでマモルさんに、もう一度指導をお願いしようと思って。

あの日はマモルさんに指導されたことを試そうと思っていた日でした。自分の癖が色々と出てきて、分かり始めた時期だったんです。動きの癖もそうだし、レスリングでケガをした箇所が多くて、細かいことをいうと足首の腓骨と脛骨が開いていて抜ける。だから後ろ足がペタペタとくっつく癖があった。後ろに力を貯めているように見えて、ただ居着いているだけ。そんな打撃になっていると、外から見てもらって教えてもらいました。

それが半歩、届かない要因だったんです。あと一つ出したら、来たのをかわしてもう一つ出す。それが感覚的に遅れているという風にATTで練習している時から感じていました。奥手の突き方とか……。それは足下から関係していて」

──というのは?

「20年間、レスリングシューズを履いていて足の指をギュッと固めて、一つの関節のようにして足下を蹴ってきました。それをMMAははだしですから、指を一つ一つ開いて一つ一つ地面を掴む。あぁ、そこかっていう風に自分の癖と修正すべき点が、次々と見えてきたんです」

──ベースがレスリング、グラップリングのMMAファイターと元ストライカーのMMAファイターは基本、動きが違うのかと。いや打撃でも空手は前者ですね。ボクサーやキックの人と力の伝達や養成方法が違う。ボクサーの人って足、背中、頭と一定のリズムでも各々は違う動きができる。よって捻り効果などで、力を生むことができるのかと。奨司選手など、まさにそうで。倫也選手の力の伝え方はチンクチが掛かっているような……力を伝えるのは、和太鼓を叩くような感じで。対して、奨司選手はドラム。足の動き、手の動きがあってグルーブがある。そんなドラムの動きに対して、和太鼓の動きで危険な箇所を感覚的に掴むことも練習なのでしょうが「危ない。その頭の位置と動き」と映像を見て感じることがままありました。

「あぁ、ありがとうございます。そこまで見てもらって。実は、軸の創り方を見つめ直していました。僕には心地良い軸があって、そこをベースにして創りなおす。要は後ろに貯める軸だったのを、前側のお腹を突き出すんじゃないですけど、張って落として上半身の軸を前側で創る。体を一体化して相手の攻撃を外すことが前提としてできないと、自分の理想の格闘技が完成しない。それを完成させたいと思ってやっていたんです」

──中村倫也の完全体ですね。一番強い、構え。その時、腹が大切だと。そうでないと質量が落ちる。

「腹が弱いと、ダメですね。それが伝わってか、ミドルもガンガン蹴られます。そこの軸があって、僕の方でも一番遠いミドルをちゃんと蹴ることができる。その意識ですね。全体練習とは別に毎日5分5R、軸だけを意識してやってきました。

だからスパーでも、奥足の蹴りばっかになって(笑)。軸を創ることに加え、これまでにやってこなかった動きをする。それをすることで、スタミナが上がらない。むしろ落ちている」

──えぇ、それは一大事じゃないですか。

「後から気付いたのですが、横隔膜の使い方がいつもと違っていた。だから素直に上がり下がりがなくて、すぐに息が細くなって太い力がでない。そんな状況に陥っていたんです。テイクダウンの力もない。出しても、切られる。そんなプチスランプのような期間こそ、あの撮影をしてもらった時だったんです」

──なるほど!! 実はカメラさんがBGMを入れて撮っていたので結果的にほぼ使えなくなったのですが、逆に使わなく良かったかと。

「はい。あの時の動きは、あまり使ってほしいモノではなかったですね(笑)」

<この項、続く>


■視聴方法(予定)
1月19日(日・日本時間)
午後8時00分~UFC FIGHT PASS
午前12時~PPV
午後7時 30分~U-NEXT

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