【Shooto2025#01】修斗開幕戦のメイン。安芸柊斗と暫定フライ級王座戦、関口祐冬「勝ち方もこだわって」
【写真】ベルトへ。この流れは昨年5月から始まっていた(C)MMAPLANET
19日(日)東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2025#01で関口祐冬が安芸柊斗と世界フライ級暫定王座決定戦で対戦する。
Text Takumi Nakamura
昨年5月に石井逸人に勝利し、フライ級チャンプ新井丈に挑戦するチャンスを待っていた関口。その新井が9月にRIZINでエンカジムーロ・ズールーにKO負けを喫し、最終的に今大会で暫定王座決定戦が組まれ、暫定王者が新井と統一戦を行うという流れに収まった。
正規王者への想い、暫定王座を争う安芸への想い、そして尊敬する猿丸ジュンジへの想い。関口にとってフライ級王座を巡る戦いは格闘技キャリアにおける大きな意味を持つものだ。
――安芸柊斗選手との世界フライ級暫定王座決定戦が迫ってきました。この試合は昨年11月の後楽園大会で発表されたカードで、あの場で関口選手は正規王者の新井丈選手をケージ内に呼び込んで保持している王座について問う一幕がありました。あれは事前に考えていたものだったのですか。
「僕が5月に石井逸人選手に勝ったあと、タイトル挑戦は新井選手待ちの状態だったんです。そのなかで新井選手が9月にRIZINで試合をすることになって、修斗のチャンピオンは防衛期間(※原則として1年以内に防衛戦を行わなければならない)があるので、それを超過することになったら新井選手が何かしらコメントすると思っていたんです。でもそれが一切なかったので、直接新井選手の口から修斗のベルトのことをどう思っているか聞こうと思いました。あの日、新井選手は会場にいると思っていたので、それでケージに呼び込んだ感じです」
――当日、新井選手の体調・コンディションを考慮して暫定王座が設けられることになったと説明があり、ケージに上がった新井選手からは「正直(返上は)俺が決めることじゃない」、「修斗から『返上しろ』と言われたらそれに従う。そうじゃなくて暫定王座戦を組んだということは安芸と関口じゃ荷が重いということなんじゃないんですか」という言葉がありました。
「ああ言われたら……納得せざるをえないですよね。そこは新井選手個人の意思だけじゃないだろうし、あの場で自分が言った通り、色々とコミュニケーションがあったなかでのことだと思うので」
――それと同時に新井選手からは統一戦を行う意思表示もあり、今後の流れも明確になったと思います。
「そうですね。ただタイトルマッチだからと言って特別な気持ちはないし、毎試合毎試合が大事で、一つでも落としたらそれを取り戻すのは本当に大変です。僕は目の前の試合に一つずつ勝っていくだけですね」
――では対戦相手の安芸選手についても聞かせてください。試合発表時には「安芸君は尊敬する先輩・猿丸ジュンジの同じ弟子だと思っているから本当はやりたくない」と話していましたが、試合が決まった時は複雑な心境でしたか。
「僕は猿丸さんを尊敬していて、安芸選手は猿丸さんと関係が深くて(※猿丸は安芸佳孝・柊斗の親子と対戦経験がある)、同じ猿丸一派としてはやりたくないですよね(苦笑)。ただ同じ目標に向けてやっている以上、どこかで戦うことになっていたと思いますし、対戦相手として見て純粋に強い選手だと思います」
――この試合に向けてどのようなことを意識して練習してきたのですか。
「基本的にはいつもと同じ練習ですが、フライ級は組みの強さが大事だと思うので、組みを強くする練習をしてきました」
――フライ級が組みの強さが大事だと思う理由はなんでしょうか。
「フライ級は体重が軽い分、打撃一発でKOすることが少ない階級だと思うんですね。(フライ級の)どの団体のチャンピオンを見ても、打撃を効かせても組まれる展開になるし、レスリング力・グラップリング力がより重要だと思っています」
――MMAPLANETでの過去のインタビューを読んでも分かる通り、MMAマニアともいえる関口選手ですが、そこは他のフライ級の試合を見ていても感じることですか。
「そうですね。それこそ大晦日RIZINの堀口(恭司)選手はエンカジムーロ・ズールーに打撃を効かされたけど、最後は組みの力で勝っていたし、逆に神龍(誠)選手は ホセ・トーレスに打撃を当てていたけど、グラウンドで下になる時間があって、それが判定に響いた。フライ級は打撃を当てても組みの攻防でどちらが有利に戦うかが判定に関わってくる階級だと思います」
――同階級の他の選手の試合を見て刺激やインスピレーションを受ける部分は大きいですか。
「早くあの選手たちに追いつきたいし、目指すものだと思うし。あとは純粋に強くなりたいという気持ちで、自分の階級の試合はよく見ます」
――前回の石井戦はケージに押し込まれた状態でのヒジでKOという珍しいフィニッシュでした。あのヒジについても聞かせてもらえますか。
「実はあのヒジは事前に練習したものじゃなくて、ケージに押し込まれた時に石井選手の頭がヒジを入れやすい位置にあったので、やってみようと思ってやった感じなんですよ。だから練習じゃできないことが試合で出ることもあるんだなと思いました」
――そうだったんですね。あの場面を想定して練習していた技だと思っていました。過去に練習していなかった技が出ることはありましたか。
「自分は腕十字が得意で、それが試合でパッと自然に出たことはありましたけど、ヒジは危ないからそこまで練習できないじゃないですか。きっとああいう技をやると練習仲間に嫌われるだろうし(笑)。軽く触るくらいでやったことはあるかもしれませんが、あれで倒そうと思って練習していたわけではないです。ただああいう態勢になったらヒジが入るイメージはあって、実際にあの場面はヒジを入れて腕のクラッチが緩まれば(タックルが)切れるくらいの感覚でヒジを出しました」
――なるほど。効かせるというよりも嫌がらせ的な攻撃だったんですね。
「はい。だからこそあれでKOできるとは思わなかったので、自分でも驚きました」
――偶然の産物ではあるものの、今後も使える技になったのではないですか。
「そうですね。修斗でも西川大和選手が下からのパウンドで相手(川名TENCHO雄生)をKOしたこともありますし、有効な技ではあると思います。もちろんガードで下になり続けるのはよくないし、基本的にガードでは打撃にこだわるよりも立ち上がった方がいいと思いますが、一つの攻撃方法として使える場面はあると思います」
――関口選手は現在3連勝中ですが、好調の要因をご自身ではどのように考えているのでしょうか。
「2019年6月に平良達郎選手に負けて、復帰するまでに1年3カ月くらい空いてるんですけど、その時に奥さんと出会ったんです。で、復帰後は新井丈選手以外には負けてないので、明確に変わったことと言えば奥さんと出会ったことですね。正直、平良選手に負けた後、もうMMAの試合はやらなくもいいかなと思ったんです。でも奥さんから『人生一回きりなんだから、もう一回頑張りなよ』と言われて、それでまた頑張ろうと思いました。復帰後はランキングにも入ってタイトルマッチまでいって、目標が明確になりましたね。自分にとって奥さんは格闘技に対する気持ちを上げてくれる存在でもあります」
――では今回の王座戦ではどんな試合を見せたいですか。
「僕は今までリスクを負わず手堅く戦って、相手の弱いところを突くような試合で判定で勝ちをあげてきました。ファンのみなさんが求める試合はできていないと思います。ただ今回はリスクを負ってでもフィニッシュして勝ちたい。これからちゃんと格闘技で食っていくためにはそういう試合をやらないといけないと思うし、プロでやる以上、試合で稼ぎたい。負けない試合じゃなくて、勝ち方にこだらないといけないと思っています」
――冒頭にも触れましたが修斗のベルトを巻くことへの思い入れとは?
「ベルトやタイトルというよりも、僕は猿丸さんがめっちゃ好きで、階級は違いますけど猿丸さんと同じ修斗のベルトを巻きたいです。実は猿丸さんも先に暫定王者になって、それから正規王者になったので、自分と同じシチュエーションなんですよ。猿丸さんの背中を追いかけるじゃないですけど、同じ道を辿りたいですね」
――しかも同じ猿丸一派の安芸選手とベルトを争うというのも運命的ですね。
「そうなんですよね。しかも猿丸さんからベルトをぶんどったヤツが新井選手なんで、その新井選手からベルトをぶんどりたいです」
――そこにもつながるわけですね。
「もっと言うなら新井選手がフライ級に上げて、最初の相手がランキングで1位の僕だったんですよ。それで僕が新井選手にやられてフライ級のベルトを持っていかれたので、自分が新井選手の勢いに火をつけてしまったという責任もあります。もしあそこで僕が新井選手を止めていたら、今のような状況にはなってないと思うし、そういう意味でも新井選手に勝って正規王者になりたいです」
――修斗のベルトを巻けば色々なチャンスにつながると思いますが、これからやっていきたいことはありますか。
「自分を応援してくれる人が少なかった頃は海外でやりたいと思っていましたが、応援してくれる人が増えてからはRIZINにも興味があります。RIZINにはフライ級の強い選手が集まっているし、それこそ新井選手は修斗の2階級王者としてRIZINに出て負けているじゃないですか。だから僕が新井選手からベルトを獲って、僕がRIZINに出て修斗王者の強さを見せたいです」
――今年のプロ修斗の開幕戦のメイン、どんな試合をお客さんに見せたいですか。
「きっと新井選手は僕の人間性は嫌いじゃないと思いますが、僕の試合は好きじゃないと思います(苦笑)。今回は勝ち方にもこだわって、新井選手が僕とやらざるをえない状況を作りたいですね」
――それでは最後にファンのみなさんへメッセージをお願いします。
「今回の試合、判定決着にはならないと思います。必ずフィニッシュして勝ちます。なのでぜひみなさんには会場まで足を運んでほしいです。大会を盛り上げるのは選手だけではなく、お客さんの応援や熱が必要だし、会場でしか味わえないものがあるので、ぜひ後楽園で僕の試合を見てほしいです」
■視聴方法(予定)
1月19日(日)
午後6時00分~ ABEMA格闘チャンネル